よし坊のあっちこっち

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解雇規制緩和の動きと日本の経営者

2013年05月01日 | ビジネス横丁こぼれ話
少子化による労働力供給の将来的不安定さを解消する一環として「改正高齢者雇用法」が施行された。その一方で、労働市場に大きな影響を与える問題が争点となりかけたが、諸般の事情、というよりは専ら政治的理由で議論棚上げとなった。「解雇規制の緩和」である。

「解雇規制の緩和」とは、従来の雇用維持型から労働移動型の市場への変革を促す為に会社側の従業員解雇をし易くし、その代わりに解雇従業員には、いくばくかの金銭を支給し雇用関係を終了させるもの。雇用維持型とは、日本企業の典型とされる終身雇用形態であり、労働移動型とは、米国に見られるように、会社側の解雇も比較的簡単に出来、従業員側から見れば、転職が簡単且つ当たり前に出来る、労働流動性の極めて高い形態と言えよう。日本もそれを目指す積もりだろうが、簡単ではない。むしろ、現状ではリスキーだ。

米国労働市場は、ご存知のように、経営が悪化すれば帳尻を合わす為にレイオフや、ポジションを廃止して簡単に解雇する。逆に人材が必要となればその都度募集する。それも結構頻繁にやるから年間を通じて常に採用しているようなものだ。だから従業員も仕事に不都合を感じたらさっさと辞めて他に移る。米国ではこのシステムが円滑に機能している。

日本もこのような労働移動型に移行したいのだろうが、伝統的な終身雇用制度が築いてきた社会・会社システムは、“転職”に対しネガティブなイメージを造成してきた。この独特の土壌が破壊されない限り、労働移動型への移行は困難を極める。その前に会社や経営者が示さなければならない覚悟が二つある。会社が提示すべき証拠と言い換えても良い。

その1。会社は転職組の採用比率を意識的に高め、実績として、それを証明する必要がある。その過程で、産業界全体が「新卒」とか「中途採用」等の言葉使いを廃止し、所謂「中途採用」の募集では、年齢制限表示を差別として法的規制を掛けるべきである。
その2。人事部機能を相当強化しないと労働移動型への移行は難しい。極端な言い方をすれば、今の日本企業の人事部は採用に関しては春の新卒採用がビッグイベントであり、それさえ無難にこなせば良い。所謂「中途採用」は片隅にある。こんな楽なことはない。又、前述したように、中途採用の年齢制限がまかり通る現状では、差別の認識が無い。更に、ハラスメントに対しては、欧米とは比較にならぬ程寛容且つ鈍感である。米国並のHRマネジメントが求められる。

以上に対する覚悟が産業界にあるだろうか。ここから始めなければならない。