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米国埋葬事情

2022年08月05日 | アメリカ通信
日本では火葬が殆どだが、アメリカでは土葬が主流であった。過去形にしたのは、このアメリカでも火葬が土葬を上回り、56%に達したとのことである。とりわけコロナ禍での多数の死者を埋葬するのに、いかに広大なアメリカと言えども、何処でも埋葬していいことにはならないので、火葬増になった。ご存知のように、アメリカでは火葬にした後、骨はパウダーにするので場所をとらない。

火葬への根強い反対は、主として宗教上の理由によるものだが、火葬へのシフトは、アメリカ人の宗教的退潮とも符号しているように思える。
経済的にみると、土葬が平均一万ドルかかるのに対し、火葬は5~6千ドルだから、この世知辛い世の中では自然の流れだろう。

そんな土葬か火葬か、の論争の中で、最近注目されてきたのが、Aquamation(水葬)である。今までニュースにもならなかったAquamationに光が当たり始めたのは、やはりコロナ禍の影響であろうと専門家は見ている。

Aquamationはもともとペットの埋葬に利用されていたのだが、人間への適用が法律的に可能になり、2011年に初めてこの埋葬方式が利用された。現在20州が合法化されているが、実際に設備が整っているのはまだ13州にとどまっているとのこと。施設数でみると、火葬施設が3300カ所を越えるのに対し、水葬施設は40に満たないという。

環境及び経済的側面の興味深い記述がある。埋葬には年間400万ガロンの遺体防腐処理剤が使われ、それ以外にも木棺用の木材、コンクリートや金属が使用される。ここで目を引くのは、防腐処理に従事する人は毒性の強いホルムアルデヒドを長年吸引するので白血病の症例が多いという事実である。火葬は主要素は火力だが、年間17億キロの二酸化炭素を排出するというから、CO2問題の昨今、問題に値する。これらに比べると水葬は一件あたり300ガロンの水(家庭で一日に使う水の量)で済むという。

水葬費用は1500ドルくらいと安いが、まだ施設が少ないので普及には時間がかかりそうだ。埋葬の時代から火葬が始まるまで100年を要したが、水葬が普及するのは、そこまで掛からないだろう、というのが専門家の観方である。


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