2月22~25日、シンガポールで開かれていたTTP閣僚会議での日米交渉。甘利代表とフロマン代表との間で、4月中の合意が得られないことが明らかになった。TTPそのものはあまりにも複雑なので脇に置くとして、交渉の行方を左右するアメリカの行動に、アメリカ固有の文化が見える。
1 アメリカの国家理念
①アングロサクソン、プロテスタントが基礎を作った国家で、自由、平等、そして公正が国の理念。
②歴史的に多くの移民を受け入れ、多様な人種、宗教から成り立つ人工国家で国民をまとめるには①のような理念が必要となる。
2 自由貿易について
①経済学の貿易論の教科書では
・自由貿易により各国にとっても全体にとっても最適利益が得られる。これは命題である。
・各国は経済的に優位な産業分野を特化し貿易することで、各国としても全体としても最適利益を得ることができる、と教える。
ただし、これは経済に限った理論であり試験管の中の話。
②現実には自国産業保護のため、様々な貿易政策が採られる。関税もその一つ。政治が介入するのである。
3 日米の世論
①日本:完全自由化されれば安価な農産物が入手でき喜ぶところだが、農業が壊滅されるのには反対する。これが瑞穂の国、日本の文化。
②アメリカ:例えば米TIME誌の今週号(3/3)での、専属記者ザッカリア氏の記事がアメリカ世論の一端を表していると思う。
「アメリカはアジア諸国に市場開放、貿易自由化を求める。我々は68%が関税ゼロ、残りは4.4%なのだから」
さて私はアメリカの「自由こそ正義」に基づいた行動をある程度理解する。だが、ひとつの国家として自由貿易を叫ぶのは、すべての産業で優位に立っているから出来ることだと思う。アメリカは強い国なのである。他の国は様々な事情があり保護しなければならない産業をもっているのだ。そもそもTTPは2005年に小国4カ国が自らの経済的スタンスを高めようと始めたもの。その時点で関税撤廃は意味があった。今、日米交渉の行き詰まりでアメリカも現実を理解してきたように見える。
さあ、アメリカにとって日本は難しい交渉相手、ということも事実だ。 3月4日 岩下賢治