先日、NHKの朝ドラ「花子とアン」に絡め、「僕と赤毛のアン」を書きました。実を言うと、子供の頃の児童向図書やテレビ、映画での寄せ集めの知識ばかりだったので、改めて原書を英語で読みました。Anne of Green Gables です。これで、ぐっとアンの世界に近づいた感じがします。
どうしてこの作品が多くの人に支持されるのか。
・描かれている社会と時代背景が100年前のカナダ。古きよき時代。プロテスタントの信仰心、質素、勤勉、隣人愛がベースであり、様々な困難を乗り越えていくことが称賛される開拓者の国の話。多くの人に受け入れやすい。
・豊かな自然、四季折々の美しい景色。
・主人公は身寄りの無い少女。グリーンゲーブルに引き取られた後、たくさんの騒動を起こしながら持ち前の勝ち気さと想像力(空想かな?)の豊かさで周りを明るくし成長していく。読む人に勇気を与えてくれる。
というのが、一般的な理由でしょうか。
この作品は
・作者が女性。
・読者は女性が多いと思われる。
・今まで多くの方が翻訳していますが全て女性。
そうなると、これは女性向けの作品かと思ってしまいます。
ところが男性の感性で読んでも大変面白いと思うのです。厳しい境遇にある子供が、その境遇を乗り越え成長していくという物語をいろいろ読んできましたが、たいてい子供は少年なのです。その時の表現は「少年は立派な人間に成長していく。」です。少女の物語は多くはないと思います。そうするとその表現は「少女は立派な”女性”に成長していく。」がすんなりきます。
若い女性の読者はアンを自分に置き換え、物語を楽しむことができますが、大人の男性である僕は、自分とは別の世界を覗くように読みます。アンが健気で前向きなこと、空想、おしゃべり、好奇心、感受性などで、とどまることなくスリリングに物語を展開させる。話の多くは女性ならではのもので、男性である僕には楽しく愛すべきものを、舞台の脇でハラハラしながら親のような気持ちで楽しめるのです。
さて、大人の男性諸氏。皆さんはアンの物語をどう読みますか? 6月17日 岩下賢治