遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国  「単独二孩」から「全面二核」へ

2015-11-06 23:58:58 | 中国 全般
 中国は第18期党中央委員会第5回全体会議(五中全会)で、「すべての夫婦に第二子出産を認める(全面二孩)」政策を発表しましたね。
 少子高齢化対策として、既に、夫婦の一方が一人っ子である限り、第二子の出産を認める「単独二孩」政策が採られていましたが、第二子までは完全解禁されたのですね。報道で、「ひとりっ子政策廃止」と強調するものが観られますが、「単独二孩」が「全面ニ核」に変わったのであり、産児数制限は継続されています。
 一人っ子政策が導入されたのは、1979年ですから既に36年目に入っている今、夫婦の一方が一人っ子の夫婦は36歳以下となり、出産適齢期の夫婦はおおむね既に二人の出産は可能になっていると推定出来ます。
 なので、「全面ニ核」への変更による新生児増加効果は薄いとの評価もあります。果たしてどうなるのでしょう。
 
中国の「一人っ子政策」廃止、経済成長効果は見込みなし?専門家 :AFPBB News
 
オカモトの株価も下落した中国二人っ子政策の影響力|陳言の選り抜き中国情報|ダイヤモンド・オンライン 陳言 2015年11月6日

 
去る10月29日、第18期党中央委員会第5回全体会議(五中全会)は「すべての夫婦に第二子出産を認める(全面二孩)」政策を発表した。
 それはもはや十数年遅れの改革措置ともいえるものであり、今のところ出産の完全自由化には至っていないものの、「夫婦の一方が一人っ子である限り、第二子の出産を認める(単独二孩)」実施以来のさらなる進歩であり、また現在及び今後の中国経済にとっても価値あるニュースである。

■単独二孩政策でも出産率上がらず 人的資本に対して投資が不足
 新華ネットによると、習近平党総書記(国家主席)は、「第13次5ヵ年計画」に関する提言について説明した際、次のように述べた。
 調査では、夫婦の片方が一人っ子の場合に第2子を生んでよいとする政策を実施して以来、条件に適合する夫婦は全国で1100万組以上いたが、今年8月末までに第2子出産を申請したのはこのうち15.4%の169万組だけだった。
 一方では中国の高齢化の趨勢は明らかで、総人口に占める60歳以上の人口の割合は昨年15%を超え、世界の平均水準を上回った。また14歳以下の人口の割合は世界の平均よりも低かった。
 これらは中国にとって人口のバランスがとれた発展と人口面での安全保障に新たな課題を突きつけている。
二人っ子政策の全面的な実施は、高齢化の圧力を和らげ、労働力の供給を増やし、人口のバランスある発展を促すことができる。

 最近、
中国経済の鈍化を懸念する人は多いが、実際の根本的な問題は、中国国内では生産過剰状況が普遍的になり、多くの産業の投資機会も減少していることである。そういう状況を変えるには、当面投資がいまだに不足している分野を見つけ、そこから比較的高い投資利益を獲得し、さらに新たな経済成長の基点を形成しなければならない。政府であろうと、投資家であろうと、目下いずれも投資可能な新しい分野を探している。

 エコノミストたちは、「人的資本」が投資の最も必要な分野であり、最も投資価値のある方向でもある、と考えている。
 中国は人口大国であるが、人的資本に対する投資が非常に不足している。その不足は、一方では品質に表れている。たとえば、中国では、教育と健康に対する投資のGDPに占める割合が比較的低い。その一方で、労働力、消費量など数量における不足もさらに懸念されている。言いかえれば、
出生率の持続的な低下は中国経済に暗い影を投げかけてきた
ということになる。

■1.18という低すぎた出産率 人口政策変化による経済効果は?
 最新の国勢調査結果によると、
中国の出産率はすでに1.18という低いレベルに下落し、東アジア隣国のみならず欧米先進国をもはるかに下回っている。この趨勢を変えられなければ、逆ピラミッドの人口構造は中国経済の逃れ難い重荷になり、ひいては一連の悪循環を引き起こす懸念
もある。
 たとえば、社会全体が高齢化するという状況にあって、政府は人数の限られている若者に主な税収負担をかける可能性がある。すると、その負担に堪えられない若者には起業・イノベーションの条件が備わらなくなるため、社会全体の経済成長のスピードが制約され、逆に政府はやむを得ず税率を引き上げ、徴収を強化するようになる。こうなると結局は、中国経済の活気が抑制されることになるはずである。
 このような悪い結果を防ぐために、最近の2年間に、
第18期三中全会、五中全会は出産制限の緩和政策を相次いで打ち出してきた
。人口政策の調整がもたらした直接の結果は、中国で毎年の新生児人数が増加することである。その二つの人口政策が打ち出されるまで、中国の毎年の新生児数はおよそ1600万人であった。
「単独二孩」政策が実施された1年間の実際的な効果から見ると、新しい政策の恩恵を受けて新生児の数は数十万人増えた。それに加え、出産制限をさらに緩和した今回の「全面二孩」政策によって、今後新たに増加する新生児数毎年平均でおよそ250万人
になると推算されている。
 毎年、一人あたりの子どもについて3万元の消費がなされるとすれば、
新たに増加する消費は年750億元になる。また、新生児人数の増加に伴い、住宅、教育、インフラなどの分野における民間と政府の投資も数倍に拡大するため、最初の5~10年間で、毎年2250億元の投資を増やす
可能性もある。
 以上の二つの予期データを加えると3000億元となり、
中国GDPが0.5%増加することに相当
する。それは、中国経済が「7%の成長率を維持する」という目標達成を手助けすると同時に、国内外の投資家の中国経済に対する信頼感を向上させることになるに違いない。
 ただ、経済データ上の変化は、単に人口政策調整によってもたらされる短期的な利益に過ぎない。「人的資本」は実は長期的投資であり、もたらされる利益は多岐にわたると同時に、より遠い将来に果たす役割はさらに重要である。
 それは、短期間で投資と消費を牽引するだけでなく、最も重要なのは、出産の制限緩和の恩恵を受けて生まれてくる若者たちが、中華民族の復興のために、継続的な原動力となることである。

■オカモトの株も下がるなど 国内外にさまざまな影響
 活気と潜在力のある市場は、どんな投資家にとっても魅力的な存在である。今回の「全面二孩」政策は、中国国内外の資本家の中国経済への投資に対する信頼感を向上させるものである。数十年先の市場規模と人口規模の拡大が期待されることによって、中国はさらに多くの戦略的視点に立つ長期投資を引き付けるだろう。その投資は、特に科学技術研究、教育および戦略的新興産業分野に集中するかもしれない。
「単独二孩」から「全面二孩」への政策変更は、単なる人口政策調整におけるわずかな一歩にすぎないように見えても、実際には中華民族の振興を牽引し続けることにおいて、極めて大きな第一歩となるかもしれない。
 
もし「全面二孩」政策が出産率の上昇に効果がなければ、中国の高齢化の趨勢はさらに強まる。これに対する経済学専門家の共通した憂慮は、高齢化が中国経済に与える脅威は労働力の縮減ではなく、内需の萎縮にある。この問題は、既に日本で非常に顕著
である。

 中国経済に影響を及ぼす以上、世界経済にもその影響は波及するだろう。しかし、全世界のビジネス界には、また別の効果がすぐに現れた。
 AP通信社は、
「全面二孩」政策が公表されてまもなく、中国と全世界のオムツ・ベビーカー・粉ミルクメーカーの株価が金曜日に一様に上昇し、粉ミルク大国のニュージーランドの通貨も明らかに値上がり
した。子どもが多くなればなるほど、関連ビジネスが増える――これは明らかである。
 ところが、一部の市場アナリストは「投資家の反応はいささか過敏」とも考えている。「ニュースが公表されたばかりなのに」と。
 この発表による「負け組」もいる。日本のコンドームメーカーのオカモトの株は、当日の東京株式市場で10%も下落した。その理由は、だれにでもわかるだろう。


 記事は「全面二核」の効果を強調し、「もし「全面二孩」政策が出産率の上昇に効果がなければ」として、高齢化の趨勢はさらに強まるが、高齢化が中国経済に与える脅威は労働力の縮減ではなく、内需の萎縮が憂慮されるということです。
 日本が抱えているのと同じ課題です。出生数の増加に、日本政府はいまだに有効な手段がうてていません(合計特殊出生率の向上はみられますが)。
 
日本の出生率と出生数をグラフ化してみる(2015年)(最新) - ガベージニュース

 日本で出生数の減少が何故止まらないのか。中国が、「単独二核」を採っても期待された効果が出ないから、「全面二核」に踏み切ったのですが、何故政策緩和の追加が必要なのか。
 日本の場合は政策が行き詰まっていますが、中国は「一人っ子政策」の廃止と言う手が残されていて、対策がうてると思っていました。「単独二核」を「全面二核」に変更せざるを得ないのは、出産適齢期の人々が、出産人数制限の理由で出産を控えているのではなく、家庭の事情で少子化を選択しているのだということが、判明しているのですね。理由は、育児の負担。
 だとすれば、「全面二核」に代わっても出生数増加への大幅な期待は薄く、出産制限を全廃しても効果は薄いと推測されます。
 所得格差で、低い方に分類される農村部で出生数が増え、安価な労働力の回復がいくらか見込めても、肝心の内需の増加にどれだけ効果が出るのか。疑問です。日本がとやかく言える立場にはなく、共通の悩みですが。

 繰り返しますが、少子高齢化には、一人っ子政策の廃止という切り札がある中国は、日本に比べて解決策があると思っていましたが、宝刀を抜いたら錆びついていて役に立たないという可能性があるようですね。
 影響は、長い期間を経ないと解りませんが、要注目です。人口の多さが国力を支えている中国。少子高齢化の悪弊が出れば、人口が多い分影響は大きくなります。経済が減速していますから、老人を支える労働層も、自分達の生活が圧迫され、老人を支え辛くなります。
 内需が狭まる為、「一帯一路」その資金調達(財政赤字増加傾向)の「AIIB」で海外市場に懸ける中国。「TPP」で市場の拡大を海外に求める日本。それぞれ、似た政策で需要開拓政策を進めています。
 海外での市場獲得戦争が激化していくことになりますが、このところ分が悪い日本。TPPの活用を踏まえ、戦略の立て直しが必要ですね。

 
中国が競争ルールを歪める限り途上国開発で日本は敗北し続ける|China Report 中国は今|ダイヤモンド・オンライン
 

 # 冒頭の画像は、中国のひとりっこ=小皇帝




  この花は、福寿草


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