遊爺雑記帳

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米中貿易戦争 習近平体制に黄信号

2018-08-01 23:58:58 | 中国 全般
 米中貿易戦争で、中国の敗色が濃いという評価が増えていますね。昨日に続いて、その話題になってしまい恐縮です。
 劣勢な戦況に、中国国内でも習批判が出始めている様で、習近平は引き締めを図ったようですね。

 トランプ政権が中国に仕掛けている貿易戦争では中国に勝ち目はなく、習近平政権に打撃を与え始めていると指摘するのは、元内閣参事官で、嘉悦大教授の高橋洋一氏。
 
【日本の解き方】米中貿易戦争、中国に“勝ち目”なし…国際社会「一帯一路、既に失敗」 習近平体制、いよいよ黄信号 - zakzak 高橋洋一 2018.8.1

 米トランプ政権が中国に仕掛けている貿易戦争が習近平政権に打撃を与えている。習政権の肝いりの政策である「一帯一路」や、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、「中国製造2025」などはもくろみ通りに進むのか。
 本コラムでも指摘したが、
この争いは中国に勝ち目がない。関税引き上げは、自由な資本主義国間では百害あって一利なしだが、対社会主義国では政治的には意味があるためだ。

 そもそもモノの取引の自由化は互いの利益になるが、その前提としてヒトやカネの自由化が必要だ。ところが、社会主義国ではその体制維持のためにヒトとモノの自由化は制限される。となると、モノの自由化は社会主義国のいいとこ取りになることもありうる。
中国は実際、自国への投資を制限しつつ、資本主義国への投資を自由に行い、その結果、投資とともに見返りに技術を導入していた。技術面での内外非対称的な対応が経済成長を後押ししてきた。

 
ところが、トランプ政権が関税引き上げという思わぬ手を使ったことで、習政権が対応に苦慮しているのが実情だ。
 
最近、中国国内でも、習批判が出ているようだ。これは今後の経済成長を疑問視することと同じで、トランプ政権の対中貿易戦争のこれまでの成果と関係なしとはいえない。

 トランプ政権が対中強硬路線を打ち出してきたのは、前のオバマ政権が対中融和的であったのと好対照だ。トランプ大統領は生粋のビジネスマンであり、自由資本主義者である。社会主義的な覇権主義の中国とは基本的な価値観が合わないのだろう。
 
米国は貿易戦争を中国だけに猛烈に仕掛けており、欧州連合(EU)や日本には今のところ厳しい対応はない。これは、やはりトランプ流の中国包囲網であろう。

 一方、
中国の対外的な覇権主義を象徴するのが、AIIBを通じた一帯一路構想だ。以前に本コラムで、その無謀性や失敗になる可能性を指摘したが、当時のマスコミは「バスに乗り遅れるな」の大合唱だった。
 その後の展開をみると、
パキスタンの地下鉄建設などで一帯一路は既に失敗だったと国際社会から評価されている。

 「中国製造2025」は、国内向けの産業政策である。中国製造業の2049年までの発展計画を3段階で表し、その第1段階として「25年までに世界の製造強国入り」することを掲げている。第2段階は、35年に「世界の製造強国陣営の中位に位置させる」。第3段階は、45年には「製造強国のトップになる」というものだ。

 ある程度の工業化がないと、
1人あたり国内総生産(GDP)1万ドルの壁を突破するのは難しいというのが、これまでの発展理論であるが、中国は今その壁にぶち当たっている

 
貿易摩擦によって輸出主導経済が崩れると、中国の経済発展に行き詰まりが出て、「中国製造2025」の達成も危うくなる
 これも、
習体制にとっての黄色信号だといえるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 自国への投資を制限しつつ、資本主義国への投資を自由に行い、見返りに技術を導入し、経済成長を推進してきた中国。
 トランプ政権が関税引き上げという思わぬ手を使ったことで、習政権が対応に苦慮しているのが実情。
 中国国内で、今後の経済成長を疑問視して、習批判が出ているようなのだそうです。
 
 習近平の対外的な覇権主義を象徴するのが、AIIBを通じた「一帯一路構想」。パキスタンの地下鉄建設などで一帯一路は既に失敗だったと国際社会から評価されているのですね。
 
 貿易戦争は米国の勝利が濃厚 - 遊爺雑記帳
 「一帯一路」の港湾投資の実態 - 遊爺雑記帳

 経済成長で、1人あたり国内総生産(GDP) 1万ドルの壁が発展理論であるが、中国は今その壁に直面。
 貿易摩擦によって輸出主導経済が崩れると、中国の経済発展に行き詰まりが出て、「中国製造2025」の達成も危うくなる。
 習体制にとっての黄色信号だと、高橋氏。

 内需の行きづまりを海外市場の開拓・獲得で打開しようとする「一帯一路」構想。
 その対抗で追い打ちをかけようと、米・ポンペオ米国務長官は、インド太平洋地域のインフラ整備などに投資するファンドの設立を表明したのだそうです。
 「(我々は)インド太平洋地域の支配を求めず、支配を試みる国に反対する」「政治的影響力のために投資はしない」など、中国の不透明な投資をけん制する表現も多数盛り込んで語ったのだそうです。
 安倍首相が提唱する『自由で開かれたインド太平洋戦略』に、トランプ大統領が中国他のアジア諸国歴訪時に賛同、説いて回ったのが発端で、オーストラリアやインドの賛同も得ている対中構想で、それが具体的に動き始めるということですね。
 
米、インド太平洋を重視 ポンペオ氏ASEAN会合へ (8/1 読売朝刊)

 【ワシントン=大木聖馬】ポンペオ米国務長官は7月30日の「インド太平洋戦略」に関する経済政策演説で、インド太平洋地域のインフラ(社会基盤)整備などに投資するファンドの設立を表明するなど、地域への関与を続ける方針を具体策を示して強調した。トランプ米政権は、巨大経済圏構想「一帯一路」などを通して地域で影響力を強める中国に対抗する構えだ。

 
「(我々は)インド太平洋地域の支配を求めず、支配を試みる国に反対する」
 ポンペオ氏はワシントンの全米商工会議所で行った演説の最終盤、力強い口調で言い切り、会場から拍手を浴びた。ポンペオ氏の念頭には、相手国の返済能力を超えた融資を行ったり、数十年以上に及ぶ港湾施設の租借契約をインド太平洋で結ぶ中国の存在がある。
 ポンペオ氏は「我々のインド太平洋(戦略)はどの国も排除しない」としつつも、
「政治的影響力のために投資はしない」など、中国の不透明な投資をけん制する表現も多数盛り込んだ。
 トランプ大統領は昨年11月、訪問先のベトナムでインド太平洋戦略の演説を行った。ただ内容は、「米国第一」主義に基づく2国間貿易重視の通商戦略の色彩が濃く、理念の欠如に東南アジア諸国を中心に戸惑いが広がった。
 こうしたこともあり
ポンペオ氏は演説で、「法の支配や持続的繁栄が共通の未来像だ」と述べるなど、関係国の懸念払拭に努めた
 ポンペオ氏は新たに設立する1億1300万ドル(約125億円)規模のファンドに関し、①「デジタル・サイバー協力」(2500万ドル)②「エネルギー支援」(5000万ドル)③「インフラ支援」(3000万ドル)━━などを列挙し、「これらは頭金にすぎない」として、拠出金を拡大していく方針を示した。
 ポンペオ氏は今週後半に開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会合に出席し、インド太平洋地域の安全保障政策も示す予定だ。
      ◇
 ポンペオ氏が表明したインド太平洋地域のインフラ整備に向けたファンドについて、日本政府も協力する方向だ。外務省幹部は
「安倍首相が推進する『自由で開かれたインド太平洋戦略』の後押しになる」と歓迎しており、今後、日米間で協力策の具体化を進める見通しだ。

 トランプ大統領がベトナムで語った時は、「米国第一」主義に基づく2国間貿易重視の通商戦略の色彩が濃かったとの見方があったのだそうですが、ポンペオ氏は演説で、「法の支配や持続的繁栄が共通の未来像だ」と述べるなど、関係国の懸念払拭に努め、今週後半に開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会合に出席し、インド太平洋地域の安全保障政策も示す予定なのだそうです。

 劣勢を自覚する習近平。政治局会議を開き、米国との貿易摩擦などに揺れる国内経済の現状を「新たな問題と新たな挑戦に直面している」と分析し、抑制してきた国内のインフラ投資の拡大など、積極財政に転じることとしたのですね。
 
中国 積極財政に転換 インフラ投資 再拡大へ (8/1 読売朝刊)

 【北京=竹内誠一郎】中国共産党は7月31日、習近平総書記(国家主席)の主宰で政治局会議を開いた。米国との貿易摩擦などに揺れる国内経済の現状を「新たな問題と新たな挑戦に直面している」と分析し、抑制してきた国内のインフラ(社会基盤)投資の拡大など、積極財政に転じる方針を確認した。
 習政権は経済構造改革を進めるためインフラ投資を抑制してきた。今回、米中貿易摩擦がもたらす不透明感を背景にインフラ投資を再び拡大することにしたもので、
構造改革が棚上げされる可能性がある。
 中国政府はすでに、地方でのインフラ投資強化の方針を示している。16日発表の4-6月期の国内総生産(GDP、速報値)は前年同期比6.7%増だった。1~3月期と比べると0.1ポイントの低下で、3四半期ぶりの減速となっていた。
 一方、会議は、党内の規律徹底と習氏を「核心」とした権威の擁護を改めて強調した。
国内では、不正ワクチン事件などへの対応を巡り政府への不満が表面化しており、党内外の引き締めを図った模様だ。習氏は8月上旬、現役指導者と党長老らが重要政策や人事を議論する「北戴河会議」に臨み、内外の諸課題への対応を話し合うとみられている。

 また、国内で台頭する政府への不満に対し、党内外の引き締めを図った模様なのだそうですね。
 
 政府の投資で経済成長をけん引する、旧来の成長モデルに戻すしかない習近平の発想。そのモデルの行きづまりを打開するために、外需を求めて「AIIB」とセットの「一帯一路」に踏み切ったのですが、各地での頓挫に、米国との貿易戦争勃発の追い打ち。
 経済成長の先行き不安に乗じた、国内での批判台頭。
 せっかく、終身独裁体制を構築した習近平ですが、黄色信号が点滅し始めた様ですね。

 トレンド・マクロリティクスの最高投資責任者・ドナルド・ラスキン氏は、中国が、経済・政治の両面で開放性を実現させれば、今後数十年にわたり、成長の第2波を加速させる可能性があると指摘されていますが、習近平は時代に逆行する道を選ぶ様ですね。

 中国は貿易戦争の武器を自ら放棄したのか放棄せざるを得ないのか - 遊爺雑記帳



 # 冒頭の画像は、習近平批判でかけられた墨汁




  この花の名前は、ソシンロウバイ


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