ドルがマネーサプライを増やし、ドル安を追求するのは、オバマ大統領の輸出倍増計画を進めるためであり、日銀がマネーサプライを増やさないのは、オバマ政権の政策支援の為だと思っていました。
それにしても、ここまでの円高は国益を損ないむしろ国難を招くに至っていますので、円のサプライ増を頑として行わない日銀の姿に、いかがなものかと不思議に思っていたのですが、白川日銀総裁とFRBのベン・バーナンキ議長との金融政策理論の違いによるものだとの指摘記事がありました。
未曽有の金融危機「リーマン・ショック」から3年が過ぎた今、外国為替市場は超円高局面に突入している。その底流には、ともに学究肌の白川方明(まさあき)日銀総裁(61)と米連邦準備制度理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長(57)の間で垣間見える確執のドラマがある。金融政策をめぐる両氏の対照的なスタンスを検証した。
世の中、おカネが回れば景気がよくなる。銀行がカネを貸さなくなると、モノの値段が下がり続けるデフレ不況になる。ならば、中央銀行が思い切ってカネを刷り、金融機関に流し込めばよい-。
これが、バーナンキ氏の基本的な考え方だ。同氏は、FRBによるおカネの供給量が足りなかったことが1930年代の大恐慌の原因だとする経済学者、故ミルトン・フリードマン教授の学説の信奉者だ。
バーナンキ氏はFRB理事になった2002年、フリードマン氏の90歳の誕生パーティーで「FRBは二度と同じあやまちは繰り返しません」と誓った。さらに「デフレ克服のためにはヘリコプターからお札をばらまけばよい」とまで言い切り、市場から「ヘリコプター・ベン」とあだ名されるようになった。
対する白川氏はお札を刷っても景気や物価の刺激効果は乏しいとみる。効き目があるのは、不良債権問題などで金融不安が生じているときだとしている。
白川氏は東大経済学部卒業後に日銀に入行。留学先はフリードマン氏を始祖とするシカゴ学派の本拠、シカゴ大学大学院だ。担当教授から大学に残るよう懇請されたほどの秀才だが、日銀に戻る道を選び、「シカゴ」とは決別した。
以来、「趣味は金融政策だ」と伝えられるほど日銀独自の理論に固執する。東大時代の恩師であるエール大学の浜田宏一教授に「日銀流理論は世界的には非常識」と批判されても、「最新の理論を教えてあげましょうか」と言い返すほどの自信家である。バーナンキ氏には「違和感を覚える」と周囲に漏らす。
バーナンキ氏にとって十数年もデフレが続く日本は格好の教材だった。プリンストン大教授時代(1985~2002年)から日銀の政策がいかに間違ってきたかを研究。FRB入りした02年には「デフレを米国で起こさせないために」、翌年には「日本の金融政策に関する若干の考察」との表題で講演した。
趣旨は、思い切った規模での量的緩和政策(継続的なお札の増刷)による脱デフレだが、その内容は、02年に理事に就任した白川氏ら日銀幹部を驚愕(きょうがく)させるのに十分な激しさだった。
バーナンキ氏は、01年3月に量的緩和を導入した日銀の金融政策を中途半端だと一蹴、物価がデフレ前の水準に戻るまでお札を刷り続けるべきだと迫った。さらに日銀が国債を大量に買い上げ、減税財源を引き受けるべきだと訴えた。「長期国債の買い切り、あるいは引き受けはごめんこうむりたいというセントラルバンカーとしての宗教」(当時の速水優総裁)の路線の全面的な否定だ。
日銀はガードを固めた。長期国債保有額を日銀券発行額の限度内に収めるという内規「日銀券ルール」を徹底。06年3月に4カ月連続で物価の上昇率が0%台になると、すかさず量的緩和政策を解除した。
ただ、その後、デフレの方はバーナンキ氏の指摘通り、今も解消していない。
■量的緩和、日銀の責務
徹底した量的緩和を通じた脱デフレの“大実験”を日銀に迫っていたベン・バーナンキ氏が米連邦準備制度理事会(FRB)の議長に就任したのは2006年2月だった。やがて自身の手で持論を実行するときが訪れる。08年9月のリーマン・ショックである。
世界経済が大混乱に陥る中、FRBは09年3月から1年間、紙くずになりかけた住宅ローン担保証券などを1・75兆ドル買い入れる量的緩和第1弾を実施。10年11月から今年6月には米国債を8千億ドル買い上げる量的緩和第2弾を行った。
FRBの資産はリーマン前から3倍に膨張、バーナンキ氏のもくろみ通り、米国はデフレに陥らずに済んだ。だが、ドルは金融機関を経由して株式、さらに原油や穀物、金市場に流れ出て、世界的に物価を押し上げた。一方で景気はそれほど改善しない。この点ばかりは、今のところ日銀の白川方明総裁の主張に分がありそうだ。
白川氏は、米国流の量的緩和以外に解を探そうと模索してきた。リーマン危機が起きても米欧にただちに同調せず、利下げは遅れ、資金供給も小規模だった。ようやく昨年10月、脱デフレのための包括緩和策を打ち出し、「実質的にゼロ金利政策を採用していることを明確化した」と回りくどく宣言した。
実質金利とはインフレ分を加味した金利だ。デフレ下の日本の場合は名目の金利よりデフレの分だけ上乗せされて高くなる。米国は量的緩和の結果、インフレ率は3%台だ。短期市場金利は日本とほとんど変わらないので、米国の実質金利はこの数カ月間、実にマイナス3・5%前後で推移しており、日本は米国を4%前後も上回る。
他通貨と比べて実質金利が高いということは、その国の通貨による預金や国債などの金融資産の価値が高いことを意味する。だから国内外の投資家はドルを売って円を買う。超円高はこうして起きている。FRBが今月、量的緩和第3弾に踏み切れば、さらに超「超円高」へと向かう。デフレ下の増税が重なり、企業は国内を見切る。雇用機会もなくなる。
学術的に白川、バーナンキ両氏のどちらが正しいかは不明だが、少なくともお札を大量に刷ればデフレ病にかからないという事実は明らかだ。
デフレから抜け出ることが確実になるまで大規模な量的緩和に打って出る。物価を年2~3%程度まで上げると宣言して市場に実質金利低下の決意を示し、円高是正を促すことこそが日銀総裁の義務ではないか。(編集委員 田村秀男)
バーナンキー氏のマネーサプライ増論で、米国のデフレ突入回避は出来ても景気回復には至っていない点、白川論の指摘が当たっているところもあると書かれています。
しかし、超円高対策には、為替介入は欧米の協調は期待薄で効果も一時的であり、マネーの需給バランスで決まるところがあり、頑固にサプライ増をしない円に買いが集中するのは、水が高いところから低いところへ流れると同じ基本原理だといった声が主流ですね。
また、サプライを増やすことで、日銀のバランスシートに傷がつくと、日銀の内規重視という世の中の流れを観ない内向きの保守姿勢も指摘されていますね。
信念を貫くことは、トップとして大切なことですが、世の中の変化への対応、国家の存亡の危機での対応への果敢な決断もまた必要です。
為替介入が、スイスの様に徹底できればよいのでしょうが、むしろその資金を基金にして、買いに走るという案も聞こえます。
マネーサプライを増やすにもいろいろな方法があるようですが、超円高が止まらない現状では、確たる白川策もない様子なので、国難を回避することが大事ですから、ドル安誘導への米国との密約が無いのであれば、日銀もマネーサプライ増をトライすべきでしょう。
しかし、そこでドル安、ユーロ安が止まることは、輸出倍増計画の米国にしても、経済活性化策の壁にぶち当たっているEU各国にしろ歓迎しない所ですから、更なるサプライ増策を打ち出してきて泥沼にはまりかねません。
遊爺が薦める策は、ドル安、ユーロ安で逃げる資金の行先が日本しかないことが原因なので、円以外の行先を創ること、すなわち人民元の為替自由化を、促すことです。
米国が主張していますが、これを国際世論化することで、日本が孤立するのではなく、各国と協調して、中国が為替レートを管理しながら輸出世界一の座を占めているという、世界の自由貿易の基本を歪めたハンディ戦で、富を集中させている現状の是正をすべきと考えるのですが、いかがでしょう。
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