2回目の米朝首脳会談については、内容の進展への期待は薄く、選挙を控え、スキャンダルでの追及も抱えるトランプ大統領の安易な妥協による成果獲得の危惧さえありました。
しかし、結果は物別れ。
多くの方々が、トランプ大統領の安易な妥協が無かったことに安堵した評価をしています。
一方、金正恩は、トランプ大統領側が国内の状況に苦しんでいると過大評価をし、強気の姿勢で臨んだが失敗。現状の制裁状態が継続されることとなり、苦しい。
また、北朝鮮がそもそも非核化を前提に考えてはいない可能性が高いことも知られました。
黒井文太郎氏が、多くの偏向オールドメディアや、TVのワイドショー番組とは異なる冷静な視角から解説しておられます。
TVのワイドショー番組(特に、偏向度の高い、テレ朝やTBS)では、米国側の北が全面解除を求めたことを合意署名出来ない理由としたのに対し、北が部分解除と反論したことを受け、北の立場を一斉支援の大合唱しましたが、制裁項目は全てではないが、内容が全てに等しいものだと指摘したのは、李相哲龍谷大学教授くらいしか見当たりませんでしたが、黒井氏も具体的に、実質制裁全解除に等しい内容だと、李教授と同じ指摘をしておられます。
北の主張を丸呑みして支援、内容を吟味せず米国批判を姦しく唱えていた解説者や番組責任者には、頭を丸めて詫びていただきたい。
そして、黒井氏の米国は会談の合意を避ける戦術に出たという、鋭い視角の説。
事前協議で、寧辺の核施設全廃については合意していた。それがおそらく会談での合意の見通しの根拠だった。
北朝鮮側がそれに見合うと考えるレベルの制裁解除を、米国側は拒否。
米国は北朝鮮が求めるレベルの制裁解除の条件に、おそらく未公表のウラン濃縮施設の全廃を要求。しかし北朝鮮が拒否。
「制裁解除のレベル」と「秘密ウラン濃縮施設の廃棄」をめぐって駆け引きがあったものと思われると黒井氏。
今回の合意の不成立から、米朝両国の狙いが見えたとも。
米国は、「寧辺の核施設廃棄だけでは不十分。他のウラン濃縮施設も廃棄させたい」
北朝鮮は、「寧辺を差し出すことで、経済制裁の主要部分を解除させたい。ただし、他のウラン濃縮施設は死守したい」
北朝鮮の現時点での基本戦略は、経済制裁の主要部分の解除よりも、ウラン濃縮施設を死守したい。北朝鮮がそもそも非核化を前提に考えてはいない可能性が高いと。
北朝鮮がひそかにプルトニウム型核爆弾から濃縮ウラン型核爆弾にシフトしたので、寧辺の核施設を重視しておらず、他のウラン濃縮施設に主軸を移しているということがンんが得られるとも。
更に、今回、米朝の非核化交渉は失敗したわけだが、いずれにせよ非核化はそもそも無理な話だったのではないかと。
ただ、合意見送り後も米国が比較的冷静に見えることや、逆に北朝鮮側に動揺が垣間見えることなどから、米国が当日になって北朝鮮が呑まないと判っているカンソンのウラン濃縮施設廃棄を新たに要求。米国も北朝鮮の実質的全面制裁解除は飲めず、双方がうけいれないことで、交渉をいったん物別れに終わらせたと、米国が物別れを仕組んだのではないかと黒井氏。
北朝鮮は、李容浩外相と崔善姫外務次官が、北が制裁の全面解除を求めたと物別れの原因を主張した米国に反論しましたが、「労働新聞」など北朝鮮の公式メディアが「対話継続」と報じ、合意の見送りには一切触れなかったことから、北朝鮮側も決裂ではなく協議の継続を強く望んでいることを示していると。
米国側は今後も協議の継続を望んでいる言動は顕著ですから、仕切り直しで両国の交渉は再開される道はのこされている。但し、両国の要求の差の開きは大きく、交渉再開時期は見えないと。
# 冒頭の画像は、会談した両首脳 (金氏のすわっている姿勢や椅子に半分しか座っていないことが話題になっていましたね)
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しかし、結果は物別れ。
多くの方々が、トランプ大統領の安易な妥協が無かったことに安堵した評価をしています。
一方、金正恩は、トランプ大統領側が国内の状況に苦しんでいると過大評価をし、強気の姿勢で臨んだが失敗。現状の制裁状態が継続されることとなり、苦しい。
また、北朝鮮がそもそも非核化を前提に考えてはいない可能性が高いことも知られました。
黒井文太郎氏が、多くの偏向オールドメディアや、TVのワイドショー番組とは異なる冷静な視角から解説しておられます。
北朝鮮は「秘密のウラン濃縮施設」を死守したかった 首脳会談「合意なし」で見えた米朝両国の狙い(1/4) | JBpress(日本ビジネスプレス) 2019.3.2(土) 黒井 文太郎
米朝首脳会談を開催地のベトナム・ハノイで取材した。
会談の細かなスケジュールは事前には明らかにされず、ほとんどの場合、米国政府によって直前に発表された。まず、両者は2月27日の夕方に、会談会場となるホテル「ソフィテル・レジェンド・メトロポール・ハノイ」で短時間の二者だけの会談を行い、その後、側近2名ずつを加えて晩餐会を行った。交渉の本番となる公式会談は翌28日に予定されていた。
27日夜になってホワイトハウスが、28日のスケジュールを発表した。「午前中に公式会談を行った後、午後2時から合意文書の署名式を行い、その後、午後3時50分からトランプ大統領の投宿先であるマリオットホテルで、トランプ大統領単独での記者会見を行う」とのことだった。
ホワイトハウスが公式会談の直前の段階で合意文書の署名式の予定を発表したということは、すでに何らかの合意があったことを示していた。それまでのトランプ大統領と金正恩委員長の言動も、両者が楽観的な見通しを持っていることをうかがわせた。
28日朝、取材拠点となるメディアセンターに着くと、午前9時30分までにトランプ大統領の会見への出席希望申請を提出するように通達があった。会場のキャパシティの関係から、抽選に当たった記者にだけ出席を許可するということだった。
結局、筆者は外れてしまったが、当選者には「午前11時にメディアセンター前に集合せよ」との連絡が入った。移動に30分以上、保安チェックに1時間以上かかるとしても、夕方4時近くからの会見に備えて午前11時に集合というのはずいぶん早い時間帯である。
まもなく、合意文書署名がキャンセルされ、トランプ大統領の記者会見も2時間前倒しの午後2時からになった、と発表された。取材陣の早めの集合は、そういう理由だったようだ。
私を含めて世界中から集まった取材陣のほとんどが、今回の合意内容に注目していたが、まさか合意そのものがなくなるとはまったく予想していなかった。
■「北朝鮮は制裁の全廃を要求してきた」と米国
一連の時系列からすると、当日朝までは濃厚だった合意の見込みが、28日午前中の交渉でまとまらなかったことは明らかだ。
当日午後に行われた記者会見で、トランプ大統領とポンペオ国務長官が語った内容の核心的な部分は以下のとおり。
・北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)の核施設廃棄を提示。米国はそれ以外の施設の廃棄までも求めたが、北朝鮮が拒否した。
・米国が廃棄を要求した1つは、きわめて大規模な施設である。
・北朝鮮が公表していない施設を米国が挙げたことに、北朝鮮側は驚いていた様子。
・米国が廃棄を要求した施設にはウラン濃縮施設がある。他にもさまざまな施設を米国は把握している。
・北朝鮮は寧辺以外の施設の廃棄を拒否しておきながら、制裁の全廃を要求してきた。それは呑めない。
・今後も協議は続けるが、再会談の予定はない。
これに対し、北朝鮮側は同日の深夜、現地で李容浩外相と崔善姫外務次官が韓国メディア向けに緊急会見を開いた。注目される内容は以下のとおりである。
・北朝鮮側からは、寧辺の核施設の全廃を米国専門家の立会いの下、共同で行うことを提示した。
・要求したのは制裁全廃ではなく、一部解除。国連制裁決議全11件のうち2016~2017年に採択された5件の中の、民間経済と国民の生活を圧迫する項目のみである。
・寧辺以外に米国が廃棄を要求してきたのは1つの施設。
・米国が再び交渉を呼びかけてきても、北朝鮮側からこれ以上の妥協はない。
■「秘密ウラン濃縮施設」をめぐる攻防
以上を突き合わせると、次の状況だったことが分かる。
・もともと事前協議で、寧辺の核施設全廃については合意していた。それがおそらく会談での合意の見通しの根拠だった。
・北朝鮮側がそれに見合うと考えるレベルの制裁解除を、米国側は拒否した。
・米国は北朝鮮が求めるレベルの制裁解除の条件に、おそらく未公表のウラン濃縮施設の全廃を要求。しかし北朝鮮が拒否した。
以上から、両国がそれぞれ考える価値の順位は以下のようになっていることが分かる。
【北朝鮮】 秘密ウラン濃縮施設温存 >(北朝鮮が望むレベルの)制裁一部解除 > 寧辺核施設温存
【米国】 秘密ウラン濃縮施設廃棄 >(北朝鮮が解除を望むレベルの)制裁を維持 > 寧辺核施設廃棄
以上を北朝鮮側からみると、次のようになる。
「寧辺核施設廃棄を提案したが、米国側がその相応の見返りである制裁の一部解除を拒否した」
「米国はその制裁一部解除の条件として、秘密ウラン濃縮施設の廃棄を要求してきた」
逆に米国側からみると、次のようになる。
「寧辺の核施設の廃棄だけで、過分な制裁解除を北朝鮮が要求してきた」
「そのレベルの制裁解除に相応の条件として、秘密ウラン濃縮施設の廃棄を要求したが、北朝鮮が拒否した」
このように、「制裁解除のレベル」と「秘密ウラン濃縮施設の廃棄」をめぐって駆け引きがあったものと思われる。
なお、北朝鮮が「自分たちが要求したのは制裁全廃ではなく、一部解除」と主張しているのに対して、米国側は「制裁の完全な解除を要求された」と主張しており、食い違っている。たしかに北朝鮮が解除を要求した制裁は安保理決議の一部ではあるが、実際には現在の禁輸措置の主たる根拠であり、しかも「民間経済を圧迫するものだけだ」と言っても、それを認めれば事実上、軍事関連以外はほとんど全てが当てはまる。米国側からみれば、北朝鮮の要求は、ほぼ制裁全廃に等しいということであろう。
また、突如焦点に浮上したこの秘密ウラン濃縮施設だが、これについては昨年(2018年)より、平壌市郊外の千里馬にある「カンソン」地区に、地下施設でない大規模なウラン濃縮施設が存在しているとの情報が浮上している。トランプ大統領は今回の首脳会談で、米国が北朝鮮側に廃棄を要求した「寧辺以外の施設」を具体的に明言していないが、このカンソンの可能性がある。カンソンのウラン濃縮施設は、寧辺のウラン濃縮施設の2倍の規模だという未確認の分析情報もある。
■非核化はそもそも無理な話だった?
いずれにせよ、今回の合意の不成立から、米朝両国の狙いが以下のように見えてくる。
【米国】「寧辺の核施設廃棄だけでは不十分。他のウラン濃縮施設も廃棄させたい」
【北朝鮮】「寧辺を差し出すことで、経済制裁の主要部分を解除させたい。ただし、他のウラン濃縮施設は死守したい」
この北朝鮮側のスタンスからは、北朝鮮の現時点での基本戦略が推測できる。つまり、経済制裁の主要部分の解除よりも、ウラン濃縮施設を死守したい北朝鮮は、やはり核武装の維持・強化を優先させているということだ。
しかも、もはや寧辺の核施設を重視しておらず、他のウラン濃縮施設に主軸を移しているということは、北朝鮮がひそかにプルトニウム型核爆弾から濃縮ウラン型核爆弾にシフトしたということにほからない。
そして、このようにあくまで核武装の維持・強化に、相当な熱意で極秘裏に努力を重ねてきているということは、北朝鮮がそもそも非核化を前提に考えてはいない可能性が高いことを示している。
今回、米朝の非核化交渉は失敗したわけだが、いずれにせよ非核化はそもそも無理な話だったのではないか。
なお、今回の当日の交渉の経緯については、合意見送り後も米国が比較的冷静に見えることや、逆に北朝鮮側に動揺が垣間見えることなどから、筆者は以下のように推測している。
(1)事前協議で寧辺核施設廃棄は合意。見返りに北朝鮮が制裁の大幅解除を要求。米国はそれを拒否し、他のもっと規模の小さな見返り案を提案。ただ北朝鮮は、寧辺核施設廃棄は大きな措置なので、制裁大幅解除にそれなりに期待を持っていた。
(2)米国が交渉当日、カンソンのウラン濃縮施設廃棄を新たに要求。米国は、北朝鮮がそれを呑まないことを予想しており、米国がそれを取り下げる代わりに北朝鮮に制裁解除要求の取り下げを迫った。
(3)北朝鮮が制裁解除要求の取り下げを拒否。米国も呑めないので、交渉はいったん物別れに終わった。
つまり、当日にハードルを上げたのは米国側ではないかと思われるわけだが、以上はあくまで筆者の推測である。
■北朝鮮の核戦力は強化されていく
ところで、今後の米朝交渉はどうなるのだろうか?
トランプ大統領とポンペオ国務長官の発言や米政府の発表などによると、米国側は今後も協議の継続を望んでいる。今回も決定的な決裂という扱いではない。つまり、交渉の仕切り直しといった態度で臨んでいくことが予想される。
他方、北朝鮮側もその点は同様だ。
前述した会談後の深夜の記者会見で、李容浩外相と崔善姫外務次官は、あくまで責任は米国側にあることを強調し、北朝鮮側から妥協することはないと明言。「米国はチャンスを逃した」とまで発言した。
しかし、翌3月1日には、「労働新聞」など北朝鮮の公式メディアが「対話継続」と報じ、合意の見送りには一切触れなかった。これはすなわち、北朝鮮側も決裂ではなく協議の継続を強く望んでいることを示している。
したがって、今後、いったん仕切り直しになるが、両国の協議は継続していくことになる。ただし、両国の狙いがこれだけ食い違っていることは明白なので、しばらくの間は現状維持の状況が続く可能性が高いのではないか。
トランプ大統領ならサプライズを目指す可能性もあるが、今回、手の内をかなり明らかにしてしまっているので、米国側からの妥協もかなり難しい。
今回の合意見送りについては、トランプ政権が安易な妥協をしなかったことは評価できるが、今後も現状維持が続いた場合、北朝鮮の核戦力は温存され、しかも時間とともに強化されていくことを忘れてはならない。
米朝首脳会談を開催地のベトナム・ハノイで取材した。
会談の細かなスケジュールは事前には明らかにされず、ほとんどの場合、米国政府によって直前に発表された。まず、両者は2月27日の夕方に、会談会場となるホテル「ソフィテル・レジェンド・メトロポール・ハノイ」で短時間の二者だけの会談を行い、その後、側近2名ずつを加えて晩餐会を行った。交渉の本番となる公式会談は翌28日に予定されていた。
27日夜になってホワイトハウスが、28日のスケジュールを発表した。「午前中に公式会談を行った後、午後2時から合意文書の署名式を行い、その後、午後3時50分からトランプ大統領の投宿先であるマリオットホテルで、トランプ大統領単独での記者会見を行う」とのことだった。
ホワイトハウスが公式会談の直前の段階で合意文書の署名式の予定を発表したということは、すでに何らかの合意があったことを示していた。それまでのトランプ大統領と金正恩委員長の言動も、両者が楽観的な見通しを持っていることをうかがわせた。
28日朝、取材拠点となるメディアセンターに着くと、午前9時30分までにトランプ大統領の会見への出席希望申請を提出するように通達があった。会場のキャパシティの関係から、抽選に当たった記者にだけ出席を許可するということだった。
結局、筆者は外れてしまったが、当選者には「午前11時にメディアセンター前に集合せよ」との連絡が入った。移動に30分以上、保安チェックに1時間以上かかるとしても、夕方4時近くからの会見に備えて午前11時に集合というのはずいぶん早い時間帯である。
まもなく、合意文書署名がキャンセルされ、トランプ大統領の記者会見も2時間前倒しの午後2時からになった、と発表された。取材陣の早めの集合は、そういう理由だったようだ。
私を含めて世界中から集まった取材陣のほとんどが、今回の合意内容に注目していたが、まさか合意そのものがなくなるとはまったく予想していなかった。
■「北朝鮮は制裁の全廃を要求してきた」と米国
一連の時系列からすると、当日朝までは濃厚だった合意の見込みが、28日午前中の交渉でまとまらなかったことは明らかだ。
当日午後に行われた記者会見で、トランプ大統領とポンペオ国務長官が語った内容の核心的な部分は以下のとおり。
・北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)の核施設廃棄を提示。米国はそれ以外の施設の廃棄までも求めたが、北朝鮮が拒否した。
・米国が廃棄を要求した1つは、きわめて大規模な施設である。
・北朝鮮が公表していない施設を米国が挙げたことに、北朝鮮側は驚いていた様子。
・米国が廃棄を要求した施設にはウラン濃縮施設がある。他にもさまざまな施設を米国は把握している。
・北朝鮮は寧辺以外の施設の廃棄を拒否しておきながら、制裁の全廃を要求してきた。それは呑めない。
・今後も協議は続けるが、再会談の予定はない。
これに対し、北朝鮮側は同日の深夜、現地で李容浩外相と崔善姫外務次官が韓国メディア向けに緊急会見を開いた。注目される内容は以下のとおりである。
・北朝鮮側からは、寧辺の核施設の全廃を米国専門家の立会いの下、共同で行うことを提示した。
・要求したのは制裁全廃ではなく、一部解除。国連制裁決議全11件のうち2016~2017年に採択された5件の中の、民間経済と国民の生活を圧迫する項目のみである。
・寧辺以外に米国が廃棄を要求してきたのは1つの施設。
・米国が再び交渉を呼びかけてきても、北朝鮮側からこれ以上の妥協はない。
■「秘密ウラン濃縮施設」をめぐる攻防
以上を突き合わせると、次の状況だったことが分かる。
・もともと事前協議で、寧辺の核施設全廃については合意していた。それがおそらく会談での合意の見通しの根拠だった。
・北朝鮮側がそれに見合うと考えるレベルの制裁解除を、米国側は拒否した。
・米国は北朝鮮が求めるレベルの制裁解除の条件に、おそらく未公表のウラン濃縮施設の全廃を要求。しかし北朝鮮が拒否した。
以上から、両国がそれぞれ考える価値の順位は以下のようになっていることが分かる。
【北朝鮮】 秘密ウラン濃縮施設温存 >(北朝鮮が望むレベルの)制裁一部解除 > 寧辺核施設温存
【米国】 秘密ウラン濃縮施設廃棄 >(北朝鮮が解除を望むレベルの)制裁を維持 > 寧辺核施設廃棄
以上を北朝鮮側からみると、次のようになる。
「寧辺核施設廃棄を提案したが、米国側がその相応の見返りである制裁の一部解除を拒否した」
「米国はその制裁一部解除の条件として、秘密ウラン濃縮施設の廃棄を要求してきた」
逆に米国側からみると、次のようになる。
「寧辺の核施設の廃棄だけで、過分な制裁解除を北朝鮮が要求してきた」
「そのレベルの制裁解除に相応の条件として、秘密ウラン濃縮施設の廃棄を要求したが、北朝鮮が拒否した」
このように、「制裁解除のレベル」と「秘密ウラン濃縮施設の廃棄」をめぐって駆け引きがあったものと思われる。
なお、北朝鮮が「自分たちが要求したのは制裁全廃ではなく、一部解除」と主張しているのに対して、米国側は「制裁の完全な解除を要求された」と主張しており、食い違っている。たしかに北朝鮮が解除を要求した制裁は安保理決議の一部ではあるが、実際には現在の禁輸措置の主たる根拠であり、しかも「民間経済を圧迫するものだけだ」と言っても、それを認めれば事実上、軍事関連以外はほとんど全てが当てはまる。米国側からみれば、北朝鮮の要求は、ほぼ制裁全廃に等しいということであろう。
また、突如焦点に浮上したこの秘密ウラン濃縮施設だが、これについては昨年(2018年)より、平壌市郊外の千里馬にある「カンソン」地区に、地下施設でない大規模なウラン濃縮施設が存在しているとの情報が浮上している。トランプ大統領は今回の首脳会談で、米国が北朝鮮側に廃棄を要求した「寧辺以外の施設」を具体的に明言していないが、このカンソンの可能性がある。カンソンのウラン濃縮施設は、寧辺のウラン濃縮施設の2倍の規模だという未確認の分析情報もある。
■非核化はそもそも無理な話だった?
いずれにせよ、今回の合意の不成立から、米朝両国の狙いが以下のように見えてくる。
【米国】「寧辺の核施設廃棄だけでは不十分。他のウラン濃縮施設も廃棄させたい」
【北朝鮮】「寧辺を差し出すことで、経済制裁の主要部分を解除させたい。ただし、他のウラン濃縮施設は死守したい」
この北朝鮮側のスタンスからは、北朝鮮の現時点での基本戦略が推測できる。つまり、経済制裁の主要部分の解除よりも、ウラン濃縮施設を死守したい北朝鮮は、やはり核武装の維持・強化を優先させているということだ。
しかも、もはや寧辺の核施設を重視しておらず、他のウラン濃縮施設に主軸を移しているということは、北朝鮮がひそかにプルトニウム型核爆弾から濃縮ウラン型核爆弾にシフトしたということにほからない。
そして、このようにあくまで核武装の維持・強化に、相当な熱意で極秘裏に努力を重ねてきているということは、北朝鮮がそもそも非核化を前提に考えてはいない可能性が高いことを示している。
今回、米朝の非核化交渉は失敗したわけだが、いずれにせよ非核化はそもそも無理な話だったのではないか。
なお、今回の当日の交渉の経緯については、合意見送り後も米国が比較的冷静に見えることや、逆に北朝鮮側に動揺が垣間見えることなどから、筆者は以下のように推測している。
(1)事前協議で寧辺核施設廃棄は合意。見返りに北朝鮮が制裁の大幅解除を要求。米国はそれを拒否し、他のもっと規模の小さな見返り案を提案。ただ北朝鮮は、寧辺核施設廃棄は大きな措置なので、制裁大幅解除にそれなりに期待を持っていた。
(2)米国が交渉当日、カンソンのウラン濃縮施設廃棄を新たに要求。米国は、北朝鮮がそれを呑まないことを予想しており、米国がそれを取り下げる代わりに北朝鮮に制裁解除要求の取り下げを迫った。
(3)北朝鮮が制裁解除要求の取り下げを拒否。米国も呑めないので、交渉はいったん物別れに終わった。
つまり、当日にハードルを上げたのは米国側ではないかと思われるわけだが、以上はあくまで筆者の推測である。
■北朝鮮の核戦力は強化されていく
ところで、今後の米朝交渉はどうなるのだろうか?
トランプ大統領とポンペオ国務長官の発言や米政府の発表などによると、米国側は今後も協議の継続を望んでいる。今回も決定的な決裂という扱いではない。つまり、交渉の仕切り直しといった態度で臨んでいくことが予想される。
他方、北朝鮮側もその点は同様だ。
前述した会談後の深夜の記者会見で、李容浩外相と崔善姫外務次官は、あくまで責任は米国側にあることを強調し、北朝鮮側から妥協することはないと明言。「米国はチャンスを逃した」とまで発言した。
しかし、翌3月1日には、「労働新聞」など北朝鮮の公式メディアが「対話継続」と報じ、合意の見送りには一切触れなかった。これはすなわち、北朝鮮側も決裂ではなく協議の継続を強く望んでいることを示している。
したがって、今後、いったん仕切り直しになるが、両国の協議は継続していくことになる。ただし、両国の狙いがこれだけ食い違っていることは明白なので、しばらくの間は現状維持の状況が続く可能性が高いのではないか。
トランプ大統領ならサプライズを目指す可能性もあるが、今回、手の内をかなり明らかにしてしまっているので、米国側からの妥協もかなり難しい。
今回の合意見送りについては、トランプ政権が安易な妥協をしなかったことは評価できるが、今後も現状維持が続いた場合、北朝鮮の核戦力は温存され、しかも時間とともに強化されていくことを忘れてはならない。
TVのワイドショー番組(特に、偏向度の高い、テレ朝やTBS)では、米国側の北が全面解除を求めたことを合意署名出来ない理由としたのに対し、北が部分解除と反論したことを受け、北の立場を一斉支援の大合唱しましたが、制裁項目は全てではないが、内容が全てに等しいものだと指摘したのは、李相哲龍谷大学教授くらいしか見当たりませんでしたが、黒井氏も具体的に、実質制裁全解除に等しい内容だと、李教授と同じ指摘をしておられます。
北の主張を丸呑みして支援、内容を吟味せず米国批判を姦しく唱えていた解説者や番組責任者には、頭を丸めて詫びていただきたい。
そして、黒井氏の米国は会談の合意を避ける戦術に出たという、鋭い視角の説。
事前協議で、寧辺の核施設全廃については合意していた。それがおそらく会談での合意の見通しの根拠だった。
北朝鮮側がそれに見合うと考えるレベルの制裁解除を、米国側は拒否。
米国は北朝鮮が求めるレベルの制裁解除の条件に、おそらく未公表のウラン濃縮施設の全廃を要求。しかし北朝鮮が拒否。
「制裁解除のレベル」と「秘密ウラン濃縮施設の廃棄」をめぐって駆け引きがあったものと思われると黒井氏。
今回の合意の不成立から、米朝両国の狙いが見えたとも。
米国は、「寧辺の核施設廃棄だけでは不十分。他のウラン濃縮施設も廃棄させたい」
北朝鮮は、「寧辺を差し出すことで、経済制裁の主要部分を解除させたい。ただし、他のウラン濃縮施設は死守したい」
北朝鮮の現時点での基本戦略は、経済制裁の主要部分の解除よりも、ウラン濃縮施設を死守したい。北朝鮮がそもそも非核化を前提に考えてはいない可能性が高いと。
北朝鮮がひそかにプルトニウム型核爆弾から濃縮ウラン型核爆弾にシフトしたので、寧辺の核施設を重視しておらず、他のウラン濃縮施設に主軸を移しているということがンんが得られるとも。
更に、今回、米朝の非核化交渉は失敗したわけだが、いずれにせよ非核化はそもそも無理な話だったのではないかと。
ただ、合意見送り後も米国が比較的冷静に見えることや、逆に北朝鮮側に動揺が垣間見えることなどから、米国が当日になって北朝鮮が呑まないと判っているカンソンのウラン濃縮施設廃棄を新たに要求。米国も北朝鮮の実質的全面制裁解除は飲めず、双方がうけいれないことで、交渉をいったん物別れに終わらせたと、米国が物別れを仕組んだのではないかと黒井氏。
北朝鮮は、李容浩外相と崔善姫外務次官が、北が制裁の全面解除を求めたと物別れの原因を主張した米国に反論しましたが、「労働新聞」など北朝鮮の公式メディアが「対話継続」と報じ、合意の見送りには一切触れなかったことから、北朝鮮側も決裂ではなく協議の継続を強く望んでいることを示していると。
米国側は今後も協議の継続を望んでいる言動は顕著ですから、仕切り直しで両国の交渉は再開される道はのこされている。但し、両国の要求の差の開きは大きく、交渉再開時期は見えないと。
# 冒頭の画像は、会談した両首脳 (金氏のすわっている姿勢や椅子に半分しか座っていないことが話題になっていましたね)
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