遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

ロシアビジネスが失速

2010-11-27 00:27:44 | ロシア全般

 日露関係は、メドベージェフ大統領が北方4島はロシア領と主張し国後島を訪問するという、これまでの両国の平和条約に向けた交渉経緯を覆す、歴史的な方針転換の局面に突入しました。
 日本は従来、平和条約交渉には、領土問題と経済協力を両輪としてあたってきました。しかし、メドベージェフ大統領は、今回のAPEC訪問時に行われた両国首脳会談では、領土問題を一方的に変遷させながらも、経済協力の優先推進を要求してきました。
 経済協力は、領土問題との平行協議なしで進めるべきではなく、遊爺はかねて、約束を守らないソ連、ロシアのこれまでの実績から、経済協力は慎重にし控えるべきと主張してきています。
 日本企業の動向は、この新局面を迎え、慎重姿勢を強めているのだそうです。

 

棚上げ相次ぐ ロシアビジネス失速の危機  :日本経済新聞

幻の官民協力案件

 「直前になってロシア側から会議をキャンセルする連絡が入った。参加者が出席できないという理由だった」。政府関係者はうなだれる。
 11月11日に開催する予定だった日ロ官民石炭会議が急きょ中止となった。この会議は日ロ協力の目玉の一つとなる案件をまとめるはずだった。「シベリア鉄道の増強と港湾整備事業」。日本側が融資などで全面支援し、ロシア産石炭などを輸送するためのインフラを整備するプロジェクトだ。鉄鋼用石炭を豪州産に依存する日本。この協力を通じて調達先の多様化に布石をうつつもりだった。
 しかし、ロシア側からのキャンセルによって会議は流れ、大型プロジェクトも棚上げに。翌日に日ロ両政府が開く日ロ投資フォーラムで覚書にサインするというシナリオはあっけなく崩れた。
 2006年に始まった日ロ投資フォーラムは今回が4回目。横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を直後に控え、本来ならいつも以上に日ロ間で提携調印が相次ぐ晴れ舞台になるはずだった。だが、今回行われた調印は日立建機の工場建設や川崎重工・双日のコージェネ設備受注などわずか6件。前回の20件程度から激減した。極東ウラジオストクでの液化天然ガス(LNG)プラント建設事業や日ロ経済協力の覚書など目玉案件の調印が軒並み見送られた。

 「今回ほど盛り上がらない投資フォーラムは珍しい」。参加者からはこんなため息がもれた。
 対ロビジネスに水をさしたのは、メドベージェフ大統領が北方領土を訪問してからの日ロ関係の冷え込み。投資フォーラムには、ロシア側からシュワロフ第1副首相をはじめ、国営ガスプロムのミレル社長などが出席する予定だったが、来日を相次ぎキャンセル。対する日本側も、大畠章宏経済産業相が出席を取りやめ、松下忠洋経産副大臣が代わりに出席。呼応するかのように、来日したナビウリナ経済発展相も基調講演が終わるとそそくさと会場を後にした。
 ロシア側との調印を見送ったある総合商社の幹部は打ち明ける。「引き続き水面下で新規案件を模索するが、今は日ロ関係の先行きを見極める必要がある」

<中略>

 日本企業の間ではロシア特有の投資環境の不透明さに不満が根強い。日中関係と似た従来の「政冷経熱」路線は、近年にない日ロ関係の政治面でのきしみを受け「経冷」に変わる危うさもある。
 「当社の顧客で
現地進出の事業化調査をした日系企業10社のうち9社が断念した」。ある会計事務所はこう証言する。日系企業関係者によれば、現地企業では法人税を抑えるための二重帳簿の作成や、社会保障関連費用を抑えるための闇給与の支給なども珍しくない。安全点検の名目で行政当局から立ち入り検査を受けるなど不透明な干渉もあり、「袖の下」の慣習も残るという。
<中略>

政府の方針変更で事業が苦境に
 より深刻なのは、見通しにくい政策運営だ。
 住友商事が「大変苦しい状況にある」(岡素之会長)と手を焼く事業がある。ロシア沿海州での製材事業だ。累計160億ルーブル(約430億円)を投資し、3300人を雇用する。
 岡会長によれば、もともと原木輸出を手掛けていたが、ロシア政府が数年前、高率な原木輸出税を課す方針を表明。これに対応し、住商側は日ロ合弁での製材加工に乗り出すため、現地に大規模投資をした。だが、ロシア政府は現地の原木輸出関連業者に配慮し、一年、また一年と実施を延期。いまだ実施されておらず、投資を実行してしまった住友商事の輸出競争力が低下しているという。日本経団連で日本ロシア経済委員会委員長を務める岡会長。「政府の方針を信じて行った。一貫性のある政策をとって欲しい」と訴える。

 
急な政策変更の最たる例が、極東の大規模LNGプロジェクト「サハリン2」だろう。

 当初、英蘭系石油メジャーのシェルと三井物産、三菱商事が手掛けていたプロジェクトに、国営ガス会社のガスプロムが25%出資することで合意していたが、出資合意の1週間後に事業費が2倍に高騰することが判明。それを機にロシア側はパイプラインの地滑りによる環境破壊を名目に、事業開発に揺さぶりをかけ、結果的に50%プラス1株を取得、経営権を握ってしまった。

 
隣接する「サハリン1」も今、似た状況にある。

 伊藤忠商事や丸紅が参画する同プロジェクトは米メジャーのエクソンモービルが事業を主導している。エクソンは中国に天然ガスを販売する計画だったが、中国向け供給でなお政府間交渉中のロシアは、「天然ガス輸出はガスプロムが行う」と買い取りを主張。平行線をたどり、いまだ本格生産のメドが立たない。

 さらに、来年から一部開発を始めるとされる
「サハリン3」の行方も流動的。ガスプロム内部では、本格生産する際に独自に進める案と、三井物産や三菱商事など外資を引き入れる両案がせめぎあう。日本側は参画を期待するが、その条件として、日本勢が海外に保有する別の権益との交換を求めているとされる。やっかいなのは、通常の商談ではないこと。決着はプーチン首相の政治判断に委ねられる。

 何度か触れてきていますが、ロシア経済の成長は、資源の高騰がもたらしているものであって、経済基盤の改革や成長によるものではありません。そこへ、天然ガスの現在の産出の主力となっているガス田の資源が、20年後には 6割減少するとの見通しが明らかになっていて、北極圏の高コストを要するガス田開発への移行が必須な状況に陥っています。

 一方、欧州ではロシアへの依存の高さによるリスクが高まり、脱ロシアが進められるとともに、安価なカタール産LNGの流入などもあり、苦戦しています。したがって、中国、日本、韓国など東アジア向けの販路開拓は不可欠となっています。中国や韓国の積極的な投資が増加傾向にありますが、中露は日本の民主党政権の腰折れ外交と日米同盟の亀裂を機に手を組み、日本侵略を進めようとしていますが、本来は国境を接し牽制しあう間柄であり、ロシアにとっては中国をけん制しながら、遅れている極東開発を本格的に進めるにも日本などの企業誘致が欠かせないのです。
 あわてずに待っていれば、ロシアから折れて日本からの投資と、資源の購入を要請してくる時がきます。また、その時も、エネルギー安全保障の見地から決して依存率が高まらない、いつ供給が切れてもよいレベルでの購入、投資の回収を横取りされない投資計画(露相手に可能かどうか?)が必要です。

 遊爺の対露経済慎重論(武士は食わねど)と、必ずしも一致はしていませんが、日本企業がリスクを感じて、対露投資を控えていることは、当然のことと評価します。





↓よろしかったら、お願いします。



 
ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 11月25日(木)のつぶやき | トップ | 沖縄県知事選 仲井間氏当選... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ロシア全般」カテゴリの最新記事