米軍の軍事拠点でもあるフィリピン・スービック港から約220キロの要衝で、中国が2012年から実効支配しているスカボロー礁の埋め立て準備が、ASEAN諸国や、日米中他の諸国の一連の会合が終わらない内に開始されていることを、フィリピンが公表したことは、諸兄がご承知の通りです。
オバマ大統領は、かねてより「スカボロー礁の軍事化はレッドライン」と、繰り返し唱えていたのだそうですが、今回の中国の行動に対し、アクションを起こす様子はまだ見られません。
シリアやウクライナでも「レッドライン」の表現を用いながら口先だけで行動しなかったオバマ政権。今回も口先だけで終わるのかと危惧するのは、北村淳氏。
スカボロー礁の中国船写真を公開…フィリピン : 読売プレミアム
南シナ海での中国による人口島建設は、米海軍では早くから軍事圧力を含む圧力を示す様提唱されながら、オバマ大統領が習近平を説得するとして放置されていたことは、衆知のことですね。
しかし、昨年9月、習近平との会談で説得を試みたオバマ大統領は、見事に無視され、ようやく「航行の自由作戦(FONOP)」の許可を出したのでした。
米イージス艦 南シナ海人口島の12カイリ内へ派遣 - 遊爺雑記帳
しかし、その当初の勢いはどこへやら、作戦の実行は散発的で、対中抑止の効果が薄いことは諸兄がご承知の通りです。
そして、仲裁裁判所の「九段線」否定裁定により、G20開催があり控えていた中国の力による現状変更は、一連の会議の終了を待たずして再開されているのです。
がしかし、オバマ政権のアクションは見えてきません。アジア回帰のリバランス政策の総括演説をしたので、次期大統領選最中でレームダック化している現在では、新たなアクションがとれないのでしょうか。そこが中国のつけいり所なのですが。。
北村氏が更に言及されている通り、「尖閣は日米同盟の対象」と明言している米国(最初に明言したのは、ヒラリー・クリントン国務長官(当時)でしたが)。一方では、領土問題は中立で関与しない姿勢を堅持していて、当然ですがおんぶにだっこは拒絶しています。米国は、いまだに「レッドライン」を表明していない東シナ海で、日本の“ちっぽけな岩礁”を守るために中国軍と対決すると期待するのは、あまりに現実の認識が甘すぎるとなるのですね。
米軍の駐留費の負担増を公約に掲げるトランプ氏が大統領になれば、より内向きの米国が誕生し、アジアでの中国の覇権拡大が進めやすくなるのでしょうか。
南シナ海での拠点のフィリピン・スービック港の目値鼻の先で軍事基地建設を始められてしまった米国。大統領後退期でこのまま身動きできないのか。ことは急を要しますが、注目ですね。そして、日本はどう動くべきなのか。。
# 冒頭の画像は、フィリピン国防省が南シナ海のスカボロー礁周辺で3日に撮影し公開た中国のしゅんせつ船の画像
この花の名前は、ニオイスミレ
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オバマ大統領は、かねてより「スカボロー礁の軍事化はレッドライン」と、繰り返し唱えていたのだそうですが、今回の中国の行動に対し、アクションを起こす様子はまだ見られません。
シリアやウクライナでも「レッドライン」の表現を用いながら口先だけで行動しなかったオバマ政権。今回も口先だけで終わるのかと危惧するのは、北村淳氏。
スカボロー礁の中国船写真を公開…フィリピン : 読売プレミアム
レッドラインを超えた?中国がスカボロー礁基地化へ アメリカの対応は相変わらず口先だけなのか | JBpress(日本ビジネスプレス) 2016.9.8(木) 北村 淳
<前略>
■スカボロー礁の埋め立て開始か?
すでに今年の3月に行われたオバマ大統領と習主席による米中首脳会談の席上において、オバマ大統領は「スカボロー礁の軍事化はレッドラインと認識している」との強い姿勢を表明していた。それ以降も、南沙人工島をはじめとする南シナ海問題に触れる際には「スカボロー礁はレッドライン」というアメリカ政府の認識が繰り返し表明されてきた。
今年の7月には、ハーグの国際仲裁裁判所が中国による南シナ海における主権的権利(いわゆる九段線)の主張を退ける裁定を下したが、中国当局はこのような裁定はそもそも無効であり中国としては無視すると公言した。それに関連して、アメリカ政府は再度「スカボロー礁はレッドライン」との警告を発している。
しかしその裁定以降、中国側はこれまで数隻の海警巡視船などを展開させていたスカボロー礁周辺海域に200隻以上の“漁船”と十数隻の海警巡視船や漁業取締船などを送り込み、示威行動を実施している。
そして今回、フィリピン沿岸警備隊が、中国によるスカボロー礁埋め立ての兆候をとうとう確認したのである。
■空手形に終わっている“レッドライン”警告
中国による人工島の建設作業が確認される以前から、少なからぬ米海軍関係者などは、中国の南シナ海支配の目論見に対抗できるような、軍事的圧力をも含んだ強い姿勢を打ち出すべきであると主張していた。
しかし、2015年秋になってようやくオバマ政権が始めた“軍事的圧力”は、「公海自由航行原則維持のための作戦」(FONOP)だけであった。それも、対中強硬派の海軍戦略家たちが提唱していたような、中国側をある程度威嚇するようなFONOPとはほど遠い、南沙諸島や西沙諸島の環礁から12海里以内の海域を駆逐艦や哨戒機がただ通航するだけという中国側に遠慮したFONOPにすぎなかった。
そのため対中強硬派の人々からは、「オバマ政権は『スカボロー礁はレッドライン』と言い続けてきたが、結局はシリア(シリア政府が反政府側を化学兵器で攻撃した事件)やウクライナ(ロシアがウクライナのクリミアを編入した事件)の際にオバマ政権が警告した『レッドライン』と同じく、口先だけに過ぎないことになるのではないか?」との危惧が高まっている。
■米軍は日本の“ちっぽけな岩礁”を守るのか?
日本の政府首脳やメディアの一部には、「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲内」というアメリカ政府高官などのリップサービスを真に受けて、「中国が尖閣諸島を奪いに来ても、米軍が立ちはだかってくれる」と信じ切って安心している風潮がある。
しかしアメリカ政府は、尖閣諸島への態度よりもさらに強い「レッドライン」という表現をシリアとウクライナに対して用いながら実質的には何もしなかった。そして、スカボロー礁でも、中国の動きを封殺しようとする行動には出ていない。
スカボロー礁と同じく尖閣諸島周辺海域にも、200隻以上の漁船群と10隻以上の海警巡視船や漁業取締船などが出没している。これらの“漁船”の多くは海上民兵であり、海軍特殊部隊も混じっていることは、もはや公然の事実である。
ウクライナ紛争の際にも、ロシアの多数の民兵や特殊部隊がクリミアに潜入していた。そのことを考えると、中国によるスカボロー礁や尖閣諸島に対する“漁船”の投入は、ウクライナの状況とオーバーラップする。
そして、ウクライナでの「レッドライン」でもスカボロー礁の「レッドライン」でも、友軍や友好国や同盟国に対して強力な軍事的支援を行わなかったアメリカ政府が、いまだに「レッドライン」を表明していない東シナ海で、日本の“ちっぽけな岩礁”(アメリカではそう認識されている)を守るために中国軍と対決すると期待するのは、あまりに現実の認識が甘すぎるというものだろう。
<前略>
■スカボロー礁の埋め立て開始か?
すでに今年の3月に行われたオバマ大統領と習主席による米中首脳会談の席上において、オバマ大統領は「スカボロー礁の軍事化はレッドラインと認識している」との強い姿勢を表明していた。それ以降も、南沙人工島をはじめとする南シナ海問題に触れる際には「スカボロー礁はレッドライン」というアメリカ政府の認識が繰り返し表明されてきた。
今年の7月には、ハーグの国際仲裁裁判所が中国による南シナ海における主権的権利(いわゆる九段線)の主張を退ける裁定を下したが、中国当局はこのような裁定はそもそも無効であり中国としては無視すると公言した。それに関連して、アメリカ政府は再度「スカボロー礁はレッドライン」との警告を発している。
しかしその裁定以降、中国側はこれまで数隻の海警巡視船などを展開させていたスカボロー礁周辺海域に200隻以上の“漁船”と十数隻の海警巡視船や漁業取締船などを送り込み、示威行動を実施している。
そして今回、フィリピン沿岸警備隊が、中国によるスカボロー礁埋め立ての兆候をとうとう確認したのである。
■空手形に終わっている“レッドライン”警告
中国による人工島の建設作業が確認される以前から、少なからぬ米海軍関係者などは、中国の南シナ海支配の目論見に対抗できるような、軍事的圧力をも含んだ強い姿勢を打ち出すべきであると主張していた。
しかし、2015年秋になってようやくオバマ政権が始めた“軍事的圧力”は、「公海自由航行原則維持のための作戦」(FONOP)だけであった。それも、対中強硬派の海軍戦略家たちが提唱していたような、中国側をある程度威嚇するようなFONOPとはほど遠い、南沙諸島や西沙諸島の環礁から12海里以内の海域を駆逐艦や哨戒機がただ通航するだけという中国側に遠慮したFONOPにすぎなかった。
そのため対中強硬派の人々からは、「オバマ政権は『スカボロー礁はレッドライン』と言い続けてきたが、結局はシリア(シリア政府が反政府側を化学兵器で攻撃した事件)やウクライナ(ロシアがウクライナのクリミアを編入した事件)の際にオバマ政権が警告した『レッドライン』と同じく、口先だけに過ぎないことになるのではないか?」との危惧が高まっている。
■米軍は日本の“ちっぽけな岩礁”を守るのか?
日本の政府首脳やメディアの一部には、「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲内」というアメリカ政府高官などのリップサービスを真に受けて、「中国が尖閣諸島を奪いに来ても、米軍が立ちはだかってくれる」と信じ切って安心している風潮がある。
しかしアメリカ政府は、尖閣諸島への態度よりもさらに強い「レッドライン」という表現をシリアとウクライナに対して用いながら実質的には何もしなかった。そして、スカボロー礁でも、中国の動きを封殺しようとする行動には出ていない。
スカボロー礁と同じく尖閣諸島周辺海域にも、200隻以上の漁船群と10隻以上の海警巡視船や漁業取締船などが出没している。これらの“漁船”の多くは海上民兵であり、海軍特殊部隊も混じっていることは、もはや公然の事実である。
ウクライナ紛争の際にも、ロシアの多数の民兵や特殊部隊がクリミアに潜入していた。そのことを考えると、中国によるスカボロー礁や尖閣諸島に対する“漁船”の投入は、ウクライナの状況とオーバーラップする。
そして、ウクライナでの「レッドライン」でもスカボロー礁の「レッドライン」でも、友軍や友好国や同盟国に対して強力な軍事的支援を行わなかったアメリカ政府が、いまだに「レッドライン」を表明していない東シナ海で、日本の“ちっぽけな岩礁”(アメリカではそう認識されている)を守るために中国軍と対決すると期待するのは、あまりに現実の認識が甘すぎるというものだろう。
南シナ海での中国による人口島建設は、米海軍では早くから軍事圧力を含む圧力を示す様提唱されながら、オバマ大統領が習近平を説得するとして放置されていたことは、衆知のことですね。
しかし、昨年9月、習近平との会談で説得を試みたオバマ大統領は、見事に無視され、ようやく「航行の自由作戦(FONOP)」の許可を出したのでした。
米イージス艦 南シナ海人口島の12カイリ内へ派遣 - 遊爺雑記帳
しかし、その当初の勢いはどこへやら、作戦の実行は散発的で、対中抑止の効果が薄いことは諸兄がご承知の通りです。
そして、仲裁裁判所の「九段線」否定裁定により、G20開催があり控えていた中国の力による現状変更は、一連の会議の終了を待たずして再開されているのです。
がしかし、オバマ政権のアクションは見えてきません。アジア回帰のリバランス政策の総括演説をしたので、次期大統領選最中でレームダック化している現在では、新たなアクションがとれないのでしょうか。そこが中国のつけいり所なのですが。。
北村氏が更に言及されている通り、「尖閣は日米同盟の対象」と明言している米国(最初に明言したのは、ヒラリー・クリントン国務長官(当時)でしたが)。一方では、領土問題は中立で関与しない姿勢を堅持していて、当然ですがおんぶにだっこは拒絶しています。米国は、いまだに「レッドライン」を表明していない東シナ海で、日本の“ちっぽけな岩礁”を守るために中国軍と対決すると期待するのは、あまりに現実の認識が甘すぎるとなるのですね。
米軍の駐留費の負担増を公約に掲げるトランプ氏が大統領になれば、より内向きの米国が誕生し、アジアでの中国の覇権拡大が進めやすくなるのでしょうか。
南シナ海での拠点のフィリピン・スービック港の目値鼻の先で軍事基地建設を始められてしまった米国。大統領後退期でこのまま身動きできないのか。ことは急を要しますが、注目ですね。そして、日本はどう動くべきなのか。。
# 冒頭の画像は、フィリピン国防省が南シナ海のスカボロー礁周辺で3日に撮影し公開た中国のしゅんせつ船の画像
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