遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

米中貿易交渉 土壇場で習近平が合意を覆した訳

2019-05-20 23:58:58 | 中国 全般
 米中貿易協議は、一時は進展が見られそうな情報も聞こえていましたが、決裂しました。理由は、土壇場で中国側が合意を覆したからとされています。
 何故習近平は合意を覆したのか。今後の展望について、元内閣参事官・嘉悦大教授の高橋洋一氏が解説されています。
 
 その前に、中国が米国に譲歩しそうになった背景についての、経済アナリスト・中川圭介氏の解説。
 
中国・習近平が恐れている、米中貿易戦争より「ヤバすぎる現実」(中原 圭介) | マネー現代 | 講談社 2919.01.29

<前略>
みなさんもご存知のように、今の中国の政治体制は共産党による一党独裁です。共産党一党に権力が集中し、思想や言論にもかなりの制限がかけられています。体制に反対する人々は容赦なく弾圧され、逮捕・監禁は日常茶飯事のように行われています。私から言わせれば、中国共産党は絶対的な支配階級であり、これまで滅んできた歴代の王朝と何ら変わりがないのです。

現在、その共産党王朝下の中国で何が起こっているのかというと、世界で第2位の経済大国になったとはいえ、党幹部や官僚による汚職が未だに横行し、絶望的なほど貧富の格差が拡大してしまっています。その結果、経済発展に取り残された民衆(その多くが農民)が不遇な生活に不満を募らせていて、実際に中国全土では年間20万~30万件もの暴動が起こっているのです。

今のところ、体制を揺るがすほどの大規模な反乱はまだ起こっていないものの、大暴動に発展しかねない環境が整ってきているように感じられます。

というのも、
貧富の格差や貧しい生活に悲観して、キリスト教の信者になる人々がもの凄い勢いで増え続けているからです。信者の数はすでに優に1億人を超えていると推計されています。

■急増するキリスト教信者
新しく信者になる人々の大半は政府が公認していない教会の信者となり、違法な民家の教会で隠れて礼拝を行っているといいます。
このような事実から判断して、宗教的な農民反乱であった「黄巾の乱」「紅巾の乱」「白蓮教徒の乱」「太平天国の乱」の再来を思い浮かべることができます。
中国共産党が宗教に対して不寛容であり、キリスト教徒を激しく弾圧するのは、まさにこういった歴史が繰り返されるリスクを恐れているからです。

中国の歴史は、虐げられてきた民衆の蜂起と反乱の歴史でもあります。そして、その歴史はこれから繰り返されてもおかしくない状況にあるといえます。

経済的に豊かな沿海部の都市に比べ、格段に貧しい内陸部の農村地区の人々の間には、
共産党に対する不平不満がマグマのように蓄積しており、いつキリスト教と結びついて大反乱が起こっても不思議ではないのです。
そのうえ、昨年からの米中貿易摩擦によって中国経済の減速が予想以上に強まっており、沿海部の企業では倒産やリストラが相次ぎ、失業する人々が増加の一途を辿っています。

経済が好調だから黙っていた都市住民までもが生活水準の悪化から体制に対して大規模なデモを起こし、それが農村部の暴動と連動するようなことがあれば、中国全土で大動乱にまで拡大し共産党一党による支配は崩壊してしまうかもしれません

だから中国は、米中貿易摩擦で米国に大幅な譲歩をしてでも、何とか交渉をまとめたいと思っているはずです。メンツを重んじる中国は当初、自らのメンツを押し通すことで想定以上の景気の減速を招くとはあまり考えていなかったようです。従来どおりの金融緩和や大型減税で対応すれば、米国との長期戦にも耐えうると過信していたのでしょう。

しかし、それが考え違いであると認識している今となっては、
米国と世界の覇権を争う以前に共産党が国内で支持を失ってしまうリスクを強く懸念しているというわけです。

 中国側は、交渉継続を期して劉鶴副首相をワシントンの会議に送ったのですが、習近平の国内での立場擁護優先で、米国が主張する約束違反に至ったのですね。
 米関税上げ、中国は協議継続に意欲 弱腰批判は警戒 :日本経済新聞

 中国が合意を覆したとされる項目は、「強制的技術移転」と「貿易歪曲的な産業補助金」。
 それを米国の意向だからといって、習氏が規制を認めると、地方政府からの突き上げをくらう可能性が高いため、絶対に認められないのだと、高橋氏。
 
【日本の解き方】米中貿易戦争、中国が譲歩できないワケ 長期化で体制崩壊の恐れも - zakzak 2019.5.18

 米中貿易戦争では、中国側が知的財産の保護などをめぐり、合意を覆したと指摘されている。習近平政権側が譲歩できない背景はなにか。米国との交渉で今後、どこまで譲歩することがありうるのか。

 
結論からいえば、当分の間、米中間で譲歩することはなかなか考えにくい
 本コラムで繰り返してきたが、米中貿易戦争は貿易赤字減らしという単なる経済問題ではなく、
背景には米国が軍事覇権のために技術優位を維持しようとする戦略がある

 
米国が問題視している中国の行為とは、その国家体制に由来するもので、(1)知的財産の収奪(2)強制的技術移転(3)貿易歪曲(わいきょく)的な産業補助金(4)国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行-を指す。
 これらは、米交渉担当者がこれまで対中戦略として語ってきたもので、昨年9月の日米共同声明にも、中国とは名指しされていないが盛り込まれている。
 
こうした米国のスタンスは、議会では与野党を問わず支持されている。それもあり、トランプ大統領は、自身の再選戦略でも中国が有効なカードだと考えているのだろう。

 米大統領選は来年11月だ。中国への厳しい姿勢はトランプ氏に有利に働いている。支持率は、大統領就任後下がっておらず、現時点で45%程度と、歴代大統領の再選時に比べても遜色のない高い数字を維持しているからだ。

 今回、強制的技術移転と貿易歪曲的な産業補助金について、米国は中国に法制化を持ちかけたが、土壇場で中国が拒否したようだ。
 中国が拒否したことについて、面子(メンツ)を重視したという説明もあるが、それだけではない。
これを拒否しなければ、社会主義体制が維持できないという側面も大きいはずだ。1党独裁体制の下で進められた政策を放棄することは、体制否定にもなりかねない

 これは、中国国内の政治構造にも大きく関係する。中国は広大な国土なので、中央と地方の関係は微妙である。
 
これまで経済発展のためには、ある程度、地方分権を容認せざるを得なかったが、習近平体制になってから、逆に中央集権化の流れを加速している。

 
強制的技術移転と貿易歪曲的な産業補助金については、中央政府とともに地方政府もこれまで推進してきた。それを米国の意向だからといって、習氏が規制を認めると、地方政府からの突き上げをくらう可能性が高いため、絶対に認められないはずだ。

 一方で、今回の中国側の報復関税も予定どおりのものだったが、米中の貿易の格差や、中国の対米輸出が代替可能品ばかりであることを考えると、
この報復合戦は明らかに中国に分が悪い。それでも、中国は「wait and see(当面注視)」と言わざるを得ない。

 
このままの状態が続けば、トランプ氏の行動をきっかけに、中国の体制崩壊まで持っていくようなこともありうるかもしれない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

 米国が問題視している中国の行為とは、その国家体制に由来するもので、(1)知的財産の収奪(2)強制的技術移転(3)貿易歪曲(わいきょく)的な産業補助金(4)国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行だと。
 そして、今回、「強制的技術移転」と「貿易歪曲的な産業補助金」について、米国は中国に法制化を持ちかけたが、土壇場で中国が拒否したのでした。

 こうした米国のスタンスは、議会では与野党を問わず支持されている。従って、中国への厳しい姿勢はトランプ大統領の大統領選にも有利なのだと高橋氏。

 中国が拒否したことについて、面子を重視したという説明もあるが、それだけではない。これを拒否しなければ、社会主義体制が維持できないという側面も大きいはずだと。
 「強制的技術移転」と「貿易歪曲的な産業補助金」については、中央政府とともに地方政府もこれまで推進してきた。それを米国の意向だからといって、習氏が規制を認めると、地方政府からの突き上げをくらう可能性が高いため、絶対に認められないはずだと。
 
 この報復合戦は明らかに中国に分が悪い。このままの状態が続けば、トランプ氏の行動をきっかけに、中国の体制崩壊まで持っていくようなこともありうるかもしれないと高橋氏。

 米国の貿易赤字削減で口火を切った米中貿易戦争が、米中の覇権争いに発展「新冷戦時代」に突入と、長期化することは衆知の事実化してきています。

 日本はどう対応するのか。国会は政局に明け暮れている場合ではありません。
 米国の様に、与野党が一丸となって政府と共に難局に対処すべきです。火力こそ使用されていませんが、「新冷戦時代」の戦時中なのですから。



 # 冒頭の画像は、ワシントンで貿易交渉に臨んだ中国の劉鶴副首相
  



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