遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

トランプ政権 シリア空軍基地攻撃

2017-04-07 23:58:58 | 米国 全般
 トランプ大統領が、習近平との対談直前に、シリア空軍基地を攻撃しました。
 シリア軍の化学兵器使用に対し、言行不一致のオバマ大統領の姿勢が米国の威信を失わせ、中東てでの自称イスラム国の台頭を許し、ウクライナでのロシアや、南シナ海、東シナ海での中国の力による現状変更を助長させる、世界の混乱を産んだと言えます。
 誕生したトランプ新大統領を試すかのような、シリアでの化学兵器使用。オバマ政権との違いを強調し政権の座についたトランプ大統領は、シリア軍が使用したとして空軍基地へのトマホーク攻撃を断行しました。
 この行動に対し、トランプ大統領の狙いや影響について、諸説が湧き始めていますね。
 注目点は、反オバマで打ち上げた政策では、TPP離脱以外の、メキシコ国境の壁や、オバマケア撤廃の不発。財政出動の不透明さなどでの「トランプ相場」の行き詰まり状況と、北の暴発が続く中での習近平との会談の二つに絞っていいでしょう。
 勿論、大義は、化学兵器の使用は一線を越えるもので、断固容認できないということです。
 

シリア攻撃、処方箋なき劇薬  コメンテーター 秋田浩之 :日本経済新聞 2017/4/7 日本経済新聞 電子版

 乱気流がやってきたように、世界の情勢が急に緊迫してきた。シリアを攻撃したトランプ大統領には、弱腰といわれたオバマ前政権との違いを印象づける思惑
がある。
 だが、攻撃という劇薬も、きちんとした処方箋があってこそ、初めて効果が出る。それがないまま武力を振るえば、危機を抑えるどころか、かえって広がりかねない。

 バージニア州、ポトマック川のほとりにたたずむ国防総省。先月下旬に訪れると、どこかしら閑散として、活気がないように感じた。
 事情を聞いて、理由がわかった。政治任用の主要な幹部約50人のうち、マティス国防長官以外のほとんどが空席なのだ。任命が遅れ、格下の職員が代行し、何とか政策を切り盛りしている。
 外交を仕切る国務省はもっと大変だ。大半の政治任用ポストが空席なうえ、トランプ氏が予算の約3割減を決め、士気が下がっているという。
 「日々の政策をつなぐので精いっぱい。大戦略を描き、動かせる状況にはない」。内情に通じた複数の共和党関係者はこう打ち明ける。

 こんな体制で強行された
今回の攻撃は、長期の中東戦略を描き、満を持した末の行動のようにはみえない。


 オバマ氏とちがい、自分は攻撃をためらわない――。世界にそう思わせ、
軍拡に走る中国をけん制し、北朝鮮にも核武装をあきらめさせる。強気な交渉術で財をなした、トランプ氏ならではの発想がうかがえる。
 この効果がゼロだとは思わない。
オバマ前政権の足元をみて強硬に振る舞ってきた中ロなどは「トランプ氏を怒らせるのは得策ではないと思い、一時的に静かになるかもしれない」
(日本の安保当局者)。
 
それでも、今回の行動は性急すぎると言わざるを得ない正当な攻撃であることを証明するための事前の努力が、あまりにも足りない
からだ。
 シリアが化学兵器を使ったのなら、国際法違反であり、人道的にも許されない。ならば、国連安全保障理事会に証拠を示し、少なくとも議論を交わすべきだった。
 米国は国連の十分なお墨付きを得ず、2003年にイラクを攻撃し、同盟国に分断を生んだ。この教訓を生かすべきだ。

 
この攻撃はさまざまな副作用も生みそうだ。まず考えられるのが、中ロによる一層の接近
だ。両国には根深い不信感が横たわるが、米国に対抗するため、静かに枢軸を強めるだろう。
 すでに両国の武器売却や共同演習は加速している。「国連安全保障理事会での発言や投票でも、中国がロシアと同調するケースがふえている」(国連関係者)
 
北朝鮮の出方はさらに読みづらい。シリアのアサド政権やフセイン・旧イラク政権は核を持たないから攻撃された……。北朝鮮がこう結論づけ、むしろ核ミサイルの完成を急ぐかもしれない。

 こうした問題を精査し、トランプ氏に進言できる側近は少ないティラーソン国務長官や、最側近の娘婿であるクシュナー上級顧問はビジネス界出身だ。2人を知る元米高官は「実務や交渉力は優れているが、外交経験はない。危機への対応力は未知数
」と語る。

 
オバマ前政権は対話ばかりで行動せず、南シナ海や朝鮮半島の危機を深めてしまった
。安倍晋三首相が米国の決意を支持したのは、そんな経緯も踏まえてのことだろう。
 だが、
これからは本当に刃物を振り回しかねない米国に、どう向き合い、連携していくのかが課題
になる。その難しさとリスクは、オバマ前政権当時の比ではない。
  (コメンテーター 秋田浩之)

 狙いについて、弱腰といわれたオバマ前政権との違いを印象づける思惑と、習近平との会談を控え、北朝鮮の暴走を中国が制御できないのなら米国が動くと言っていることが、口先だけのオバマ時代とは違うことを示し牽制したいという二つに絞れるところは秋田氏の指摘に賛同します。
 各局のワイドショーでは、バノン氏のSNC主席戦略官解任とも関連づけた、政権内部の路線争い話もなされていますが、遊爺は本件については上記の二つに絞ることに賛成です。

 影響については、当初は親露と言われていたトランプ政権が、事前に通知したとは言え、ラブロフ外相の反発姿勢に見られるように、対露関係で対立することになることです。自称イスラム国撲滅への協調も壊れますね。
 ただ、対露関係はオバマ時代へ戻る話しですね。しかし、ロシアと中国の両方と対立する構図となり、中露の接近を促進してしまうことになります。

 注目は、対習近平との会談。
 外遊途上で、会談日程の初日に浴びたジャブと言うよりストレートパンチに近い先制攻撃。会見での習近平の様子を、遠藤誉筑波大名誉教授は、トランプ大統領に阿た姿勢と評しておられましたが、終始両ひざに手を置いた神妙な姿勢(冒頭の画像では笑顔ですが)が、観慣れない態度でした。
 米国本土に届く、核搭載のICBM完成前に開発を止めさせたい北朝鮮。あらゆる手段を検討のテーブルに挙げていることが、オバマ時代の様な、口先だけではないことを示し牽制したのですね。

 北への影響について、核を持たないから攻撃されたと考える北が、むしろ核ミサイルの完成を急ぐかもしれないとの秋田氏の指摘。
 習近平との会談は、もう 1日あり、そちらが本題の会談日。対北対応がどこまで話されるのか、貿易不均衡改善要求や習近平のお土産はどうなのか、南シナ海の仲裁裁判所の裁定無視に触れるのか、AIIBへの米国参加はあるのか、先制パンチを浴びた習近平の対応はどうなのか、注目されますね。



 # 冒頭の画像は、初日の会談に臨んだトランプ大統領と習近平主席
  (各局のワイドショーでは神妙な表情のものが使われていましたが。。)




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