遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

「命のビザ」 杉原千畝は知っていますが、樋口季一郎中将は知りませんでした

2017-09-26 23:58:58 | my notice
 「命のビザ」で多くのユダヤ人を救ったリトアニア領事代理の杉原千畝については、多くの人々が知っています。しかし、リトアニアの杉原は知っていても、もう一人「命のビザ」で数千人のユダヤ難民を救った、樋口季一郎中将のことは、あまり知られていません。遊爺も、この袴田教授の記事で初めて知りました。
 われわれ日本人がリアルな現実認識を欠き、パターン化した歴史認識のままで、複雑な戦争や平和問題を論じ安保政策を策定するのは危険だと、袴田教授が歴史認識のパターン化について警鐘を鳴らしておられます。
 

樋口中将はなぜ忘却されたのか 新潟県立大学教授・袴田茂樹 (9/26 産経 【正論】)

 
9月初め、露ハバロフスクに近いユダヤ自治州ビロビジャンのユダヤ教会を訪問した。スターリン時代にユダヤ移住地に指定された自治州は、実際は辺鄙(へんぴ)な「幽閉地」で、移住したユダヤ人も殆(ほとん)ど逃げ、人口の2%以下だ。
 教会内展示室には、1940年に
「命のビザ」で多くのユダヤ人を救ったリトアニア領事代理の杉原千畝
の写真もあった。

≪パターン化された歴史認識≫
 教会の案内人に、では
杉原以外にも、38年にソ連・満州国境で、ナチスの弾圧を逃れソ連を通過した数千人のユダヤ難民を救った日本人
がいるのをご存じかと尋ねたら、全く知らないと言う。
 
樋口季一郎中将(1888~1970年)のオトポール事件のことで、彼の名はユダヤ民族に貢献した人を記したエルサレムの「ゴールデンブック」にも載っている。わが国でも、樋口を知っている人は少ない。露でも日本でも政治により戦前の歴史には蓋がされて、国民にリアルな現実認識がない
からだ。このような状況下で、今日また深刻化した戦争や平和の問題が論じられている。

 近年、冷戦期に二大陣営の枠組みに抑えられていた民族、宗教、国家などの諸問題が、国際政治の表舞台に躍り出て、混乱と激動の時代となり、世界の平和と安定の問題が喫緊の課題となっている。

 われわれ日本人がリアルな
現実認識を欠き、パターン化した歴史認識のままで、複雑な戦争や平和問題を論じ安保政策を策定するのは危険である。一人の日本人による満州でのユダヤ難民救済事件を例に、歴史認識のパターン化
について少し考えてみたい。

 樋口は陸軍幼年学校、陸軍士官学校、陸大卒の超エリートだ。戦前の陸大は東京帝大より難関とされた。1938年のユダヤ難民事件のころ彼は諜報分野に長(た)けた陸軍少将で、事実上、日本の植民地だった満州のハルビン特務機関長であった。同機関は対ソ諜報の総元締で、樋口は日本陸軍きってのロシア通だった。

≪捨て身でユダヤ難民を助けた≫
 38年3月10日、彼は満州のユダヤ組織代表、カウフマンから緊急依頼を受けた。ソ満国境のオトポールにたどり着いた多数のユダヤ人が、
満州への国境通過許可がもらえず、酷寒の中で餓死者、凍死者も出る事態
になっており、すぐにも彼らをハルビンに通してほしいとの必死の依頼だ。

 当時、日本はナチスドイツと防共協定を結んでおり、ナチスに追われたユダヤ人を満州に受け入れることは、日本の外務省、陸軍省、満州の関東軍にも反対論が強かった。しかし緊急の
人道問題だと理解した樋口は馘(くび)を覚悟で、松岡洋右満鉄総裁に直談判し、2日後にはユダヤ難民を乗せた特別列車がハルビンに到着
した。

 案の定、独のリッベントロップ外相から外務省にこの件に関して強い抗議が来た。樋口の独断行為を問題にした関東軍の東条英機参謀長は、新京の軍司令部に樋口を呼び出した。しかし強い決意の樋口は、軍の「五族協和」「八紘一宇」の理念を逆手にとり、日露戦争時のユダヤ人の対日支援に対する明治天皇の感謝の言葉なども引き、ナチスのユダヤ人弾圧に追随するのはナンセンスだと、人道的対応の正しさを強く主張した。

 樋口の捨て身の強い信念と人物を見込んだ東条は、彼の行動を不問に付すことに決めた。樋口は関東軍や東条の独断専行には批判的だったが、後に「東条は頑固者だが、筋さえ
通せば話は分かる」とも述べている。

≪リアルな理解が国際政治の基礎≫
 樋口がユダヤ人にここまで協力したのは、若い頃ポーランドに駐在武官として赴任していたとき、ユダヤ人たちと親交を結び、また彼らに助けられたから、さらに37年に独に短期駐在して、ナチスの反ユダヤ主義に強い疑念を抱いていたから、といわれる。

 
戦後、ソ連極東軍は米占領下の札幌にいた樋口を戦犯としてソ連に引き渡すよう要求
した。その理由は、樋口がハルビン特務機関長だっただけでなく、敗戦時には札幌の北部司令官であり、樺太や千島列島最北の占守(しゅむしゅ)島でのソ連軍との戦闘(占守島でソ連軍は苦戦した)の総司令官だったからだ。
 しかし、
マッカーサー総司令部は樋口の引き渡しを拒否した。後で判明したことだが、ニューヨークに総本部を置く世界ユダヤ協会が、大恩人の樋口を守るために米国防総省を動かした
のである。

 
私たちは、同じように日独関係の政局に抗して数千人のユダヤ人を救い、映画にもなった外交官の杉原は知っていても軍人の樋口についてはあまり知らない。それは「将軍=軍国主義=反人道主義」「諜報機関=悪」といった戦後パターン化した認識があるから
ではないか。ビロビジャンのユダヤ教会も、遠いリトアニアの杉原は知っていても隣の満州の樋口は知らない。露でも「軍国主義の戦犯」は歴史から抹消されたからだ。

 私は、
リアルな歴史認識こそが国際政治や安保政策の基礎だと思っているので、自身も長年知らなかった事実を紹介した。(はかまだ しげき)

 ナチスに追われソ満国境のオトポールにたどり着いた多数のユダヤ人。
 ナチスドイツと防共協定を結んでいた日本の外務省、陸軍省、満州の関東軍は、ユダヤ人を満州に受け入れることに反対論が強かったのですが、人道問題だと理解した樋口は馘を覚悟で、松岡洋右満鉄総裁に直談判し、2日後にはユダヤ難民を乗せた特別列車をハルビンに到着させたのでした。
 独のリッベントロップ外相から外務省にこの件に関して強い抗議が来たのですが、樋口の捨て身の強い信念と人物を見込んだ東条は、彼の行動を不問に付したのだそうです。
 敗戦時には札幌の北部司令官で、ソ連軍との戦闘でソ連軍に苦戦を強いた総司令官だった樋口を、ソ連は戦犯として引き渡す様要求したのですが、マッカーサー総司令部は樋口の引き渡しを拒否したのだそうです。世界ユダヤ協会が、大恩人の樋口を守るために米国防総省を動かしたのだと。
 樋口の名はユダヤ民族に貢献した人を記したエルサレムの「ゴールデンブック」にも載っているのだそうです。

 戦前の歴史には蓋がされて、国民にリアルな現実認識がない日本やロシアでは、このオトポール事件のことを知る人は少ない。
 「将軍=軍国主義=反人道主義」「諜報機関=悪」といった戦後パターン化した歴史認識が定着し、外交官の杉原は知っていても軍人の樋口について知らされる機会が稀なのですね。
 世界の警察の米国が、オバマ政権以来内向きになってきたせいか、ロシアや中国が力による現状変更を推進しているせいなのか、自称イスラム国に象徴されるテロ活動が広まっているせいか、かつての世界大戦前夜の状況に近づきつつあると言われる世界情勢。
 戦後、パターン化して、蓋をされ真実が隠され現実認識を欠いた歴史認識で、複雑な戦争や平和問題を論じ安保政策を策定するのは危険である。リアルな歴史認識こそが国際政治や安保政策の基礎だと、袴田教授は主張しておられるのです。

 止まらない北朝鮮の暴走。南シナ海や東シナ海で国際法を無視して覇権を拡大する中国。ウクライナで力による侵攻をしているロシア。北方領土を不法占拠したままのロシア。竹島の不法占拠を続ける韓国。
 日本を取り巻く環境は、戦争直後と変わらないというより、一段と厳しさを増しています。戦争の歴史に蓋をして知らされず、パターン化した歴史認識が定着している日本。米国の核の傘におんぶにだっこで護られ、平和ボケ化している日本。
 蓋をされパターン化された無知な認識から解放され、リアルな現実認識の普及が進み、国民が良くも悪くも真実の認識を持ち、激しく流動する国際情勢への対応が出来る様になるには、どんな方策が必要なのか。
 切迫する北朝鮮情勢に、ただ「話し合い」との机上論だけで、過去の話し合いの結果は無視する平和ボケ(この件は蓋をして隠されてはいないので、偏向メディアに騙されていると言う、更に始末が悪い問題ですが。)でよいのでしょうか。
 「報道しない自由」で真実が隠されている「モリ・カケ」問題にいまだに固執し、あれだけ倒閣に励んでいた偏向メディアとその下請けの野党。解散となったら何故今解散かと狼狽して騒ぐだけ。
 とても政権交代が担える政策力があるとは思えませんね。

 産経の石橋政治部長は、今解散するのは、北朝鮮情勢に備えるためと解説しておられます。
【主張】首相の解散表明 「北朝鮮危機」最大争点に - 産経ニュース

 2017/9/26(火)ザ・ボイス 宮崎哲弥×石橋文登 「安倍総理 28日に衆議院を解散することを表明 」「北朝鮮外相 トランプ大統領の発言を『宣戦布告』と批判」など



# 冒頭の画像は、樋口季一郎中将




  ヒイラギナンテンの紅葉


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写真素材のピクスタ


Fotolia


ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)






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