遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

反中の実力行使で立ち向かえるベトナム アキレス腱は経済が中国依存

2014-05-19 23:48:18 | EEZ 全般

 中国によるベトナムのEEZ内での石油掘削開始に対し、圧倒的な戦力不足にも関わらず戦いを挑み、多数の公船に取り囲まれ、放水を浴びたり衝突されても修理して直ぐに再出港し抵抗するベトナム。フィリピンの公船も中国の公船と対峙し抵抗していましたが、このベトナムの強い抵抗は、今の大国となった中国に立ち向かう世界で一番の国だと感心しながらニュースを観ています。
 ベトナムが何故中国に対して善戦するのかは、中越戦争での勝利とその後の戦争での犠牲への強い対中抵抗意識だと言われている様です。

 
中越戦争 - Wikipedia

 フランスや米国と戦い勝利してきたベトナムの戦術や、経験豊富な軍隊に対し、兵員こそは圧倒的な数ながらも旧式戦備で強引に攻め込んで大きな損耗を生じて撤退した中国(勝利と自称)。中共はこの経験から、今日の軍備増強に走ったといわれていますが、その戦いのトラウマがあることがベトナムの強さの一因。
 もうひとつは、1988年3月のスプラトリー諸島海戦での多数の犠牲者が生じたことによる遺恨です。
 
スプラトリー諸島海戦 - Wikipedia

 そして、今回の中国の侵略行為に俄然立ち向かって、国民も鼓舞しデモを黙認したのですが、デモの暴徒の暴走が拡大してしまいました。
 そして、ベトナムのもっとも泣き所は、中国に立ち向かっても、ベトナム経済が死活的に中国に依存度が高いというところです。中国は、ここを突いて攻めてきています。
 

「反中一辺倒」を修正 ベトナム 経済は依存対応苦慮 (5/18 読売朝刊)

 ベトナム政府は18日、中国の南シナ海での石油掘削に端を発した反中デモの強制排除に転じた。だが、中国との対立は先鋭化しており、ベトナム市民には中国への不満がくすぶったままだ。政府は、領土問題での中国への対抗姿勢と、国内の経済・社会の安定維持で難しいかじ取りを迫られている。
 (ハノイ池田慶太)

■高まる緊張
 「一斉デモ」が呼びかけられた18日朝。インターネット上で集合場所とされた中国大使館前の「レーニン公園」は、バリケードで完全封鎖されていた。地元市民によると、一夜で設置された。100人超の公安関係者が取り囲み、市民に無言の圧力を向けていた。
 警官らは、外国メディアの取材で中国批判を始めた市民を一人ずつ退去させ、20分後には一帯は通行禁止に。1週間前のデモでは、公園に約1000人が集まったが、当局は監視はしても排除はしなかった。一変した光景に、前回も参加した男性(42)は「
中国の違法行為を許すわけにいかないのに、政府は何を守ろうとしているのか
」と息を押し殺して語った。

■海外投資も
 南部ホーチミンでも抗議活動は起きたが、治安当局がすぐに解散させた。政府がこれまで黙認した
デモの規制強化に転じたのは、ベトナム経済が最大の貿易相手国である中国で成り立っているため
だ。
 ベトナムは
輸入の3割を中国に頼り、それを工業製品に加工、輸出している。市民生活を支えるガソリンは、中国に原油を輸出し、精製されたものを輸入している現状だ。対中関係の悪化はベトナム経済の死活問題となりかねず、強気一辺倒の姿勢を修正せざるを得なかった
のが実情だ。
 反中デモが直接関係のない日本や台湾の企業に危害を加えたことで、経済成長を支えた海外投資が鈍ることにも神経をとがらせている。「デモは投資イメージを大きく損なった。今後いかなる違法行為も許さない」。ベトナム外務省幹部が17日の記者会見で沈静化の意気込みを盛んにアピールしたのはそのためだ。

■批判の矛先
 ただ、軍事面で圧倒的に上回る中国に対抗するため、政府が反中デモをあえて黙認し、愛国心を高める材料に利用していた面はある。だが、今回の方針転換の背景には、デモが拡大し、批判の矛先が政府や共産党一党独裁体制に向かった場合、事態が収拾不可能に陥りかねないとの恐れがあったとの見方も強い。
 ベトナム政府は今後、国内で高まる中国への不満を抑えつつ、南シナ海の領有権問題解決を目指さざるを得ず、外交筋は「ベトナムは難しい手綱さばきが求められる」と指摘している。

中国、交流計画を停止
 【北京=竹内誠一郎】中国外務省の洪嘉・副報道局長は18日、ベトナム国内での反中デモが「中越の交流・協力の雰囲気と条件を壊した」として、双方の交流に関する一部計画を暫定的に停止するとの声明を発表した。情勢を注視しつつ、「さらに一歩進んだ措置を取ることも検討する」としている。貿易など経済分野を含むとみられる交流計画の停止を示すことで、ベトナム政府に圧力をかける狙いだ。
 洪氏はまた、18日から、中国人のベトナム旅行に関する危険情報のレベルを「渡航延期」に引き上げたことを明らかにした。

退避支援進める
 【広州=比嘉清太】中国政府はベトナムの反中デモを受け、チャーター機や船舶による自国民の退避を進める一方、国内での反越デモ発生を警戒している。
 公安当局は18日、北京や広州などのベトナム公館前に公安車両を配し、警備を強化した。反越感情が高まり、ネットでデモ情報が流れたためとみられる。
反越デモに乗じ、中国政府への不満の意思表示を呼びかける
ものもあり、神経をとがらせている模様だ。
 ネット上では、広西チワン族自治区などの中越国境地帯に、戦車や装甲車などの中国軍部隊が集結中との情報が、写真入りで流れている。香港の人権団体は、国境地帯で中国軍が4段階ある警戒態勢のうち、下から2番目の「3級戦闘準備態勢」に入ったと伝えたが、中国軍は否定している。


 工業製品の輸出で、中国からの輸入部品への依存度が高い。ガソリンは、一旦中国に輸出して、中国で精製後輸入しているといった中国依存度の高さで、対中関係の悪化はベトナム経済の死活問題となりかねないと言うのですね。
 
 歴史的に中国に対し危機感を持つ国民と国家でありながら、死活的に中国への貿易依存度が高い構造。これまでも、中国の南シナ海での覇権拡大に、ASEAN諸国や米国などを巻き込んで対抗しながら、政経分離で経済では中国との関係を保つ綱渡りの関係をつづけてきました。
 がそれは、中国の覇権拡大のレベルに準備途上による自重もあることで成り立ってきましたが、今回の赤裸々な侵略は、国益と国家の主権が大きく損なわれるレベルとなり、政経分離の泣き所を突かれてしまいました。
 
 記事が指摘する通り、国内で高まる不安と、中国依存度の高い国内経済成長と、国益・国家の主権とのバランスという難しい判断を迫られることになったベトナム政府の舵取りが注目されます。
 ウクライナへのロシアの侵略で、エネルギー安全保障面から、脱ロシア依存を加速させる欧州各国と同様の、脱中国依存への政策転換が可能なのか、注目されます。中国が警戒するTPPに参加しているベトナム。中国が主導をもくろむRCEPもありますが、ベトナムが提唱する多国間の安全保障交渉同様、多国間の経済連携に転換促進することが答えの様に思いますがどうでしょう。
 それはまた、ベトナムだけではなく、中国の覇権拡大に曝されているフィリピン他のASEAN諸国にも、日本にも共通していえる話でしょう。



 # 冒頭の画像は、ホーチミンで治安当局ともみ合いながら抗議するデモ参加者




  この花の名前は、オオユウガギク


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