
宮崎県の口蹄疫、終息にはまだ至らず、口蹄疫の根の深さや並々ならぬ強力な感染力と、その対応策の未整備に、日々認識を新たにしています。
なかでも、民間で育成されていた種牛の扱いは、国と県と育成された農家(三共牧場の薦田氏)の、口蹄疫による被害拡散阻止と、県や国の畜産業の品質維持との狭間の考えの交錯に、いろいろ考えさせていただきました。
守れず残念と薦田さん、牛のお守り一緒に埋却へ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
薦田さんという方が、もちろん今でもどのような方かを遊爺がどれだけ存じ上げているかは、ほんの一部に過ぎないとは当然のことですが、最初に未だお名前なども出ず、一軒の農家が殺処分を拒んでいる程度しか報道がなかった頃は、辛いことなのでそういう農家も出てきてもやむをえないよよなぁ...ぐらいの認識でした。
それが、時間とともに取材が進んで、約200頭の牛は殺処分に応じていて、貴重な種牛6頭の話で、民間では唯一の種牛育成をされている農家で、超例外の牛なのだとの情報に接し、そのころからは、牧場名やお名前も報道で公開されるようになって来ました。
薦田さんの真意は、個人の利益ではなく、県の畜産の宝としての種牛を残し、畜産業を守りたい。残すためには無償で県に寄付するので、多くの農家のお役にたててほしい。6頭を殺処分にするのなら、自分も死ぬと身を挺しての、畜産業の打撃削減に貢献しようとの行動なのです。
自分の地位や、自党の政局を優先する政治家上層の輩とは、志が逆転しています。
それに接した東国原知事は、殺処分勧告→保護→殺処分へと発言が変遷し、国の原則論との対立が注目されました。多くのメディアが注目しましたが、多くの解説者が両者の是非や、どちらが正しいのかはコメントできないでいました。
遊爺も、早い時期に蔓延を防ぐことにある程度の効果をあげている韓国のとにかく強制殺処分ありきの方式に倣う政府の言い分にも、農家の立場、県の産業を想う知事の言い分も両方理解でき、貴重な種牛の扱いへの備えの必要性を知りました。
県の貴重な種牛の多くは殺処分され、緊急避難した6頭中 1頭が感染しながらも、同じ厩舎にいた5頭は殺処分を免れるという、杓子定規なお上には珍しい大英断がありました。また、日本ではワクチンは使用しないのが原則であった中、感染の勢いのすざましさに外堀構築のためのワクチン導入と、殺処分実施の導入もなされました。
未経験の容易ならざる情勢に対処するのですから、未熟で役に立たない法律は、臨機応変に改善や補足立法し弾力性のある緊急対応をすべきであり、賛同していました。
公共の(=県、ひいては日本全体の)利益のためを目的とする県の種牛、それも再現するには5年、10年の時間を要する秀逸な牛ということでの例外判断には、政府も政治主導で出来るのだと少し見直していました。
ところが、今回の民間種牛に関しては、殺処分を代執行まで持ち出しての強硬な態度でした。民間の種牛が他にも多くの農家で扱われているのなら、他の農家との公平性に欠けることになり例外を認めると示しがつかなくなるとの政府見解は理解できますが、民間で種牛を育てているのは、三共牧場の薦田さんしかないとのことで、まったく単発の特異なケースなのですから、政府の言い分は当てはまらないともいえます。
東国原知事と薦田さんは、会談を重ね、薦田さんのみんなのために役立てたいとのご意思を前面に、県への無償寄付での延命に東国原知事も方針転換し国に要望を出す事に変わりました。
読売新聞は社説で知事の変遷を取り上げました。
種牛殺処分 一貫性欠いた宮崎県の対応 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
遊爺は、民間といえども他には例をみない唯一の種牛育成なので、県の種牛と同等に国の抗体検査を実施し、超法規の特例扱いは出来ないのかと願っていました。
また、県知事として地元農家や産業の早期復興を目指さねばならない立場から、延命を提案されることには、十分理解できることでした。
しかし最後は、日本国のためとの政府の方針や、近所一帯の制限区域指定の非解除による影響などから、薦田さんは知事との会談を経て、殺処分に応じる決断をされました。ご自分の、種牛への愛着や県の畜産への貢献に替え、広く、県全体の産業、日本国全体の畜産業のためというのが、決断の理由です。
滅私奉公。日本国を混乱させ、世界から取り残される道をまっしぐらに推進している政府や与党の先生方に、爪の垢を煎じて飲んでいただかねばなりませんね。
この間の、東国原知事側の経緯や考えは、知事が随時twitterで流しておられましたが、以下にさらに突っ込んで書かれています。
読売新聞社説について|東国原英夫オフィシャルブログ「そのまんま日記」by Ameba
薦田さん、東国原知事、山田大臣の三者のなかでは、薦田さんが一番国や農家のことを優先して行動しておられたと受け取りました。
東国原知事は、農家の立場と県民目線で、丁寧に薦田さんと話し合い、説得もし、民主主義の原点の行動をされたし、ブレと見える変化は、不備な制度の中を切り開いて進むときに、必要な道程だったと考えます。
あと、ニュースで視て関心したのですが、6頭の搬出に早々に訪問立会いし、薦田さんに頭を下げた篠原副大臣にも、民主党も悪いやつばかりではないのかと、今後の行動に注目してみたいと感じました。
薦田さんは、今後については「体力的に種牛を育てることはできない。牛づくりのノウハウを長男や若い人に伝えたい」と語っておられるそうですが、種牛の県有化は出来ませんでしたが、ノウハウが県有化され継承される様、東国原知事の行動をお願いしたいです。
いずれにしても、一日も早く終息宣言が聞かれる日が来ることを願っています。
民間種牛6頭の殺処分着手、農水副大臣が謝罪 : 口蹄疫 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
「食欲ない」「動悸する」口蹄疫農家の心労深刻 : 口蹄疫 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

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薦田さんは立派に闘われました。
心より心よりそう思います。
薦田さんという方は、知れば知るほどお持ちの情熱の大きさに感動します。
薦田さんの情熱と技術が、県内外に広く伝承されることと、そういった知的財産が公的な体制(全国 or 県の業界の共有財産化)できちんと維持発展されるようになることを願っています。