モスクワ市(人口1200万人)の新型コロナウイルス新規感染者数は2020年12月24日の8203人をピークに減少を続け、2021年4月18日には2252人までに減った。
しかし、UMJロシアファンド・ジェネラル・パートナーの大坪氏が、5月下旬~6月初にかけて、モスクワを訪問した際には、路上を歩いている人でマスクを着用している人は皆無に等しく、公共交通機関でも、車内で着用している人は2割程度。飲食店、商店の営業は平常時とほぼ変わらず、人気店では予約が取れないほど。
なので案の定、学校の卒業シーズン、夏休みを迎える5月末から6月初にかけて、モスクワの新規感染者数は急増していると大坪氏。
ロシア人が新型コロナを甘く見ているのは、国を信頼しないと言いつつも、いざとなれば国が何とかしてくれるという安心感があるかもしれないと。
6月18日の新規感染者数は9,056人、わずか5日間で1.5倍となった。もちろん、ロシア全体でも新規感染者数は1万7262人と同34%の急増。
これに対しモスクワ市当局は感染拡大を阻止すべく、市内の企業に対して6月15~21日までを有給在宅勤務とすること、さらにサービス業においては社員の60%がワクチン接種を受けることを命じた。
また新型コロナ専用病床数を1.7万床から2.4万床に増やすことも発表。
ロシアらしい荒療治ではあるが、それを可能とするPCR検査とワクチン接種(無料かついつでも可能)、緊急医療対応のキャパシティがなせる業ともいえると大坪氏。
ロシア版ダボス会議、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(SPIEF)が今月オフラインで開催。席上、プーチン大統領はロシアは新型コロナ禍を克服しつつあると高らかに宣言したのであるが、そのわずか数週間後には予期せぬ第3波の感染拡大に見舞われてしまったと。
もっとも、プーチン大統領にとって最大の強敵は「インフレ」だと大坪氏。
プーチン大統領も同じ演説で「ロシアにとって喫緊の課題は雇用とインフレである」と指摘していると。
ロシアのインフレ、すなわち物価上昇の主因は食料価格なのだそうです。
食料価格の値上がりは、ロシアでも低所得層の生活をストレートに圧迫する。ロシア中銀の調査によれば、2021年4月時点で最低所得層に対するインフレ率は30%、平均所得層に対しても14.5%。
プーチン大統領にとって、インフレ抑圧は何をさておき最優先の政策課題。ロシア政府は積極的なインフレ対策に乗り出している。
ところが、大手農業会社や大手小売り会社に対する価格統制という、反市場経済的な手法がその中心。
一方、プーチン大統領が政府以上に信頼を寄せていると思われるのがロシア中央銀行のナビウリナ総裁。今回のインフレ懸念再燃に対して、矢継ぎ早に政策金利の引上げを実施。
また、ロシア政府の価格統制に対しては市場原理を歪め、長期的には価格の高止まりを招くとして反対を表明。
原理原則を主張するナビウリナ総裁は称賛に値すると大坪氏。
今年9月に下院選挙があるのだそうですか、有権者にとってはコロナ対策、対米関係、ましてやナワリヌイ氏の処遇よりも、足許の物価上昇抑制こそ候補者選びの大きなカギとなると。
与党体制が覆る兆候は認められないとのことですが、プーチン政権にはひとつの山場とはなりますね。
# 冒頭の画像は、マスクなしの人出で混雑する屋内マーケット
この花の名前は、タツナミソウ
↓よろしかったら、お願いします。
しかし、UMJロシアファンド・ジェネラル・パートナーの大坪氏が、5月下旬~6月初にかけて、モスクワを訪問した際には、路上を歩いている人でマスクを着用している人は皆無に等しく、公共交通機関でも、車内で着用している人は2割程度。飲食店、商店の営業は平常時とほぼ変わらず、人気店では予約が取れないほど。
なので案の定、学校の卒業シーズン、夏休みを迎える5月末から6月初にかけて、モスクワの新規感染者数は急増していると大坪氏。
ロシア人が新型コロナを甘く見ているのは、国を信頼しないと言いつつも、いざとなれば国が何とかしてくれるという安心感があるかもしれないと。
ロシアに忍び寄るインフレの足音、蘇るソ連崩壊時の記憶 プーチン政権は価格統制で退治目指すが中銀は反発 | JBpress (ジェイビープレス) 2021.6.22(火) 大坪 祐介
筆者は5月下旬~6月初にかけて、1年3か月ぶりにモスクワを訪問した。
羽田発モスクワ行きの搭乗率1割程度の機内では本当にロシアに入国できるのか不安であったが、モスクワ空港では通常のパスポートコントロールの後に検疫当局の簡単なインタビューを受けただけで(出発前72時間以内のPCR検査証明書は必要)、あっけないほど簡単に入国できた。
要した時間は平常時よりも短いくらいである。それ以上に驚いたのは、モスクワの街中の様子である。
モスクワ市(人口1200万人)の新型コロナウイルス新規感染者数は2020年12月24日の8203人をピークに減少を続け、2021年4月18日には2252人までに減った。
しかし5月に入ってからはロシアの大型連休による人出の増加などもあって概ね3000人台で推移していた。
筆者が付き合いのある会社の多くは在宅勤務やマスク着用を続けていると聞いていたので、モスクワ市内もそれなりの緊張感があるかと思いきや、現実は予想を超えていた。
路上を歩いている人でマスクを着用している人は皆無に等しい。マスク着用が義務付けられている地下鉄などの公共交通機関でも、車内で着用している人は2割程度であろうか。
飲食店、商店の営業は平常時とほぼ変わらず、人気店では予約が取れないほどである。
入り口にアルコール消毒や接触確認のQRコードがあっても使う人は皆無である(ただ、ロシア人は以前から食事の前に念入りに手を洗うことを習慣とする人は多い)。
案の定、学校の卒業シーズン、夏休みを迎える5月末から6月初にかけて、モスクワの新規感染者数は急増している。
6月18日の新規感染者数は9056人、わずか5日間で1.5倍となった。もちろん、ロシア全体でも新規感染者数は1万7262人と同34%の急増。
多くはインド型変異株とみられるが、モスクワ変異株の存在を指摘する学者もいる。
これに対しモスクワ市当局は感染拡大を阻止すべく、市内の企業に対して6月15~21日までを有給在宅勤務とすること、さらにサービス業においては社員の60%がワクチン接種を受けることを命じた。
また新型コロナ専用病床数を1.7万床から2.4万床に増やすことも発表している。
ロシアらしい荒療治ではあるが、それを可能とするPCR検査とワクチン接種(無料かついつでも可能)、緊急医療対応のキャパシティがなせる業ともいえる。
ロシア人が新型コロナを甘く見ているのは、国を信頼しないと言いつつも、いざとなれば国が何とかしてくれるという安心感があるかもしれない。
■プーチンの強敵は?
さて、6月はロシアでは例年大きなビジネスイベントが開催される月である。
2020年はパンデミックで開催が見送られたロシア版ダボス会議、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(SPIEF)が今年はオフラインで開催された。
この席上、ウラジーミル・プーチン大統領はロシアは新型コロナ禍を克服しつつあると高らかに宣言したのであるが、そのわずか数週間後には予期せぬ第3波の感染拡大に見舞われている。
では新型コロナウイルスはプーチン大統領の強敵なのであろうか?
結論から申し上げると否である。筆者はプーチン大統領にとって最大の強敵は「インフレ」であると考えている。
実際、プーチン大統領も同じ演説で「ロシアにとって喫緊の課題は雇用とインフレである」と指摘している。
足許、世界の金融マーケットでもコロナパンデミック後のリスク要因としてインフレーションが注目されている。
その背景には米国を筆頭に先進国の中央銀行による超金融緩和、コロナ禍による供給網の機能不全、コロナ禍終息期待に伴うリバウンド需要などが指摘されている。
ロシアもその例外ではなく、国内物価は2020年夏からじりじりと上昇を続けている。しかし、その背景は先進国のそれとはやや趣を異にする。
ロシアのインフレ、すなわち物価上昇の主因は食料価格である。
ロシアは食料輸出大国であるにもかかわらず、国内の小麦、そば粉、ひまわり油、砂糖といった基本食料品価格が、報道によれば2倍近く高騰している。
さらにロシア人の主食であるジャガイモ、ビーツ、ニンジンや卵も同様に値上がりしている。いずれもロシア国内での自給が可能な品目である。
食料価格の値上がりは、ロシアでも低所得層の生活をストレートに圧迫する。支出に占める食料品価格の比率が高いためである。
ロシア中銀の調査によれば、2021年4月時点で最低所得層に対するインフレ率は30%、平均所得層に対しても14.5%と算出している。
筆者はロシア(1991-)の歴史はインフレとの戦いの歴史であると考えている。
1990年代のインフレは政治体制移行に伴うものであったとはいえ、経済的なインパクトは日本の終戦直後に等しく、破壊的であった。
1990年代前半のインフレ率は1000%(ピークは2500%)を超え、前年同月比11倍の物価上昇が続いていたのである。
当然、ソビエト時代のルーブル預金の価値は限りなくゼロとなった。
■プーチンを支持する国民の理由
プーチン大統領が表舞台に登場したのは2000年のことであるが、1990年代を記憶するロシア国民にとっては、2000年以降現在までのプーチンの時代がいかに安定した時代であることか、上記のグラフから明らかであろう。
6月17日にはジュネーブにおいて5年ぶりの米露首脳会談が行われた。
日本での報道では「大国としての復権を目指すロシアのプーチン大統領は…」と常套句が使われるのだが、プーチン大統領にしてみれば世界最多の核弾頭を保有していても、インフレで国家は崩壊することを目の当たりにしている。
プーチン大統領にとって、インフレ抑圧は何をさておき最優先の政策課題なのである。
こうしたプーチン大統領の意を汲んでか、ロシア政府は積極的なインフレ対策に乗り出している。
と言っても、大手農業会社や大手小売り会社に対する価格統制という、反市場経済的な手法がその中心である。
一方、プーチン大統領が政府以上に信頼を寄せていると思われるのがロシア中央銀行である。
2013年からロシア中銀を率いるナビウリナ総裁はインフレ・ファイターとして、これまでも国際金融筋から高く評価されているが、今回のインフレ懸念再燃に対しても2021年3月(+0.25%)、4月(+0.5%)、6月(+0.5%)と矢継ぎ早に政策金利の引上げを行った。
また、ロシア政府の価格統制に対しては市場原理を歪め、長期的には価格の高止まりを招くとして反対を表明している。
コロナ禍で政府と中央銀行の政策協調が図られることが多い中、原理原則を主張するナビウリナ総裁は称賛に値する。
と同時にプーチン大統領がそれを容認する(筆者が記憶する限り、プーチン大統領がロシア中銀の政策に異論を唱えたことはない)ことからも、プーチン大統領にとって「インフレ」の重みが窺い知れる。
ロシアでは2021年9月に下院議員選挙が実施される。
これまでのところ、プーチン大統領を支える与党体制が覆る兆候は認められないが、有権者にとってはコロナ対策、対米関係、ましてやナワリヌイ氏の処遇よりも、足許の物価上昇抑制こそ候補者選びの大きなカギとなる。
1990年代を知らない有権者にプーチン大統領の威光を示す絶好の機会かもしれない。
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大坪 祐介のプロフィール
ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン
UMJロシアファンド・ジェネラル・パートナー
1989年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。1997~2000年在ロシア日本大使館(モスクワ)経済部一等書記官としてロシアのマクロ経済分析、金融市場リサーチ等に従事。2003年CSKベンチャーキャピタル株式会社海外投資部長として米シリコンバレー、イスラエル、ロシア等のベンチャー投資を担当、2007年よりユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン株式会社において、UMJロシアファンドを設立・運用。
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筆者は5月下旬~6月初にかけて、1年3か月ぶりにモスクワを訪問した。
羽田発モスクワ行きの搭乗率1割程度の機内では本当にロシアに入国できるのか不安であったが、モスクワ空港では通常のパスポートコントロールの後に検疫当局の簡単なインタビューを受けただけで(出発前72時間以内のPCR検査証明書は必要)、あっけないほど簡単に入国できた。
要した時間は平常時よりも短いくらいである。それ以上に驚いたのは、モスクワの街中の様子である。
モスクワ市(人口1200万人)の新型コロナウイルス新規感染者数は2020年12月24日の8203人をピークに減少を続け、2021年4月18日には2252人までに減った。
しかし5月に入ってからはロシアの大型連休による人出の増加などもあって概ね3000人台で推移していた。
筆者が付き合いのある会社の多くは在宅勤務やマスク着用を続けていると聞いていたので、モスクワ市内もそれなりの緊張感があるかと思いきや、現実は予想を超えていた。
路上を歩いている人でマスクを着用している人は皆無に等しい。マスク着用が義務付けられている地下鉄などの公共交通機関でも、車内で着用している人は2割程度であろうか。
飲食店、商店の営業は平常時とほぼ変わらず、人気店では予約が取れないほどである。
入り口にアルコール消毒や接触確認のQRコードがあっても使う人は皆無である(ただ、ロシア人は以前から食事の前に念入りに手を洗うことを習慣とする人は多い)。
案の定、学校の卒業シーズン、夏休みを迎える5月末から6月初にかけて、モスクワの新規感染者数は急増している。
6月18日の新規感染者数は9056人、わずか5日間で1.5倍となった。もちろん、ロシア全体でも新規感染者数は1万7262人と同34%の急増。
多くはインド型変異株とみられるが、モスクワ変異株の存在を指摘する学者もいる。
これに対しモスクワ市当局は感染拡大を阻止すべく、市内の企業に対して6月15~21日までを有給在宅勤務とすること、さらにサービス業においては社員の60%がワクチン接種を受けることを命じた。
また新型コロナ専用病床数を1.7万床から2.4万床に増やすことも発表している。
ロシアらしい荒療治ではあるが、それを可能とするPCR検査とワクチン接種(無料かついつでも可能)、緊急医療対応のキャパシティがなせる業ともいえる。
ロシア人が新型コロナを甘く見ているのは、国を信頼しないと言いつつも、いざとなれば国が何とかしてくれるという安心感があるかもしれない。
■プーチンの強敵は?
さて、6月はロシアでは例年大きなビジネスイベントが開催される月である。
2020年はパンデミックで開催が見送られたロシア版ダボス会議、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(SPIEF)が今年はオフラインで開催された。
この席上、ウラジーミル・プーチン大統領はロシアは新型コロナ禍を克服しつつあると高らかに宣言したのであるが、そのわずか数週間後には予期せぬ第3波の感染拡大に見舞われている。
では新型コロナウイルスはプーチン大統領の強敵なのであろうか?
結論から申し上げると否である。筆者はプーチン大統領にとって最大の強敵は「インフレ」であると考えている。
実際、プーチン大統領も同じ演説で「ロシアにとって喫緊の課題は雇用とインフレである」と指摘している。
足許、世界の金融マーケットでもコロナパンデミック後のリスク要因としてインフレーションが注目されている。
その背景には米国を筆頭に先進国の中央銀行による超金融緩和、コロナ禍による供給網の機能不全、コロナ禍終息期待に伴うリバウンド需要などが指摘されている。
ロシアもその例外ではなく、国内物価は2020年夏からじりじりと上昇を続けている。しかし、その背景は先進国のそれとはやや趣を異にする。
ロシアのインフレ、すなわち物価上昇の主因は食料価格である。
ロシアは食料輸出大国であるにもかかわらず、国内の小麦、そば粉、ひまわり油、砂糖といった基本食料品価格が、報道によれば2倍近く高騰している。
さらにロシア人の主食であるジャガイモ、ビーツ、ニンジンや卵も同様に値上がりしている。いずれもロシア国内での自給が可能な品目である。
食料価格の値上がりは、ロシアでも低所得層の生活をストレートに圧迫する。支出に占める食料品価格の比率が高いためである。
ロシア中銀の調査によれば、2021年4月時点で最低所得層に対するインフレ率は30%、平均所得層に対しても14.5%と算出している。
筆者はロシア(1991-)の歴史はインフレとの戦いの歴史であると考えている。
1990年代のインフレは政治体制移行に伴うものであったとはいえ、経済的なインパクトは日本の終戦直後に等しく、破壊的であった。
1990年代前半のインフレ率は1000%(ピークは2500%)を超え、前年同月比11倍の物価上昇が続いていたのである。
当然、ソビエト時代のルーブル預金の価値は限りなくゼロとなった。
■プーチンを支持する国民の理由
プーチン大統領が表舞台に登場したのは2000年のことであるが、1990年代を記憶するロシア国民にとっては、2000年以降現在までのプーチンの時代がいかに安定した時代であることか、上記のグラフから明らかであろう。
6月17日にはジュネーブにおいて5年ぶりの米露首脳会談が行われた。
日本での報道では「大国としての復権を目指すロシアのプーチン大統領は…」と常套句が使われるのだが、プーチン大統領にしてみれば世界最多の核弾頭を保有していても、インフレで国家は崩壊することを目の当たりにしている。
プーチン大統領にとって、インフレ抑圧は何をさておき最優先の政策課題なのである。
こうしたプーチン大統領の意を汲んでか、ロシア政府は積極的なインフレ対策に乗り出している。
と言っても、大手農業会社や大手小売り会社に対する価格統制という、反市場経済的な手法がその中心である。
一方、プーチン大統領が政府以上に信頼を寄せていると思われるのがロシア中央銀行である。
2013年からロシア中銀を率いるナビウリナ総裁はインフレ・ファイターとして、これまでも国際金融筋から高く評価されているが、今回のインフレ懸念再燃に対しても2021年3月(+0.25%)、4月(+0.5%)、6月(+0.5%)と矢継ぎ早に政策金利の引上げを行った。
また、ロシア政府の価格統制に対しては市場原理を歪め、長期的には価格の高止まりを招くとして反対を表明している。
コロナ禍で政府と中央銀行の政策協調が図られることが多い中、原理原則を主張するナビウリナ総裁は称賛に値する。
と同時にプーチン大統領がそれを容認する(筆者が記憶する限り、プーチン大統領がロシア中銀の政策に異論を唱えたことはない)ことからも、プーチン大統領にとって「インフレ」の重みが窺い知れる。
ロシアでは2021年9月に下院議員選挙が実施される。
これまでのところ、プーチン大統領を支える与党体制が覆る兆候は認められないが、有権者にとってはコロナ対策、対米関係、ましてやナワリヌイ氏の処遇よりも、足許の物価上昇抑制こそ候補者選びの大きなカギとなる。
1990年代を知らない有権者にプーチン大統領の威光を示す絶好の機会かもしれない。
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大坪 祐介のプロフィール
ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン
UMJロシアファンド・ジェネラル・パートナー
1989年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。1997~2000年在ロシア日本大使館(モスクワ)経済部一等書記官としてロシアのマクロ経済分析、金融市場リサーチ等に従事。2003年CSKベンチャーキャピタル株式会社海外投資部長として米シリコンバレー、イスラエル、ロシア等のベンチャー投資を担当、2007年よりユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン株式会社において、UMJロシアファンドを設立・運用。
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6月18日の新規感染者数は9,056人、わずか5日間で1.5倍となった。もちろん、ロシア全体でも新規感染者数は1万7262人と同34%の急増。
これに対しモスクワ市当局は感染拡大を阻止すべく、市内の企業に対して6月15~21日までを有給在宅勤務とすること、さらにサービス業においては社員の60%がワクチン接種を受けることを命じた。
また新型コロナ専用病床数を1.7万床から2.4万床に増やすことも発表。
ロシアらしい荒療治ではあるが、それを可能とするPCR検査とワクチン接種(無料かついつでも可能)、緊急医療対応のキャパシティがなせる業ともいえると大坪氏。
ロシア版ダボス会議、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(SPIEF)が今月オフラインで開催。席上、プーチン大統領はロシアは新型コロナ禍を克服しつつあると高らかに宣言したのであるが、そのわずか数週間後には予期せぬ第3波の感染拡大に見舞われてしまったと。
もっとも、プーチン大統領にとって最大の強敵は「インフレ」だと大坪氏。
プーチン大統領も同じ演説で「ロシアにとって喫緊の課題は雇用とインフレである」と指摘していると。
ロシアのインフレ、すなわち物価上昇の主因は食料価格なのだそうです。
食料価格の値上がりは、ロシアでも低所得層の生活をストレートに圧迫する。ロシア中銀の調査によれば、2021年4月時点で最低所得層に対するインフレ率は30%、平均所得層に対しても14.5%。
プーチン大統領にとって、インフレ抑圧は何をさておき最優先の政策課題。ロシア政府は積極的なインフレ対策に乗り出している。
ところが、大手農業会社や大手小売り会社に対する価格統制という、反市場経済的な手法がその中心。
一方、プーチン大統領が政府以上に信頼を寄せていると思われるのがロシア中央銀行のナビウリナ総裁。今回のインフレ懸念再燃に対して、矢継ぎ早に政策金利の引上げを実施。
また、ロシア政府の価格統制に対しては市場原理を歪め、長期的には価格の高止まりを招くとして反対を表明。
原理原則を主張するナビウリナ総裁は称賛に値すると大坪氏。
今年9月に下院選挙があるのだそうですか、有権者にとってはコロナ対策、対米関係、ましてやナワリヌイ氏の処遇よりも、足許の物価上昇抑制こそ候補者選びの大きなカギとなると。
与党体制が覆る兆候は認められないとのことですが、プーチン政権にはひとつの山場とはなりますね。
# 冒頭の画像は、マスクなしの人出で混雑する屋内マーケット
この花の名前は、タツナミソウ
↓よろしかったら、お願いします。