米朝首脳会談評価には諸説があり、傾聴すべきものも幾多ありますね。
ここでは、中国の対朝関与の大きさを取り上げ、北朝鮮の非核化問題の根底には米中対立が潜んでおり、しかもそれは次第に顕在化しそうと懸念を示しておられる、西原正平和安全保障研究所理事長の説を取り上げさせていただきました。
米朝会談の前後で 3回に及んだ金正恩の訪中での会談での中国の差し金に、トランプ大統領は相当、立腹しているのだそうですね。
共同声明の内容がシンプルで薄いものとなったのは、水面下の実務協議で、非核化の具体的な方法を共同声明に入れることを要求した米国側に対して、中国の支援を得た北朝鮮側は、米朝首脳会談がつぶれても構わないほどの勢いで反対したことによるもので、その争点はふたつ。
ひとつは、核の段階的非核化とそれに応じた制裁解除。
もうひとつは、非核化の対象の違い。米国は、「北朝鮮の非核化」と表現。しかし、北朝鮮(および韓国、中国)は、「朝鮮半島の非核化」という表現。この違いによる影響はまだ顕在化していないが、深刻になりそうだと西原氏は危惧しておられます。
「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)」を進めるときの検証で、北朝鮮式非核化の「朝鮮半島の非核化」であれば、北朝鮮は韓国内の主として米軍関係の施設や装備に核疑惑があると主張して査察を要求することになり、米側はその要求を当然、拒否。
関係悪化の再来となる。
金正恩が最も求めているのは、体制維持の保証。
習近平に請うて保証を取り付けるための訪中に嵌った金正恩。米朝韓で進んでいた半島情勢変革に、中国が主導権を取り戻した由縁となったのでしたね。
トランプ大統領が突然米韓合同軍事演習の中止を表明した事に驚きと、北朝鮮に対する譲歩だとの批判の声が高まりました。
しかし、西原氏は、北朝鮮の非核化の促進を狙ったものであり、非核化作業を怠れば、米国側はただちに軍事演習を再開するとしているのであるから、演習中止は北朝鮮への恫喝になる。金正恩氏は追い詰められたことになると指摘されています。初めて聞く解説で、突然のトランプ大統領の発言に、合致する解説と受け止められます。
トランプ大統領は怒っているのだそうですが、主導権争いに復帰してきた習近平。これで、米朝韓の間で進んでいた北朝鮮の核とミサイル開発問題は、米中間の攻防の問題に戻ってきました。
西原氏は、それは次第に顕在化しそう。日本としては、北東アジアの安定を握る日米同盟の役割を拡大すべきだと提言されています。
日米同盟の役割とそこでの日本の役割の全う。日米だけでなく、オーストラリア、インドといった地域の大国とも連携した抑止力が必要ですね。
安倍首相の外交への期待が膨らみます。
# 冒頭の画像は、3度目の訪中をした金正恩
アンズの紅葉
↓よろしかったら、お願いします。
ここでは、中国の対朝関与の大きさを取り上げ、北朝鮮の非核化問題の根底には米中対立が潜んでおり、しかもそれは次第に顕在化しそうと懸念を示しておられる、西原正平和安全保障研究所理事長の説を取り上げさせていただきました。
米朝会談の前後で 3回に及んだ金正恩の訪中での会談での中国の差し金に、トランプ大統領は相当、立腹しているのだそうですね。
【正論】中国が画策する北「非核化交渉」 平和安全保障研究所理事長・西原正 - 産経ニュース 2018.6.28
去る6月12日にシンガポールで開催された米朝首脳会談は、トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が非核化への意欲を見せた一大政治ショーであった。長年敵対してきた両国の首脳が顔を合わせたという点では確かに歴史的出来事であった。しかし肝心の非核化の成果は説明されず期待外れであった。また北朝鮮の交渉姿勢の後ろには中国の画策がうかがえる。それが今後、深刻な問題を起こしそうである。
≪トランプ氏を立腹させた妨害≫
会談後に発された共同声明は極めて短く、非核化の行程も期限も記されていなかった。共同声明は「板門店宣言にのっとって、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けて取りくむ」とあるだけであった。会談後の記者発表で、記者からこの点を突かれたトランプ氏は「時間がなかったからだ」と答えたが、実際のところ、実務協議では非核化の実施をめぐって相当の対立があったようだ。非核化の具体的な方法を共同声明に入れることを要求した米国側に対して、北朝鮮側は、米朝首脳会談がつぶれても構わないほどの勢いで反対したという。
争点の一つは、米国の早期の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」要求に対して、北朝鮮(および韓国と中国)は「段階的非核化」を主張していたことである。習近平国家主席は3月と5月の金正恩氏との会談で、核の段階的非核化とそれに応じた制裁解除を米側に要求するように説いたようだ。6月の北京訪問でも同様でトランプ氏は習近平氏の妨害に相当、立腹していると報じられた。
もう一つの争点は、米国が「北朝鮮の非核化」と表現したのに対し、北朝鮮(および韓国、中国)は、「朝鮮半島の非核化」という表現を使ったことである。この相違による米朝対立はまだ顕在化していないが、深刻になりそうだ。
米国式非核化であれば、北朝鮮内の核関連施設の一掃で済むが、北朝鮮式非核化であれば、北朝鮮は韓国内の主として米軍関係の施設や装備に核疑惑があると主張して査察を要求するであろう。北朝鮮の査察に米国人専門家が加われば、北朝鮮は韓国内の査察に自分たちの専門家を加えることを要求するだろう。そうなれば、米側はその要求を当然、拒否するはずである。この点も米朝関係が悪化する原因の一つとなろう。
≪金正恩体制を保証するのは誰か≫
さらに、北朝鮮が非核化したあと、誰が北朝鮮の体制を保証するのかという点がある。共産主義的専制体制を民主主義国の米国が保証するのは不合理であり、将来民主化運動が起きたとき、米国がその鎮圧を支援する側に立つとは想像しがたい。金正恩氏は3月に訪中した際に、金体制の保証を習近平氏に求めたとみるべきだ。
一方、5月に訪米した金正恩氏の腹心である金英哲朝鮮労働党中央委副委員長は、トランプ氏に体制を攻撃しないという保証を求めたと考えられる。金正恩氏にとっては米中の優先順位は明らかに中国が先である。シンガポールへ行くに際し、中国の民間機で現地入りをしたことでも中国の影の大きさが分かる。
トランプ氏がシンガポールの記者会見で、突然「交渉が順調に進んでいる間は、ウオーゲーム(軍事演習)は行わない」と述べた。軍事演習の中止はトランプ氏の北朝鮮に対する譲歩だと批判する向きが多い。しかし北朝鮮の非核化の促進を狙ったものであり、非核化作業を怠れば、米国側はただちに軍事演習を再開するとしているのであるから、演習中止は北朝鮮への恫喝(どうかつ)になる。金正恩氏は追い詰められたことになる。
≪顕在化する米中対立に備えよ≫
それでも、日韓の同盟国に事前協議もせずにそうした重大な発言をしたことは、同盟の連携を傷つけるものであった。また米韓合同軍事演習の中止が長く続けば、米韓同盟の重要度が低下し、韓国内で米軍撤退要求が生起するかもしれない。その間、中国は在韓米軍撤退、とくに高高度防衛ミサイル(THAAD)の撤去を、韓国に要求するであろう。
さらに朝鮮戦争の休戦協定を平和条約にかえる動きが具体的に出てくれば、北朝鮮は在韓米軍撤退を要求するはずだ。文在寅大統領は米韓同盟の終結には反対しているが、今後同盟の終結を受け入れるとすれば、韓国の安全の保証は中国に求めるのだろうか。
中国は、今後の北朝鮮の体制保証に当然「利権」を持つと考えるので、それを牽制(けんせい)する米国との競合関係に入る。また中国は、米韓同盟を破棄した韓国に安全の保証を提供し、徐々に韓国への影響力を伸ばしていくであろう。そうなれば、日本海を挟んで中国と日米同盟が拮抗(きっこう)することになる。またロシアも朝鮮半島に進出する機会を探っている。北東アジアの勢力図は激変しそうだ。
このように北朝鮮の非核化問題の根底には米中対立が潜んでおり、それは次第に顕在化しそうである。日本としては、北東アジアの安定を握る日米同盟の役割を拡大すべきである。(にしはら まさし)
去る6月12日にシンガポールで開催された米朝首脳会談は、トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が非核化への意欲を見せた一大政治ショーであった。長年敵対してきた両国の首脳が顔を合わせたという点では確かに歴史的出来事であった。しかし肝心の非核化の成果は説明されず期待外れであった。また北朝鮮の交渉姿勢の後ろには中国の画策がうかがえる。それが今後、深刻な問題を起こしそうである。
≪トランプ氏を立腹させた妨害≫
会談後に発された共同声明は極めて短く、非核化の行程も期限も記されていなかった。共同声明は「板門店宣言にのっとって、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けて取りくむ」とあるだけであった。会談後の記者発表で、記者からこの点を突かれたトランプ氏は「時間がなかったからだ」と答えたが、実際のところ、実務協議では非核化の実施をめぐって相当の対立があったようだ。非核化の具体的な方法を共同声明に入れることを要求した米国側に対して、北朝鮮側は、米朝首脳会談がつぶれても構わないほどの勢いで反対したという。
争点の一つは、米国の早期の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」要求に対して、北朝鮮(および韓国と中国)は「段階的非核化」を主張していたことである。習近平国家主席は3月と5月の金正恩氏との会談で、核の段階的非核化とそれに応じた制裁解除を米側に要求するように説いたようだ。6月の北京訪問でも同様でトランプ氏は習近平氏の妨害に相当、立腹していると報じられた。
もう一つの争点は、米国が「北朝鮮の非核化」と表現したのに対し、北朝鮮(および韓国、中国)は、「朝鮮半島の非核化」という表現を使ったことである。この相違による米朝対立はまだ顕在化していないが、深刻になりそうだ。
米国式非核化であれば、北朝鮮内の核関連施設の一掃で済むが、北朝鮮式非核化であれば、北朝鮮は韓国内の主として米軍関係の施設や装備に核疑惑があると主張して査察を要求するであろう。北朝鮮の査察に米国人専門家が加われば、北朝鮮は韓国内の査察に自分たちの専門家を加えることを要求するだろう。そうなれば、米側はその要求を当然、拒否するはずである。この点も米朝関係が悪化する原因の一つとなろう。
≪金正恩体制を保証するのは誰か≫
さらに、北朝鮮が非核化したあと、誰が北朝鮮の体制を保証するのかという点がある。共産主義的専制体制を民主主義国の米国が保証するのは不合理であり、将来民主化運動が起きたとき、米国がその鎮圧を支援する側に立つとは想像しがたい。金正恩氏は3月に訪中した際に、金体制の保証を習近平氏に求めたとみるべきだ。
一方、5月に訪米した金正恩氏の腹心である金英哲朝鮮労働党中央委副委員長は、トランプ氏に体制を攻撃しないという保証を求めたと考えられる。金正恩氏にとっては米中の優先順位は明らかに中国が先である。シンガポールへ行くに際し、中国の民間機で現地入りをしたことでも中国の影の大きさが分かる。
トランプ氏がシンガポールの記者会見で、突然「交渉が順調に進んでいる間は、ウオーゲーム(軍事演習)は行わない」と述べた。軍事演習の中止はトランプ氏の北朝鮮に対する譲歩だと批判する向きが多い。しかし北朝鮮の非核化の促進を狙ったものであり、非核化作業を怠れば、米国側はただちに軍事演習を再開するとしているのであるから、演習中止は北朝鮮への恫喝(どうかつ)になる。金正恩氏は追い詰められたことになる。
≪顕在化する米中対立に備えよ≫
それでも、日韓の同盟国に事前協議もせずにそうした重大な発言をしたことは、同盟の連携を傷つけるものであった。また米韓合同軍事演習の中止が長く続けば、米韓同盟の重要度が低下し、韓国内で米軍撤退要求が生起するかもしれない。その間、中国は在韓米軍撤退、とくに高高度防衛ミサイル(THAAD)の撤去を、韓国に要求するであろう。
さらに朝鮮戦争の休戦協定を平和条約にかえる動きが具体的に出てくれば、北朝鮮は在韓米軍撤退を要求するはずだ。文在寅大統領は米韓同盟の終結には反対しているが、今後同盟の終結を受け入れるとすれば、韓国の安全の保証は中国に求めるのだろうか。
中国は、今後の北朝鮮の体制保証に当然「利権」を持つと考えるので、それを牽制(けんせい)する米国との競合関係に入る。また中国は、米韓同盟を破棄した韓国に安全の保証を提供し、徐々に韓国への影響力を伸ばしていくであろう。そうなれば、日本海を挟んで中国と日米同盟が拮抗(きっこう)することになる。またロシアも朝鮮半島に進出する機会を探っている。北東アジアの勢力図は激変しそうだ。
このように北朝鮮の非核化問題の根底には米中対立が潜んでおり、それは次第に顕在化しそうである。日本としては、北東アジアの安定を握る日米同盟の役割を拡大すべきである。(にしはら まさし)
共同声明の内容がシンプルで薄いものとなったのは、水面下の実務協議で、非核化の具体的な方法を共同声明に入れることを要求した米国側に対して、中国の支援を得た北朝鮮側は、米朝首脳会談がつぶれても構わないほどの勢いで反対したことによるもので、その争点はふたつ。
ひとつは、核の段階的非核化とそれに応じた制裁解除。
もうひとつは、非核化の対象の違い。米国は、「北朝鮮の非核化」と表現。しかし、北朝鮮(および韓国、中国)は、「朝鮮半島の非核化」という表現。この違いによる影響はまだ顕在化していないが、深刻になりそうだと西原氏は危惧しておられます。
「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)」を進めるときの検証で、北朝鮮式非核化の「朝鮮半島の非核化」であれば、北朝鮮は韓国内の主として米軍関係の施設や装備に核疑惑があると主張して査察を要求することになり、米側はその要求を当然、拒否。
関係悪化の再来となる。
金正恩が最も求めているのは、体制維持の保証。
習近平に請うて保証を取り付けるための訪中に嵌った金正恩。米朝韓で進んでいた半島情勢変革に、中国が主導権を取り戻した由縁となったのでしたね。
トランプ大統領が突然米韓合同軍事演習の中止を表明した事に驚きと、北朝鮮に対する譲歩だとの批判の声が高まりました。
しかし、西原氏は、北朝鮮の非核化の促進を狙ったものであり、非核化作業を怠れば、米国側はただちに軍事演習を再開するとしているのであるから、演習中止は北朝鮮への恫喝になる。金正恩氏は追い詰められたことになると指摘されています。初めて聞く解説で、突然のトランプ大統領の発言に、合致する解説と受け止められます。
トランプ大統領は怒っているのだそうですが、主導権争いに復帰してきた習近平。これで、米朝韓の間で進んでいた北朝鮮の核とミサイル開発問題は、米中間の攻防の問題に戻ってきました。
西原氏は、それは次第に顕在化しそう。日本としては、北東アジアの安定を握る日米同盟の役割を拡大すべきだと提言されています。
日米同盟の役割とそこでの日本の役割の全う。日米だけでなく、オーストラリア、インドといった地域の大国とも連携した抑止力が必要ですね。
安倍首相の外交への期待が膨らみます。
# 冒頭の画像は、3度目の訪中をした金正恩
アンズの紅葉
↓よろしかったら、お願いします。