遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

成長する中国の中間層 中共をどのように変えるのか

2016-07-19 23:58:58 | 中国 全般
 1990年代以前の中国には中間層というものがほとんど存在しなかったのが、2000年には500万世帯、今日では2億2500万世帯と増え、2020年には恐らく、中国の中間層の方が欧州のそれよりも多くなっていると予測されるのだそうです。
 経済的に豊かになると新たに産まれた中間層が政治の改革を要求してきた歴史があるのだそうですが、成長する中国の中間層はどうなのか。
 一党独裁の中国共産党は、今日の支持基盤が中間層であることは自覚している。
 共産党は彼らの要求に応え始めなければならない。さもなくば、世界最大の規模を誇る中間層に踏みつぶされてしまいかねないと指摘するのは、英紙の「The Economist」
 キャメロン政権は媚中外交に転じてしまっていましたが、英紙には遠い極東の情勢を冷静にみているものもあるのですね。
 

中国の中間層:指導者が不安を抱く2億2500万の理由 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2016.7.15(金) The Economist

中国共産党は党の命運を大衆の豊かさと結びつけた。それが今度は自らの存続を脅かす可能性がある。

 1990年代以前の中国には中間層というものがほとんど存在しなかった。年間の所得が1万1500~4万3000ドル(現在のドルの価値で換算)の世帯は、2000年には500万世帯だったが、今日では2億2500万世帯がこのグループに属している。2020年には恐らく、中国の中間層の方が欧州のそれよりも多くなっているだろう。
 この目を見張る発展は世界各地で経済成長率を押し上げ、中国自体も大きく変化させた。水田は摩天楼に姿を変え、自転車の波は自動車の渋滞に取って代わられた。内向きな国民の視野も広がってきた。昨年は1億2000万人の中国国民が海外旅行に出掛けている。この10年で4倍に増えた計算だ。そしてソーシャルメディアの世界では、中国語で語り合う巨大な集団が出現している。
 しかし、
欠けているものが1つある。ほかの権威主義国家では、経済的に豊かになると新たに産まれた中間層が政治の改革を要求
してきた。例えば韓国では、1980年代の学生運動が軍事政権の終結に貢献した。台湾では1990年代に中間層が民主主義を要求し、権威主義の政府が自由選挙を容認するに至った。
 専門家の間では、
中国はこのパターンの例外だという見方が多い。中国の都市の多くは、韓国や台湾が変わり始めた当時と同じくらい豊かになっている。ところが1989年に天安門広場で戦車がデモ隊を押しつぶして以来、中国では大規模な民主化デモが1度も起きていない。習近平国家主席は民主政治を嘲るばかりだ

 このアプローチが機能している証拠は存在する。強硬派の習氏は強い指導者として、そして汚職と戦う闘士として多くの国民から敬われている。
民主化を要求する中間層はほとんどおらず、その理由も、声を上げるとトラブルに巻き込まれるかもしれないからというだけではない。国民の中には、「アラブの春」とその後の混沌とした状況を見て、尻込みしてしまう向きが多い
のだ。
英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が選択されたことについても、複雑な政治問題の解決を普通の有権者に委ねることはできない証拠だと解釈する人もいる。中国政府は己を批判する人々には容赦ないかもしれないが、少なくとも国民がカネを稼ぐことは認めている。政治にさえ触れなければ、国民は好きなことをかなりの程度言ったりやったりできる


不安な時代
しかし、一皮むけば、中国の中間層が現状に全く満足していないことがよく分かる。確かに金回りはいいが、彼らは不安を覚えている
。まず、自分が年を取ったときに誰が面倒を見てくれるのかという心配がある。ほとんどの夫婦は子供が1人しかおらず、公的なセーフティーネットはごく基本的なものしかない。病気にでもなれば医療費で財産が吹き飛びかねない、と恐れている。
 また、自宅を所有している場合(持ち家率は80%)には、それを失う心配がある。中国では、財産権が貪欲な当局の気まぐれで消えてしまうことがあるからだ。さらに言うなら、預金も安心できない。銀行はスズメの涙のような利息しか付けないうえに、投資商品は規制がお粗末だったり全く行われていなかったりする。今年1月に中国で崩壊したポンジ・スキームの被害者数は史上最高に達した。

中間層の国民の多くは腹も立てている。マルクス主義を無理やりたたき込まれるときには、相手をばかにするような態度を取る人が多い。あらゆる産業や活動を蝕んでいる汚職や、才能や努力よりもコネがものを言う縁者びいき
に腹を立てている人はもっと多い。
大気汚染
に対しては、ほぼ全員が怒りを覚えている。自分の肺を汚したり、寿命を縮めたり、自分の子供たちにまで危害を及ぼしたりするからだ。大気や土壌、河川を汚していながら要人の知人がいるために処罰を免れている企業が一部にあることも、国民は看過できない。

いら立ちを募らせている人もいる。中国には200万を大幅に上回る数の非政府組織(NGO)が存在する。そのメンバーの多くは、共産党とは無関係に社会を良くしようと努力している中間層の人々だ。環境をきれいにしよう、労働者をもっと公平に扱え、女性や同性愛者、移民への差別を止めよなどと訴えている団体もある。共産党の権力独占に大っぴらに抵抗する団体はないが、権力行使の方法については反対することが多い


 共産党は、中間層(ここには党員8800万の多くが含まれている)が自らの支持基盤であることを理解している。習氏は2012年に権力を握ったときの談話で、米国にならった「チャイニーズ・ドリーム(中国の夢)」なる概念に言及し、中間層を鼓舞した。共産党は現在、国民の期待に応えたり世間のガス抜きをしたりするために世論調査を行っている。
 それでも、今よりも透明性が高く、説明責任も果たす政府にしない限り、中国が抱える問題の解決は想像しがたい。
法の支配――習氏はこれを信条としているふりをしている――がなければ、個人の財産や人の本当の安全は確保できない
。政府のシステムをもっとオープンにしなければ、汚職や腐敗を組織的に見つけ出して撲滅することはできない。そして言論の自由がなければ、NGOが変化をもたらすこともないだろう。

立ち上がる中間層
数千年に及ぶ乱世の歴史と、多くの人の血が流れた1960年代の文化大革命の記憶ゆえに、自分たちには無秩序な状態を恐れる気持ちが深く根付いている――。中国人はそう語ることがよくある。しかし、都市部で暮らす人々のほぼ半分は35歳未満であり、毛沢東時代の社会的混乱などほとんど知らない

 また、政府が自分たちの声に耳を傾けていないと感じれば、立ち上がって抗議しようという人も中にはいる。例えば中国南部の広東省にある禄歩鎮という町では7月3日、ゴミ焼却場建設計画に反対する中間層が数千人も集まった。彼らは警官隊と衝突したうえに、政府の庁舎の襲撃を試みた。
 こうした抗議行動は日常茶飯事だ。清華大学によれば、2010年には18万件発生したという(その後は、信頼できる推計値が存在しない)。
経済成長率が高かった時代は世の中もそれに伴って安定したが、成長が鈍化している今日では抗議行動が広がりやすい。
工場の閉鎖、国有企業のリストラ、さらには汚染の抑制などで共産党が厳しい決断を下さなければならないときは、特にそうだ。
 最終的には、
中間層の抵抗運動の成否は共産党のエリート次第になりそうだ。1989年の民主化運動が盛り上がったのは、エリートの一部も改革に好意的だったからだ。天安門事件が再現される兆しは全くないが、指導部の中には緊張関係がある。習氏は、仲間よりもライバルに厳しく接しているように見える反汚職運動で敵を作った(最近では、胡錦濤・前国家主席の側近の一人がターゲットになっている)
。ほかの共産党幹部らは、巧みに立ち回って有利な立場を手に入れようとしている。

 共産党はこれから何年間も外部からの挑戦を退けていくかもしれない。この
巨大な国家安全保障の組織は、抗議行動があればすぐに動いてこれをつぶす。しかし、抑圧一本槍で行くのは誤りだろう。中国の中間層は今後も成長していくだろうし、そうなれば改革の要求もおのずと強まる。
共産党は彼らの要求に応え始めなければならない。さもなくば、世界最大の規模を誇る中間層に踏みつぶされてしまいかねない。

 中国には民主化を望む中間層はほとんどいなくて、国民の中には、「アラブの春」とその後の混沌とした状況を見て、尻込みしてしまう向きが多いくらいなのだそうです。
 1989年に天安門広場で戦車がデモ隊を押しつぶして以来、中国では大規模な民主化デモが1度も起きていなくて、習近平国家主席は民主政治を嘲るばかりなのだと。。
 しかし、一皮むけば、中国の中間層が現状に全く満足していないことが判ると言い、彼らは「不安」を覚えていて、「腹も立てて」いて、「怒り」を覚えているのだそうです。

 習近平は、中間層を鼓舞するために「チャイニーズ・ドリーム(中国の夢)」を政策に掲げたのだと。
 文化大革命の記憶から、無秩序な状態を恐れる気持ちが深く根付いているとの声もあるが、毛沢東時代の社会的混乱などほとんど知らない(天安門事件などは国内では歴史から抹消されている)世代が増えていて、政府が自分たちの声に耳を傾けていないと感じれば、立ち上がって抗議しようという人もいるのだと。
 そして、経済成長率が高かった時代は世の中もそれに伴って安定したが、成長が鈍化している今日では抗議行動が日常茶飯事となってきているとも。

 また、習近平は汚職追放を旗印に寅退治を行い、人民の支持を得ましたが、その実態は政敵の駆逐であり、江沢民・上海閥や、胡錦濤・共青団派を標的とし、太子党や昔からの部下など自派への追及はなく、党内の派閥争いで敵をつくっていることは、諸兄がご承知のことで、遊爺も折に触れ、取り上げさせていただいて来ました。
 例=
習近平 第二期政権人材を共青団切り崩しで獲得 - 遊爺雑記帳

 「中間層」の成長はこれからも続く。それに伴い、改革の要求は強まる。支持を得た「虎退治」もネタが尽きて来てくれば、支持を得続ける新たなネタが必要になりますが、経済成長の鈍化で、格差社会の問題点が表面化し、不満が拡大します。また、来年のトップセブンの改選にむけ、党内の派閥抗争が激化してきています。
 記事は、習近平政権のみならず、中国共産党は、成長する「中間層」の要求に応え始めなければならない。さもなくば、世界最大の規模を誇る中間層に踏みつぶされてしまいかねないと、提唱しています。



 # 冒頭の画像は、南シナ海の領有権を巡るを仲裁裁定を、紙屑だと非難する戴秉国元国務委員




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