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ASEANが、8月8日で発足から50年を迎えるのだそうです。民族も政治体制も異なる国々が「緩やかな統合」を目指し、一体感と、国際社会での存在感を少しずつ高めてきたのですが、統一的な行動をとりにくいという「限界」も指摘される様になってきたと、指摘するのは、読売の特集記事「50歳の ASEAN」。
仲裁裁判所の裁定で「九段線」は否定されたにも関わらず、国際法は無視しして南シナ海への覇権拡大、「一帯一路」での南方進出を進めていることは、諸兄がご承知の通りです。
「カンボジアはASEANにおける中国の代弁者になった」とは、近年の言動からは明らかで、南シナ海の領有権抗争に関係ないことから、ASEANの結束を乱す、中国の属国かとまごう状況でした。
米軍基地を撤退させたり、中国の侵略が強まると、米艦船の寄港を戻し、ドゥテルテ大統領が就任すると、反米色を強めるフィリピン。両大国の間で揺れ動いています。
ドゥテルテ大統領は、選挙戦では反米色を出しながらも、中国が不法選挙をする島に国旗を立てに行くとも強弁していました。就任後も、中国とは一定の距離を保つ姿勢が見られましたが、記事の指摘のとおり、経済援助、軍事援助を重ねられ、徐々に取り込まれてきています。フィリピンの財界に、中国にルーツを持つ華僑が多いと言われますが、その影響もあるでしょう。ドゥテルテ大統領自身が、ルーツが中国であることまで関係しているかは不明です。
仲裁裁判所での「九段線」否定は、南シナ海への覇権拡大の大きな障壁となり、習近平の外交失点です。秋のチャイナセブン改選に向けた政局争いで、追及される大きな弱点です。
フィリピンをターゲットにして、二国間問題として国際社会からの関与を退け、ドゥテルテ大統領を籠絡させることに力を入れるのは、習近平の護身・延命にかかせないのです。
ただ、中国一国が独裁的に覇権を確立することには、多くの国々抵抗がある。対抗相手となる大国も必要。その雄である米国が、トランプ政権となり、国内重視に転換。「航行の自由作戦」の継続は打ち出していますが、北朝鮮の暴挙抑止では、中国に依存するところが大きく、対中外交の距離が微妙。
米国嫌いのドゥテルテ大統領は、日本に対抗馬として期待していますが、記事でも、「米国のASEANへの関与が低下する中、ASEANの大勢は日本がその穴を埋めることを期待している」との指摘。
外交力には、背景にある軍事力が、その強さを左右しますが、専守防衛の日本には、海外で発揮する軍事力は、原則ありません。(国際協力分野で少しづつ変化させていますが、南スーダンで日報に書かれた「戦闘」の言葉で、高支持率の内閣が、一気に支持率が低下する混乱を生じる現状です。) その点、日本単独での中国へのけん制力には限界があります。米国、豪州、インドといった諸国と連携し、国際世論、ASEAN諸国の世論を繋ぐ主導をしていくことが求められているのですね。
G7の中でも古参となり、日本の首相ではかつてない発言力をもった安倍首相に、ここは期待が膨らみますね。
# 冒頭の画像は、ドゥテルテ大統領と習近平
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テリハノイバラの果実
↓よろしかったら、お願いします。
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仲裁裁判所の裁定で「九段線」は否定されたにも関わらず、国際法は無視しして南シナ海への覇権拡大、「一帯一路」での南方進出を進めていることは、諸兄がご承知の通りです。
50歳の ASEAN (上) 経済第一 進む「親中」 (8/1 読売朝刊)
東南アジア諸国連合(ASEAN)が8月8日、発足から50年を迎える。民族も政治体制も異なる国々が「緩やかな統合」を目指し、一体感と、国際社会での存在感を少しずつ高めてきたものの、多様性を認め合うがゆえに統一的な行動をとりにくいという「限界」も指摘される。ASEANの現状と課題を探る。
フィリピンも「米離れ」
「安全への責任は(中国の)泰山よりも重い」
「契約を守り良質なものを造ろう」
好景気で建設ラッシュに沸くカンボジアの首都プノンペン。ホテルやオフィスビルなど大規模工事の現場では、中国語の看板が目立つ。工事の大半を中国企業が請け負っているからだ。中国人労働者も多く、あちこちで中国語が飛び交う。
「中国にいると錯覚するだろう」。劉と名乗るヘルメット姿の男性(37)はそう言って笑った。
2016年の中国によるカンボジアへの直接投資は国別で最多の約5億ドル(約553億円)と、カンボジア向け全体の約22%を占める。18年の総選挙を視野に、インフラ(社会基盤)整備で国民の支持をつなぎとめたいフン・セン首相。経済支援を足がかりに中国の影響力を強めたい習近平国家主席。両者の思惑は重なる。
中小国連合であるASEANは近年、日米中などの大国を取り込みつつ相互にけん制させることで、地域で主導権を確保しようと腐心してきた。「ASEANプラス3」や「ASEAN地域フォーラム(ARF)」といった域外国との協力枠組みに象徴される。
その大方針が今、揺らいでいる。トランプ米政権の明確な東南アジア政策がいまだ見通せない一方、南方への膨張を続ける中国が経済力を武器にASEAN内で「親中派」を着々と形成しようとしているからだ。実際、カンボジアは昨夏、南シナ海での中国の主権主張を否定したオランダ・ハーグの仲裁裁判所判決直後のASEAN外相会議で、判決に共同宣言で言及することに強硬に反対。今年4月にはフン・セン氏が、習氏の演説などをまとめた本「習近平国政運営を語る」のクメール語版出版式典で、「カンボジアと中国の関係は、他の国々の良い手本になる」とまで語った。
「カンボジアはASEANにおける中国の代弁者になった」。在東南アジアの中国外交筋は言い切った。
中国がASEAN切り崩しの新たな標的としているのが、米国の同盟国にもかかわらず中国寄りの姿勢を取るフィリピンだ。
中国は、国内経済を重視するドゥテルテ比大統領が昨年訪中した際、フィリピンが仲裁裁の判決を棚上げする見返りに、インフラ整備など巨額の経済協力に応じた。6月には比南部ミンダナオ島でのイスラム過激派掃討作戦に武器を無償供与。同大統領は「比中関係の新たな幕開けだ」とぶち上げてみせた。
中国がフィリピンとの関係強化を図る目的は「南シナ海での天然資源の共同開発実現にある」(中国政府関係者)。南シナ海での自国の主権を主張するフィリピンとの協力が成功すれば、領有権問題で中国と対立するベトナムに共同開発受け入れを迫る圧力となり、南シナ海情勢の沈静化につながると中国は踏んでいる。
ただ、ASEAN諸国の多くは、列強の植民地となった過去の経験から、大国が地域で覇権を求める動きには基本的に敏感だ。南シナ海問題に詳しいベトナム・ホーチミン市法科大のホアン・ベト講師は言う。
「過度な対中傾斜は国の生殺与奪の権を中国が握ることを意味する。米国のASEANへの関与が低下する中、ASEANの大勢は日本がその穴を埋めることを期待している」
東南アジア諸国連合(ASEAN)が8月8日、発足から50年を迎える。民族も政治体制も異なる国々が「緩やかな統合」を目指し、一体感と、国際社会での存在感を少しずつ高めてきたものの、多様性を認め合うがゆえに統一的な行動をとりにくいという「限界」も指摘される。ASEANの現状と課題を探る。
フィリピンも「米離れ」
「安全への責任は(中国の)泰山よりも重い」
「契約を守り良質なものを造ろう」
好景気で建設ラッシュに沸くカンボジアの首都プノンペン。ホテルやオフィスビルなど大規模工事の現場では、中国語の看板が目立つ。工事の大半を中国企業が請け負っているからだ。中国人労働者も多く、あちこちで中国語が飛び交う。
「中国にいると錯覚するだろう」。劉と名乗るヘルメット姿の男性(37)はそう言って笑った。
2016年の中国によるカンボジアへの直接投資は国別で最多の約5億ドル(約553億円)と、カンボジア向け全体の約22%を占める。18年の総選挙を視野に、インフラ(社会基盤)整備で国民の支持をつなぎとめたいフン・セン首相。経済支援を足がかりに中国の影響力を強めたい習近平国家主席。両者の思惑は重なる。
中小国連合であるASEANは近年、日米中などの大国を取り込みつつ相互にけん制させることで、地域で主導権を確保しようと腐心してきた。「ASEANプラス3」や「ASEAN地域フォーラム(ARF)」といった域外国との協力枠組みに象徴される。
その大方針が今、揺らいでいる。トランプ米政権の明確な東南アジア政策がいまだ見通せない一方、南方への膨張を続ける中国が経済力を武器にASEAN内で「親中派」を着々と形成しようとしているからだ。実際、カンボジアは昨夏、南シナ海での中国の主権主張を否定したオランダ・ハーグの仲裁裁判所判決直後のASEAN外相会議で、判決に共同宣言で言及することに強硬に反対。今年4月にはフン・セン氏が、習氏の演説などをまとめた本「習近平国政運営を語る」のクメール語版出版式典で、「カンボジアと中国の関係は、他の国々の良い手本になる」とまで語った。
「カンボジアはASEANにおける中国の代弁者になった」。在東南アジアの中国外交筋は言い切った。
中国がASEAN切り崩しの新たな標的としているのが、米国の同盟国にもかかわらず中国寄りの姿勢を取るフィリピンだ。
中国は、国内経済を重視するドゥテルテ比大統領が昨年訪中した際、フィリピンが仲裁裁の判決を棚上げする見返りに、インフラ整備など巨額の経済協力に応じた。6月には比南部ミンダナオ島でのイスラム過激派掃討作戦に武器を無償供与。同大統領は「比中関係の新たな幕開けだ」とぶち上げてみせた。
中国がフィリピンとの関係強化を図る目的は「南シナ海での天然資源の共同開発実現にある」(中国政府関係者)。南シナ海での自国の主権を主張するフィリピンとの協力が成功すれば、領有権問題で中国と対立するベトナムに共同開発受け入れを迫る圧力となり、南シナ海情勢の沈静化につながると中国は踏んでいる。
ただ、ASEAN諸国の多くは、列強の植民地となった過去の経験から、大国が地域で覇権を求める動きには基本的に敏感だ。南シナ海問題に詳しいベトナム・ホーチミン市法科大のホアン・ベト講師は言う。
「過度な対中傾斜は国の生殺与奪の権を中国が握ることを意味する。米国のASEANへの関与が低下する中、ASEANの大勢は日本がその穴を埋めることを期待している」
「カンボジアはASEANにおける中国の代弁者になった」とは、近年の言動からは明らかで、南シナ海の領有権抗争に関係ないことから、ASEANの結束を乱す、中国の属国かとまごう状況でした。
米軍基地を撤退させたり、中国の侵略が強まると、米艦船の寄港を戻し、ドゥテルテ大統領が就任すると、反米色を強めるフィリピン。両大国の間で揺れ動いています。
ドゥテルテ大統領は、選挙戦では反米色を出しながらも、中国が不法選挙をする島に国旗を立てに行くとも強弁していました。就任後も、中国とは一定の距離を保つ姿勢が見られましたが、記事の指摘のとおり、経済援助、軍事援助を重ねられ、徐々に取り込まれてきています。フィリピンの財界に、中国にルーツを持つ華僑が多いと言われますが、その影響もあるでしょう。ドゥテルテ大統領自身が、ルーツが中国であることまで関係しているかは不明です。
仲裁裁判所での「九段線」否定は、南シナ海への覇権拡大の大きな障壁となり、習近平の外交失点です。秋のチャイナセブン改選に向けた政局争いで、追及される大きな弱点です。
フィリピンをターゲットにして、二国間問題として国際社会からの関与を退け、ドゥテルテ大統領を籠絡させることに力を入れるのは、習近平の護身・延命にかかせないのです。
ただ、中国一国が独裁的に覇権を確立することには、多くの国々抵抗がある。対抗相手となる大国も必要。その雄である米国が、トランプ政権となり、国内重視に転換。「航行の自由作戦」の継続は打ち出していますが、北朝鮮の暴挙抑止では、中国に依存するところが大きく、対中外交の距離が微妙。
米国嫌いのドゥテルテ大統領は、日本に対抗馬として期待していますが、記事でも、「米国のASEANへの関与が低下する中、ASEANの大勢は日本がその穴を埋めることを期待している」との指摘。
外交力には、背景にある軍事力が、その強さを左右しますが、専守防衛の日本には、海外で発揮する軍事力は、原則ありません。(国際協力分野で少しづつ変化させていますが、南スーダンで日報に書かれた「戦闘」の言葉で、高支持率の内閣が、一気に支持率が低下する混乱を生じる現状です。) その点、日本単独での中国へのけん制力には限界があります。米国、豪州、インドといった諸国と連携し、国際世論、ASEAN諸国の世論を繋ぐ主導をしていくことが求められているのですね。
G7の中でも古参となり、日本の首相ではかつてない発言力をもった安倍首相に、ここは期待が膨らみますね。
# 冒頭の画像は、ドゥテルテ大統領と習近平
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テリハノイバラの果実
↓よろしかったら、お願いします。
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