遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国がミサイルでの衛星破壊実験に成功

2007-01-21 15:16:10 | EEZ 全般
 昨年末に「2006年国防白書」を発表した中国は、日米の軍事的一体化」に警戒感を強めるとともに、2010年までに国防近代化の基礎をつくり、20年までに発展、21世紀中ごろには情報化された軍隊を実現」するとして、宇宙空間のハイテク軍備の拡充にも力を入れています。
 米政府は18日、中国が宇宙空間上にある人工衛星を地上から発射した弾道ミサイルで破壊する実験に成功したことを事実上確認したのだそうです。(1/20 産経朝刊)
 
中国 ミサイルで衛星破壊実験に成功 (1/20 産経朝刊)

 実験情報を最初に伝えた米航空専門誌アビエーション・ウイーク(電子版)によると、実験は米東部時間の今月11日午後5時28分(日本時間12日午前7時28分)、中国の宇宙基地がある四川省西昌付近の上空で行われた。地上約850キロの宇宙空間にある中国の気象衛星「風雲1号C」に対し、衛星破壊弾頭を搭載した中距離弾道ミサイルを発射し、標的の衛星を撃破した。

 同誌は米航空宇宙局、中央情報局(CIA)などが実験データの解析を急いでいると報じた。CNNテレビによると、中国は今回の成功まで3回の破壊実験に失敗していたという。

 今回の実験について、米国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官は、「中国がこうした兵器を開発、実験したことは、民生用宇宙航空分野での両国の協力精神に反する」と非難。NASAが進める対中協力への影響を示唆する一方、オーストラリア、カナダも中国への懸念を伝えたことを明らかにした。

 地球からみて静止状態にある気象衛星を破壊することは、ミサイル技術的にはそれほど先端的なものといえないのだそうですが、日本が米国と共同で進めているミサイル防衛システムや、米国のハイテク軍備を支える多くの衛星が破壊されることが可能となったことは、安全保障上では、新たな局面を迎えたと言えます。

 宇宙空間の軍縮については、以前はむしろ中国が宇宙空間の軍備競争防止を唱え、ブッシュ政権が賛同していなかったのです。
 中国の代表、宇宙空間の軍備競争防止をアピール

 しかし今回の実験の実施は、事前に何の公表もなく行われており、軍事的な実験を禁止している「宇宙条約」に反すると言えます。
 中国の実験の目的は、ASAT(Anti-Satellite Weapon: 宇宙空間で衛星を破壊する目的で設計された兵器(ミサイル))制限交渉に米国を引き込み、米国のミサイル防衛(MD)封じ込めを視野におくと共に、宇宙空間の軍事的地位を高めるためのアピールとされています。
 中国外務省の劉建超報道官は、「中国は宇宙兵器拡大競争にも加わらない。脅威と感じる必要はない」と述べ、事実関係を確認しないまま「中国脅威論」の払拭に努めているのだそうですが、ASATを将来的に潜水艦への搭載を計画している中国は、大きな脅威となります。
 
中国 ミサイルで衛星破壊実験に成功 独自技術を誇示 (1/20 産経朝刊)

 有人宇宙飛行など独自の宇宙開発を進めてきた中国が、人工衛星の破壊能力を獲得したことは、海外での軍事展開の「眼」として偵察衛星に依存する米国に衝撃を与えた。米側では中国を警戒しつつも、衛星破壊兵器の開発には「財政的な制約で数年かかる」(メープルズ米国防情報局長)とみてきただけに、高い経済成長で軍備拡大を支える中国の挑戦に直面したかたちだ。米側が衛星機能の強化など対抗手段を強めることは確実で、米中が宇宙空間でも軍事的な確執を強める時代を迎えた。
<中略>

 通常兵器の整備を後回しにして、毛沢東時代から核兵器、弾道ミサイル、人工衛星の技術開発を進めてきた中国は、軍のハイテク化が本格化した1980年代のトウ小平時代から宇宙開発も加速させていた。中国自身、「最大で60センチ程度」といわれる解像度の偵察衛星「尖兵」シリーズなどを持つが、中国の軍事施設を監視する米国の偵察衛星は目障りな存在でありながら、これまで破壊や妨害などの対抗手段が北京にはなかった。

 軍事専門家の間では、米国の偵察衛星に対する中国の対抗手段として、(1)地上からのレーザー照射(2)同じ軌道上から小型衛星を放出して相手の衛星を破壊(3)弾道ミサイルや高性能の電磁砲による弾頭打ち上げ-が、これまで指摘されてきた。

 昨年9月に伝えられた米衛星へのレーザー照射に続く今回の実験について、米国の中国専門家ゴードン・チャン氏は、産経新聞に、「衛星破壊能力を誇示することで、(宇宙空間利用など)中国が世界の既存秩序に挑戦する意思を示した。胡錦濤氏の指示とみられるが、緊張を高めるもので極めて愚かな行いだ」と分析した。


 胡錦濤主席の指示なのか、軍部の独断先行なのかは未明ですが、急にお金持ちになり、いろいろなことが出来るようになったのですが、未熟な発想のほうも成長して、大国としての国際感覚を持ってもらいたい...というのは、無理な話なのでしょうか。
 お金に糸目をつけず、軍部主導で急速な軍拡を進める中国は、今年は3回目となる有人宇宙飛行船を打ち上げ、初の船外活動を行う予定だそうですが、宇宙空間の使用について、新局面への対応の必要性を突きつけられた事件でもあります。

 宇宙の軍備競争:宇宙政策シンクタンク_宙の会


 

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4 コメント

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Unknown (容子)
2007-01-22 17:32:36

遊爺さま

こんばんわ・・貴方さまの記事を読んで中国の軍事に賭ける意欲はまるで、何とかして米国を越えようという意欲の方が「軍事的な実験を禁止している「宇宙条約」に反すると言えます。』といってますが本当にそう思います。

強国になったのだからというおごりが見受けられ不快です。

私もこの問題の記事を書いたのですが、勿論レベルが低い記事ですが・・・お暇の折読んでくれたらうれしいです。


http://blog.goo.ne.jp/abe_yk/e/ba7e60326f6f084baf2dc0d3b6611516
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不可避の現実 (ゆめたろう)
2007-01-24 14:32:28
 いずれこうなると思っていたことが現実になった。ロシアもやるだろう。アメリカに対する威嚇だ。科学技術の軍事利用がしのぎを削っている。だが共倒れの危険がある。そのときがおそろしい。
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Re: お暇の折 (遊爺)
2007-01-27 19:09:30
容子さん、こんにちは。

 休日アクセス専門なので、ご返事が遅れ恐縮です。
 「共謀罪」は、国際的に求められている条約への締結対応とされていて、これからの時代に必用となるものと思っています。奥が深く、幅も広そうですね。
 
>お暇の折読んでくれたらうれしいです。
>http://blog.goo.ne.jp/abe_yk/e/ba7e60326f6f084baf2dc0d3b6611516

 そちらにコメントを書かせていただきましたので、ご一読下さい。
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Re: 共倒れの危険 (遊爺)
2007-01-27 19:13:49
ゆめたろうさん、コメントをありがとうございます。
 
 休日アクセス専門なので、ご返事が遅れ恐縮です。
 米・ソの冷戦構造が、米、中、ソの覇権争いの形で復活してきていますね。
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