遠い欧州の出来事のせいか、新聞がお休みのせいか、国内メディアは事実を伝えるだけで論評は見当たりません。海外の出来事は、海外の新聞でと言うことでふたつ。
いずれもオランド新大統領の評価は低く、今後のドイツの主導的役割は変わらないといった内容ですね。
オランド氏は、フランスにとっても、欧州にとっても悪影響を及ぼす危険な人物だと言うのが、英エコノミスト誌。
次期フランス大統領の座を射止めそうな社会党候補は、フランスにも欧州にも悪影響を及ぼすだろう。
フランスは、欧州連合(EU)を動かす独仏エンジンの片割れだ。ユーロ危機では、節約的な北部諸国と浪費的な南部諸国の間、債権国と債務国の間に立ち、キャスティングボートを握ってきた。しかも、大国でもある。
仮にフランスがユーロ圏内で次のトラブルに見舞われる国になるなら、単一通貨ユーロの存続そのものが疑わしくなるだろう。
<中略>
本誌に5月6日の選挙権があったなら、サルコジ氏に1票を投じる。その理由は、サルコジ氏への評価というよりも、オランド氏を勝たせないためだ。
社会党候補が大統領になれば、フランスは大きな問題を1つ正すことになるだろう。オランド氏は、ユーロ圏の回復の機会を狭めているドイツ主導の厳しい財政引き締めに反対している。だが、それは誤った理由からだ。そのうえ、オランド氏はほかの多くのことを読み違え、フランスの(そしてユーロ圏の)繁栄を危うくする可能性が高い。
生粋の社会党員
候補者たちが選挙戦で訴えてきた政策からは決して窺い知ることはできないかもしれないが、フランスは今、極めて切実に改革を必要としている。
公的債務は多額で、現在も増加している。政府は35年以上もの間、黒字を出したことがない。銀行は資本不足だ。失業率は高い状態が続き、雇用が蝕まれている。歳出はGDP比56%に上り、フランス政府はユーロ圏で最も大きな政府となっている。
オランド氏の政策は、そうしたすべての問題に対応するには、あまりにもお粗末に見える。フランスの近隣諸国が本格的な改革に取り組んでいることを考えれば、なおさらだ。
オランド氏は社会的公正をしきりに訴えているが、富の創出の必要性についてはほとんど語らない。財政赤字の削減を公約に掲げてはいるものの、歳出削減ではなく、増税で実現しようという考えだ。
オランド氏は、教員6万人を新たに雇用すると約束している。オランド氏自身の計算によれば、その提案を実現するには、5年間でさらに200億ユーロが費やされることになる。政府は一段と大きくなるわけだ。
<中略>
オランド氏は根深い反企業的な態度を露にしている。そのうえ、改革されていない自らの社会党に縛られ、改革が必要である論拠を、特にオランド氏自身の口からいまだ聞かされていない有権者に操られることになる。
オランド氏がマニフェストを破棄してフランスを変革するだけの大胆さを持ちあわせているとする根拠は、過去数カ月の経緯にも、党のフィクサーとしての長い経歴の中にも一切見あたらない。しかもフランスは今、ミッテラン氏が社会主義的な実験を行った1981~83年よりも、ずっと脆い状態にある。
今回の市場の反応は、容赦のないものになるかもしれない。それはフランスの近隣諸国をも傷つける恐れがある。
さらば、ベルリン
他の欧州諸国はどうなのだろうか? ここでは、どんな形の歳出削減も支持できないというオランド氏の姿勢が、短期的には1つの幸運な結果を生んでいる。というのも、オランド氏は賢明にも、ユーロ圏の「財政協定」を見直し、財政赤字と公的債務を抑制するだけでなく、成長も後押しするものにしたいと考えているからだ。
この主張は、アイルランドからオランダ、イタリア、スペインに至る欧州全土で高まっている、ドイツ主導の緊縮財政に対する不満の声に同調するものだ。
問題は、オランド氏の財政協定に対する批判が、例えばイタリアのマリオ・モンティ首相とは違い、財政引き締めのペースといった精妙なマクロ経済的考えに基づいたものではないというところにある。その批判の根底にあるのは、変革に対する抵抗と、フランスの社会モデルをいかなる犠牲を払ってでも守るという決意だ。
オランド氏の主張は、改革の道筋をなだらかにするために、財政調整のペースを落とすべきだというものではない。全く改革しないことを主張しているのだ。ドイツのアンゲラ・メルケル首相が、オランド氏に反対する運動をすると述べたのも無理はない。
<中略>
フランスとドイツの亀裂は、危険な時期に生じることになる。ユーロ圏の有権者は最近まで、緊縮財政と改革という考え方を受け入れる姿勢を見せていた。ギリシャとイタリアの実務家首相の支持率は高かった。スペイン、ポルトガル、アイルランドの有権者は、改革派の政権を選択した。
変革を嫌うフランス大統領は欧州の意志を損なう
だが、フランスの有権者の3分の1近くは、第1回投票で、反ユーロ、反グローバリゼーションを政策要綱に掲げるルペン氏とメランション氏に票を投じた。そしてオランダでは最近、極右のポピュリストであるヘルト・ウィルダース氏が、歳出削減を巡る対立で連立政権を崩壊させた。
オランダは基本方針としてはまだ緊縮財政を支持してはいるが、その方法について合意が得られていないのが実情だ。さらに、スペインとイタリアでも同様の反乱が起こり始めている。
オランド大統領が形勢を変化させ、緊縮財政の緩和に有利に働くことは考えられる。一方、オランド氏がドイツを警戒させ、反対方向へ進ませる可能性も、同じくらいある。
どちらにしても、1つだけはっきりしていることがある。これほど強硬に変革を嫌うフランス大統領は、ユーロ存続のためにいずれは受け入れなければならない痛みを伴う改革を実行しようという欧州の意志を損なうということだ。だからこそ、オランド氏はかなり危険な人物なのだ。
WSJ(日本版)でも、オランド氏が「財政協定」の見直しを唱えていて、近隣諸国の動きからも欧州の緊縮策の時代が近く終わりを告げるとの予測が強まっているが、ドイツ・メルケル首相が貫く財政規律堅持の方向は変わらないと見ている様です。
【ベルリン】フランスの大統領選挙で社会党候補のフランソワ・オランド氏が当選した結果、欧州の緊縮策の時代が近く終わりを告げるとの予測が強まっている。しかしそれをまともに信じるべきではない。
当選の夜の興奮が収まるころには、欧州の政策が大きく転換するとの一部の期待は、危機の時代のユーロ圏の政治という冷たい現実にとって替えられるだろう。つまり、ベルリン(ドイツ政府)が欧大陸の財布のひもを牛耳っているという現実だ。
緊縮路線の転換には、欧州の唯一の健全な経済大国であるドイツの支持が不可欠だ。しかしドイツのメルケル首相と同国政府は、ドイツ国民の抵抗を恐れており、フランスの大統領に誰が当選しようとも、緊縮路線の要求を緩めることはしないと最近数週間はっきり強調している。
例えばドイツ連立政権の一角である自由民主党(FDP)の財政政策専門家フォルカー・ウィッシング氏は「われわれはこれまで同様、この問題では譲歩しない」と述べ、「われわれは通貨(ユーロ)安定のために戦う。ドイツに関しては通貨を弱める可能性は全くない」と強調した。
欧州経済政策を牛耳っているのはメルケル首相と、同首相と連携している欧州中央銀行(ECB)のタカ派だ。そしてメルケル首相と同様に、ECBのドラギ総裁とドイツ連銀のワイドマン総裁は欧州構造改革を緩めたり、財政刺激策をとったり、ユーロ共同債を発行したりすることに反対している。
それでも、欧州の有権者の不満にもかかわらずドイツが強硬路線をとれば、フランスやユーロ圏のその他の国の反発を呼び、ユーロ防衛努力が損なわれる恐れもある。債務危機以前、ユーロ導入によってどれほど自らの国家主権を犠牲にするかを自覚している欧州の人々は少数だった。しかし過去2年間、ギリシャ、スペインなど苦境に陥った国では、ドイツの政治的・経済的な影響力が高まるにつれ、自国政府の力の欠如を深く自覚するようになった。
予想通り、ドイツのショイブレ財務相がユーロ圏の危機対応策を形成する場であるユーロ圏財務相会合の議長に就任すれば、欧州の諸政策に対するベルリンの影はさらに大きくなるだろう。
ドイツの政府当局者は既に、欧州金融安定基金(EFSF)を含めて、欧州の危機克服の枠組みにおいて重要な舵取り役になっている。
欧州の緊縮路線をやめようという欧州の一部政治家たちの要求の邪魔をしている障害は、決してドイツだけではない。投資家たちも、欧州が債務問題を克服してユーロを防衛できるか疑問視し続けている。
欧州が緊縮路線から逸脱すれば、金融市場でさらにユーロ売りを引き起こし、欧州各国政府による資金調達が高くつき、信用格付けが一層格下げリスクにさらされる公算が大きい。
フランスの大統領に当選したオランド氏は、欧州南部諸国のチャンピオンとして支持者たちに持ち上げられている。欧州南部諸国は、ドイツの緊縮路線という処方せんによって苦境に追い込まれている国々だ。
しかしオランド氏自身、ユーロ圏を緊縮路線から成長路線にシフトする具体策をほとんど提示していない。これは、欧州のレアルポリティーク(現実政治)と金融市場の圧力によって説明がつく面がある。
オランド氏は、欧州の「財政協定」の変更を呼び掛けた。同氏はその代わりに、欧州の弱い経済国に資金を融通するような「成長協定」の創設を訴えた。財政協定は、ユーロ圏の債務危機を解決するためのメルケル首相の政策の柱だ。
しかし、ドイツの実質的な支持なくして、このようなイニシアチブは張り子のトラにとどまる公算が大きい。
もしオランド氏がケインズ流の景気刺激プログラムに着手すれば、金融市場は財政再建というフランスの約束に対する信頼を失うだろう。借入コストを低く抑えるフランスの格付けも、リスクにさらされるだろう。
ドイツの世界経済研究所の主任エコノミスト、ヨアヒム・シャイデ氏は「オランド氏がその要求を最大限確保でき、欧州であらゆるものをひっくり返すことはないだろう」と予想している。
メルケル首相は、フランス大統領選挙でサルコジ大統領を支持していたが、オランド氏の下でもフランスとの提携関係を温存する意向を示唆している。ドイツとフランスは、オランド氏のメンツを立てるようなある種の成長協定を締結する公算が大きいが、メルケル首相の欧州政策を脱線させるようなことはしないだろう。
欧州の中道左派の間で人気のあるユーロ共通債に対するドイツの抵抗姿勢は変わらないだろう。ドイツ政府は、このような債券を発行すれば、ドイツは近隣諸国の債務を実質的に保証することを余儀なくされるわけで、ドイツ自身の安定をも損なう恐れがあると警戒している。
両紙とも、サルコジ氏からオランド氏に交代し、フランスの政策が変わっても、ドイツ主導の財政規律優先でのEUのユーロを護る方針は変わらないと言う見方で、オランド新大統領の掲げた政策の影響はないとの見方です。
しかし、ギリシャの議会選挙でも緊縮財政に反対する野党が大勝しています。
欧州の国々の人々は、緊縮財政で、ユーロや国債の格付けを護ることを拒否する人々が増えている様に見えます。それが世論なら、政治もその方向に向く可能性があります。
つまり、統一通貨ユーロに縛られたり、ドイツの指図での緊縮財政に各国の国民が反発していると考えられます。記事に言う、南部の国々の風潮はさておき、欧州と言えば厳しい環境規制に耐える例のように、遊爺は、堅実志向だとの印象を強く持っていたのですが、今回は様子が違う様です。
ドイツは単独通貨のマルク時代より、統一通貨のユーロになることで、実力より安い為替レートが実現されメリットを得てきたと言われています。
一方で、実力以上の高いレートのユーロに統一された国々が、今回破綻し始めているとも。輸出するものが高くなり競争力が落ち、輸入するものが安くなり、国内産品が厳しい競争にさらされたのですね。ユーロ(=ドイツ)の信用で、赤字国債が発行しやすくなったことが追い打ちをかけた。
ユーロを護ろうとするドイツ。そんなことより、自分たちの職が欲しい、暮らしをよくして欲しいと願い、それに迎合する政治家が選ばれる国が増えた。ドイツが孤立化しても、ユーロは護られるのでしょうか?
国ごとに財政が別々に運用されるのに、統一通貨が本当に必要なのでしょうか?
公務員を増やしたり、景気を良くして税収を増やすとバラマキ政策を推進したりで、はたして雇用が増えたり、財政の改善がなされるのでしょうか?
日本でも佳境を迎えている消費税率のアップ。反対派は、景気浮揚するまで駄目としていて、なにやらフランス、ギリシャの動向に喜びそうですが。これは、現政権を批判し、受けの良い政策を並べ、選挙に勝つためだけの政策。
そんな政策には、民主党への政権交代の失敗で、日本国民は懲りたはずなので、何度も騙され続ける国民はいないと思いますが、欧州では日本の政権交代の失敗が活かされていない様です。
ミッテラン氏を例に挙げ、社会党から生まれた大統領は、政権の座に就くと政策を改革的なものに変えると言う話もありますが、オランド氏はどうなのでしょう。
フランス大統領選挙結果の第一印象 オランド勝利の市場に対するインパクト - Market Hack
孤立するドイツが、EUとユーロの存続を護れるのか、EUの小康状態からの崩壊で、再度、世界経済が混乱するのか。目が離せませんね。
とりあえずは、株価や為替、国債の金利などですが、株価は予測された選挙結果で織り込み済みと言いながらも下げていますね。
この梅の花の名前は、九州林州
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