遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

電力自由化 発送電分離はバラ色なのか

2013-11-27 23:51:13 | 新エネルギー
 電力10社による寡占状況の日本の電力供給状況を改革するには、電力の自由化と発送電分離による競争原理の導入がバラ色の世界をもたらすと多くの専門家が唱え、その方向に進もうとしています。
 ところが、電力自由化・発送電分離を20年前に始めた英国では、今、価格が2倍に値上がりして国民の怒りに政府が追われているのだそうです。
 自由化ですから、企業は自由な活動が可能となり、利益追求に走ることが許され、エネルギーの輸入依存へのシフトによる環境変化による競争の淘汰の末、寡占化が進んだ結果なのだそうです。
 

なぜ、英国の電力価格は10年で2倍に上昇したのか:日経ビジネスオンライン

<前略>
過去10年で電力価格は2倍以上に

 「ビッグシックス」と呼ばれる英エネルギー大手6社のうち、ブリティッシュ・ガスを含む5社は既にガス・電力料金の値上げを発表しており、その平均値は8.2%。値上げ幅は、インフレ率の3倍以上にもなる。ビッグ・シックスは昨年も6~11%の値上げを実施している。下の図を見ていただきたい。2005年を100として、電力価格の上昇を指数化したものだ。昨年までに1.7倍。2000年と比較すると2倍以上に高騰している。
 国民の怒りの声を受けて、国会はビッグ・シックスのトップを呼んで、「カルテルのように振る舞っている」と批判した。それほど、今、英国ではエネルギー価格の上昇が政治問題となっている。ちなみに、
ビッグシックスの中で純粋な英国企業はブリティッシュ・ガスとSSEのみで、ほかはフランス、ドイツ、スペインの企業に所有されている
 
なぜ、これほどエネルギー価格が上がるのか。英国は、ガスも電力も市場を自由化して競争原理を導入し、消費者は多様な選択肢を手に入れたはず
ではなかったのか。
 デービッド・キャメロン英首相は、ビッグ・シックスへの不満を述べた上で、消費者に対して、値上げをする電力会社から別のサービスへ乗り換えることを奨励した。市場原理が働けば、ビッグ・シックスへのプレッシャーになると言うわけである。
 ところが、事態はそう単純ではない。エネルギー価格の上昇に苦しむ低所得者層を支援している慈善団体「フューエル・ポバティー・アクション」のクレア・ウェルトン氏は、次のように憤る。「サービスを乗り換えることは、問題解決にならない。ビッグ・シックスが市場を牛耳り、乗り換えたところで安くならない」。ビッグ・シックスは、英国のエネルギー市場の9割以上を押さえているのだ。

「値上げしなければ停電の危機」
 ブリティッシュ・ガスから届いた手紙には、値上げの理由が書かれている。要約してみると、次のような中身だ。
(1)エネルギー効率の向上を目指す政府の政策を実行するには、コストがかかる
(2)電力やガスを送るネットワークの改修が必要で、そのコストを賄うためにネットワークの使用料が上昇している
(3)エネルギー価格が不安定で、かつ、主要なマーケットで上昇している
 同社によれば、「料金を値上げしなければ、将来に向けて電力とガスを確保するための十分な投資ができない」という。

 だが、理由は本当にそれだけだろうか。
 これまで15年に渡って英国のエネルギー価格を研究してきたウォーリック・ビジネス・スクールのモニカ・ジュリエッティ准教授は、「確かに、ビッグ・シックスの言い分にも正しい面はある。英国のエネルギー価格は、英国が
エネルギーの純輸入国になり調達コストが上昇した2004年から値上がり始めている
。それに加えて、政府の環境・社会政策による市場介入が、コスト上昇要因になっている」と話す。確かに、先のグラフで見たとおり、価格の急激な上昇は2004年から始まっている。
 しかし、こうも付け加える。「
その一方で、コストがどのように計算されているのか非常に不透明だ。適切な価格を形成するための卸市場は、英国では十分に機能していない。そのような状況では、値上げがフェアなものかどうか、判断が難しい


 福島第1原子力発電所の事故を受けて、日本でも電力市場改革の議論が活発化している。まずは東京電力から、発電と送配電、小売り事業を分離する、いわゆる「発送電分離」を含む本格的な電力自由化に向けて動き出そうとしているようだ。
 実は、こうした
電力市場改革は、英国が世界に先駆けて実施してきた
歴史がある。1990年には発電事業が自由化され、98年には家庭向けも含む小売り事業の完全自由化が始まった。

世界の電力市場改革の手本、「英国モデル」
 英グリニッジ大学のスティーブ・トーマス教授によれば、90年代初頭における
電力自由化の「英国モデル」には、主に6つの柱
があった。
(1)価格形成の場としてのスポット卸市場の創設
(2)小売部門への競争原理を導入し消費者の選択肢を増やす
(3)送配電部門の分離
(4)発電部門と小売部門の分離
(5)独占が残る送配電部門への、適正価格形成のための規制を導入
(6)国有資産の民間投資家への売却
 この英国モデルは、電力市場改革の成功例として見られてきた。だが、自由化が始まってから20年の歳月を経て、
当初の理想からはかけ離れた状況が生まれている。ビッグ・シックスの間で十分な競争は起きておらず
、消費者が満足できる選択肢を提供できていない。もちろん、各社は様々なメニューを用意しているのだが、その中身は複雑で比較検討することすら容易ではない。冒頭の値上げにまつわる消費者の怒りは、英国モデルが正しく機能していないことの証左でもある。

 電力市場改革が始まる前、英国も日本と同じように電力会社が発電・送配電・小売りを一手に抱えていた。改革よって、発電会社、ナショナルグリッド(系統運用と送電を手がける独占企業)、地域配電会社(各家庭への配電と小売り)に一度は分割されたが、
合従連衡や外資の参入によって、次第に発電・配電・小売りを1社で抱える垂直統合型の企業が複数誕生
した。それが、現在のビック・シックスによる市場の独占に繋がっていく。
 最近では配電部門を専門のインフラ運営会社に売却する動きもあるが、
ビッグ・シックスは発電部門と小売部門、つまり電力の「生産」と「消費」の両方を押さえている。電力会社にとって大きなリスクは、発電量と電力消費のバランスが崩れることだ。電力が余れば安く卸市場で売らなければならず、足りなければ高値で買わなければならない。だから、卸市場で取り引きせず、自社で作った電力はすべて自社の顧客で消費されるように事業を展開したい。その点、上流と下流を両方を持つことは理にかなっている

 こうした状況下では、電力会社は自社の顧客が消費するだけの電力を発電すれば十分なため、新たな発電所を建設する投資インセンティブが働きにくい。電力が余らなければ卸市場で流通する電力は増えず、適正な価格を形成するための十分な流動性を確保できない。

電力市場改革は「発送電分離」だけでは不十分
 ジュリエッティ准教授は、「現在、英国が抱えている問題は、必ずしも民営化プロセスそのものではない。むしろ、発電会社が小売りを統合して、垂直統合的な売り手寡占の状況を作り出すことを許してしまった、改革後の政策にある」と話す。つまり、
電力市場改革は、「発送電分離」や「自由化」をするだけでは終わらない
。むしろ、それを出発点として、市場がうまく機能し続けるように、環境の変化に合わせながら、きめ細かな政策運営が必要になる。

 英国も、
自由化当初は欧州でも最も安い水準のエネルギー価格を享受したという。英国領内の北海で産出される豊富な安いガスが手に入り、それを使ったガス火力発電への投資も旺盛だった。それにより、新規参入の事業者も増えた。しかし、北海からのガスの産出が減るにつれてエネルギーを輸入しなければならなくなり、現在はもはや、かつてのような恵まれた状況にはない。老朽化した設備は更新せねばならず、再生エネルギーを普及させるためのコストもかさむ

 英国は、
電力の自由化に一歩踏み出してから既に20年以上が過ぎている。それでも、エネルギーを取り巻く状況が激変する中、今もエネルギーを安定供給するためには何が必要か、模索が続いている。これから電力市場改革を本腰を入れようという日本にとって、英国から学ぶべきことは多そうだ。

 電力改革の手本の「英国モデル」には6つの柱があったのだそうですね。日本で唱えられているのも同様のものですね。
 英国でも、一度は分割されたのですが、合従連衡や外資の参入によって、次第に発電・配電・小売りを1社で抱える垂直統合型の企業が複数誕生した。それが、現在のビック・シックスによる市場の独占に繋がったのだそうです。
 消費量と発電量を一致させるという電力の供給と消費の構造の宿命が、垂直統合型の企業形態が、企業の利益を追求すると到達するビジネスモデルなのだということなのですね。
 
 そして、淘汰され生き残った企業による寡占が生じ、不透明な原価計算の元、値上げがなされる。値上げの理由は、輸入エネルギーの高騰とインフラ維持コストの上昇。これは、日本の現状と変わりない。
 それどころか、自由化された企業活動のなかで行われていることなので、政府のコントロールも及び難い。つまり、日本で言えば、価格の許認可がある現状より悪化することになる。

 自由化による競争は、価格の下落を産む可能性もあるが、価格の上昇も自由化されるとの、小さな懸念の声がありましたが、20年先輩の英国で、今、価格の高騰の自由化現象が生じている。
 北海油田のガスという宝もなく、国内のエネルギー資源の乏しい(メタンハイドレードなどの期待はありますが)日本では、英国が自由化をスタートした環境はなく、厳しい淘汰が始まった環境と同じ環境にあると言って良いでしょう。淘汰の結果、外国企業に買収された環境と同じ状況といえるのです。

 20年前にスタートして今日に至った英国の貴重な例は、記事が指摘するように、おおいに学ばねばなりませんね。



 # 冒頭の画像は、JAMSTEC地球深部探査センターの「ちきゅう」




  この花の名前は、ペンタスの白花


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