
香港紙「明報」(7月11日付)が、秋の党大会で正式に習近平に「人民領袖」の尊称が使われるようになると報じ、習近平の第3期目総書記連任は確実だという中国政治学者の意見を引用した。
果たして本当に習近平総書記の3期目の連任は確実になったのだろうかと福島さん。中国共産党の秋の党大会を踏まえての、習近平が目指す終身権力者の道について解説いただいています。
習近平を「人民領袖」と呼ぶことが決定するという明報の特ダネ報道については、まもなく中国中央テレビ(CCTV)が人民領袖という言葉を使い出したので、まったくのフェイクというわけではなさそうだと福島さん。
7月14日、CCTVサイトは、特集コーナー「人民領袖」特別報道「この十年」のページを設け、習近平の大国領袖としての魅力を大宣伝し始めた。習近平が毛沢東の後を継いで領袖の称号を受ける第2の中国共産党指導者になると、周りも言い出したのだそうです。
習近平が「領袖」と呼ばれるとしたら、中国共産党史上3人目の「生前に『領袖』の称号をつけられたリーダー」ということになり、その呼称は「総書記」を超える絶対的権力者のイメージを定着させることになるだろうと。
複数の北京内部筋の話として、習近平が総書記を連任することになったほか、「党の核心」「軍隊総帥」という称号に加えて「人民の領袖」という呼び方を正式に習近平の呼称の冠に加えることを決定。また「一つの国家、一つの政党、一人の領袖が重要である」という宣伝フレーズも定着させるとも。
明報のこの特ダネのソースには解放軍関係者も含まれており、この人物によると、両岸(中台)統一を果たしてこその「人民領袖」であり、人民領袖を名乗る以上は中台統一を果たさねばならない。中台統一の実現が習近平にとっての「実到名帰」となると語ったそうだ。習近平を「人民領袖」と位置付けるアイデアは、解放軍の主要な人物が後押ししたというと福島さん。
習近平は、台湾方略を発表し、それを実現するために、鄧小平が決めた集団指導体制の枠組みを破って、これまで前例のない、総書記、国家主席、党中央軍事委員会主席の「三職」の3期続投を党中央が容認する、という形になるのではないか。いずれにしても台湾海峡を戦争の暗雲がにわかに覆うことになるだろうと。
陳銀道の発言をもう少し引用すると、習近平は早くても第22回党大会(2032年秋)まで総書記の座に残り、たとえ引退しても「領袖」「党の核心」という尊称を維持し、党内で依然として強大な影響力を保持し、鄧小平のようになるだろう、とした。そしてその影響力は習近平が生きている限り継続するであろう、と。
鄧小平は生きている間は圧倒的権力者だったが、その時の鄧小平は何の肩書もなく、それまで築いてきた実績のみで権力を維持してきた。習近平が最終目標とするのは、毛沢東のような終身主席だが、仮に引退せざるを得ない状況になったとしても、鄧小平のように圧倒的影響力を死ぬまで持ち続けたい、という願いがあり、この「人民領袖」称号の正式化はその願望に向けた第一歩というわけだとも。
明報の特ダネ通り、本当に習近平は3期目を続投し、「人民領袖」と呼ばれるようになるのだろうかと福島さん。
ゼロコロナ政策の失敗が誰の目からも明らかで、第2四半期の経済成長が0.4%と2020年の武漢市ロックダウン時期以来の低さで、不動産バブル崩壊寸前で、一部銀行で預金封鎖のような事態も起きているような状況で、習近平にもう5年あるいは10年、中国と党の舵取りを任せることを党中央として容認できるのか。
国民は?
ある北京政治ウォッチャーが明報に語ったところによれば、これまでの共産党機構の枠組み調整で、すでに習近平は長期執政のための下準備を終えている、という。
これは想像するに、解放軍と公安部、中国共産党用語で言うところの「銃」と「刀」に加えて、「筆」の「宣伝(メディア)」を押さえているということではないだろうかと福島さん。
公安部の掌握については、公安システムのトップに、習近平に忠実な王小洪が就くならば、「刀」の柄はしっかり握った、ということになる。
軍に関しては、許其亮、張又侠ら2人の党中央軍事委員会副主席が習近平派だが、台湾武力統一放棄論を主張していた劉亜洲退役上将がいまだ「失踪中」という状況に、軍内は本当に納得しているのかどうか。習近平が命令すれば、「台湾同胞」に銃やミサイルを向けることができるのだろうか。そもそもロシアですら小国ウクライナに仕掛けた戦争にてこずり泥沼化しているというのに、人民解放軍が口でいうように72時間以内に台湾侵攻を成功させることができる、と思っているのだろうかと福島さん。
そして「筆」であるメディアは本当に掌握できているのか。確かにCCTVなどが盛んに「人民領袖」という言葉を使い出している。だが「人民日報」の1面を毎日眺めていると、国有メディアすべてが掌握されているというふうでもないようだと。
たとえば、7月17日付けの人民日報1面、全国見義勇為英雄模範表彰大会という公安系の催しを報じる記事で、出席者の名前から、明らかに意図的に王小洪・公安部長の名前が消されていた。
王小洪は習近平の腹心中の腹心であり、その省略は習近平否定の意味だとチャイナウォッチャーたちが騒いでいたと福島さん。
そう考えると、習近平3期目続投決定というにはまだ時期尚早かもしれない。明報もすでに中国共産党の世論誘導メディアに成り下がっていることは隠しようがないと。
今の中国の経済社会の混乱ぶり、国際社会の孤立ぶりを見れば、誰も指導者なんかになって習近平失政の後始末の責任を負いたくないだろうと福島さん。
中国による台湾武力統一など戦争が起きたり、世界恐慌の引き金となるような経済ショックが起きたりするかもしれないと思うと、どうか中国の真面目な官僚政治家は、人民のために習近平時代にピリオドを打って、中国をよりましな軌道に乗せる努力を放棄しないでしてほしいと、一衣帯水の隣国民としても願うと。
習近平時代にピリオドを打って、取って代われるのは、鄧小平の流れを継ぐ、共青団派。
李克強氏や、ホープと期待されている胡春華氏他の台頭が待たれますね。
【石平のChina Watch】勢い増す共青団 胡春華氏、汪洋氏 習近平氏側近も加わりポスト李克強氏争いは混沌か(1/3ページ) - 産経ニュース
# 暴徒の画像は、香港返還から25年の記念式典に出席した習近平国家主席

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果たして本当に習近平総書記の3期目の連任は確実になったのだろうかと福島さん。中国共産党の秋の党大会を踏まえての、習近平が目指す終身権力者の道について解説いただいています。
習近平が終身権力者になる前触れ? 中国メディアが使い始めた、ある尊称 「人民領袖」となる習近平、総書記3期連任は確実になったのか | JBpress (ジェイビープレス) 2022.7.21(木) 福島 香織:ジャーナリスト
中国共産党の秋の党大会はどうやら10月末頃に行われるようだ。情報筋からそういう観測がだんだん伝わり始めた。
香港英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」(7月18日付)が特ダネとして、習近平が11月に欧州4カ国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)の首脳を北京に招くことを決定したと報じた。多くのチャイナウォッチャーたちがこの報道を、習近平が秋の党大会を乗り越えて総書記任期3期目を継続することが確定しているという予測の補強材料にしている。もっとも、7月19日にこの件について記者が外交部定例記者会見で質問したとき、趙立堅報道官は「どこからの情報だ? フェイクニュースだ」と一蹴している。
加えて香港紙「明報」(7月11日付)が、秋の党大会で正式に習近平に「人民領袖」の尊称が使われるようになると報じ、習近平の第3期目総書記連任は確実だという中国政治学者の意見を引用した。
果たして本当に習近平総書記の3期目の連任は確実になったのだろうか。
中国共産党史上3人目の「絶対的権力者」に?
習近平を「人民領袖」と呼ぶことが決定するという明報の特ダネ報道については、まもなく中国中央テレビ(CCTV)が人民領袖という言葉を使い出したので、まったくのフェイクというわけではなさそうだ。
7月14日、CCTVサイトは、特集コーナー「人民領袖」特別報道「この十年」のページを設け、習近平の大国領袖としての魅力を大宣伝し始めた。習近平が毛沢東の後を継いで領袖の称号を受ける第2の中国共産党指導者になると、周りも言い出した。
厳密に言うと「領袖」という称号は、毛沢東だけが使っていたわけではない。共産党史においては、毛沢東、周恩来、劉少奇、鄧小平、朱徳、陳雲の6人については領袖という呼称が使われる。ただ毛沢東は「偉大なる領袖、指導者」と生前から奉られていた。この例を除けば、毛沢東が指名した後継者(と本人が主張する)華国鋒が数年だけ「英明なる領袖」と呼ばれただけだった。
習近平が「領袖」と呼ばれるとしたら、中国共産党史上3人目の「生前に『領袖』の称号をつけられたリーダー」ということになり、その呼称は「総書記」を超える絶対的権力者のイメージを定着させることになるだろう。
習近平に中台統一を果たしてほしい解放軍
明報の報道を参考にすると、複数の北京内部筋の話として、習近平が総書記を連任することになったほか、「党の核心」「軍隊総帥」という称号に加えて「人民の領袖」という呼び方を正式に習近平の呼称の冠に加えることを決定。また「一つの国家、一つの政党、一人の領袖が重要である」という宣伝フレーズも定着させるという。
上海政法学院の元副教授の陳道銀は「今年(2022年)秋の第20回党大会で、習近平は毛沢東の地位を追うために、鄧小平の決めた“制限”を必ず突破せねばならない。すなわち『終身制を行わず、隔世(10年若い世代)の後継者を指名し、集団指導を行う』という制限だ。このために、旗を振り吶喊(とっかん)し、党代表に勢いをつける必要がある」と明報紙上で解説していた。
明報のこの特ダネのソースには解放軍関係者も含まれており、この人物によると「中共武装パワー(解放軍)内では高度のコンセンサスがあり、習近平が中国の舵取りをするなら台湾海峡両岸問題を解決してほしいと望んでいる」という。
つまり、両岸(中台)統一を果たしてこその「人民領袖」であり、人民領袖を名乗る以上は中台統一を果たさねばならない。中台統一の実現が習近平にとっての「実到名帰」となる(実際の成果をもって、その名誉の裏付けとする=名実ともに人民領袖になる)と語ったそうだ。習近平を「人民領袖」と位置付けるアイデアは、解放軍の主要な人物が後押ししたという。
そうなると、習近平は党大会の前後で、台湾武力統一へのアクションを起こしてみせることになるかもしれない。少なくとも党大会において、中台統一についてタイムリミットを含めた台湾方略を発表し、習近平がそれを実現するために、鄧小平が決めた集団指導体制の枠組みを破って、これまで前例のない、総書記、国家主席、党中央軍事委員会主席の「三職」の3期続投を党中央が容認する、という形になるのではないか。いずれにしても台湾海峡を戦争の暗雲がにわかに覆うことになるだろう。
今年から本格化していた「領袖」呼び
この報道を受けて陳道銀は「習近平が第20回党大会で総書記を続投できるのは疑いない」と断言していた。
陳銀道の発言をもう少し引用すると、習近平は早くても第22回党大会(2032年秋)まで総書記の座に残り、たとえ引退しても「領袖」「党の核心」という尊称を維持し、党内で依然として強大な影響力を保持し、鄧小平のようになるだろう、とした。そしてその影響力は習近平が生きている限り継続するであろう、と。
鄧小平は天安門事件後の党の立て直しのために、江沢民という凡庸な元上海市書記を総書記に抜擢し、国家主席と党中央軍事委員会主席の3つの職位を兼任させた。これは凡庸な官僚に、重い3つの職責と権力を兼任させることで、政治的野心をもつ李鵬のような政治家を牽制しようという鄧小平のアイデアだった。一方で、江沢民自身は自分の凡庸さ、無力さを痛いほど知っているので、職務と責任を他の官僚政治家たちと分担し、周囲の意見も謙虚に聞くようになる。水と油のように仲の悪い江沢民と朱鎔基が、不思議にもうまくかみ合ったのは、ひとえに江沢民が自分の官僚としての能力の低さと朱鎔基の能力の高さを理解していたからだった。こうした凡庸な官僚政治家集団による党と国家の運営は、権力闘争を、党の団結を破壊しない程度の派閥争いの形に納める効果があった。
鄧小平は生きている間は圧倒的権力者だったが、その時の鄧小平は何の肩書もなく、それまで築いてきた実績のみで権力を維持してきた。習近平が最終目標とするのは、毛沢東のような終身主席だが、仮に引退せざるを得ない状況になったとしても、鄧小平のように圧倒的影響力を死ぬまで持ち続けたい、という願いがあり、この「人民領袖」称号の正式化はその願望に向けた第一歩というわけだ。
習近平は、2016年10月の第18期六中全会で、自らを「党中央の核心」と呼ぶことを確立させた。この習近平の核心呼び、つまり「習核心」は、当初は共産党の禁じる個人崇拝の復活として党内でひどく物議をかもした。だが、「習家軍」と呼ばれる習近平の腹心が臆面なく「習核心キャンペーン」を展開し、その結果、2018年には「2つの擁護」(習近平の党中央の核心、全党の核心的地位を擁護する/党の権威と集中統一指導を擁護する)にまとめられ、2021年の第19期六中全会では「2つの確立」(習近平同志を党中央の核心として、全党の核心的地位として確立する/習近平新時代の特色ある中国社会主義思想の指導的地位を確立する)が打ち出された。
一方で、2017年7月、内モンゴル朱日和合同訓練基地における建軍90周年の閲兵式で、范長龍・中央軍事委員会副主席(当時)が「領袖の嘱託、統帥の号令を銘記せよ」と全軍に呼び掛け、習近平を「領袖」「統帥」と呼び始めた。このときはまだ「領袖」呼びは定着しなかったが「全軍統帥」の呼称はたびたび使われるようになった。
「領袖」呼びは今年から本格化していた。広西チワン族自治区における党委員会の第3回会議コミュニケが発表されたが、その中で「会議では、職責を尽くし高度な政治的自覚をもって党性を練り上げ、核心に忠誠をもち、永遠に領袖を擁護して戴き、領袖を守り、領袖に追随する」と、領袖という言葉を使い始めた。もっとも当時は、この習近平人民領袖キャンペーンは文革時代を思い出すと不評で、なんとなく立ち消えた感がある。
「銃」と「刀」に加えて「筆」も掌握?
さて、明報の特ダネ通り、本当に習近平は3期目を続投し、「人民領袖」と呼ばれるようになるのだろうか。
ゼロコロナ政策の失敗が誰の目からも明らかで、第2四半期の経済成長が0.4%と2020年の武漢市ロックダウン時期以来の低さで、不動産バブル崩壊寸前で、一部銀行で預金封鎖のような事態も起きているような状況で、習近平にもう5年あるいは10年、中国と党の舵取りを任せることを党中央として容認できるのだろうか。
ある北京政治ウォッチャーが明報に語ったところによれば、これまでの共産党機構の枠組み調整で、すでに習近平は長期執政のための下準備を終えている、という。
これは想像するに、解放軍と公安部、中国共産党用語で言うところの「銃」と「刀」に加えて、「筆」の「宣伝(メディア)」を押さえているということではないだろうか。
公安部の掌握については、習近平の腹心である王小洪が先日、公安部長に昇進し、来る党大会で党中央政法委員会書記と国務委員に出世するかもしれない、と噂になっている。公安システムのトップに、習近平に忠実な王小洪が就くならば、「刀」の柄はしっかり握った、ということになる。
軍に関しては、許其亮、張又侠ら2人の党中央軍事委員会副主席が習近平派であるから掌握している、と見る人も多いだろう、だが台湾武力統一放棄論を主張していた劉亜洲退役上将がいまだ「失踪中」という状況に、軍内は本当に納得しているのかどうか。習近平が命令すれば、「台湾同胞」に銃やミサイルを向けることができるのだろうか。そもそもロシアですら小国ウクライナに仕掛けた戦争にてこずり泥沼化しているというのに、人民解放軍が口でいうように72時間以内に台湾侵攻を成功させることができる、と思っているのだろうか。
そして「筆」であるメディアは本当に掌握できているのか。確かにCCTVなどが盛んに「人民領袖」という言葉を使い出している。だが「人民日報」の1面を毎日眺めていると、国有メディアすべてが掌握されているというふうでもないようだ。
たとえば、7月17日付けの人民日報1面、全国見義勇為英雄模範表彰大会という公安系の催しを報じる記事で、出席者の名前から、明らかに意図的に王小洪・公安部長の名前が消されていた。王小洪が出席していることは「法制日報」の記事で確認できる。出席者名が記事の字数制限上、省略されることはありうるとしても、王小洪は公安システムにおいては現政法委員会書記の郭声琨、国務委員で政法委員会副主席の趙克志に続く事実上ナンバー3。王小洪より序列の低い出席者の名前は書かれていることから、意図をもって王小洪を省略したということだ。王小洪は習近平の腹心中の腹心であり、その省略は習近平否定の意味だとチャイナウォッチャーたちが騒いでいた。
そう考えると、習近平3期目続投決定というにはまだ時期尚早かもしれない。明報もすでに中国共産党の世論誘導メディアに成り下がっていることは隠しようがなく、こうした特ダネも、政治的目的を持ったフェイクニュースや観測気球の可能性はあろう。
思うに、今の中国の経済社会の混乱ぶり、国際社会の孤立ぶりを見れば、誰も指導者なんかになって習近平失政の後始末の責任を負いたくないだろう。匙を投げて、習近平さんにお任せ、としたほうが楽に違いない。だが、そのプロセスで、中国による台湾武力統一など戦争が起きたり、世界恐慌の引き金となるような経済ショックが起きたりするかもしれないと思うと、どうか中国の真面目な官僚政治家は、人民のために習近平時代にピリオドを打って、中国をよりましな軌道に乗せる努力を放棄しないでしてほしいと、一衣帯水の隣国民としても願うのだ。
中国共産党の秋の党大会はどうやら10月末頃に行われるようだ。情報筋からそういう観測がだんだん伝わり始めた。
香港英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」(7月18日付)が特ダネとして、習近平が11月に欧州4カ国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)の首脳を北京に招くことを決定したと報じた。多くのチャイナウォッチャーたちがこの報道を、習近平が秋の党大会を乗り越えて総書記任期3期目を継続することが確定しているという予測の補強材料にしている。もっとも、7月19日にこの件について記者が外交部定例記者会見で質問したとき、趙立堅報道官は「どこからの情報だ? フェイクニュースだ」と一蹴している。
加えて香港紙「明報」(7月11日付)が、秋の党大会で正式に習近平に「人民領袖」の尊称が使われるようになると報じ、習近平の第3期目総書記連任は確実だという中国政治学者の意見を引用した。
果たして本当に習近平総書記の3期目の連任は確実になったのだろうか。
中国共産党史上3人目の「絶対的権力者」に?
習近平を「人民領袖」と呼ぶことが決定するという明報の特ダネ報道については、まもなく中国中央テレビ(CCTV)が人民領袖という言葉を使い出したので、まったくのフェイクというわけではなさそうだ。
7月14日、CCTVサイトは、特集コーナー「人民領袖」特別報道「この十年」のページを設け、習近平の大国領袖としての魅力を大宣伝し始めた。習近平が毛沢東の後を継いで領袖の称号を受ける第2の中国共産党指導者になると、周りも言い出した。
厳密に言うと「領袖」という称号は、毛沢東だけが使っていたわけではない。共産党史においては、毛沢東、周恩来、劉少奇、鄧小平、朱徳、陳雲の6人については領袖という呼称が使われる。ただ毛沢東は「偉大なる領袖、指導者」と生前から奉られていた。この例を除けば、毛沢東が指名した後継者(と本人が主張する)華国鋒が数年だけ「英明なる領袖」と呼ばれただけだった。
習近平が「領袖」と呼ばれるとしたら、中国共産党史上3人目の「生前に『領袖』の称号をつけられたリーダー」ということになり、その呼称は「総書記」を超える絶対的権力者のイメージを定着させることになるだろう。
習近平に中台統一を果たしてほしい解放軍
明報の報道を参考にすると、複数の北京内部筋の話として、習近平が総書記を連任することになったほか、「党の核心」「軍隊総帥」という称号に加えて「人民の領袖」という呼び方を正式に習近平の呼称の冠に加えることを決定。また「一つの国家、一つの政党、一人の領袖が重要である」という宣伝フレーズも定着させるという。
上海政法学院の元副教授の陳道銀は「今年(2022年)秋の第20回党大会で、習近平は毛沢東の地位を追うために、鄧小平の決めた“制限”を必ず突破せねばならない。すなわち『終身制を行わず、隔世(10年若い世代)の後継者を指名し、集団指導を行う』という制限だ。このために、旗を振り吶喊(とっかん)し、党代表に勢いをつける必要がある」と明報紙上で解説していた。
明報のこの特ダネのソースには解放軍関係者も含まれており、この人物によると「中共武装パワー(解放軍)内では高度のコンセンサスがあり、習近平が中国の舵取りをするなら台湾海峡両岸問題を解決してほしいと望んでいる」という。
つまり、両岸(中台)統一を果たしてこその「人民領袖」であり、人民領袖を名乗る以上は中台統一を果たさねばならない。中台統一の実現が習近平にとっての「実到名帰」となる(実際の成果をもって、その名誉の裏付けとする=名実ともに人民領袖になる)と語ったそうだ。習近平を「人民領袖」と位置付けるアイデアは、解放軍の主要な人物が後押ししたという。
そうなると、習近平は党大会の前後で、台湾武力統一へのアクションを起こしてみせることになるかもしれない。少なくとも党大会において、中台統一についてタイムリミットを含めた台湾方略を発表し、習近平がそれを実現するために、鄧小平が決めた集団指導体制の枠組みを破って、これまで前例のない、総書記、国家主席、党中央軍事委員会主席の「三職」の3期続投を党中央が容認する、という形になるのではないか。いずれにしても台湾海峡を戦争の暗雲がにわかに覆うことになるだろう。
今年から本格化していた「領袖」呼び
この報道を受けて陳道銀は「習近平が第20回党大会で総書記を続投できるのは疑いない」と断言していた。
陳銀道の発言をもう少し引用すると、習近平は早くても第22回党大会(2032年秋)まで総書記の座に残り、たとえ引退しても「領袖」「党の核心」という尊称を維持し、党内で依然として強大な影響力を保持し、鄧小平のようになるだろう、とした。そしてその影響力は習近平が生きている限り継続するであろう、と。
鄧小平は天安門事件後の党の立て直しのために、江沢民という凡庸な元上海市書記を総書記に抜擢し、国家主席と党中央軍事委員会主席の3つの職位を兼任させた。これは凡庸な官僚に、重い3つの職責と権力を兼任させることで、政治的野心をもつ李鵬のような政治家を牽制しようという鄧小平のアイデアだった。一方で、江沢民自身は自分の凡庸さ、無力さを痛いほど知っているので、職務と責任を他の官僚政治家たちと分担し、周囲の意見も謙虚に聞くようになる。水と油のように仲の悪い江沢民と朱鎔基が、不思議にもうまくかみ合ったのは、ひとえに江沢民が自分の官僚としての能力の低さと朱鎔基の能力の高さを理解していたからだった。こうした凡庸な官僚政治家集団による党と国家の運営は、権力闘争を、党の団結を破壊しない程度の派閥争いの形に納める効果があった。
鄧小平は生きている間は圧倒的権力者だったが、その時の鄧小平は何の肩書もなく、それまで築いてきた実績のみで権力を維持してきた。習近平が最終目標とするのは、毛沢東のような終身主席だが、仮に引退せざるを得ない状況になったとしても、鄧小平のように圧倒的影響力を死ぬまで持ち続けたい、という願いがあり、この「人民領袖」称号の正式化はその願望に向けた第一歩というわけだ。
習近平は、2016年10月の第18期六中全会で、自らを「党中央の核心」と呼ぶことを確立させた。この習近平の核心呼び、つまり「習核心」は、当初は共産党の禁じる個人崇拝の復活として党内でひどく物議をかもした。だが、「習家軍」と呼ばれる習近平の腹心が臆面なく「習核心キャンペーン」を展開し、その結果、2018年には「2つの擁護」(習近平の党中央の核心、全党の核心的地位を擁護する/党の権威と集中統一指導を擁護する)にまとめられ、2021年の第19期六中全会では「2つの確立」(習近平同志を党中央の核心として、全党の核心的地位として確立する/習近平新時代の特色ある中国社会主義思想の指導的地位を確立する)が打ち出された。
一方で、2017年7月、内モンゴル朱日和合同訓練基地における建軍90周年の閲兵式で、范長龍・中央軍事委員会副主席(当時)が「領袖の嘱託、統帥の号令を銘記せよ」と全軍に呼び掛け、習近平を「領袖」「統帥」と呼び始めた。このときはまだ「領袖」呼びは定着しなかったが「全軍統帥」の呼称はたびたび使われるようになった。
「領袖」呼びは今年から本格化していた。広西チワン族自治区における党委員会の第3回会議コミュニケが発表されたが、その中で「会議では、職責を尽くし高度な政治的自覚をもって党性を練り上げ、核心に忠誠をもち、永遠に領袖を擁護して戴き、領袖を守り、領袖に追随する」と、領袖という言葉を使い始めた。もっとも当時は、この習近平人民領袖キャンペーンは文革時代を思い出すと不評で、なんとなく立ち消えた感がある。
「銃」と「刀」に加えて「筆」も掌握?
さて、明報の特ダネ通り、本当に習近平は3期目を続投し、「人民領袖」と呼ばれるようになるのだろうか。
ゼロコロナ政策の失敗が誰の目からも明らかで、第2四半期の経済成長が0.4%と2020年の武漢市ロックダウン時期以来の低さで、不動産バブル崩壊寸前で、一部銀行で預金封鎖のような事態も起きているような状況で、習近平にもう5年あるいは10年、中国と党の舵取りを任せることを党中央として容認できるのだろうか。
ある北京政治ウォッチャーが明報に語ったところによれば、これまでの共産党機構の枠組み調整で、すでに習近平は長期執政のための下準備を終えている、という。
これは想像するに、解放軍と公安部、中国共産党用語で言うところの「銃」と「刀」に加えて、「筆」の「宣伝(メディア)」を押さえているということではないだろうか。
公安部の掌握については、習近平の腹心である王小洪が先日、公安部長に昇進し、来る党大会で党中央政法委員会書記と国務委員に出世するかもしれない、と噂になっている。公安システムのトップに、習近平に忠実な王小洪が就くならば、「刀」の柄はしっかり握った、ということになる。
軍に関しては、許其亮、張又侠ら2人の党中央軍事委員会副主席が習近平派であるから掌握している、と見る人も多いだろう、だが台湾武力統一放棄論を主張していた劉亜洲退役上将がいまだ「失踪中」という状況に、軍内は本当に納得しているのかどうか。習近平が命令すれば、「台湾同胞」に銃やミサイルを向けることができるのだろうか。そもそもロシアですら小国ウクライナに仕掛けた戦争にてこずり泥沼化しているというのに、人民解放軍が口でいうように72時間以内に台湾侵攻を成功させることができる、と思っているのだろうか。
そして「筆」であるメディアは本当に掌握できているのか。確かにCCTVなどが盛んに「人民領袖」という言葉を使い出している。だが「人民日報」の1面を毎日眺めていると、国有メディアすべてが掌握されているというふうでもないようだ。
たとえば、7月17日付けの人民日報1面、全国見義勇為英雄模範表彰大会という公安系の催しを報じる記事で、出席者の名前から、明らかに意図的に王小洪・公安部長の名前が消されていた。王小洪が出席していることは「法制日報」の記事で確認できる。出席者名が記事の字数制限上、省略されることはありうるとしても、王小洪は公安システムにおいては現政法委員会書記の郭声琨、国務委員で政法委員会副主席の趙克志に続く事実上ナンバー3。王小洪より序列の低い出席者の名前は書かれていることから、意図をもって王小洪を省略したということだ。王小洪は習近平の腹心中の腹心であり、その省略は習近平否定の意味だとチャイナウォッチャーたちが騒いでいた。
そう考えると、習近平3期目続投決定というにはまだ時期尚早かもしれない。明報もすでに中国共産党の世論誘導メディアに成り下がっていることは隠しようがなく、こうした特ダネも、政治的目的を持ったフェイクニュースや観測気球の可能性はあろう。
思うに、今の中国の経済社会の混乱ぶり、国際社会の孤立ぶりを見れば、誰も指導者なんかになって習近平失政の後始末の責任を負いたくないだろう。匙を投げて、習近平さんにお任せ、としたほうが楽に違いない。だが、そのプロセスで、中国による台湾武力統一など戦争が起きたり、世界恐慌の引き金となるような経済ショックが起きたりするかもしれないと思うと、どうか中国の真面目な官僚政治家は、人民のために習近平時代にピリオドを打って、中国をよりましな軌道に乗せる努力を放棄しないでしてほしいと、一衣帯水の隣国民としても願うのだ。
習近平を「人民領袖」と呼ぶことが決定するという明報の特ダネ報道については、まもなく中国中央テレビ(CCTV)が人民領袖という言葉を使い出したので、まったくのフェイクというわけではなさそうだと福島さん。
7月14日、CCTVサイトは、特集コーナー「人民領袖」特別報道「この十年」のページを設け、習近平の大国領袖としての魅力を大宣伝し始めた。習近平が毛沢東の後を継いで領袖の称号を受ける第2の中国共産党指導者になると、周りも言い出したのだそうです。
習近平が「領袖」と呼ばれるとしたら、中国共産党史上3人目の「生前に『領袖』の称号をつけられたリーダー」ということになり、その呼称は「総書記」を超える絶対的権力者のイメージを定着させることになるだろうと。
複数の北京内部筋の話として、習近平が総書記を連任することになったほか、「党の核心」「軍隊総帥」という称号に加えて「人民の領袖」という呼び方を正式に習近平の呼称の冠に加えることを決定。また「一つの国家、一つの政党、一人の領袖が重要である」という宣伝フレーズも定着させるとも。
明報のこの特ダネのソースには解放軍関係者も含まれており、この人物によると、両岸(中台)統一を果たしてこその「人民領袖」であり、人民領袖を名乗る以上は中台統一を果たさねばならない。中台統一の実現が習近平にとっての「実到名帰」となると語ったそうだ。習近平を「人民領袖」と位置付けるアイデアは、解放軍の主要な人物が後押ししたというと福島さん。
習近平は、台湾方略を発表し、それを実現するために、鄧小平が決めた集団指導体制の枠組みを破って、これまで前例のない、総書記、国家主席、党中央軍事委員会主席の「三職」の3期続投を党中央が容認する、という形になるのではないか。いずれにしても台湾海峡を戦争の暗雲がにわかに覆うことになるだろうと。
陳銀道の発言をもう少し引用すると、習近平は早くても第22回党大会(2032年秋)まで総書記の座に残り、たとえ引退しても「領袖」「党の核心」という尊称を維持し、党内で依然として強大な影響力を保持し、鄧小平のようになるだろう、とした。そしてその影響力は習近平が生きている限り継続するであろう、と。
鄧小平は生きている間は圧倒的権力者だったが、その時の鄧小平は何の肩書もなく、それまで築いてきた実績のみで権力を維持してきた。習近平が最終目標とするのは、毛沢東のような終身主席だが、仮に引退せざるを得ない状況になったとしても、鄧小平のように圧倒的影響力を死ぬまで持ち続けたい、という願いがあり、この「人民領袖」称号の正式化はその願望に向けた第一歩というわけだとも。
明報の特ダネ通り、本当に習近平は3期目を続投し、「人民領袖」と呼ばれるようになるのだろうかと福島さん。
ゼロコロナ政策の失敗が誰の目からも明らかで、第2四半期の経済成長が0.4%と2020年の武漢市ロックダウン時期以来の低さで、不動産バブル崩壊寸前で、一部銀行で預金封鎖のような事態も起きているような状況で、習近平にもう5年あるいは10年、中国と党の舵取りを任せることを党中央として容認できるのか。
国民は?
ある北京政治ウォッチャーが明報に語ったところによれば、これまでの共産党機構の枠組み調整で、すでに習近平は長期執政のための下準備を終えている、という。
これは想像するに、解放軍と公安部、中国共産党用語で言うところの「銃」と「刀」に加えて、「筆」の「宣伝(メディア)」を押さえているということではないだろうかと福島さん。
公安部の掌握については、公安システムのトップに、習近平に忠実な王小洪が就くならば、「刀」の柄はしっかり握った、ということになる。
軍に関しては、許其亮、張又侠ら2人の党中央軍事委員会副主席が習近平派だが、台湾武力統一放棄論を主張していた劉亜洲退役上将がいまだ「失踪中」という状況に、軍内は本当に納得しているのかどうか。習近平が命令すれば、「台湾同胞」に銃やミサイルを向けることができるのだろうか。そもそもロシアですら小国ウクライナに仕掛けた戦争にてこずり泥沼化しているというのに、人民解放軍が口でいうように72時間以内に台湾侵攻を成功させることができる、と思っているのだろうかと福島さん。
そして「筆」であるメディアは本当に掌握できているのか。確かにCCTVなどが盛んに「人民領袖」という言葉を使い出している。だが「人民日報」の1面を毎日眺めていると、国有メディアすべてが掌握されているというふうでもないようだと。
たとえば、7月17日付けの人民日報1面、全国見義勇為英雄模範表彰大会という公安系の催しを報じる記事で、出席者の名前から、明らかに意図的に王小洪・公安部長の名前が消されていた。
王小洪は習近平の腹心中の腹心であり、その省略は習近平否定の意味だとチャイナウォッチャーたちが騒いでいたと福島さん。
そう考えると、習近平3期目続投決定というにはまだ時期尚早かもしれない。明報もすでに中国共産党の世論誘導メディアに成り下がっていることは隠しようがないと。
今の中国の経済社会の混乱ぶり、国際社会の孤立ぶりを見れば、誰も指導者なんかになって習近平失政の後始末の責任を負いたくないだろうと福島さん。
中国による台湾武力統一など戦争が起きたり、世界恐慌の引き金となるような経済ショックが起きたりするかもしれないと思うと、どうか中国の真面目な官僚政治家は、人民のために習近平時代にピリオドを打って、中国をよりましな軌道に乗せる努力を放棄しないでしてほしいと、一衣帯水の隣国民としても願うと。
習近平時代にピリオドを打って、取って代われるのは、鄧小平の流れを継ぐ、共青団派。
李克強氏や、ホープと期待されている胡春華氏他の台頭が待たれますね。
【石平のChina Watch】勢い増す共青団 胡春華氏、汪洋氏 習近平氏側近も加わりポスト李克強氏争いは混沌か(1/3ページ) - 産経ニュース
# 暴徒の画像は、香港返還から25年の記念式典に出席した習近平国家主席

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