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マレーシアで9日実施された選挙で野党が予想外の勝利を収めたのは、1957年の独立から続いた、統一マレー国民組織(UMNO)の一党支配体制を、自ら率いたマハティール元首相等が、親中政策を採り、スキャンダルまみれのUMNOを離党し、UMNOを見捨てるよう、マレー系有権者を説得したことが大きい。
選挙で政権交代を初めて実現したマレーシアは、真の民主主義国家の資格を得たと説くのは、WSJの社説。
今回の勝利はマハティール氏なくしては実現しなかっただろうと説くWSJ。
ナジブ・ラザク首相はもともとマハティール氏の薫陶を受けた人物だったのですが、南シナ海で、仲裁裁判所の裁定を無視し覇権を拡大する中国の、ASEAN諸国分断戦略の毒牙にナジブ首相がなびいたことを、スキャンダルまみれでもあったことも突いて、野党に下り追求し、マレーシアの国と国民を護るため、同じく自らが指導したアンワル・イブラヒム氏に政権を移行させる繋ぎ役として、マハティール元首相が有権者を説得し、有権者が応えた結果なのですね。
南シナ海と引き換えに中国に急接近するマレーシア - 理想国家日本の条件 自立国家日本
マハティール氏のかつての外交政策は、アジア諸国との連帯をその政策の中心に置いていた。隣国シンガポールや白人国家オーストラリアの首脳に対して挑発的な言動を取ったり、アメリカに異議を唱えたり、逆に中国に対しては度々穏健な姿勢を示したりするなど、その言行は世界各国から注目された。中国脅威論を否定して、中国との関係を損なうとしてTPPに反対姿勢を表明。南シナ海問題でも米軍の航行の自由作戦は中国を挑発してると批判し、AIIBに加盟しない日本に苦言を呈するなど親中派でもある。中国国家主席の習近平と会見した際も「中国の古い友人」と歓迎されている。
首相返り咲きを目指して総選挙に出馬した2018年からは、ナジブ・ラザク政権を「中国に親密になり過ぎて、中立性を失った」と批判しており、中国のほか日米韓などとの等距離外交に復帰すべきだとの考えを表明している。2018年の選挙勝利後の記者会見で中国の一帯一路は支持するもマレーシアには一部の中国との協定を再交渉する権利もあると述べた。
対日観は、日本軍のマレー半島侵攻が始まった時、高校生であった。少年マハティールはイギリスの圧倒的な国力を知り、長年のイギリス支配により「白人は無敵」との白人に対する劣等感があったため、日本は負けると思っていたが、その予想に反して日本軍は快進撃を続け、短期間でマレー半島からイギリス勢力を一掃した。この時、マハティールは初めて「白人が敗北することもある」と学んだ。日本軍占領時代のマレー半島は、イギリス支配下の時よりも食糧事情が悪化しており、マハティールも学校を退校するなどの不幸に見舞われており、日本の侵略は不幸なこととしている。
しかし戦後、日本を訪問し、様々な企業を視察するうちに日本人の勤勉さに打たれ、日本に学ぶべきとの思いを抱くようになった。
息子や娘を日本の大学に留学させたり日本に関する著書を出したり、あるいは政治の舞台から離れた現在では日本人と共同でベーカリーを経営するなど熱烈な親日家。
日本の外交政策について「日本は、いつまでアメリカの言いなりになり続けるのか。なぜ欧米の価値観に振り回され、古きよき心と習慣を捨ててしまうのか。一体、いつまで謝罪外交を続けるのか。そして、若者は何を目指せばいいのか。日本人には、先人の勤勉な血が流れている。自信を取り戻し、アジアのため世界のためにリーダーシップを発揮してほしい」と述べた。
日本の経済成長をマレーシア発展の参考にしてきた一方で、近年の日本経済については批判的である。また、近年の日本の若者に茶髪が多いことにも批判的だったが、修学旅行でマレーシアを訪れた高校生たちとの会話を通じて「批判的な考えが変わった」とも述べているのだそうです。
マハティール・ビン・モハマド - Wikipedia
新たな政府には、民族問題、マレー系民族優先のUMNOのやり方で再び統治する誘惑、中国による札束外交の誘惑と、軍事力や貿易での圧力の葛藤(フィリピン・ドゥテルテ大統領は屈した)など課題は山積でしょう。
WSJ社説は、崩壊したマレーシアの政治を修復する最大の希望が、アンワル氏だと期待し、マハティール氏の早期禅譲を促しています。
自由主義国家の新生マレーシアに要注目ですね。
# 冒頭の画像は、野党連合の勝利を喜ぶマハティール氏等
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センニンソウと蝶
↓よろしかったら、お願いします。
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選挙で政権交代を初めて実現したマレーシアは、真の民主主義国家の資格を得たと説くのは、WSJの社説。
【社説】マレーシアに訪れた民主主義の春 - WSJ
改革に必要な政治スキルなどを兼ね備えているのは、アンワル氏だけだ 2018年 5月 11 日
このところ民主主義には逆風が吹いていただけに、マレーシアで9日実施された選挙で野党が予想外の勝利を収めたのは、国際社会にとって、そして特に東南アジアの多民族国家である同国にとって喜ばしいニュースだ。92歳のマハティール・モハマド元首相が率いる野党連合は、政府の汚職に嫌悪感を抱いた有権者を動かし、1957年の独立から続く一党支配体制に終止符を打った。
選挙による平和的な政権移行がない限り真の民主主義とは呼べないとすれば、マレーシアはその資格を得たと言えるだろう。野党連合は議会下院(定数222)の122議席を獲得、与党連合は79議席にとどまった。
今回の勝利はマハティール氏なくしては実現しなかっただろう。同氏は自らが22年にわたって政権与党として率いた統一マレー国民組織(UMNO)を見捨てるよう、マレー系有権者を説得した。選挙で敗北したナジブ・ラザク首相はもともとマハティール氏の薫陶を受けた人物だが、スキャンダルまみれとなっていた。これまでマハティール氏に同意できないこともあったが、自らが残した政治的遺産(レガシー)の良い部分を救うため政界に復帰したことは最善の判断だったと言っていい。
同じく自らが指導したアンワル・イブラヒム氏に政権を託すと約束したことでも、マハティール氏は評価されるべきだろう。長年にわたって野党を率いてきたアンワル氏は現在、作り上げられた罪で5年の禁錮刑を受けている。同氏が予想通りに国王から恩赦を受ければ、議会の補欠選挙に出馬し、2年以内に首相に就任することが可能だ。
マレーシアは堕落した統治機構を建て直すため、アンワル氏のリーダーシップを必要としている。まずは政敵への報復に法を悪用することなどせず、その上で汚職をどう摘発していくかが最初のジレンマとなろう。
必要な改革を実行するための政治スキル、リベラルな価値観、そして道徳的権限のすべてを兼ね備えているのは、アンワル氏以外にいない。同氏が必ず成功する保証はないが、1998年から政治犯としてすごしてきた経験は、他の指導者にはない信頼感を与えている。南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領のように、報復する欲求に耐え、法に従った判断を示せば、政府の新たなあり方を打ち出せるだろう。
マレーシアで見られる人種間の格差を埋めることは、さらに大きなチャレンジになる。UMNOは中華系やインド系よりも多数派のマレー系を優遇するシステムで国を統治してきた。口先では団結を呼びかけながらも、UMNOの指導者たちは自らの利益のためにマレー系民族のナショナリズムを育んできた。
エリート層の政治的利益の追求でマレーシアの競争力が低下し、同国が「中所得国のわな」とも呼ばれる低成長に陥ったのは、このためだ。アファーマティブアクション(積極的差別是正策)や政府による保護は凡庸文化を生み、多くの優秀なマレーシア人がよりよい機会を求めて海外に移り住む事態を招いた。
マレーシア国民が都市部に移り住み教育を受けるようになるに従い、国の制度に対する不満はたまっていった。2015年に政府系投資会社「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」から45億ドル(約4920億円)が流用された疑惑が生じた際、政府は当初それを無視した。だがこのスキャンダルを受けて一部のUMNO指導者が離党し、野党へ移った。マハティール氏もその1人だ。
新たな政府は改革に向けたコンセンサスを得る機会を手にしている。だが一部指導者はUMNOのやり方で再び統治する誘惑に駆られるだろう。あるいはイスラム教徒やマレー系民族の国家主義者にこびてしまうかもしれない。崩壊したマレーシアの政治を修復する最大の希望が、アンワル氏だ。マハティール氏が自らの言葉を守り、素早く身を引くことが重要になる。
改革に必要な政治スキルなどを兼ね備えているのは、アンワル氏だけだ 2018年 5月 11 日
このところ民主主義には逆風が吹いていただけに、マレーシアで9日実施された選挙で野党が予想外の勝利を収めたのは、国際社会にとって、そして特に東南アジアの多民族国家である同国にとって喜ばしいニュースだ。92歳のマハティール・モハマド元首相が率いる野党連合は、政府の汚職に嫌悪感を抱いた有権者を動かし、1957年の独立から続く一党支配体制に終止符を打った。
選挙による平和的な政権移行がない限り真の民主主義とは呼べないとすれば、マレーシアはその資格を得たと言えるだろう。野党連合は議会下院(定数222)の122議席を獲得、与党連合は79議席にとどまった。
今回の勝利はマハティール氏なくしては実現しなかっただろう。同氏は自らが22年にわたって政権与党として率いた統一マレー国民組織(UMNO)を見捨てるよう、マレー系有権者を説得した。選挙で敗北したナジブ・ラザク首相はもともとマハティール氏の薫陶を受けた人物だが、スキャンダルまみれとなっていた。これまでマハティール氏に同意できないこともあったが、自らが残した政治的遺産(レガシー)の良い部分を救うため政界に復帰したことは最善の判断だったと言っていい。
同じく自らが指導したアンワル・イブラヒム氏に政権を託すと約束したことでも、マハティール氏は評価されるべきだろう。長年にわたって野党を率いてきたアンワル氏は現在、作り上げられた罪で5年の禁錮刑を受けている。同氏が予想通りに国王から恩赦を受ければ、議会の補欠選挙に出馬し、2年以内に首相に就任することが可能だ。
マレーシアは堕落した統治機構を建て直すため、アンワル氏のリーダーシップを必要としている。まずは政敵への報復に法を悪用することなどせず、その上で汚職をどう摘発していくかが最初のジレンマとなろう。
必要な改革を実行するための政治スキル、リベラルな価値観、そして道徳的権限のすべてを兼ね備えているのは、アンワル氏以外にいない。同氏が必ず成功する保証はないが、1998年から政治犯としてすごしてきた経験は、他の指導者にはない信頼感を与えている。南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領のように、報復する欲求に耐え、法に従った判断を示せば、政府の新たなあり方を打ち出せるだろう。
マレーシアで見られる人種間の格差を埋めることは、さらに大きなチャレンジになる。UMNOは中華系やインド系よりも多数派のマレー系を優遇するシステムで国を統治してきた。口先では団結を呼びかけながらも、UMNOの指導者たちは自らの利益のためにマレー系民族のナショナリズムを育んできた。
エリート層の政治的利益の追求でマレーシアの競争力が低下し、同国が「中所得国のわな」とも呼ばれる低成長に陥ったのは、このためだ。アファーマティブアクション(積極的差別是正策)や政府による保護は凡庸文化を生み、多くの優秀なマレーシア人がよりよい機会を求めて海外に移り住む事態を招いた。
マレーシア国民が都市部に移り住み教育を受けるようになるに従い、国の制度に対する不満はたまっていった。2015年に政府系投資会社「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」から45億ドル(約4920億円)が流用された疑惑が生じた際、政府は当初それを無視した。だがこのスキャンダルを受けて一部のUMNO指導者が離党し、野党へ移った。マハティール氏もその1人だ。
新たな政府は改革に向けたコンセンサスを得る機会を手にしている。だが一部指導者はUMNOのやり方で再び統治する誘惑に駆られるだろう。あるいはイスラム教徒やマレー系民族の国家主義者にこびてしまうかもしれない。崩壊したマレーシアの政治を修復する最大の希望が、アンワル氏だ。マハティール氏が自らの言葉を守り、素早く身を引くことが重要になる。
今回の勝利はマハティール氏なくしては実現しなかっただろうと説くWSJ。
ナジブ・ラザク首相はもともとマハティール氏の薫陶を受けた人物だったのですが、南シナ海で、仲裁裁判所の裁定を無視し覇権を拡大する中国の、ASEAN諸国分断戦略の毒牙にナジブ首相がなびいたことを、スキャンダルまみれでもあったことも突いて、野党に下り追求し、マレーシアの国と国民を護るため、同じく自らが指導したアンワル・イブラヒム氏に政権を移行させる繋ぎ役として、マハティール元首相が有権者を説得し、有権者が応えた結果なのですね。
南シナ海と引き換えに中国に急接近するマレーシア - 理想国家日本の条件 自立国家日本
マハティール氏のかつての外交政策は、アジア諸国との連帯をその政策の中心に置いていた。隣国シンガポールや白人国家オーストラリアの首脳に対して挑発的な言動を取ったり、アメリカに異議を唱えたり、逆に中国に対しては度々穏健な姿勢を示したりするなど、その言行は世界各国から注目された。中国脅威論を否定して、中国との関係を損なうとしてTPPに反対姿勢を表明。南シナ海問題でも米軍の航行の自由作戦は中国を挑発してると批判し、AIIBに加盟しない日本に苦言を呈するなど親中派でもある。中国国家主席の習近平と会見した際も「中国の古い友人」と歓迎されている。
首相返り咲きを目指して総選挙に出馬した2018年からは、ナジブ・ラザク政権を「中国に親密になり過ぎて、中立性を失った」と批判しており、中国のほか日米韓などとの等距離外交に復帰すべきだとの考えを表明している。2018年の選挙勝利後の記者会見で中国の一帯一路は支持するもマレーシアには一部の中国との協定を再交渉する権利もあると述べた。
対日観は、日本軍のマレー半島侵攻が始まった時、高校生であった。少年マハティールはイギリスの圧倒的な国力を知り、長年のイギリス支配により「白人は無敵」との白人に対する劣等感があったため、日本は負けると思っていたが、その予想に反して日本軍は快進撃を続け、短期間でマレー半島からイギリス勢力を一掃した。この時、マハティールは初めて「白人が敗北することもある」と学んだ。日本軍占領時代のマレー半島は、イギリス支配下の時よりも食糧事情が悪化しており、マハティールも学校を退校するなどの不幸に見舞われており、日本の侵略は不幸なこととしている。
しかし戦後、日本を訪問し、様々な企業を視察するうちに日本人の勤勉さに打たれ、日本に学ぶべきとの思いを抱くようになった。
息子や娘を日本の大学に留学させたり日本に関する著書を出したり、あるいは政治の舞台から離れた現在では日本人と共同でベーカリーを経営するなど熱烈な親日家。
日本の外交政策について「日本は、いつまでアメリカの言いなりになり続けるのか。なぜ欧米の価値観に振り回され、古きよき心と習慣を捨ててしまうのか。一体、いつまで謝罪外交を続けるのか。そして、若者は何を目指せばいいのか。日本人には、先人の勤勉な血が流れている。自信を取り戻し、アジアのため世界のためにリーダーシップを発揮してほしい」と述べた。
日本の経済成長をマレーシア発展の参考にしてきた一方で、近年の日本経済については批判的である。また、近年の日本の若者に茶髪が多いことにも批判的だったが、修学旅行でマレーシアを訪れた高校生たちとの会話を通じて「批判的な考えが変わった」とも述べているのだそうです。
マハティール・ビン・モハマド - Wikipedia
新たな政府には、民族問題、マレー系民族優先のUMNOのやり方で再び統治する誘惑、中国による札束外交の誘惑と、軍事力や貿易での圧力の葛藤(フィリピン・ドゥテルテ大統領は屈した)など課題は山積でしょう。
WSJ社説は、崩壊したマレーシアの政治を修復する最大の希望が、アンワル氏だと期待し、マハティール氏の早期禅譲を促しています。
自由主義国家の新生マレーシアに要注目ですね。
# 冒頭の画像は、野党連合の勝利を喜ぶマハティール氏等
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センニンソウと蝶
↓よろしかったら、お願いします。
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