遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

国際政治も経済も曲がり角の年

2017-01-01 23:58:58 | my notice
 毎年初恒例の主要5紙社説の読み比べです。
 世界の政治と経済の転換点を迎えた今年、日本はどうすべきかと言ったテーマは、5紙とも共通ですね。読売が最もオーソドックスに正面から取り組み、朝日は「文化左翼」の典型論調で、論評に値しない。毎日はらしくなくちょっぴり偏向が減った内容。産経は国内に偏った、というのが遊爺の独断です。去年も秀逸なのは日経と評価させていただきましたが、今年も秀逸なのは日経とさせていただきます。
 読売のオーソドックスさとどちらにしようかと迷いましたが、諸兄もご承知の内容にまとまっていて新味に欠けるのに対し、現状に甘えるなと引き締めつつ、ポジティブな未来志向の話題に具体的に触れている点を評価させていただきました。

 
反グローバリズムの拡大防げ : 社説 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
 【年のはじめに】自ら日本の活路を開こう 論説委員長・石井聡 - 産経ニュース
 社説:歴史の転機 日本の針路は 世界とつながってこそ - 毎日新聞
 (社説)憲法70年の年明けに 「立憲」の理念をより深く:朝日新聞デジタル
 
揺れる世界と日本(1)自由主義の旗守り、活力取り戻せ :日本経済新聞

 2017年が明けた。米国のトランプ大統領の就任、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の開始、仏独の選挙、韓国の大統領弾劾など、不確実性という言葉がこれほど似合う年はない
 混迷する世界で日本はどんな役割を果たせばいいのだろうか。

 トランプ次期米大統領が掲げるのは大減税、公共投資、規制緩和の「3本の矢」だ。世界的なデフレに幕を引くリフレーション政策だとはやす人々もいる。

円安・株高に甘えない
 足元の円安・株高は日本企業に収益の改善をもたらしている。昨年前半の急激な円高環境と打って変わり、このままの相場水準が続けば、3月期決算の企業は増益基調を維持できるだろう。
 日本政府や企業はそれに甘えてはいけない。昨年末までの相場は米新政権の政策のいいとこ取りを反映したもので、日本自身の努力とはほぼ無関係だ。企業は好機を生かし、積極的に事業拡大の布石を打つべき時だろう。

 一方
トランプ氏が掲げる政策には、自由主義経済を損ねる要素も数多く含まれている

 「トランプ氏に自由市場のサポート役になるという発想は一切ない」(国際政治学者のイアン・ブレマー氏)。米国が中国やメキシコと対立し、関税引き上げなどの
保護貿易に動けば、金融・資本市場にショックが走る
だろう。
 開放経済と民主主義のとりでであったEUも、相次ぐテロや移民問題などで揺らいでいる。中国やロシアのような強権主義が幅をきかせ、
世界中が内向きになる時代だ。環太平洋経済連携協定(TPP)の発効も見通せない


 
だからこそ、日本は自由主義の旗を掲げ続ける責務を負っている
。戦後、資源のない小国が豊かになれた理由を忘れてはならないし、未来を貿易に託す新興国をサポートする役割もある。
 
安倍晋三首相はトランプ氏にTPPへの参加を粘り強く説くべきだし、並行してEUや中韓との協議を急ぎ自由貿易協定(FTA)で合意を目指すべきだ


 
もうひとつ、日本が真剣に向き合わなければならないのは、加速するデジタル社会への対応
だ。
 「フラット化する世界」でグローバル化のありようを描いたトーマス・フリードマン氏。近著「Thank you for being late」で、デジタル化の衝撃を「スーパーノバ」(超新星)と名付けた。
 「iPhone」や「Android」が生まれた07年がグーテンベルク以来の技術的な転換点の年だったと指摘している。この間、デジタル技術を使うコストは驚異的に下がった。人間一人分のヒトゲノムの解析費用は、01年に1億ドルだったのが、15年には1000ドルに下がった。

 
20世紀の生産性向上がブルーカラーの肉体労働の代替だったのに対し、これから本格化するのは人工知能(AI)によるホワイトカラーの頭脳労働の代替
である。
 20年の東京五輪・パラリンピックの際には自動運転車が走るだろう。通信速度が飛躍的に向上する5Gが普及し、あらゆるものにチップが埋め込まれ、センサーにつながる。

若手を前面に押し出す
 アマゾン・ドット・コムが実験を公表したように、スーパーもレジなしで支払いができるようになる。
あらゆるところで、仕事のあり方も変わってくる
だろう。
 そうした
第4次産業革命を担うのは、デジタルネーティブと呼ばれる、物心ついたときからデジタルに親しんできた若手人材
だ。
 日本の旧来型の年次主義、終身雇用の就業システムで、こうした人材の実力を引き出すことができるかというと、疑問がある。
 
たこつぼ型の組織を変え、年次にかかわらず社内外から人を集めてチームを編成し、資金も投じる
ようでないといけない。

 「人工知能が変える仕事の未来」の著者、野村直之氏は「大企業が世界で主導権をとるべく目標を掲げたら、必ず若手人材も育つ」と指摘する。「彼らは英語もできるし、コミュニケーション能力もある」。若者を前面に押し出せば、日本に活力が戻るだろう。

 日本はこの150年、明治維新と敗戦という2つの断崖を乗り越えてきた。どちらも若い世代が活躍し、新しい日本をつくりあげた。それをいまこそ思い出そう。


 「2017年が明けた。(中略)不確実性という言葉がこれほど似合う年はない。」との出だしが各紙に共通する主題をうまく表現されています。「混迷する世界で日本はどんな役割を果たせばいいのだろうか。」という着眼も各紙言葉にしていますが、その内容を、具体的で、ポジティブに紙面を割いているのが日経。
 先ず、「足元の円安・株高は日本企業に収益の改善をもたらしている」が、内容は「米新政権の政策のいいとこ取りを反映したもので、日本自身の努力とはほぼ無関係だ。」と、戒めている点がいい。
 その基ととなっているトランプ次期大統領の政策が、「自由主義経済を損ねる要素」をふくんでいると、不安定な情勢をあげているのですね。トランプ次期政権が保護貿易に動けば、世界の金融・資本市場に与えるショックが大きいと危惧されます。
 主要国首脳が、選挙で交代する可能性がある(英国は交代済)欧州の、開放に逆行する動きも、世界経済や政治不安を助長しています。
 混迷する欧米陣の隙をついて、力で現状変更を進める中露の台頭も、不安定要因の主因の一つですね。

 そのなかで日本はどうすべきか。
 「だからこそ、日本は自由主義の旗を掲げ続ける責務を負っている。」「安倍晋三首相はトランプ氏にTPPへの参加を粘り強く説くべきだし、並行してEUや中韓との協議を急ぎ自由貿易協定(FTA)で合意を目指すべきだ。」と日経は提唱しています。TPPについては、遊爺は、去る者はおわず、米国抜きでの「新TPP」を稼働させればよい。米国は戻ってこざるを得ない。と考えるのですが、いかがでしょう。

 そして重要なのは、日経を評価する点の前向きな、「加速するデジタル社会への対応」。
 「AI」によるホワイトカラーの頭脳労働の代替の時代への対応を唱えています。昨年から、掛け声は盛り上がっていますね。「第4次産業革命を担うのは、デジタルネーティブと呼ばれる、物心ついたときからデジタルに親しんできた若手人材だ」と、掛け声を実現につなげる提言がなされています。
 「人工知能は、人の仕事を奪ってしまう!」とは、よく聞かれることばです。トランプ氏は、メキシコの移民が米国人の仕事を奪う、それを止めるとぶちあげて大統領にえらばれました。しかし、人工知能の研究・導入は勢いを増すばかりです。
 技術革新の産業革命は進み、人々の感情は、「自由と解放」に逆行し自己保護に向かう。そんな時代への突入が、2017年なのでしょうか。
 「日本はこの150年、明治維新と敗戦という2つの断崖を乗り越えてきた。どちらも若い世代が活躍し、新しい日本をつくりあげた。それをいまこそ思い出そう。」との日経の提唱には、全く同感です。勿論、経験と豊富な知恵を持つ、未来志向のベテランの導きや支援も不可欠です。

 余談です。「文化左翼」と言う言葉を使わせていただきました。昨年末に注目した言葉です。米国のリベラルについて論じるときに欠かせない、リチャード・ローティが使い始めた言葉だと認識しています。一言で表現する為に、誤解を恐れず独言すれば「批判ばかりして、具体的対案を持たない輩」と言うと解りやすい。朝日新聞の論調や、日本の民進党に多い政治家を指すのに適した適したことばかと。
 
青土社 ||ユリイカ:ユリイカ2017年1月号 特集=アメリカ文化を読む 「罪」を超えた「誇り」を ローティの予言と愛国的左翼論 / 大賀祐樹
 
『ローティの思想における一貫性~その解釈学的側面について』

 批判だけの「文化左翼」が、誤ったポピュリズムを広め、世論を無為に分断し、混乱を生じさせるのですね。


 # 冒頭の画像は、トランプ新政権で、国務長官候補とされている、露・プーチン大統領と近いとされるエクソンモービルのレックス・ティラーソンCEO




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