新型コロナウイルスの武漢肺炎。日本はピークの山を先送りし、時間をかけて収束させる戦略ですが、中国、韓国では早くも規制緩和が始まっています。欧米でも、出口策が取りざたされ始めていますね。
そんな流れの中で、覇権獲得を目指す中国に着目する記事が2つもありました。
米国の次に覇権を握るのは中国なのか。
世界各国が経済回復のために行う金融緩和の資金は、中国の誘いに乗るのか、あるいは中国をグローバルサプライチェーンから切り離す方向に動くのか。米中の「新冷戦時代」での覇権争いの転換点となりそうですね。
米最大のヘッジファンド運用会社ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は「コロナ後には世界の秩序が大きく変化し、中国の覇権が鮮明になる」と読んでおられるのだそうです。
コロナ危機が起きる前から景気はすでに非常に不安定な状態となっており、米国のように高水準の債務と貧富の格差が拡大していた国では、中央銀行にできる力は限界に達していた。これは1930年から1945年に起きた経済・金融危機とよく似ていると。
45年以降の世界に起きたように富の再分配を巡って、資本主義と社会主義の両極端の対立も起きるだろうとも。
サプライチェーンやテクノロジーの進化で誰が主導権を握るのかを巡って世界秩序の再編が起きるなか、中国が主役となる。
ただ、中国の資本市場を開放しないと、中国の人民元が基軸通貨になるには時間がかかると。
福島さんが着目しておられるのは、新華社はじめ中央メディアが目下、大宣伝を展開する「新型基礎インフラ建設」政策、略して「新基建」政策。
5G・産業インターネット・データセンター・AI技術などを支えるデジタルインフラ、新エネルギー自動車や自動運転のための充電スタンドをはじめとする次世代交通インフラの整備などへ、世界の国々が行う金融緩和のお金を取り込もうという中国の戦略。
新型コロナ肺炎で世界経済が停滞する中、いち早くパンデミックを抜け出して新基建投資に外資を呼びこむことができれば、中国がグローバル企業の救世主として、ポストコロナの新たなグローバルサプライチェーンの主役になれるという中国の狙い。
米国の半導体メーカーのクアルコムやインテル、電子制御システム企業のハネウェル、ドイツのソフトウェア企業SAP、フランスのエネルギーマネジメント企業のシュナイダーエレクトリック等の外資企業も色めきたっているのだそうです。
米国は新型コロナウイルスのパンデミックによる経済苦境を乗り越えるために、無制限の量的金融緩和やゼロ金利政策を4月下旬も維持することを決定。各国中央銀行も次々に金融緩和政策を打ち出しているのだそうです。
こうした資金の行き場は、先に動き始めた中国市場、新基建政策に集中する可能性があると福島さん。
中国のこのタイミングでの「新基建」宣伝は、新型コロナでグローバルサプライチェーンからデカップリングされかけている流れを押し戻し、逆流させようという戦略目標があると。
中国の新基建政策が成功し、中国経済が劇的にV字回復することで「世界大不況の救世主」という展開になれば、ポストコロナのグローバルサプライチェーンの再構築は中国が主導することになりかねないと。
習近平政権の目標は、次なる国際社会の秩序を主導し、中国が米国に代わって国際社会のルールメーカーになること。米中新冷戦構造とは、米中の価値観戦争であり、次世代の国際社会のスタンダードを米国の民主主義・自由主義的価値観とするのか、中華式全体主義価値観とするのか、という争い。
どうなるかは、「中国が鄧小平式対外開放政策に立ち戻ることを、アンチ鄧小平の習近平がおとなしく受け入れるのか」という内政問題と関わってくると福島さん。
人民元が主軸通貨になるためには、中国の資本市場を開放することが必要と説くレイ・ダリオ氏と、アンチ鄧小平の習近平が鄧小平式対外開放政策に立ち戻ることができるのかとの福島さんの指摘は、中国が主導権を握れるかどうかの鍵として、同等の着目点。
それは現状の習近平にはない選択肢とは、ご両方もご承知の上でのお話と推察します。
勿論、鄧小平の流れを継ぐ共青団派の李克強首相は採用しうることですね。
緊急事態宣言延長では、無為無策の専門家会議と西村担当大臣に対し、延長後の具体策で政府案がないのら「大阪方式」を示すと予告していた吉村知事が科学的データを示しました。
学校の一斉休校、PCR検査拡大後の陽性者の分別隔離など、創意ある策を次々実行し国をリードしている吉村知事。
日本の感染対策と、今後の展開では、国を引っ張っていただいています。
世界では、自由主義と共産主義の覇権争いが展開されています。世界を俯瞰する日本流の政策率寒と果敢な実行が望まれますね。
# 冒頭の画像は、吉村大阪府知事
この花の名前は、コウヤボウキ
↓よろしかったら、お願いします。
そんな流れの中で、覇権獲得を目指す中国に着目する記事が2つもありました。
米国の次に覇権を握るのは中国なのか。
世界各国が経済回復のために行う金融緩和の資金は、中国の誘いに乗るのか、あるいは中国をグローバルサプライチェーンから切り離す方向に動くのか。米中の「新冷戦時代」での覇権争いの転換点となりそうですね。
新型コロナ:コロナ後、世界秩序が変化 中国覇権強まる ダリオ氏語る :日本経済新聞 2020/5/7
世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。米最大のヘッジファンド運用会社ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は「コロナ後には世界の秩序が大きく変化し、中国の覇権が鮮明になる」と読む。歴史上の経済・金融危機を分析し、2008年のリーマン危機でも投資収益を確保した同氏だが、分析データに過去のパンデミックを加えていなかったことを反省。データを再構築していることを明らかにした。
――歴史的に俯瞰(ふかん)して今回のコロナ危機をどう捉えますか。
コロナ危機が起きる前から景気はすでに非常に不安定な状態となっており、コロナが引き金を引いたが経済の悪化はなるべくしてなったといえる。米国のように高水準の債務と貧富の格差が拡大していた国では、中央銀行にできる力は限界に達していた。これは1930年から1945年に起きた経済・金融危機とよく似ている。
中央銀行や政府は資産買い取りのための紙幣印刷によって、新たに生み出したお金と信用で所得やバランスシートにあいた大きな穴を埋めるのに必死だ。しかし、個人も企業も国も貯蓄のないところではやがて破産に直面する。1930年から45年に起きたように地政学的パワーバランスが崩れ、世界の秩序が大きく変わる。国同士でも国内でも富と権力を巡る対立が激化する。45年以降の世界に起きたように富の再分配を巡って、資本主義と社会主義の両極端の対立も起きるだろう。
――米国の立場はどう変化しますか。
ドルが基軸通貨で、かつ新興国などがドル建て債務をドルベースで返済し、そしてドルによるモノの購入が続く限り、米国は覇権を維持できるだろう。しかし、いずれはドル建て債務の不履行が起きて債務が帳消しになったり、米連邦準備理事会(FRB)によるドル紙幣の印刷が増えたりして、ドルの基軸通貨としての価値が低下する。そうなると米国の国力も低下する。歴史が示すように大英帝国やオランダの衰退も債務の拡大と通貨の下落とともに起こった。
米国の次に覇権を握るのは中国だ。サプライチェーンやテクノロジーの進化で誰が主導権を握るのかを巡って世界秩序の再編が起きるなか、中国が主役となる。ただ、中国の人民元が基軸通貨になるには時間がかかるだろう。そのためにはまず中国の資本市場を開放することが必要だからだ。
<中略>
――コロナ危機に対応した各国政府の経済刺激策をどう評価しますか。
お金と信用を創造するために各国の政府は大規模な景気刺激策に乗り出しているが、所得の減少などを埋めるにはさらなる対策が必要だ。ただ、国によってその効果には大きな差がある。債務水準が高く、価値の安定していない自国通貨での紙幣印刷しかできない新興国は、信用危機やインフレ加速という問題に直面する。日本のように円という国際決済通貨を持つ国には国際的な購買力があるので日銀の政策が効力を発揮するだろう。
(聞き手はニューヨーク=伴百江)
世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。米最大のヘッジファンド運用会社ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は「コロナ後には世界の秩序が大きく変化し、中国の覇権が鮮明になる」と読む。歴史上の経済・金融危機を分析し、2008年のリーマン危機でも投資収益を確保した同氏だが、分析データに過去のパンデミックを加えていなかったことを反省。データを再構築していることを明らかにした。
――歴史的に俯瞰(ふかん)して今回のコロナ危機をどう捉えますか。
コロナ危機が起きる前から景気はすでに非常に不安定な状態となっており、コロナが引き金を引いたが経済の悪化はなるべくしてなったといえる。米国のように高水準の債務と貧富の格差が拡大していた国では、中央銀行にできる力は限界に達していた。これは1930年から1945年に起きた経済・金融危機とよく似ている。
中央銀行や政府は資産買い取りのための紙幣印刷によって、新たに生み出したお金と信用で所得やバランスシートにあいた大きな穴を埋めるのに必死だ。しかし、個人も企業も国も貯蓄のないところではやがて破産に直面する。1930年から45年に起きたように地政学的パワーバランスが崩れ、世界の秩序が大きく変わる。国同士でも国内でも富と権力を巡る対立が激化する。45年以降の世界に起きたように富の再分配を巡って、資本主義と社会主義の両極端の対立も起きるだろう。
――米国の立場はどう変化しますか。
ドルが基軸通貨で、かつ新興国などがドル建て債務をドルベースで返済し、そしてドルによるモノの購入が続く限り、米国は覇権を維持できるだろう。しかし、いずれはドル建て債務の不履行が起きて債務が帳消しになったり、米連邦準備理事会(FRB)によるドル紙幣の印刷が増えたりして、ドルの基軸通貨としての価値が低下する。そうなると米国の国力も低下する。歴史が示すように大英帝国やオランダの衰退も債務の拡大と通貨の下落とともに起こった。
米国の次に覇権を握るのは中国だ。サプライチェーンやテクノロジーの進化で誰が主導権を握るのかを巡って世界秩序の再編が起きるなか、中国が主役となる。ただ、中国の人民元が基軸通貨になるには時間がかかるだろう。そのためにはまず中国の資本市場を開放することが必要だからだ。
<中略>
――コロナ危機に対応した各国政府の経済刺激策をどう評価しますか。
お金と信用を創造するために各国の政府は大規模な景気刺激策に乗り出しているが、所得の減少などを埋めるにはさらなる対策が必要だ。ただ、国によってその効果には大きな差がある。債務水準が高く、価値の安定していない自国通貨での紙幣印刷しかできない新興国は、信用危機やインフレ加速という問題に直面する。日本のように円という国際決済通貨を持つ国には国際的な購買力があるので日銀の政策が効力を発揮するだろう。
(聞き手はニューヨーク=伴百江)
米最大のヘッジファンド運用会社ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は「コロナ後には世界の秩序が大きく変化し、中国の覇権が鮮明になる」と読んでおられるのだそうです。
コロナ危機が起きる前から景気はすでに非常に不安定な状態となっており、米国のように高水準の債務と貧富の格差が拡大していた国では、中央銀行にできる力は限界に達していた。これは1930年から1945年に起きた経済・金融危機とよく似ていると。
45年以降の世界に起きたように富の再分配を巡って、資本主義と社会主義の両極端の対立も起きるだろうとも。
サプライチェーンやテクノロジーの進化で誰が主導権を握るのかを巡って世界秩序の再編が起きるなか、中国が主役となる。
ただ、中国の資本市場を開放しないと、中国の人民元が基軸通貨になるには時間がかかると。
福島さんが着目しておられるのは、新華社はじめ中央メディアが目下、大宣伝を展開する「新型基礎インフラ建設」政策、略して「新基建」政策。
5G・産業インターネット・データセンター・AI技術などを支えるデジタルインフラ、新エネルギー自動車や自動運転のための充電スタンドをはじめとする次世代交通インフラの整備などへ、世界の国々が行う金融緩和のお金を取り込もうという中国の戦略。
「新基建」政策でコロナ後の世界を牛耳る中国の野望 産業インフラ構築を主導して世界経済の救世主に? | JBpress(Japan Business Press) 2020.5.7(木) 福島 香織
2020年の中国経済のホットワードは「新基建」だ。
中国経済再稼働のブースターとして、新華社はじめ中央メディアが目下、大宣伝を展開する「新型基礎インフラ建設」政策、略して「新基建」政策。具体的には5G・産業インターネット・データセンター・AI技術などを支えるデジタルインフラ、新エネルギー自動車や自動運転のための充電スタンドをはじめとする次世代交通インフラの整備などを指す。
新型コロナ肺炎で世界経済が停滞する中、いち早くパンデミックを抜け出して新基建投資に外資を呼びこむことができれば、中国がグローバル企業の救世主として、ポストコロナの新たなグローバルサプライチェーンの主役になるやもしれない。
にわかに注目を浴びる新基建、習近平が号令
「新基建」の概念は2018年暮れの中央経済工作会議ですでに打ち出されていたが、今年(2020年)3月4日の中央政治局常務委員会会議で、「公共衛生サービスを強化し、応急物資の褒賞領域に資金を投入し、5G、デジタルセンターなどの新型基礎インフラ建設速度を加速せよ」という指示が打ち出されたことをきっかけに、にわかに注目を浴びるようになった。
4月1日には、習近平総書記が浙江省を視察した際に「産業のデジタル化が与えるチャンスをしっかりつかみ、5Gやデジタルセンターなどの新型基礎インフラ建設を加速し、デジタル経済、健康、新素材などの戦略的新興産業、未来産業をしっかり準備し、科学技術イノベーションを力強く推進し、壮大な成長点として新たな発展動力を形成せよ」と号令をかけた。
さらに4月20日に、国家発展改革委員会が記者会見で初めて新型基礎インフラの概念について明確化した。つまり、新型基礎インフラ建設(新基建)とは、情報ネットワークを基盤として デジタル化、スマート化、イノベーション融合などを実現するサービスインフラシステムを提供することだという。
具体的な領域として以下の3分野が挙げられている。
(1)情報インフラ
5G、IoT、産業インターネット、衛星インターネットなどのインターネットインフラ、人工知能、クラウドコンピューティング、ブロックチェーンなどの新技術インフラ、データセンター、スーパーコンピューターセンターなどのコンピューターインフラ分野。
(2)融合インフラ
インターネット、ビッグデータ、AIの技術を深く応用し、伝統的なインフラをレベルアップさせる。スマート交通インフラ、スマートエネルギーインフラなど。
(3)イノベーションインフラ
科学研究、技術開発、商品開発を支える公益性のあるインフラ。重大科学技術インフラ、科学教育インフラ、産業技術イノベーションインフラなど。
メディアは新基建の定義として7大領域を示している。具体的には、5G基地局建設、UHV送電線建設、新型軌道交通建設、新エネルギー自動車充電スタンド網、ビッグデータセンター、AI、産業インターネットである。
色めき立つ外国企業
奇しくも新型コロナ肺炎の蔓延によって、これらの分野は需要と市場の開拓余地の広さが認識され、新基建投資を加速させることになった。
特に5Gは、2020年から2025年までの間に、累計1.2兆の直接投資が見込まれ、10.6兆元分の国内総生産を創出し、間接的にはGDP24.8兆元をけん引するとの中国通信院予測がある。
当然、外資企業も色めきたっている。たとえば米国の半導体メーカーのクアルコムやインテル、電子制御システム企業のハネウェル、ドイツのソフトウェア企業SAP、フランスのエネルギーマネジメント企業のシュナイダーエレクトリックなどだ。
<中略>
中国側もこうした外国企業の参入を歓迎している。デロイト・トウシュ・トーマツの元運輸交通部門の責任者でもあった著名エコノミストの宋旭軍は「経済日報」に対し、「新基建が企業間の協力とグローバル貿易を通じて全人類にウィン・ウィンをもたらす」「世界の消費者を満足させると同時に、国外の関連企業の発展の後押しともなる」と語っている。
また 新基建が世界経済の発展にもたらす効果について、宋旭軍は次のように述べる。「今回の感染蔓延の期間中、中国の医療衛生当局はビッグデータ、AIを利用してゲノム解析を行い、ウイルスを速やかに識別分離し、WHOやその他の国に提供した。中国医療専門家は積極的に他国の同僚と中国の防疫経験を分かち合った。このことだけでも、中国科学技術の発展が国際社会に寄与したものが極めて大きいとわかる。中国の新基建は、グローバル経済の長期発展のための基礎インフラを提供することができ、世界経済に長期的で持続可能な発展のエネルギーを注入できる」。
ポストコロナの産業インフラが中国の手中に?
米国は新型コロナウイルスのパンデミックによる経済苦境を乗り越えるために、無制限の量的金融緩和やゼロ金利政策を4月下旬も維持することを決定。各国中央銀行も次々に金融緩和政策を打ち出している。だが、ロックダウンで世界経済は停滞中。こうした資金の行き場は、先に動き始めた中国市場、新基建政策に集中するかもしれない。
中国のこのタイミングでの「新基建」宣伝は、新型コロナでグローバルサプライチェーンからデカップリングされかけている流れを押し戻し、逆流させようという戦略目標があるのだろう。
仮に、中国の新基建政策が成功し、中国経済が劇的にV字回復することで「世界大不況の救世主」という展開になれば、中国がグローバルサプライチェーンからデカップリングされるどころか、ポストコロナのグローバルサプライチェーンの再構築は中国が主導することになりかねない。
習近平政権の目標は、次なる国際社会の秩序を主導し、中国が米国に代わって国際社会のルールメーカーになることだ。米中新冷戦構造とは、米中の価値観戦争であり、次世代の国際社会のスタンダードを米国の民主主義・自由主義的価値観とするのか、中華式全体主義価値観とするのか、という争いでもある。
つまり、パンデミック後に待ち受ける経済の苦境を乗り越えるために、世界各国企業が中国市場や新基建政策に活路を見出すのか、あるいは中国をグローバルサプライチェーンから切り離す方向に動くのか、という選択は、そのまま次の国際社会の秩序、価値観の選択につながってくる、ということになるだろう。個人的には中華式価値観で仕切られる世界など想像したくもないのだが。
実際どうなるかは、「中国が鄧小平式対外開放政策に立ち戻ることを、アンチ鄧小平の習近平がおとなしく受け入れるのか」という内政問題と関わってくる。もちろん、トランプが次の大統領選に勝てるかどうかということも大きく影響する。米中の内政が、もろに今後の世界経済、そして次なる国際社会の枠組みの行方も動かすことになる、と見ていいだろう。
2020年の中国経済のホットワードは「新基建」だ。
中国経済再稼働のブースターとして、新華社はじめ中央メディアが目下、大宣伝を展開する「新型基礎インフラ建設」政策、略して「新基建」政策。具体的には5G・産業インターネット・データセンター・AI技術などを支えるデジタルインフラ、新エネルギー自動車や自動運転のための充電スタンドをはじめとする次世代交通インフラの整備などを指す。
新型コロナ肺炎で世界経済が停滞する中、いち早くパンデミックを抜け出して新基建投資に外資を呼びこむことができれば、中国がグローバル企業の救世主として、ポストコロナの新たなグローバルサプライチェーンの主役になるやもしれない。
にわかに注目を浴びる新基建、習近平が号令
「新基建」の概念は2018年暮れの中央経済工作会議ですでに打ち出されていたが、今年(2020年)3月4日の中央政治局常務委員会会議で、「公共衛生サービスを強化し、応急物資の褒賞領域に資金を投入し、5G、デジタルセンターなどの新型基礎インフラ建設速度を加速せよ」という指示が打ち出されたことをきっかけに、にわかに注目を浴びるようになった。
4月1日には、習近平総書記が浙江省を視察した際に「産業のデジタル化が与えるチャンスをしっかりつかみ、5Gやデジタルセンターなどの新型基礎インフラ建設を加速し、デジタル経済、健康、新素材などの戦略的新興産業、未来産業をしっかり準備し、科学技術イノベーションを力強く推進し、壮大な成長点として新たな発展動力を形成せよ」と号令をかけた。
さらに4月20日に、国家発展改革委員会が記者会見で初めて新型基礎インフラの概念について明確化した。つまり、新型基礎インフラ建設(新基建)とは、情報ネットワークを基盤として デジタル化、スマート化、イノベーション融合などを実現するサービスインフラシステムを提供することだという。
具体的な領域として以下の3分野が挙げられている。
(1)情報インフラ
5G、IoT、産業インターネット、衛星インターネットなどのインターネットインフラ、人工知能、クラウドコンピューティング、ブロックチェーンなどの新技術インフラ、データセンター、スーパーコンピューターセンターなどのコンピューターインフラ分野。
(2)融合インフラ
インターネット、ビッグデータ、AIの技術を深く応用し、伝統的なインフラをレベルアップさせる。スマート交通インフラ、スマートエネルギーインフラなど。
(3)イノベーションインフラ
科学研究、技術開発、商品開発を支える公益性のあるインフラ。重大科学技術インフラ、科学教育インフラ、産業技術イノベーションインフラなど。
メディアは新基建の定義として7大領域を示している。具体的には、5G基地局建設、UHV送電線建設、新型軌道交通建設、新エネルギー自動車充電スタンド網、ビッグデータセンター、AI、産業インターネットである。
色めき立つ外国企業
奇しくも新型コロナ肺炎の蔓延によって、これらの分野は需要と市場の開拓余地の広さが認識され、新基建投資を加速させることになった。
特に5Gは、2020年から2025年までの間に、累計1.2兆の直接投資が見込まれ、10.6兆元分の国内総生産を創出し、間接的にはGDP24.8兆元をけん引するとの中国通信院予測がある。
当然、外資企業も色めきたっている。たとえば米国の半導体メーカーのクアルコムやインテル、電子制御システム企業のハネウェル、ドイツのソフトウェア企業SAP、フランスのエネルギーマネジメント企業のシュナイダーエレクトリックなどだ。
<中略>
中国側もこうした外国企業の参入を歓迎している。デロイト・トウシュ・トーマツの元運輸交通部門の責任者でもあった著名エコノミストの宋旭軍は「経済日報」に対し、「新基建が企業間の協力とグローバル貿易を通じて全人類にウィン・ウィンをもたらす」「世界の消費者を満足させると同時に、国外の関連企業の発展の後押しともなる」と語っている。
また 新基建が世界経済の発展にもたらす効果について、宋旭軍は次のように述べる。「今回の感染蔓延の期間中、中国の医療衛生当局はビッグデータ、AIを利用してゲノム解析を行い、ウイルスを速やかに識別分離し、WHOやその他の国に提供した。中国医療専門家は積極的に他国の同僚と中国の防疫経験を分かち合った。このことだけでも、中国科学技術の発展が国際社会に寄与したものが極めて大きいとわかる。中国の新基建は、グローバル経済の長期発展のための基礎インフラを提供することができ、世界経済に長期的で持続可能な発展のエネルギーを注入できる」。
ポストコロナの産業インフラが中国の手中に?
米国は新型コロナウイルスのパンデミックによる経済苦境を乗り越えるために、無制限の量的金融緩和やゼロ金利政策を4月下旬も維持することを決定。各国中央銀行も次々に金融緩和政策を打ち出している。だが、ロックダウンで世界経済は停滞中。こうした資金の行き場は、先に動き始めた中国市場、新基建政策に集中するかもしれない。
中国のこのタイミングでの「新基建」宣伝は、新型コロナでグローバルサプライチェーンからデカップリングされかけている流れを押し戻し、逆流させようという戦略目標があるのだろう。
仮に、中国の新基建政策が成功し、中国経済が劇的にV字回復することで「世界大不況の救世主」という展開になれば、中国がグローバルサプライチェーンからデカップリングされるどころか、ポストコロナのグローバルサプライチェーンの再構築は中国が主導することになりかねない。
習近平政権の目標は、次なる国際社会の秩序を主導し、中国が米国に代わって国際社会のルールメーカーになることだ。米中新冷戦構造とは、米中の価値観戦争であり、次世代の国際社会のスタンダードを米国の民主主義・自由主義的価値観とするのか、中華式全体主義価値観とするのか、という争いでもある。
つまり、パンデミック後に待ち受ける経済の苦境を乗り越えるために、世界各国企業が中国市場や新基建政策に活路を見出すのか、あるいは中国をグローバルサプライチェーンから切り離す方向に動くのか、という選択は、そのまま次の国際社会の秩序、価値観の選択につながってくる、ということになるだろう。個人的には中華式価値観で仕切られる世界など想像したくもないのだが。
実際どうなるかは、「中国が鄧小平式対外開放政策に立ち戻ることを、アンチ鄧小平の習近平がおとなしく受け入れるのか」という内政問題と関わってくる。もちろん、トランプが次の大統領選に勝てるかどうかということも大きく影響する。米中の内政が、もろに今後の世界経済、そして次なる国際社会の枠組みの行方も動かすことになる、と見ていいだろう。
新型コロナ肺炎で世界経済が停滞する中、いち早くパンデミックを抜け出して新基建投資に外資を呼びこむことができれば、中国がグローバル企業の救世主として、ポストコロナの新たなグローバルサプライチェーンの主役になれるという中国の狙い。
米国の半導体メーカーのクアルコムやインテル、電子制御システム企業のハネウェル、ドイツのソフトウェア企業SAP、フランスのエネルギーマネジメント企業のシュナイダーエレクトリック等の外資企業も色めきたっているのだそうです。
米国は新型コロナウイルスのパンデミックによる経済苦境を乗り越えるために、無制限の量的金融緩和やゼロ金利政策を4月下旬も維持することを決定。各国中央銀行も次々に金融緩和政策を打ち出しているのだそうです。
こうした資金の行き場は、先に動き始めた中国市場、新基建政策に集中する可能性があると福島さん。
中国のこのタイミングでの「新基建」宣伝は、新型コロナでグローバルサプライチェーンからデカップリングされかけている流れを押し戻し、逆流させようという戦略目標があると。
中国の新基建政策が成功し、中国経済が劇的にV字回復することで「世界大不況の救世主」という展開になれば、ポストコロナのグローバルサプライチェーンの再構築は中国が主導することになりかねないと。
習近平政権の目標は、次なる国際社会の秩序を主導し、中国が米国に代わって国際社会のルールメーカーになること。米中新冷戦構造とは、米中の価値観戦争であり、次世代の国際社会のスタンダードを米国の民主主義・自由主義的価値観とするのか、中華式全体主義価値観とするのか、という争い。
どうなるかは、「中国が鄧小平式対外開放政策に立ち戻ることを、アンチ鄧小平の習近平がおとなしく受け入れるのか」という内政問題と関わってくると福島さん。
人民元が主軸通貨になるためには、中国の資本市場を開放することが必要と説くレイ・ダリオ氏と、アンチ鄧小平の習近平が鄧小平式対外開放政策に立ち戻ることができるのかとの福島さんの指摘は、中国が主導権を握れるかどうかの鍵として、同等の着目点。
それは現状の習近平にはない選択肢とは、ご両方もご承知の上でのお話と推察します。
勿論、鄧小平の流れを継ぐ共青団派の李克強首相は採用しうることですね。
緊急事態宣言延長では、無為無策の専門家会議と西村担当大臣に対し、延長後の具体策で政府案がないのら「大阪方式」を示すと予告していた吉村知事が科学的データを示しました。
学校の一斉休校、PCR検査拡大後の陽性者の分別隔離など、創意ある策を次々実行し国をリードしている吉村知事。
日本の感染対策と、今後の展開では、国を引っ張っていただいています。
世界では、自由主義と共産主義の覇権争いが展開されています。世界を俯瞰する日本流の政策率寒と果敢な実行が望まれますね。
# 冒頭の画像は、吉村大阪府知事
この花の名前は、コウヤボウキ
↓よろしかったら、お願いします。