遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

英中協力の「黄金の10年」は、9カ月で終焉か

2016-08-12 23:58:58 | 中国 全般
 日本を訪問したウィリアム王子は、その足で、企業団と合流し中国を訪問し、経済交流の進展をはかりました。更に、AIIBの設立への参加を、欧州の中で先鞭をつけ、習近平の訪英では、バッキンガム宮殿の晩餐会にエリザベス女王が馬車でお迎えに行くという破格の媚中振り。香港の自由維持で対立することがあり、対中経済交流では、仏独に周回遅れとなっていた英国は、キャメロン政権の媚中・挽回策で、急接近し、英中協力の「黄金の10年」が始まったのでした。
 それに対する習近平のお土産の目玉は、イングランド南西部のヒンクリーポイントでフランス企業が建設する原子力発電所に中国が60億ポンド(約80億ドル)を出資する案件。更にその後には中国の企業がイングランド南東部で原発を作るというもの。総額ては、400億ポンドの投資を約束したのでした。
 ところが、今回の政権交代で誕生した新政権は、7月末に、この案件はまだ検討中だと発表したのでした。
 更に、原発計画に出資する中国国有の原発大手「中国広核集団」が、米国の原発施設で、原子力の先端技術に関する企業秘密を盗むスパイ行為を行い、米司法当局から起訴されていたことが明らかになったのだそうです。
 

英エネルギー政策:無意味なヒンクリー原発 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2016.8.10(水) The Economist

 英国は金食い虫の原発をキャンセルし、浮いた資金を再生可能エネルギーの活用に投じるべきだ。


 中国の習近平国家主席が昨年訪英し、バッキンガム宮殿の晩餐会に出席して始まった
英中協力の「黄金の10年」は、9カ月しか続かなかったようだ。両国の新しいパートナーシップの目玉は、イングランド南西部のヒンクリーポイントでフランス企業が建設する原子力発電所に中国が60億ポンド(約80億ドル)を出資する案件だった。その後には中国の企業がイングランド南東部で原発を作ることになっていた。ところが、このプロジェクトが最終承認されることになっていた7月28日、英国の新政権は不気味にも、この案件はまだ検討中だと発表した。
 英国側がプロジェクトにブレーキを踏んだことで、中国との黄金時代には傷がついてしまった。
中国国有の通信社は、英国の「不審なアプローチ」に不快感
をあらわにした。また、フランスが難色を示す恐れもある。そうなれば、英国の欧州連合(EU)離脱問題が複雑化することもあり得るだろう。さらに言えば、英国は新しいエネルギー源を渇望している。
 だが
それでも、この取引をご破算にするのは正しい決断だろう。中国についての安全保障上の懸念(これは恐らく大げさだ)とは関係なく、ヒンクリーの計画はその費用に見合う価値が本当にない
ように見えるからだ。
 また、
再生可能なエネルギー源の魅力が増している
ことから、ヒンクリーのような大型の「ベースロード」電源開発プロジェクトの時代は、もう長くない。英国はこの取引から撤退し、ほかの国々はこの失敗から教訓を学ぶべきだ。

■余波

<中略>

 確実だと言えることは多くない。しかし、
ヒンクリー原発が豊かな国が長期にわたって持ちたいと思うタイプの発電所でないことは確かだ。原子力には未来がある。だが、ヒンクリーのように常時発電する巨大な発電所のプロジェクト(ヒンクリーは英国のエネルギー需要全体の7%をまかなうことを目指している)はニーズに合わない。
 一国の発電量に占める
再生可能エネルギーのシェアが高まっていくにつれて必要性が増すのは、時折やってくる電力の供給不足(例えば、風がやんだり太陽が雲に隠れたりすると引き起こされる)をカバーできるタイプのエネルギー源
だ。
短時間の供給不足に対処するなら、ガス発電所を使う方が理にかなっている。建設が短期間ででき、ランニングコストも安く、必要に応じて動かしたり止めたりできるからだ。ヒンクリーのために取り分けた予算は、もっと賢く使えるのではないだろうか。時折生じる供給不足への対応なら、蓄電設備の改善も1つの答えになる

 電池の技術は急速に進歩している。テスラ・モーターズは7月末、米国内に「ギガファクトリー」なる工場を立ち上げた。ほかの企業も、意外なところ(例えば、交通信号の電池など)から電力を取り込む技術を実験している。
 英国のように
エネルギーがほしい国々と、風力発電の電力が余っている欧州北部諸国、あるいは地熱エネルギーが豊富なアイスランドなどを電線で結びつける
こともできるだろう。電力消費のピーク時に使用量を減らしてくれる企業には配電会社がお金を払う、ということもできるだろう。

 こうした選択肢はすべて、ヒンクリーより安価に実行できる。ヒンクリー原発は稼働させるまでに10年かかり、稼働してからは多額のコストが毎年発生して電力料金に上乗せされる。しかも、それは原発が動けばの話だ。ヒンクリーをやめれば、どんな新技術が出てくるかを見極める時間も稼げる。恐らく、そうした技術も結局、中国からやってくることになるのだろう。


 プロジェクトが最終承認されることになっていた7月28日に、新政権が突如、この案件はまだ検討中だと発表した理由は明らかにされていません。
 しかし、エコノミスト誌は、中国が不快感を示しても、フランスが難色を示そうが、この取引をご破算にするのは正しい決断だと言っています。
 理由は、建設に10年の歳月と多大な投資がかかり、電力コストが高くなる。その間に、再生エネルギーが開発され、主電源の地位を占めるようになる。その時代には、大規模な原発の電源を主電力として必要とせず、時折やってくる電力の供給不足(例えば、風がやんだり太陽が雲に隠れたりすると引き起こされる)をカバーできるタイプのエネルギー源があれば良いことになり、それは、ガス発電でも賄えるし、蓄電技術の発展他でも賄えるという理論です。その新技術は、結局は中国から輸入することになるだろうと言う弱気な発言には笑ってしまいますが。。
 また、「中国についての安全保障上の懸念」については、「これは恐らく大げさだ」と不問にしていますが、エネルギー安全保障上は、中国の覇権拡大意欲を軽く見過ぎた考えです。だから、南シナ海や東シナ海の力による現状変更の実態にも関わらず、AIIBに参加し、覇権拡大に協力することになるのですね。
 フランス製の原発は、信頼性は高いとしても、中国製原発というのは、いかがなものでしょう。経済成長不振の中国が力を入れている海外のインフラ受注では、つぎつぎと不具合が出て建設が停滞していることは、諸兄がご承知のとおりです。

 そこへ、降ってわいた、ヒンクリーポイントの原発計画に出資する中国国有の原発大手「中国広核集団」が、米国の原発施設で過去20年間、原子力の先端技術に関する企業秘密を盗むスパイ行為を行い、米司法当局から起訴されていたことが明らかになったという報道。この情報が米国から新政権にもたらされ、最終承認がペンディングにされたのでしょうか。

 「中国独自の核燃料物質生産システムをつくる」として、「研究過程を省きたい。予算は潤沢にある」と伝えて、核燃料物質の生産に詳しい米国の原子力専門家6人に接触して協力を得る活動を行い、核燃料物質を許可なく米国外に持ち出し、開発・生産していたのだそうです。そして、この米国の原発から盗んだ核技術で英国に原発施設を建設する可能性が高まったのだそうです。
 中国製原発というのは、米国の模造品だったということで、安全性など品質は信頼がおけないものですね。
 ロンドン大学ユニバーシティーカレッジのエネルギー研究所のポール・ドフマン所長は、「英国の原子力施設に中国を関与させれば、大きな懸念が生じることは明らかで、問題となる」と指摘されているのだそうで、品質以外に、エネルギー安全保障上問題があるのは、当然の事ですね。
 
英原発建設参加の中国国営企業、スパイ行為で米国での起訴が判明 英紙「さらに懸念高まる」と警告 - 産経ニュース

 メイ英政権は「慎重に検討する」として9月まで最終承認を延期するとしたとのことです。ここでも中華の栄光に大きく傷がついた、習近平政権。総額400億ポンド合意済みの対英投資を中止すると脅しをかけているのだそうです。英国の方々も、衣の下の鎧を感じ取っていただけることと思います。


 # 冒頭の画像は、ヒンクリー・ポイント原子力発電所




  この花の名前は、オニユリ


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写真素材のピクスタ


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