遊爺雑記帳

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プーチン大統領が、上から目線に豹変した来日・首脳会談 日本はどうする!

2016-12-14 23:58:58 | ロシア全般
 プーチン大統領が、訪日を前に、読売新聞と日本テレビのインタビューに応じました。
 トランプ次期米大統領の選出以来、日露交渉で強気発言に転じたプーチン大統領については触れて来ていましたが、一段と強硬姿勢を強めています。
 注目の北方領土問題については、4島の帰属問題を交渉の対象とする日本の立場について、「日ソ共同宣言」(1956年)の"枠を超える"と述べたのだそうです。「全く別の問題で別の問題提起だ」とも述べ、受け入れられないとの考えを強調したのです。
 「8項目の経済協力プラン」については、平和条約を締結する「条件ではなく必要な雰囲気作り」との認識を示し、平和条約交渉の進展と直結するものではないとの見解も示したのだそうです。
 平和条約を締結する"条件"として日本に対し、北方領土で、"ロシアの主権の下"での「共同経済活動」を行うよう求める考えも示したのだそうです。完全にロシアの国益のみを追求した、とても「引き分け」には程遠い姿勢です。

 
プーチン大統領と会見、4島交渉「別の問題」 : 読売新聞 (12/14 一面 電子版)
 プーチン露大統領インタビューの全文<1> : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
  ↑ 上記リンクの中から、全文<5>までのリンクが辿れます。

 インタビューのポイントは、3点
 ▶ 対露経済制裁が、平和条約の締結交渉や経済協力の進展を阻んでいる
 ▶ 共同経済活動について検討する用意がある。ただしロシアの主権の下でおこなう
 ▶ 米国のトランプ次期政権との間で、露米関係の改善を目指す

 ロシアの台所事情について、読売の報道は以下
 

露経済の立て直し重視 投資・高度技術不足で停滞 (12/14 読売朝刊)

 【モスクワ=畑武尊】プーチン大統領はインタビューで、「(国民が)よりよい生活となっていると感じられるようにしたい」と述べ、国内経済を重視する考えを示した。プーチン氏は立候補するかどうか明言していないものの、大統領選が予定される2018年を前に、低迷が続く経済の立て直しは最重要課題
となっている。
 世界3位の産油国であるロシアでは、
14年夏以降の原油価格急落のあおりを受けたほか、ウクライナ問題を巡る欧米の経済制裁
により、外国からの資金調達が難しくなるなどして不況と物価高騰に見舞われた。15年の実質経済成長率はマイナス3.7%で、通貨ルーブルは対ドルで4割近く落ち込んだ。今年もマイナス成長の見通しだ。
 プーチン氏は1日の年次教書演説で経済政策に多くの時間を割き、
「経済停滞の原因は我々にある」とした上で、理由として投資や高度技術の不足を挙げた
。IT産業振興や農産品輸出の拡大で19年頃に成長軌道に戻る目標を示したが、石油依存からの脱却など抜本的な方策には触れなかった。
 プーチン氏の支持率は80%を超える。独立系世論調査機関レバダ・センターによると、12年の大統領復帰後は60%台だったのが、14年3月のクリミア半島併合後に跳ね上がった。9月の下院選では、与党「統一ロシア」が議席の4分の3を占めて圧勝している。
 プーチン氏はインタビューで、
高支持率について「一生懸命に働いているのを国民が見ているからだ」と語ったが、一連の対外強硬姿勢が国民の愛国心発揚につながっている部分もあるようだ。ただ、経済低迷が長期化すれば、対外的な成果だけでは支持をつなぎとめられない可能性もある。

 いつも述べていることですが、ロシア経済の低迷は深刻で、台所は苦しいのです。プーチン大統領も、深刻な経済状況は、「原因は、我々にある」と国民に訴え、理由に「投資や高度技術の不足」を挙げているのですね。IT産業振興や農産品輸出の拡大での成長軌道への回復をしめしたものの、石油依存からの脱却など抜本的な方策は無し。日本他、海外からの投資による経済活性化や、枯渇する主力ガス田対応の北極圏や極東での資源開発の必要性も触れられていません。ここを国民に知らせれば、何故、日本との領土問題の解決と、経済支援が必要なのかの理解が得られるのでしょうが、対外的強行姿勢で支持率を得ているから、言いだせないのですね。

 露中関係の「蜜月」ぶりを示し、日本へ牽制もしています。苦しい台所の裏返しの証拠でもあります。
  

対中「蜜月」を強調 真の友好背景に打算も (12/14 読売朝刊)

 【モスクワ=畑武尊、北京=蒔田一彦】ロシアのプーチン大統領は読売新聞と日本テレビのインタビューで、中国との関係を「真の友好」と表現し、結束を強調した。日本への接近を図る一方、「蜜月」を築いてきた中国への配慮を見せた形だ。これまで対立関係にあった米国で、ドナルド・トランプ次期政権が親露姿勢に転じることも予想される中、日中の間でバランスをとる思惑
もあるようだ。
 プーチン氏と中国の習近平国家主席は相互訪問を繰り返し、「これほどの信頼関係はかつてなかった」(プーチン氏)という親密な個人関係を築いてきた。
 プーチン氏はインタビューで、
中国について「国際情勢の重要な問題に関して共通する立場を取ることがとても多い」と指摘
した。今月5日の国連安全保障理事会では、シリア内戦の停戦決議案に両国が拒否権を発動した。在韓米軍への最新鋭ミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD)」配備にも反対で一致する。南シナ海問題でも、仲裁裁判所判決を受け入れない中国の立場をロシアは支持してきた。
 ただ、
その蜜月は「愛や信頼のない政略結婚」(欧州外交筋)ともやゆされ、背景には互いの打算がある
。ロシアはウクライナ南部のクリミア半島併合を機に国際的に孤立。欧州に代わる天然資源の輸出先としての期待もあり、中国に近づいた。中国は、アジア太平洋地域重視を掲げて対中圧力を強めた米オバマ政権や日本のけん制にロシアとの関係強化を利用してきた。
 中国はアジアと欧州にまたがる経済圏構想「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)などを主導し、中央アジアや東欧で存在感を高めている。北極海への進出も活発化させており、
ロシアはこうした中国の影響力拡大を警戒する。極東開発などで日本の協力に期待するのも中国への過度な依存を避ける狙い
がある。プーチン氏は今後の国際情勢について、「近い将来、状況がどう展開するかは、今のところ分からない」と慎重な見方を示した。
 
トランプ次期大統領が対露融和にカジを切り、欧米との関係改善が進めば、ロシアにとって対中関係の重要性は相対的に低下
する。習氏も11月の首脳会談で、プーチン氏から来年5月の訪中の約束を取り付けるなど、つなぎ留めに躍起だ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━
*中露は密接な協力関係を築いている
・長年の懸案だった両国国境が最終合意(2004年)
・ロシアにとり、中国は最大の貿易相手国
・モスクワ━カザン間の高速鉄道建設に中国が参加
・ロシア極東地域で中国が巨額投資
・在韓米軍のミサイル防衛システム配備反対で共同歩調
・南シナ海で合同軍事演習
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 露中の国境領土問題では、折半で解決した実績があり、北方領土も折半でとの声がありますが、露側からの立場で観れば、露中は、対米安保では共闘する仲間。日米同盟で、国土に米軍基地を有する日本とは、全く環境がことなり、折半はありえないとなるのですね。
 日米同盟と日本国内の米軍基地。国後、択捉の露軍基地は、北方四島が手放せない、ロシア側の重要な理由ですね。

 新潟県立大・袴田教授は以下の様に指摘されています。
 

4島の帰属 真剣交渉を 袴田茂樹・新潟県立大教授 (12/14 読売朝刊)

 プーチン氏の発言を見ると、日露首脳会談で平和条約の締結問題が進展する可能性は小さいだろう。プーチン氏は「日ソ共同宣言」を引き、「色丹、歯舞の二つの島が、その後どちらの主権下に置かれるかは書いていない」などと述べた面積でわずか7%の2島さえも返還するつもりはない、との意味以外になく、「2島先行論」も否定している

 ただ日本側に失望感を抱かせないため「信頼感を高めよう」など期待を抱かせる言葉もちりばめている。
 背景には日本との協力関係の重要性がある。
ロシアにとって資源輸出の大型市場として日本は重要だし、経済交渉でロシアに高圧姿勢を強める中国に対しても、「日本力ード」を使える

 安定した良好な日露関係を築くことは日本にとっても大事だ。
明確な主権侵害である北方領土問題について、結果はどうなるにせよ、4島の帰属をめぐり真剣な交渉をすべき
だ。
 その際、
交渉の対象を4島と定め、日露両首脳が署名した1993年の「東京宣言」を前提にすることが重要だ。これは「4島一括返還」の原理論ではないし、それゆえプーチン氏も同宣言の有効性に同意したはずだ。4島の領土問題を認めた上で、両国が本気で交渉に取り組むことから、仕切り直しをすべきだ。

 厳しくロシアと対立したオバマ政権と比較すると、親露的なトランプ次期大統領の出現で、対日姿勢を上から目線に転じたプーチン大統領。こっちもちゃぶ台返しで、経済支援話を凍結させたいところですが、それでは北方領土はこのまま永遠に帰ってこなくなる。
 エリツィン大統領時代の、川奈合意(1998年)では、返還直前までいった両国の交渉。プーチン大統領も、森さんとの、イルクーツク声明(2001年)、小泉さんとの、日露行動計画(2003年)では、袴田教授が指摘される、細川総理(当時)とエリツィン大統領(当時)との間で合意された、東京宣言(1993年)に基づく、四島返還交渉に合意していたのです。
 それを、日ソ共同宣言(1956年)まで話を戻し、しかもその、二島返還さえここにきて否定する豹変。それなら、日本側も、日ソで交わした戦争結果に基づく条約(サンフランシスコ条約にソ連は参加していないので、両国間の条約はここまで遡ることになる)のポーツマス条約(1905年)を基点にした交渉にしてもよいということになります。

 明日(15日)からの、山口、東京と続く会談ではどのような話し合いが行われるのか。ロシアの主権のもとの経済開発だけが具体化するのか、領土問題の継続交渉合意だけで、経済支援8項目の先行実施(=サハリン1, 2の様に露側が成果を横取り独り占め)が決まるのか、注目ですね。


 政府広報(北方領土問題) - YouTube




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