遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

日本のGDPを超えた中国の国民生活はどうなる

2011-02-20 00:20:45 | 中国 全般

 中国のGDPは、日本を抜いて 2位となり、やがては米国をも抜くと鼻息荒く燥ぐ光景の報道が見られます。
 世界の各紙はどう見ているのか、いつもの「g00 ニュースな英語」で取り上げられています。中国の成長に伴い、各国メディアの日本に駐在した記者が、中国に移っているのが多いせいか、冷静に日本と中国を比較しているものが多い様です。また、中国国内でも、日本の報道に見られたほどの関心の高さはないとの報道の様です。
 

日本を追い越した中国は日本のようになるのか(gooニュース・JAPANなニュース) - goo ニュース

<前略>
英『フィナンシャル・タイムズ』のBRICs担当ジョナサン・ウィートリー記者は記者ブログで、この2位交代は「何カ月も前から指摘されてきたし、国の富としてもっと意味のある指標の購買力平価について言えば、中国は約10年前に日本を追い越している」と説明した上で、それでも14日の統計は「転換点となる」と書いています。「日本の経済は昨年末の失速から回復するだろうが、それでも長い目で見れば、ひとつの分水嶺に到達したのは疑いようもない」と。

とはいえ同紙のアジア編集長デビッド・ピリング氏が今年初めに書いたように、購買力平価と同じくらい大事なのは国民一人当たりの実質所得だろうし、それより更に大事なのは国民ひとりひとりの豊かさの実感だろうと、私も思います。それで考えれば、日本人としてそんなに「わあああ、3位に転落したああああ」と悲憤慷慨するようなことだろうかと私個人は思っています。

○日本を知る人が中国を見ると

ちなみに、生活実感のない国や地域について軽々しく書かないことを私は個人的ルールにしているのですが、逆に言えば日本で生活した経験のあるピリング氏にはこう書くだけの根拠がある。データの表面だけ見て判断するのではなく、現地事情や現地の生活実感を理解した上で、名目GDPで日中の豊かさを単純比較するのは変だろうという意見には説得力があります。そしてBBCの上海特派員になる前は東京特派員だったクリス・ホッグ記者も、もしかしたらそういう思いなのかもしれません。

「成長を急いだ中国は後悔するかもしれない」という中国・武漢発の記事で、ホッグ記者は、中国が日本を追い抜いて世界2位の経済大国になったのは確かに「ランドマーク的=画期的」偉業だが、「当の中国国内ではあまり注目されていない話だ」と冒頭から指摘。「それはもしかしたら、中国に暮らす人たちにとって大事なあまりに多くの事柄について、中国はアジアの隣人に大きく遅れをとっているのが、誰の目にも一目瞭然だからかもしれない。中国には膨大な人口がいる。ということはつまり、一人あたりの平均所得は日本の数分の一しかないというわけだ」とも。

「日本を追い抜いた」ことが中国でさほど大ニュースになっていない理由はそれに加えて、「現在の成長モデルが長期的にはどれだけまともで持続可能なものか、急成長を追いかける代償は何なのか、懸念されているからかもしれない」と記者は書きます。

「中国中心部の武漢は北京や上海ほど有名ではないが、北京や上海よりも色々な意味で中国らしい場所と言える」、「この街は灰色の靄に覆われている。住民は、地域の工場から出る公害のせいだと言う」、「市当局は中央政府の目標より高い、5カ年で年12%増の経済成長を目指している。このため中央政府は、こういう地方都市で景気が過熱しすぎないか懸念している」とも。

記事は外資企業で働く若いホワイトカラー男性が、未来への期待に溢れて自信満々だと紹介。家を買ったばかりのこの男性にしてみれば、武漢市内の不動産価格がうなぎ登りに上がっているのも好都合な話だと。市内の普通のマンション価格は今や、平均給与所得の29倍もするのだとか。

……平均所得の29倍って、仮に日本の世帯あたり平均所得を約550万円として(厚労省調査より)比較した場合、約1億6000万円です。それが「average apartment(平均的なマンション)」の値段だと言われると、ちょっと困惑してしまいます。

記事では武漢大学のウェン・ジアンドン経済学教授が「現行の成長パターンは短期的にはとても有効だ。不動産売買やインフラ建設でGDPは急成長する。しかし長期的には、あまりに多くの問題をはらんでいるので、経済成長にとってマイナスとなりかねない。そもそも地方政府の債務がふくらんでいる。それに長期的に何か問題が起きても、担当の役人たちはとっくに別の場所で違う仕事についているだろう」と懸念します。

不動産投資とインフラ整備の公共投資を優先した経済運営の果てにどうなって、そして政策担当者たちが責任をとらない……なんだかどこかで聞いたことのあるような話です。

○日本の二の舞は止めて

米『タイム』誌のアジア特派員、マイケル・シューマン記者も、同じような既視感を感じている様子です。「中国は日本的な未来に直面しているのだろうか」という見出しで、記者は「台頭する東を代表する第一のシンボルとして、中国は日本に取って代わった」ことよりも、「かつてイケイケどんどん時代の日本が世界の経済大国ランキングを駆け上がるために使ったのと似たような政策や慣行を、今の中国も使っていることの方が、興味深い」と書いています。

記事いわく、日本も中国も、経済の急成長と産業の発達を促すために「政府規制と自由な経済活動を組み合わせた『国家資本主義』の国だ」と。日本は19世紀からずっと、官僚たちが優先的に保護支援する業界を選び、そこに資金を注入するよう金融業界を指導した国だと。内需を犠牲にしてでも輸出を伸ばして巨額の経常黒字を蓄積し、そのためには為替を不当に円安に抑えていたと。これと同じことを今の中国もやっているし、かつて「日本式」が欧米で絶賛されたように今また中国方式を奨励する欧米識者はたくさんいる。しかし日本の例が示すようにこの統制と自由経済を組み合わせた国家資本主義にはメリットだけでなく、欠点も危険もあると。政府の介入や規制が主導する、コネ重視の経済運営は結局のところ、信用リスクを考慮しない不透明で安易な過剰投資につながり、高い経済成長率の維持に汲々とする官僚たちのせいで不動産バブルが生まれ、弾け、そして「ゾンビ」のような死に体企業が死屍累々と残ったのだと。

「日本経済の奇跡を突き動かしたシステムそのものが結局、日本経済をダメにした。ゆえに中国が直面する大問題はこれだ。日本の国家資本主義は失敗したが、中国版は成功するのか? 中国は日本の二の舞を避けられるのか?」と、シューマン記者は書きます。

その一方で記事も指摘するように、中国は日本とは違うのかもしれません。中国の膨大な国内市場は拡大する経済のあらゆる衝撃をも吸収できるかもしれません。危機を懸念する中国政府は積極的に内需拡大を奨励していて、それは奏功するのかもしれません。

日本の経済テクニックを使って日本を追い越した今、中国は日本が後れを取った理由から学ぶべきだ」というのが記事の結論です。

世界経済の安定のためにも、ぜひお願いします。そしてせめて日本並みには国民ひとりひとりの生活レベルを上げて、自由で民主的で豊かで穏やかな暮らしを国中で実現してください。生活実感のない中国に対して、私はこんな無責任な物言いしかできませんが。


 先行する日本に学び、日本を追い越した中国。社会に生じた格差拡大による社会の不満緩和が胡錦濤政権の至上命題化し(習近平政権ではどうなるのか、覇権拡大至上主義かもしれません)、内需拡大に向け所得倍増政策を、これもまた日本をお手本に導入を始めています。
 日本や欧米の先進国の成功や失敗の道を学び、追いかけることで、時間を短縮できたここまでの経済成長の道は、そろそろ先進国が今悩んでいる最中の課題を共有し始める道程に差し掛かってきました。
 いえ、それはむしろ急速に進んだことと、巨大な人口をかかえることで、深刻さは大きいとも言えます。
 文中のマンションを購入した、外資企業で働く若いホワイトカラー男性は、そのマンションに住んでいると推察されますが、立ち並ぶ完売したマンション群の街に、住民がいない光景の報道も多く観ます。これが事実なら、バブル崩壊は、すぐそこまで来ているということです。それでなくても、くだんのホワイトカラーの男性のマンションの価格は異常な高さです。
 遊爺が就職した時代(40年以上前)には、日本でも購入したマンションが値上がりしていました。車と同じで、買って使い始めた瞬間から値下がりする(あたりまえのことですが)今日では、神話の世界の考えられない話です。
 日本などの先例が生きてきた流れがつづけば、早晩マンションに投資して値ざやで儲ける方法は破滅します。

 中国国内で、2位になったことには冷静である理由として、BBC・ホッグ記者の記述「現在の成長モデルが長期的にはどれだけまともで持続可能なものか、懸念されているからかもしれない」を取り上げています。中国の人たち自身が、日本などの先例から知っているからなのでしょう。

 面積も人口も、日本とは比べ物にならない大きさの中国。一党独裁という国家の仕組みや思想の違いが、追いつき、追い越して、独自の未開の道を歩まねばならなくなる時が来る今後、この違いが吉とでるのか、凶とでるのか、お手並み拝見というところです。

 最後に、心和む(笑)記事をひとつ。
 
日本尊敬され続ける、くじけるな…シンガポール(読売新聞) - goo ニュース

【シンガポール=岡崎哲】「日本人はくじけてはならない」――。

 シンガポールの有力紙ストレーツ・タイムズ(17日付)は、日本が技術革新を続け、優れた製品やサービスを生み続ける限り、「今後もずっと尊敬される国であり続ける」との東京特派員のコラムを掲載した。
 コラムでは、「GDPの順位だけで国の全体像は語れない」と指摘した上で、世界の音楽界最高の栄誉とされるグラミー賞を日本人4人が同時受賞したことに触れ、「音楽でも経済でも日本がこの先見限られることはないと思い知らせた」と評価した。
 そして「世界レベルの成果」を生む要因として、勤勉さや仕事への誇り、秩序感覚など数字では表せない日本の国民性をあげた。

 なぐさめられるところまで落ちてしまったかと思うより、素直に励ましと受け取ることにしましょう。
 それだけ、アジアのリーダーの役割を待ち望まれているのです。アジアの諸国のこの期待を、民主党の二代にわたる政権は、裏切り、壊し続けてきたのです。




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1 コメント

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日本列島は中国に吸収される。 (るりこ)
2011-02-28 00:26:25
日本がGDPで中国に負けたという事実はそのまま日本の国力が低下したことである。つまり、中国が国力においてすでに日本をしのいでいるとともに、中国がアジアの主人公になったのである。これは歴史の転換点である。もちろん世界は中国をまぶしい目で見つめることになろう。このことは半世紀近く続いた経済大国としての日本の役割が終わるとともに、日本の国際社会における地位が低下していくことに直結する。百四十二年前に欧米化を始めた日本が、まだ欧米化を始めて十年そこそこの中国に負けたことは、非常に重大なことで、日本の欧米化が失敗だったことを示している。なんと二十年前の中国のGDPは日本の十分の一だったのですからね!そんな中国にすらみじめな完敗を喫したのも日本の経済官僚が今までの日本の地位にあぐらをかいて、日本国民を富まそうとしてこなかったことが最大の敗因なのである。公務員が国の運営を完全に誤ったと言える。先人の築いた地位すら守れなかった日本の官僚は中国人に負けた責任をとって全員切腹すべきである。
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