遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

香港区議選 民主派圧勝は北京の裏をかいた香港市民がもたらした

2019-11-30 01:27:27 | 中国 全般
 香港の区議選挙が11月24日に無事行われ、その結果は民主派が圧勝しました。
 '47年に期限を迎える「一国二制度」を、実質的には前倒ししようとする習近平政権と、司法の独立を護ろうとする香港市民の対立となったデモが激化する中で、選挙の実施自体もあやぶまれましたが、選挙前の議席数に対し、民主派の大逆転の圧勝となりました。

 世界は今「自由で開かれた民主主義」か、「閉じられた全体主義」か、という選択を迫られているなか、世界が注目した香港区議選。
 米国では与野党が一致して、香港人権民主法を成立させ、トランプ大統領もサインしました。
 しかし、日本のメディアと野党は、「桜を見る会」にご執心で、蛸壺の中の政局争い。
 何故か、とんと報道にとりあげられませんでしたが、ようやくポツポツと解説の記事がみられるようになって来はじめました。

 鋭い視野で中国の報道をしていただいている、元産経新聞の中国駐在記者で、中国に入国禁止となった、今は産経を退社しフリー記者となっておられる、福島香織さんが、民主派圧勝の原因を、福島さんならではの取材で伝えていただいています。
 
中国化にはっきりノー!北京の裏をかいた香港市民 香港区議選が示した民意とどう向き合うか | JBpress(Japan Business Press) 2019.11.28(木) 福島 香織

 香港の区議選挙が11月24日に無事行われた。その結果は民主派の圧勝であった。

 およそ290万人の有権者が18選挙区452議席(小選挙区)を選んだ結果、
民主派議席は2015年選挙時よりも262人増えて、388人が当選親中派(建制派)は262議席を減らし62人(厳密には59席)にとどまった。71.2%という香港史上最高の投票率がこの選挙に対する香港有権者の真剣さを示している。香港人は、この選挙結果を通じて世界に香港民意のありかを示そうとしたのだ。

 だが、民意のありかなど、香港をこれまで見つめてきた人たちは誰もが最初からわかっていた。
問題は、民意に向き合おうとしない中国と香港政府をどうやって民意に従わせるか、だ。それを少し一緒に考えてほしい。

■一般市民が香港の中国化に「ノー」
 特筆したいのは、
2019年6月に100万人デモ、200万人デモが示した民意は、それから5カ月を経てもほとんど変わっていないことだ。

 
この5カ月の間、平和デモは、勇武派デモに変化していき、その暴力化が海外メディアの注目を集めた。11月には香港中文大学、香港理工大学を舞台に、まるでパルチザンのように自前の武器で警察の防暴隊と対峙するデモ隊の姿が大きく報じられた。理工大学では警察の装甲車に対し、デモ隊が火炎瓶で応戦して装甲車を炎上させるような場面もあった(運転手の警官は無事)。こうした変化について、日本を含む一部の海外メディアは「デモの暴徒化」と懸念を示した。また「多くの市民が、デモ隊が呼びかけるストライキや交通妨害に不満をもち、疲れている」と報じた。また、「市民の日常生活を考えずに政治主張のために激しい破壊活動を続けるデモには義がない」という識者のコメントもあった。あるいは「行き過ぎた破壊行為が、人民解放軍出動要請命の口実になる」と懸念する向きも出てき

 
暴力に義はない、デモ隊は破壊活動を一旦やめて落ち着かねばならない、という論調が日本メディアや識者の間でも多くみられたように思う。警察が丸腰のデモ隊に実弾発砲しても、正当防衛論を言う識者は日本にもいた。警察の白色テロ化が問題であり、警察に対する独立した調査と浄化を先にしなくてはデモ側も暴力を止めることができない、と私がデモ隊側を擁護すると、SNS上では「暴力を煽っている」「テロを擁護している」と厳しい批判を受けることも多かった。

 もちろん、デモ隊側の暴力のエスカレートが、多くの市民にとって多大なストレスであったことは間違いない。だが、だからといってほとんどの市民が、中国公安化した警察にデモの若者を取り締まってほしいと思っているわけでも、中国共産党の影響力によって香港の治安と秩序を回復してほしいと望んでいるわけでもない。それは香港の街できちんと取材していればわかることだ。
香港市民のほとんどが、香港の司法の独立民主的選挙の実現報道・言論の自由といった西側的価値観のもとで運営される国際金融都市・香港の維持を望んでおり、香港の中国化に対しては断固ノーを突きつけている。

■選挙は無事に実施されるのか?
 ただ、そういう民意が、区議会議員選挙にきちんと反映されるかは、実際、蓋をあけてみるまではわからなかった。というのも、区議会議員とは、もともと町内会の役員を選ぶようなゆるい選挙で、地域のお年寄りに福袋を配って投票行動を促す候補もいれば、投票場まで連れて行って、投票すべき候補を指示して投票させるような場面もあった。ひどい場合は、投票箱のすり替えなどが行われることもある。
区議選挙は香港の選挙の中で最も民主的な選挙と言われてはいるが、本当に民主的選挙かと言われると、けっこういい加減なのだ。

 
特に今回は、親中派がかなり集票工作や世論誘導工作を行っていた。また候補者に対する襲撃事件や、あるいは「偽装襲撃」とみられる事件などもあった。

 具体例として、激戦区の1つである屯門・楽翠選挙区を見てみよう。この選挙区では親中派候補の何君堯(ユニウス・ホウ)と民主党の盧俊宇、そして独立派の蒋靖雯が出馬。何君堯は現職の立法会議員であり区議も兼任している大物政治家。そして警察官僚一家に生まれて香港警察だけでなく中国公安ともコネクションが深く、また地元マフィア(三合会、親中派)も束ねる中国系暴力組織の香港における代理人みたいな存在で、7月21日に元朗駅で起きた「白シャツ襲撃事件」(三合会らマフィアが深夜の元朗駅でデモ隊を含む列車乗客を無差別に襲撃した暴力事件)の黒幕だと言われている。地元の顔であり、立法会議員でもある何君堯が勝てない理由は本来は何もない。屯門はもともと親中派の多い地域であり、私が投票日に現地に行った時も、ガラの悪い何君堯の地元支持者が盧俊宇の支持者らを取り囲んでののしる場面に出くわしたりした。

 選挙運動期間中、
何君堯は演説中に暴漢に襲われて胸を刺された。大公報など親中派紙は、香港デモの過激派の仕業だといった論調でこの事件を報じた。だが多くの人たちは自作自演だと見ていた。マフィアといつもつるんでいる何君堯を刺す勇気など、堅気の市民にあるだろうか。何君堯は香港デモの過激派に襲われたということで、香港の治安が悪化しているとアピールし、自分は命を張って香港の治安回復のために戦う正義の候補であると訴えようとしたのだ、と言われた。あるいは、今回の選挙は安全に選挙運動が行えないので、延期か中止すべきだという世論を盛り上げるのが狙いだ、とも言われた。

 また、
独立派として出馬した蒋靖雯は、実は親中派の差し金で民主派票を分断するために送り込まれた「刺客候補だ」といった噂も流れた。結果は、蒋靖雯の得票数はたった49票で、ほとんど影響力を発揮しなかったのだが、そうしたいろんな噂や事件が各選挙区であった。

 私も投票日当日になっても、本当に無事に選挙が行われるのか心配だった。まっとうな選挙が行われれば間違いなく民主派の圧勝という民意が反映されるはずだが、それを中国共産党とその傀儡である香港政府が許すかどうか。選挙日の昼過ぎになにか「重大事件」が起きて選挙が中止になって投票が無効になるという噂が、その日の朝までまことしやかに流れていた。

 なので、こうして
選挙が無事行われ、結果がきちんと予想されたような民意を反映していたことは、逆に驚きであった。

■中国共産党は親中派の圧勝を信じていた?
 その背景についていくつかの分析記事があるが、面白いのは「フォーリン・ポリシー」誌シニアエディターのジェームス・パーマーが「ニューズウィーク」に寄稿した記事だ。その記事によると、実は
北京(中国共産党)は親中派の圧勝を信じて疑っていなかった、という。

 パーマーは2009年から2016年に環球時報に外国籍編集者として雇われていた経験があり、いまでもチャイナ・デイリーや環球時報の内部事情に詳しい。中国政府は「香港の民主化要求運動が金融大都市に混乱と暴力をもたらしたている」という論調で中国メディアや親中メディアに報じさせていた。今回の選挙も建制派(親中派)圧勝と予想して、中国メディアは予定稿まで用意していた、というのだ。親中派惨敗の予定稿は全く用意していなかったらしい。

 パーマーは中国共産党が世論誘導のために中国メディア、親中派メディアに書かせていたプロパガンダに、いつのまにか中国共産党官僚自身が騙されていた、と指摘している。香港行政長官の林鄭月娥(キャリー・ラム)が「『サイレントマジョリティー』は香港のデモの抗争にうんざりしている」と何度も強調していたのを、中国共産党指導者たちも鵜呑みにしていた、というわけだ。

 北京の香港情勢の判断は、おもに中聯弁(中央政府駐香港聯絡弁公室)を通じた情報を基にしている。だが、彼らに情報提供する人たちは北京の協調者であるから、北京に都合のよい情報しか集まってこない。なぜなら
異論者を徹底粛正する習近平のやり方のもとでは、怖くて誰も異論の存在を告げられないからだ。あるいは、習近平政権になって、習近平のやり方に反感をもつ官僚たちが、まともに情報をあげない、つまりサボタージュを決めていた、という説もある。

 香港市民も用心していた。私は選挙前に「誰に投票するつもりか」という聞き取り調査をランダムに行ったのだが、親中派支持者が予想外に多く、内心落ち込んでいた。だが、香港の友人が「
調査で誰に投票するのか聞かれたら、親中派に入れると答えるに決まっているだろう? 民主派が圧勝すると思われたら選挙が中止になる可能性があるからね」と教えてくれ、聞き取り調査はあてにならないことに気づかされた。

 おそらく親中派メディアの事前調査では、親中派有利の結果が出ていたのだろう。
親中派有利という誤情報のおかげで無事に選挙が行われたのだとしたら、それこそ香港市民は中国共産党や親中派の裏をかいたのだ。何としても世界に自分たちの民意を伝えたかったということだろう。

■なぜ国際社会がコミットすべきなのか
 こうして、
香港人が世界に向けて発信した本音の民意を、私たちは無視してはならない。香港人は本当に、香港の中国化を望んでいないのである。

 以前、本コラムで指摘しているが、
世界は今「自由で開かれた民主主義」か、「閉じられた全体主義」か、という選択を迫られている。民主主義のほうが議論が紛糾し、争いが起きやすいが、異論を封じられた全体主義のもたらす秩序が真の平和と言えるのだろうか。私は前者を支持する。

 香港に異なる政治スタンスの人たちが共存して、その対立がときに暴力的になっても、公正なルールが生きていれば、合議で物事は解決できる。
今、香港の争いが激化しているのは、異見を唱える人たちが共存する自由主義的な社会に対して、全体主義的秩序が押し付けられようとして、本来の自由主義的な公正なルールが機能しないなか、暴力で解決しようという動きになっているからだ

 
大切なのは、香港に公正なルール、つまり独立した司法を取り戻すことであり、そのための第一歩は、香港人の半分以上が信用ゼロと答える警察機構の浄化だ。これは中国内政の問題ではなく、人権侵害の問題であり、国際社会がコミットすべき問題だということも、はっきりさせなくてはならない。

 警察が信用できる機関に立ち戻れば、デモ隊の行き過ぎた破壊行為は犯罪として司法に則って裁かれるだろうし、それに多くの人たちが納得できる。この選挙は、国際社会が力を貸して、そうした香港に公正なルール、独立した司法を取り戻すタイミングとなるだろう。

 
米国は「香港人権民主法案」を可決した。トランプ大統領は為政者としてこれを政治の道具にしようとしているが、民主主義国家・米国の意思はこの法律を施行することになるだろう。ならば日本人はどうするのか。私たちも答えを出すべきではないのか。

 大きな勝因は、北京(中国共産党)は親中派の圧勝を信じて疑っていなかった油断だと。
 世界が天安門事件の再来かと注目するデモと、それを力で抑え込もうとする北京の命に従う香港政府との衝突が激化ていましたが、世界の眼があり、天安門事件の様に、中共・人民軍が直接介入は出来ませんでした。

 北京に入る事前情報では、親中派圧勝となっていたので、北京も選挙を無事終わらせた。
 しかし、その情報は、習近平の圧政に怯える中聯弁(中央政府駐香港聯絡弁公室)やその協力者から得たもので、怖くて誰も異論の存在を告げられない偏ったものであったり、習近平のやり方に反感をもつ官僚たちが、まともに情報をあげない情報であった可能性があると。

 香港市民も用心していたのだとも。
 福島さんの友人情報で、「調査で誰に投票するのか聞かれたら、親中派に入れると答えるに決まっているだろう? 民主派が圧勝すると思われたら選挙が中止になる可能性があるからね」と教えてくれ、聞き取り調査はあてにならないことに気づかされたと。
 香港市民は中国共産党や親中派の裏をかいたのだ。何としても世界に自分たちの民意を伝えたかったということだろうと福島さん。

 こうして、香港人が世界に向けて発信した本音の民意を、私たちは無視してはならないと。

 今、香港の争いが激化しているのは、中国共産党によって、全体主義的秩序が押し付けられようとして、本来の自由主義的な公正なルールが機能しないなか、暴力で解決しようという動きになっているからだと。「逃亡犯条例」の改変が契機となったことは諸兄がご承知の通りです。

 これは中国内政の問題ではなく、人権侵害の問題であり、国際社会がコミットすべき問題だと福島さん。

 米国は「香港人権民主法案」を可決し、トランプ大統領も、貿易交渉中で、選挙に向け成果を得たいのかどうか、習近平に配慮をしながらではありますが、サインはしました。
 
 国際社会が注目していることで、習近平も天安門事件の時のような軍が直接出動することは控えました。

 香港の「一国二制度」は、'47年の期限に向けてどうなるのかは、台湾情勢や、札束と軍事力で覇権拡大を進める習近平によるアジア・太平洋地域の安全保障にも係る問題で、東シナ海での侵略を受けている日本には、とりわけ関連がある問題です。
 '47年まで、国内経済が低迷するなか、習近平の専制政治体制が維持されるのか。民主派が生き延びているのか。

 福島さんが指摘される通り、日本としてどう対応していくのか、我々日本国民や、与野党の国会は対策の検討と実現が必要です。
 「桜を見る会」で、国会を全空転させるのではなく、並行させるかたちとし、激動している世界情勢への対応の政策議論と立法を迅速に進めていただきたい。
 日本の国会は、米国の議会の迅速さに学ぶべきでしょう。
 野党は、重箱の隅つつきで、政局に明け暮れている様では、とても政権は託されず、万年野党で終わるしかない。

 天安門事件で世界が制裁包囲網を敷く中、天皇陛下の訪中で包囲網に穴を開けた日本。今再び、習近平の国賓招聘で、世界の対中注目の流れに逆行しようとしています。少なくとも、香港情勢がおちつくまでは、延期または中止すべきと考えます。
 欧米諸国が制裁を科すロシアに接近した安部政権。4島返還の長年の交渉の悲願は、二島返還どころかゼロ島返還となり、制裁網破りの犠牲を払った成果どころか、過去の交渉で詰めていた成果を潰してしまいました。
 ここでまた世界の流れに反する外交では、これまでに築いた安部政権の評価は失われることとなるでしょう。



 # 冒頭の画像は。区議会議員選挙の投票に並ぶ香港市民




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