薄煕来・前重慶市党委書記の訴追で表面化した人事抗争に、人民解放軍の動向に関する報道がなく気がかりでしたが、なんと、江沢民前主席に忠誠を誓ってきた軍首脳が今年に入り相次ぎ胡主席支持へと乗り換え始め、胡錦濤の共青団派が政治の主導権を握りつつあるのだそうです。
【北京=山本勲】薄煕来・共産党政治局員の重慶市党委書記解任を機に、中国では胡錦濤国家主席を中心とする共産主義青年団(共青団)派が秋の第18回党大会に向けた政治の主導権を握りつつある。その最大要因は江沢民前主席に忠誠を誓ってきた郭伯雄・党中央軍事委副主席ら軍首脳が、今年に入り相次ぎ胡主席支持へと乗り換え始めたことにある。江氏の健康の衰えや、胡主席が抜擢(ばってき)してきた軍の次世代幹部が台頭し始めたことなどで、軍首脳も保身のために転身を余儀なくされたようだ。
毛沢東は「銃口から政権が生まれる」と喝破したが、法治が浸透しない中国では軍の実権を握った政治家が最高権力者となる。
胡錦濤氏は2002年に党総書記、翌春、国家主席、04年、党中央軍事委主席に就任した。しかし軍事委の制服組首脳、郭伯雄、徐才厚の両軍事委副主席や梁光烈国防相、陳炳徳総参謀長らは江沢民前主席が抜擢。胡主席の意向は軍に浸透しなかった。
ところが今年に入り、これら軍首脳が相次ぎ胡主席への忠誠を表明。軍の各種催しを通じ「党中央軍事委と胡主席の権威を旗幟(きし)鮮明かつ断固擁護し、すべての指示に従う」大々的な教育、宣伝を始めた。
軍機関紙「解放軍報」によると、1月10日に北京で開いた全軍規律検査工作会議を手始めに、2月には広東省広州(13日)、北京(17、27日)、江蘇省南京(17日)、3月にも全国人民代表大会の会期中に北京などで実施された。
陣頭指揮をとったのは、いずれも郭、徐の両副主席ら。「軍事委主席としての胡錦濤氏」にこれほど絶対服従を求めたのは異例だ。しかも各地で「法に基づき軍を治め、社会の安全、安定を重視する」(徐副主席)よう求めた。党大会を控え権力闘争が激化する中で、軍が胡錦濤支持を明確に打ち出したわけだ。
軍首脳転身の背景には、江氏の健康の衰えと軍次世代幹部の台頭がある。昨年末の軍事委拡大会議で劉少奇元国家主席の子息、劉源・軍総後勤部政治委員(大将、1951年生まれ)が軍の腐敗を放置した現首脳を厳しく批判したとされる。
劉氏が一例とした、首脳部に近い谷俊山中将は翌月に汚職で身柄を拘束され、彼らの威信もかなり低下しているようだ。胡主席系の次世代としては房峰輝・北京軍区司令員(51年生まれ)らが台頭している。
胡派は「胡主席が江前主席のように党大会後も軍事委主席に留任する」との情報を流すなどして軍権掌握を内外に印象付け、政局を有利に展開しつつある。
政治局常務委員(9人)中、「薄煕来解任に反対したのは周永康氏(中央政法委員会書記)のみ」とされるのもその表れだ。
記事に書かれている様に、軍を掌握した者が最高権力の座に着く国ですが、胡錦濤氏は国家主席や軍事委主席就任後も、江沢民による軍部への影響力に悩まされ続けてきていたことは、諸兄がご承知の通りです。
それが、江氏の健康の衰えや、胡主席が抜擢してきた軍の次世代幹部が台頭し始めたことなどで、軍首脳も保身のために転身を余儀なくされ、今年に入り江沢民前主席に忠誠を誓ってきた郭伯雄・党中央軍事委副主席ら軍首脳が、相次ぎ胡主席支持へと乗り換え始めたのだそうです。
記事の中に出てくる、軍の腐敗を放置した現首脳を厳しく批判した、劉少奇元国家主席の子息劉源・軍総後勤部政治委員は、習近平氏とは幼馴染で太子党に所属し習氏の抜擢で今日の地位についたとの情報もありました。
中国軍幹部の摘発は、習氏の親友の劉源氏が着手 - 遊爺雑記帳
薄煕来・前重慶市党委書記 実質上の身柄拘束となる「双規」通告 - 遊爺雑記帳
小平氏の後、江沢民、胡錦濤氏とトップが変わる中、軍の掌握のために軍を甘やかし軍備の拡大を続けてきて、軍の覇権拡大路線は、時には胡錦濤政権の手綱でもてあますまでに至っていました。
若手を抜擢し、彼らが中心に成長してきたことで胡錦濤氏支持を浸透させて権力の座を得ようとしているとのことですが、抜擢した人材に発言力を持たせるための甘やかし=軍備への投資があったとは容易に想像できる話ですね。
劉源大将の様に、軍部の汚職に勢力を注ぐ方向であればよいのですが、尖閣への上陸・領有に向け作戦を始動したように、軍事力による覇権拡大が更に増長されることになることが危惧されます。
習近平新体制誕生に向けた権力抗争。胡錦濤派(共青団)+温家宝氏(無派閥)、江沢民派(上海閥)、習金平派(太子党)、人民解放軍の四つのグループの綱引きは、まだまだ目が離せませんね。
冠雪したバイカオウレン 撮影場所; 六甲高山植物園
↓よろしかったら、お願いします。