香港で9月6日に予定されていた立法会選挙の実施が1年延期されると7月31日に発表されました。
建前の理由は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためとのことで、法的根拠は「緊急法」。
真の理由は、香港政府と中国共産党は、今年(2020年)9月に立法会選挙を行いたくない、ということだとはだれもが考え付いていることだと、福島香織さん。
片や、香港国安法施行は始まり、民主派候補の逮捕が始まっています。
香港国安法施行は、香港や中国国内に適用されるだけでなく、「犯罪人引渡し条約」を締結している国の外国人にも適用されるので、国際的人権問題化していますね。
立法会選挙が行われれば、民主派・本土派が議席の過半数を奪いかねず、そうなれば中国共産党としては完全にメンツを失う。
7月30日に、香港政府は、元デモシストメンバーの黄之鋒ら12人の民主派・本土派候補の出馬資格を一斉に取り消すという、あからさまな民主派に対する選挙妨害を行った。だが、そこまでやっても中国・香港政府サイドは安心できなかったわけだと福島さん。
民主派・本土派候補の間では、もし候補資格が取り消されたら、資格を取り消された候補が代理候補を指名して、票田を代理が受け継ぐ、という暗黙の了解ができているので、出馬資格を取り消しても取り消しても、おそらく民主派サイドは候補を送り込み続けるはずだと。
何故なら、香港市民はまだ、香港の自治を取り戻すことをあきらめていないからだと。
国際社会の自由主義国家としては、一体、具体的に何ができるのだろうと福島さん。
香港の新型コロナ肺炎の感染状況は、7月中旬以降、急に増えだしているのだそうです。
中国が医療チームを派遣し、全市民のPCR検査を支援するのだそうです。しかし、多くの市民は、「検査によって個人情報やDNA情報を大陸に送られるのではないかと懸念している」として、強く反対していねのだとか。
米国のポンペオ国務長官は、「大幅延期に正当な理由はない。今回の遺憾な行為は、中英共同宣言と基本法(憲法に相当)の下で香港市民と英国に誓った約束を守る意思が中国にないことを裏付けるものだ」と批判の声を上げているのだそうですね。
香港国安保がすでに国際社会を巻き込む人権問題になっています。
7月31日に香港警察当局が、海外に移住した香港市民6人に対して国安法違反で指名手配をかけたのだそうです。
国安法は海外在住者が海外で行った行為に対しても犯罪とする、という条文があるが、実際どこまでやるか、というのは注目点だった。罪に問われるのは法施行後の言動だが、彼らの罪はいつのものかは不明。
米国に移住して25年、米国公民として生きてきた朱牧民が指名手配をかけられるというならば、自由の国に生まれて生活している外国人であっても、香港のデモに同情的であったり中国共産党に批判的であったりするというだけで香港国安法を根拠に指名手配をかけられ得る、という話になる。そんな国安法の方が自由主義国家への内政干渉だろうと福島さん。
香港国安法の問題は、もはや香港だけの問題でも、中国内政の問題でもなく、国際上の自由主義社会と中国・香港との関係性を問うものになってきていると。
香港市民がデモをどう受け止めているかが区議会選挙によって可視化されたように、国安法施行に対しても、選挙というかたちで香港市民の本音を可視化する必要がある。それがあってこそ、国際社会が強い圧力をもって、国安法の撤回を迫ることができるのだと福島さん。
香港国安法の問題は、もはや香港だけの問題でも、中国内政の問題でもなく、国際上の自由主義社会と中国・香港との関係性を問うものになってきていると。
米国や英国、オーストラリア、インド他、欧州諸国も含めた、対中警戒網が敷かれるなか、日本は、香港問題に関する立場を明確にして中国に対して制裁や条件に言及する外交に出てほしいと福島さん。
ましてや、尖閣諸島では、領海侵犯のエスカレートに遭っている日本。
安倍政権にも、野党にも、国民と領土の安全保障に尽力いただきたい。
# 冒頭の画像は、逮捕された香港「民主の女神」周庭氏
逮捕された香港「民主の女神」周庭氏(23)に無期懲役の可能性も 今後の身柄は?(文春オンライン) - Yahoo!ニュース
この花の名前は、キンシバイ
↓よろしかったら、お願いします。
建前の理由は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためとのことで、法的根拠は「緊急法」。
真の理由は、香港政府と中国共産党は、今年(2020年)9月に立法会選挙を行いたくない、ということだとはだれもが考え付いていることだと、福島香織さん。
片や、香港国安法施行は始まり、民主派候補の逮捕が始まっています。
香港国安法施行は、香港や中国国内に適用されるだけでなく、「犯罪人引渡し条約」を締結している国の外国人にも適用されるので、国際的人権問題化していますね。
異常な「香港立法会選挙を1年延期」は国際問題だ 延期の理由は本当に新型コロナなのか?(1/5) | JBpress(Japan Business Press) 2020.8.6(木) 福島 香織
香港で9月6日に予定されていた立法会選挙の実施が1年延期されると7月31日に発表された。
建前の理由は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためであり、法的根拠は「緊急法」だ。たしかに7月以降、ほとんど感染拡大を抑え込んでいた香港で急に感染確診者数が増えている。7月の下旬は12日間連続で100人以上の新規感染者が出た。
だが、1年も延期する必要があるのか。立法会条例の規定では、延期期限は2週間だ。選挙は市民の権利であり義務であり、議会政治の根幹だ。コンサートなどのイベントや会社の会議を延期するのと訳が違う。たとえ延期せざるを得ないにしても、普通は1週間、2週間、あるいは1カ月、2カ月単位で考える話だ。
誰もがこの選挙延期の本当の理由が「新型コロナ感染拡大の防止」などではないと思っている。香港政府と中国共産党は、今年(2020年)9月に立法会選挙を行いたくない、というのが本当の理由だろう。
立法会選挙が行われれば、民主派・本土派が議席の過半数を奪いかねず、そうなれば中国共産党としては完全にメンツを失う。7月中旬に行われた民主派による選挙デモンストレーション、「予備選」で登録有権者数の14%に上る61万人が国安法違反のリスクを冒してまで投票行動に動いた現実に恐れをなしたのだ。
7月30日に、香港政府は、元デモシストメンバーの黄之鋒ら12人の民主派・本土派候補の出馬資格を一斉に取り消すという、あからさまな民主派に対する選挙妨害を行った。だが、そこまでやっても中国・香港政府サイドは安心できなかったわけだ。
民主派・本土派候補の間では、もし候補資格が取り消されたら、資格を取り消された候補が代理候補を指名して、票田を代理が受け継ぐ、という暗黙の了解ができていた。出馬資格を取り消しても取り消しても、おそらく民主派サイドは候補を送り込み続けるはずだ。なぜなら香港市民はまだ、香港の自治を取り戻すことをあきらめていないからだ。
先日、別件の取材で黄之鋒にコメントをもらったのだが、彼は「香港人はまだ投降していない」と言っていた。香港はもう終わりだ、と嘆くのは早い。香港市民は、まだ希望を失っていないし、その市民パワーに、中国政府、香港政府は選挙を延期させてしまうほど、脅威を感じている。
では、香港の自治と自由を守りたいと思っている国際社会の自由主義国家としては、一体、具体的に何ができるのだろう。
まず香港の現状について振り返りたい。
延期理由はあくまでも新型コロナと行政長官
9月6日に予定されていた立法会選挙を来年9月5日に延期するという決定がアナウンスされた。林鄭月娥(りんてい・げつが、キャリー・ラム)行政長官は記者会見で「この決定は新型コロナウイルスの感染が続いていることによるもので、けっして政治的配慮や親北京候補の選挙準備状況を鑑みたものではない」と強調しているが、その主張は多くの市民に信じられていない。
この決定の根拠となるのは緊急法(緊急状況規則条例)だ。これは、暴動など通常の治安維持が困難となったときに行政長官と行政会議のみで発動できる特別法であり、戒厳令と同じ効果がある。これが1967年以来、初めて発動されたのは、昨年10月に反送中デモが大規模化した際に「マスク・覆面禁止令」を出したときだった。この時に緊急法を発動したことも国際社会から顰蹙を買ったが、今回それから1年もたたないうちに二度目の緊急法を出すことになった。果たして、今回、緊急法を出すほどの治安の危機があったのか。
22人の民主派の立法会議員は、選挙延期が発表された7月31日に即日、反対の合同声明を出した。「親中派陣営は自分たちの選挙情勢が厳しいため、新型コロナ肺炎の感染を口実に選挙を延期しようとしている。これは市民の投票の権利を乱暴に剥奪するものである」「新型コロナウイルスの感染が続くなかで、全世界60カ国以上の国家で、選挙、住民投票が期日通り実施されている。あるいは、延期したとしても、非常に短い期間の延期の後に実施している。特区政府は十分に防疫措置に力を尽くして、選挙を期日通りに行う責任がある」と主張している。
香港民意研究所の調査によれば、55%の香港人が予定通りに選挙を行うべきだと答えている。回答者を民主派支持者に限れば73%が予定通りに選挙を行うべきだとしている。
「全香港市民のPCR検査」に拒否反応
香港の新型コロナ肺炎の感染状況は、8月4日現在、累計感染者3670人(前日比80人増)、累計退院者数2141人(前日比104人増)、入院者数1298人(前日比55増、重態数43人)、累計死亡数41人(前日比1人増)である。確かに厳しい状況ではあるが、退院数と入院数では退院数の方が多いし、一番厳しい時期(7月下旬)と比較するとピークは過ぎた感がある。
ちなみにほとんど新規感染者をゼロに抑えていた香港で、7月中旬以降、急に増えだした理由は4つ挙げられている。その筆頭が、香港入境時にPCR検査を免除され2週間の隔離措置を受けていない渡航者が2~5月だけで20万人以上いる、ということだった。渡航者の内訳は旅客機乗務員、船員、(中国)政府公務員、そして中国、マカオ、台湾からのビジネスマン、中国から香港に来た留学生。早い話が大半が中国人なのだ。香港市民は入境時に2週間の隔離措置を義務付けられているにもかかわらず、中国からの公務員、ビジネスマン、留学生はPCR検査も2週間の隔離措置も免除されているという。
もちろん6月に入って、気の緩んできた市民の食事会、宴会が増えたことや、香港政府自身が公務員の在宅勤務の推進に積極的でなかったこと、PCR検査への取り組みの不十分さなども理由として挙げられている。新華社など中国メディアは、7月中旬の民主派の予備選挙が元凶であるとも報じている。
PCR検査不足に関しては、中国が医療チームを派遣し、全市民のPCR検査を支援するという。香港の公立機関は1日あたり1万人に対しPCR検査を実施しているが、中国チームはこれを1日10万~20万人ペースで行い、半年ほど居座って全市民にPCR検査を行いたい、としている。だが、香港市民からは強い拒否反応が出ている。
新疆ウイグル自治区では住民のDNAなど生体情報が強制収集されて市民監視システムに利用されているという報道が一部であった。中国政府は、新型コロナへの医療支援を口実にして「香港の新疆ウイグル自治区化」を企んでいるのではないか、との見方がある。
香港の民主派政党の新民主同盟は、「香港人は大陸の医療と検査を信用していない。そんな状況で大陸主導の検査を導入することは、防疫の効果にも影響する。多くの市民は、検査によって個人情報やDNA情報を大陸に送られるのではないかと懸念している」として、強く反対している。市民のDNA情報はプライバシーの問題でもある、という。同時に中国製検査試薬の品質にも疑問を呈している。
そもそも全員のPCR検査が感染の抑制に効果があるかというテーマは、日本でもしばしば議論の的になってきた。香港大学感染・伝染病センターの何柏良医師が香港メディアに語ったところによれば、「適切な措置(全民検査が終わるまでの市民に対する行動制限など)を徹底しなければ(検査を受けたあとに感染することもあり)、全員への検査は資源の浪費でしかない」。それよりも大陸から香港に来る渡航者の制限、検査・隔離の徹底の方をまず行うのが、普通だろう。
海外在住の6人を指名手配
大統領選を控えるトランプ大統領は7月30日、「普通郵便投票(不在者投票ならいいのだが、そうではなく)を行ったら、2020年は史上最も不正確で不正だらけの選挙になる。・・・誰もが適切に、確実に、安全に投票できるようになるまで選挙を延期しては???」とツイートして、野党のみならず共和党の支持基盤からも批判を浴びた。トランプも「延期したいわけじゃない」と言い訳せざるを得ない状況になった。
投票の方法については引き続き議論されるだろうが、世界で一番の感染国となってしまった米国でも、選挙延期など言語道断、ということだ。あれほどひどい感染状況の米国で11月に選挙が行われるのに、香港レベルの感染状況で選挙を延期するのは説得力に欠ける。
香港の選挙延期について、国際社会が反対を表明するのは内政干渉でもなんでもない。
米国のポンペオ国務長官も、「そのような大幅延期に正当な理由はない。今回の遺憾な行為は、中英共同宣言と基本法(憲法に相当)の下で香港市民と英国に誓った約束を守る意思が中国にないことを裏付けるものだ」と批判の声を上げている。
香港で反送中デモが続いたあと、香港市民がデモをどう受け止めているかが区議会選挙によって可視化されたように、国安法施行に対しても、選挙というかたちで香港市民の本音を可視化する必要がある。それがあってこそ、国際社会が強い圧力をもって、国安法の撤回を迫ることができるのだ。
国安法を放っておけないのは、それがすでに国際社会を巻き込む人権問題になっているからだ。
たとえば、7月31日に香港警察当局が、海外に移住した香港市民6人に対して国安法違反で指名手配をかけた。名前を列挙すると以下のとおりである。
・羅冠聰(ネイサン・ロー):ロンドンに移住した元立法議員
・朱牧民(サミュエル・チュー):雨傘運動のきっかけとなったオキュパイセントラル呼びかけ人の1人である牧師・朱輝明の息子。米国公民
・鄭文傑(サイモン・チェン):元在香港英国領事館職員。昨年8月に中国出張中に一時身柄拘束されたのち解放され、英国に政治亡命した
・黄台仰(レイ・ウォン):香港独立派の運動家でドイツに亡命した
・劉康:英国に移住した独立派の運動家
・陳家駒:同じく独立派運動家
香港国安法施行後、初めて海外在住者への適用を実施したという点で、6人の指名手配は国際社会に衝撃を与えた。
国安法は海外在住者が海外で行った行為に対しても犯罪とする、という条文があるが、実際どこまでやるか、というのは注目点だった。罪に問われるのは法施行後の言動だ。彼らがこの1カ月、容疑に問われるほどのことをしたのか。だが、香港警察が具体的にどのような言動を犯罪とみて、彼らを指名手配したのかは不明のままだ。
しかも米国に移住して25年、米国公民として生きてきた朱牧民が「国家分裂を扇動した」あるいは「外国と結託して国家安全に危害を与えた」といった容疑で指名手配をかけられるというならば、自由の国に生まれて生活している外国人であっても、香港のデモに同情的であったり中国共産党に批判的であったりするというだけで香港国安法を根拠に指名手配をかけられ得る、という話になる。そんな国安法の方が自由主義国家への内政干渉だろう。
香港に国安法を撤廃させるか、あるいは無効化させることができなければ、自由社会に生きている私たちは、香港や中国と、政治、経済、社会、スポーツ文化を含む交流を維持できない、ということになる。香港や中国と完全に断交するしかない。そうなれば、2022年の北京冬季五輪にだって、自由主義国家から参加できなくなってしまう。SNSで中国や香港の政治に批判的な言動をしただけで「国家分裂煽動」の容疑をかけられるかもしれない状況で、平和とスポーツの祭典に興じられるだろうか。
香港国安法の問題は、もはや香港だけの問題でも、中国内政の問題でもなく、国際上の自由主義社会と中国・香港との関係性を問うものになってきている。私はまだ香港を切り捨てることも、中国と断交することも回避できると望んでいる。だからこそ、日本政府にもきちんと、香港問題に関する立場を明確にして、米国や英国、オーストラリア、インドなどのやり方をみながら、中国に対して制裁や条件に言及する外交に出てほしいのだ。
香港で9月6日に予定されていた立法会選挙の実施が1年延期されると7月31日に発表された。
建前の理由は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためであり、法的根拠は「緊急法」だ。たしかに7月以降、ほとんど感染拡大を抑え込んでいた香港で急に感染確診者数が増えている。7月の下旬は12日間連続で100人以上の新規感染者が出た。
だが、1年も延期する必要があるのか。立法会条例の規定では、延期期限は2週間だ。選挙は市民の権利であり義務であり、議会政治の根幹だ。コンサートなどのイベントや会社の会議を延期するのと訳が違う。たとえ延期せざるを得ないにしても、普通は1週間、2週間、あるいは1カ月、2カ月単位で考える話だ。
誰もがこの選挙延期の本当の理由が「新型コロナ感染拡大の防止」などではないと思っている。香港政府と中国共産党は、今年(2020年)9月に立法会選挙を行いたくない、というのが本当の理由だろう。
立法会選挙が行われれば、民主派・本土派が議席の過半数を奪いかねず、そうなれば中国共産党としては完全にメンツを失う。7月中旬に行われた民主派による選挙デモンストレーション、「予備選」で登録有権者数の14%に上る61万人が国安法違反のリスクを冒してまで投票行動に動いた現実に恐れをなしたのだ。
7月30日に、香港政府は、元デモシストメンバーの黄之鋒ら12人の民主派・本土派候補の出馬資格を一斉に取り消すという、あからさまな民主派に対する選挙妨害を行った。だが、そこまでやっても中国・香港政府サイドは安心できなかったわけだ。
民主派・本土派候補の間では、もし候補資格が取り消されたら、資格を取り消された候補が代理候補を指名して、票田を代理が受け継ぐ、という暗黙の了解ができていた。出馬資格を取り消しても取り消しても、おそらく民主派サイドは候補を送り込み続けるはずだ。なぜなら香港市民はまだ、香港の自治を取り戻すことをあきらめていないからだ。
先日、別件の取材で黄之鋒にコメントをもらったのだが、彼は「香港人はまだ投降していない」と言っていた。香港はもう終わりだ、と嘆くのは早い。香港市民は、まだ希望を失っていないし、その市民パワーに、中国政府、香港政府は選挙を延期させてしまうほど、脅威を感じている。
では、香港の自治と自由を守りたいと思っている国際社会の自由主義国家としては、一体、具体的に何ができるのだろう。
まず香港の現状について振り返りたい。
延期理由はあくまでも新型コロナと行政長官
9月6日に予定されていた立法会選挙を来年9月5日に延期するという決定がアナウンスされた。林鄭月娥(りんてい・げつが、キャリー・ラム)行政長官は記者会見で「この決定は新型コロナウイルスの感染が続いていることによるもので、けっして政治的配慮や親北京候補の選挙準備状況を鑑みたものではない」と強調しているが、その主張は多くの市民に信じられていない。
この決定の根拠となるのは緊急法(緊急状況規則条例)だ。これは、暴動など通常の治安維持が困難となったときに行政長官と行政会議のみで発動できる特別法であり、戒厳令と同じ効果がある。これが1967年以来、初めて発動されたのは、昨年10月に反送中デモが大規模化した際に「マスク・覆面禁止令」を出したときだった。この時に緊急法を発動したことも国際社会から顰蹙を買ったが、今回それから1年もたたないうちに二度目の緊急法を出すことになった。果たして、今回、緊急法を出すほどの治安の危機があったのか。
22人の民主派の立法会議員は、選挙延期が発表された7月31日に即日、反対の合同声明を出した。「親中派陣営は自分たちの選挙情勢が厳しいため、新型コロナ肺炎の感染を口実に選挙を延期しようとしている。これは市民の投票の権利を乱暴に剥奪するものである」「新型コロナウイルスの感染が続くなかで、全世界60カ国以上の国家で、選挙、住民投票が期日通り実施されている。あるいは、延期したとしても、非常に短い期間の延期の後に実施している。特区政府は十分に防疫措置に力を尽くして、選挙を期日通りに行う責任がある」と主張している。
香港民意研究所の調査によれば、55%の香港人が予定通りに選挙を行うべきだと答えている。回答者を民主派支持者に限れば73%が予定通りに選挙を行うべきだとしている。
「全香港市民のPCR検査」に拒否反応
香港の新型コロナ肺炎の感染状況は、8月4日現在、累計感染者3670人(前日比80人増)、累計退院者数2141人(前日比104人増)、入院者数1298人(前日比55増、重態数43人)、累計死亡数41人(前日比1人増)である。確かに厳しい状況ではあるが、退院数と入院数では退院数の方が多いし、一番厳しい時期(7月下旬)と比較するとピークは過ぎた感がある。
ちなみにほとんど新規感染者をゼロに抑えていた香港で、7月中旬以降、急に増えだした理由は4つ挙げられている。その筆頭が、香港入境時にPCR検査を免除され2週間の隔離措置を受けていない渡航者が2~5月だけで20万人以上いる、ということだった。渡航者の内訳は旅客機乗務員、船員、(中国)政府公務員、そして中国、マカオ、台湾からのビジネスマン、中国から香港に来た留学生。早い話が大半が中国人なのだ。香港市民は入境時に2週間の隔離措置を義務付けられているにもかかわらず、中国からの公務員、ビジネスマン、留学生はPCR検査も2週間の隔離措置も免除されているという。
もちろん6月に入って、気の緩んできた市民の食事会、宴会が増えたことや、香港政府自身が公務員の在宅勤務の推進に積極的でなかったこと、PCR検査への取り組みの不十分さなども理由として挙げられている。新華社など中国メディアは、7月中旬の民主派の予備選挙が元凶であるとも報じている。
PCR検査不足に関しては、中国が医療チームを派遣し、全市民のPCR検査を支援するという。香港の公立機関は1日あたり1万人に対しPCR検査を実施しているが、中国チームはこれを1日10万~20万人ペースで行い、半年ほど居座って全市民にPCR検査を行いたい、としている。だが、香港市民からは強い拒否反応が出ている。
新疆ウイグル自治区では住民のDNAなど生体情報が強制収集されて市民監視システムに利用されているという報道が一部であった。中国政府は、新型コロナへの医療支援を口実にして「香港の新疆ウイグル自治区化」を企んでいるのではないか、との見方がある。
香港の民主派政党の新民主同盟は、「香港人は大陸の医療と検査を信用していない。そんな状況で大陸主導の検査を導入することは、防疫の効果にも影響する。多くの市民は、検査によって個人情報やDNA情報を大陸に送られるのではないかと懸念している」として、強く反対している。市民のDNA情報はプライバシーの問題でもある、という。同時に中国製検査試薬の品質にも疑問を呈している。
そもそも全員のPCR検査が感染の抑制に効果があるかというテーマは、日本でもしばしば議論の的になってきた。香港大学感染・伝染病センターの何柏良医師が香港メディアに語ったところによれば、「適切な措置(全民検査が終わるまでの市民に対する行動制限など)を徹底しなければ(検査を受けたあとに感染することもあり)、全員への検査は資源の浪費でしかない」。それよりも大陸から香港に来る渡航者の制限、検査・隔離の徹底の方をまず行うのが、普通だろう。
海外在住の6人を指名手配
大統領選を控えるトランプ大統領は7月30日、「普通郵便投票(不在者投票ならいいのだが、そうではなく)を行ったら、2020年は史上最も不正確で不正だらけの選挙になる。・・・誰もが適切に、確実に、安全に投票できるようになるまで選挙を延期しては???」とツイートして、野党のみならず共和党の支持基盤からも批判を浴びた。トランプも「延期したいわけじゃない」と言い訳せざるを得ない状況になった。
投票の方法については引き続き議論されるだろうが、世界で一番の感染国となってしまった米国でも、選挙延期など言語道断、ということだ。あれほどひどい感染状況の米国で11月に選挙が行われるのに、香港レベルの感染状況で選挙を延期するのは説得力に欠ける。
香港の選挙延期について、国際社会が反対を表明するのは内政干渉でもなんでもない。
米国のポンペオ国務長官も、「そのような大幅延期に正当な理由はない。今回の遺憾な行為は、中英共同宣言と基本法(憲法に相当)の下で香港市民と英国に誓った約束を守る意思が中国にないことを裏付けるものだ」と批判の声を上げている。
香港で反送中デモが続いたあと、香港市民がデモをどう受け止めているかが区議会選挙によって可視化されたように、国安法施行に対しても、選挙というかたちで香港市民の本音を可視化する必要がある。それがあってこそ、国際社会が強い圧力をもって、国安法の撤回を迫ることができるのだ。
国安法を放っておけないのは、それがすでに国際社会を巻き込む人権問題になっているからだ。
たとえば、7月31日に香港警察当局が、海外に移住した香港市民6人に対して国安法違反で指名手配をかけた。名前を列挙すると以下のとおりである。
・羅冠聰(ネイサン・ロー):ロンドンに移住した元立法議員
・朱牧民(サミュエル・チュー):雨傘運動のきっかけとなったオキュパイセントラル呼びかけ人の1人である牧師・朱輝明の息子。米国公民
・鄭文傑(サイモン・チェン):元在香港英国領事館職員。昨年8月に中国出張中に一時身柄拘束されたのち解放され、英国に政治亡命した
・黄台仰(レイ・ウォン):香港独立派の運動家でドイツに亡命した
・劉康:英国に移住した独立派の運動家
・陳家駒:同じく独立派運動家
香港国安法施行後、初めて海外在住者への適用を実施したという点で、6人の指名手配は国際社会に衝撃を与えた。
国安法は海外在住者が海外で行った行為に対しても犯罪とする、という条文があるが、実際どこまでやるか、というのは注目点だった。罪に問われるのは法施行後の言動だ。彼らがこの1カ月、容疑に問われるほどのことをしたのか。だが、香港警察が具体的にどのような言動を犯罪とみて、彼らを指名手配したのかは不明のままだ。
しかも米国に移住して25年、米国公民として生きてきた朱牧民が「国家分裂を扇動した」あるいは「外国と結託して国家安全に危害を与えた」といった容疑で指名手配をかけられるというならば、自由の国に生まれて生活している外国人であっても、香港のデモに同情的であったり中国共産党に批判的であったりするというだけで香港国安法を根拠に指名手配をかけられ得る、という話になる。そんな国安法の方が自由主義国家への内政干渉だろう。
香港に国安法を撤廃させるか、あるいは無効化させることができなければ、自由社会に生きている私たちは、香港や中国と、政治、経済、社会、スポーツ文化を含む交流を維持できない、ということになる。香港や中国と完全に断交するしかない。そうなれば、2022年の北京冬季五輪にだって、自由主義国家から参加できなくなってしまう。SNSで中国や香港の政治に批判的な言動をしただけで「国家分裂煽動」の容疑をかけられるかもしれない状況で、平和とスポーツの祭典に興じられるだろうか。
香港国安法の問題は、もはや香港だけの問題でも、中国内政の問題でもなく、国際上の自由主義社会と中国・香港との関係性を問うものになってきている。私はまだ香港を切り捨てることも、中国と断交することも回避できると望んでいる。だからこそ、日本政府にもきちんと、香港問題に関する立場を明確にして、米国や英国、オーストラリア、インドなどのやり方をみながら、中国に対して制裁や条件に言及する外交に出てほしいのだ。
立法会選挙が行われれば、民主派・本土派が議席の過半数を奪いかねず、そうなれば中国共産党としては完全にメンツを失う。
7月30日に、香港政府は、元デモシストメンバーの黄之鋒ら12人の民主派・本土派候補の出馬資格を一斉に取り消すという、あからさまな民主派に対する選挙妨害を行った。だが、そこまでやっても中国・香港政府サイドは安心できなかったわけだと福島さん。
民主派・本土派候補の間では、もし候補資格が取り消されたら、資格を取り消された候補が代理候補を指名して、票田を代理が受け継ぐ、という暗黙の了解ができているので、出馬資格を取り消しても取り消しても、おそらく民主派サイドは候補を送り込み続けるはずだと。
何故なら、香港市民はまだ、香港の自治を取り戻すことをあきらめていないからだと。
国際社会の自由主義国家としては、一体、具体的に何ができるのだろうと福島さん。
香港の新型コロナ肺炎の感染状況は、7月中旬以降、急に増えだしているのだそうです。
中国が医療チームを派遣し、全市民のPCR検査を支援するのだそうです。しかし、多くの市民は、「検査によって個人情報やDNA情報を大陸に送られるのではないかと懸念している」として、強く反対していねのだとか。
米国のポンペオ国務長官は、「大幅延期に正当な理由はない。今回の遺憾な行為は、中英共同宣言と基本法(憲法に相当)の下で香港市民と英国に誓った約束を守る意思が中国にないことを裏付けるものだ」と批判の声を上げているのだそうですね。
香港国安保がすでに国際社会を巻き込む人権問題になっています。
7月31日に香港警察当局が、海外に移住した香港市民6人に対して国安法違反で指名手配をかけたのだそうです。
国安法は海外在住者が海外で行った行為に対しても犯罪とする、という条文があるが、実際どこまでやるか、というのは注目点だった。罪に問われるのは法施行後の言動だが、彼らの罪はいつのものかは不明。
米国に移住して25年、米国公民として生きてきた朱牧民が指名手配をかけられるというならば、自由の国に生まれて生活している外国人であっても、香港のデモに同情的であったり中国共産党に批判的であったりするというだけで香港国安法を根拠に指名手配をかけられ得る、という話になる。そんな国安法の方が自由主義国家への内政干渉だろうと福島さん。
香港国安法の問題は、もはや香港だけの問題でも、中国内政の問題でもなく、国際上の自由主義社会と中国・香港との関係性を問うものになってきていると。
香港市民がデモをどう受け止めているかが区議会選挙によって可視化されたように、国安法施行に対しても、選挙というかたちで香港市民の本音を可視化する必要がある。それがあってこそ、国際社会が強い圧力をもって、国安法の撤回を迫ることができるのだと福島さん。
香港国安法の問題は、もはや香港だけの問題でも、中国内政の問題でもなく、国際上の自由主義社会と中国・香港との関係性を問うものになってきていると。
米国や英国、オーストラリア、インド他、欧州諸国も含めた、対中警戒網が敷かれるなか、日本は、香港問題に関する立場を明確にして中国に対して制裁や条件に言及する外交に出てほしいと福島さん。
ましてや、尖閣諸島では、領海侵犯のエスカレートに遭っている日本。
安倍政権にも、野党にも、国民と領土の安全保障に尽力いただきたい。
# 冒頭の画像は、逮捕された香港「民主の女神」周庭氏
逮捕された香港「民主の女神」周庭氏(23)に無期懲役の可能性も 今後の身柄は?(文春オンライン) - Yahoo!ニュース
この花の名前は、キンシバイ
↓よろしかったら、お願いします。