遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国の法治は、共産党のやりたいことを法と言う名のもとに治めるもの

2014-10-31 23:58:58 | 中国 全般
 中国は、憲法の上位に共産党があり、法は共産党が政治を行うに際し、共産党政権がやることを法と言う名で正当化しているという、法の上位に独裁国家がある構図です。
 その中国が、「四中全会」の場で法治が目玉の一つとして掲げていることに、吹き出してしまわれた方は多いのではないでしょうか。
 

四中全会で法治を強調した習近平の思惑:日経ビジネスオンライン

中国共産党が10月23日、第18期中央委員会第四回全体会議(四中全会)を閉幕した。共産党の幹部である中央委員全員が集まって年1回開くもので、今後1年間に実施する政策の方向性を決める。
会議を総括するコミュニケにおいて、「法治」という言葉が58回、「党による指導」が13回使われたことが注目されている。
その真意はどこにあるのか。中国の国民や日本にはどのような影響を及ぼす可能性があるのか。
元自衛官で、中国をウオッチしている小原凡司・東京財団研究員に聞いた。(聞き手:森 永輔)


<前略>
習近平と李克強の間に権力闘争はない
━━
習近平指導部が言う「法治」は、「彼らがやりたいことを正当化するための方便で真の法治ではない」という批判があります。確かにそうなのでしょう。しかし、その目的を伺うと習近平総書記のしたたかさを感じますね。

 政敵を倒した後、行きすぎにならないところで摘発を止める。残った反対派が抱く懸念を払拭し、改革を進める体制を作るため、法に基づいて共産党を治めることを宣言する。他方、国民の不満を解消し共産党による統治を安定させるため、法に基づいて民を治める体制も整備する。

小原:そうなのです。習近平指導部が目指しているのは、あくまでも共産党による一党支配を安定させることです。そのためには、共産党内のこれまでの反対勢力も取り込まなければいけないし、国民の不満も緩和しなければならない。習近平指導部が目指すところは、共産党のため、国民のためになるものだとも言えます。

 制度化の方針を李克強首相も支持しているでしょう。「
習近平総書記が権力を一元的に掌握し、李克強首相ははずされている」という見方があります。ですが、それは当たらないと思います。現在、習近平指導部がとっている政策は、かつては小平が目指したものです。李克強首相を引き上げた胡錦濤・前総書記が実行しようとしてできなかったものでもあります。李克強首相が属す中国共産主義青年団と、習近平総書記を頂く太子党は、現在は同じ方向を目指している
と思います。ただし、方向は同じでも、どこまで進めるかについては相違があります。制度化を進めることができれば、今度はどこまで進めるかについての駆け引きが始まるかもしれません。

法による統治の先にあるのはシンガポールモデル
━━ 習近平総書記が最終的に目指している中国の姿はどんなものなのでしょう。習近平指導部に権力を集中させ法治を進めるのは、その先にある何かを目指すための手段なのでしょうか。それとも、中央集権化と法治そのものが目的なのでしょうか。

小原:私は、
習近平総書記は中国をシンガポールのモデルにもっていきたい
のだと思います。シンガポールは、人民行動党による事実上の一党統治体制です。複数の政党があり民主的な選挙を行っていますが、人民行動党の候補が落選した地域では公共投資などがストップしてしまうので、他党の候補が当選するのは極めて困難。人民行動党に反対する研究者が国外退去を命じられることもあります。それでも、国は豊かで、暮らす人々の不満は大きくはありません。

 この点については
小平も同じ考えだった
のだと思います。同氏はシンガポールのリークワンユー首相(当時)と幾度も会っていました。ただ1989年に六四天安門事件が起きてしまい、思い通りの改革を進めることができなくなってしまったのだと思います。

━━ 四中全会が始まる前、周永康・元共産党政治局常務委員への処分をこの場で決定するのではと予想されていましたが、何もありませんでした。これは、なぜだったのでしょう。

小原:習近平総書記は慎重を期したのだと思います。なんと言っても、共産党政治局常務委員を務めた人物の罪を問うのは共産党史上初めてのことです。四中全会が適切な場とは限りません。一方で、中央委員会全体会議で処分できる範囲である周永康の側近4人は、党籍をはく奪されました。

人民解放軍への統制を強める
━━ コミュニケは「法に従って軍を治める」ことにも触れています。習近平指導部は軍を掌握できていないのでしょうか。

小原:習近平指導部は
軍のトップである徐才厚を処分しました。しかし、これ以上の処分はしないことで、軍幹部と手打ちをしている
と思います。この意味においては対立関係ではありません。
 ただし、
習近平指導部が軍を意のままに動かし得るとは言えないでしょう。法に従って軍を治める」とは、軍に習近平指導部の意に従え、ということです。具体的には、予算の管理をきちんとすることと、訓練に力を入れ戦える軍隊になることを求めると思います。
<中略>


━━ 人民解放軍が管理面の力を高め、訓練もきちんとし、戦える軍隊になるとしたら、日本にとって良い話ではないですね。

小原:中国が防衛費を10%増やすよりも、今は軍幹部の懐に入っているお金が装備調達に正しく支出されるようになる方が、金額は大きいかもしれないですね。

 ただし私は、
人民解放軍が管理を充実させることは日本にとって好ましい動きだと思っています。仮に日中の間で局部的な軍事衝突が起こった場合、現在の自衛隊の力なら十分に戦うことができます。さらに進んで全面的な軍事衝突となった場合は米軍が参戦します。現在の人民解放軍に米軍と戦って勝てる力はありません。

 なので、
日本が警戒しなければならないのは、局部的な衝突に至る前の不測の事態です。人民解放軍が管理や訓練がしっかりできている軍隊になれば、不測の事態が起こる可能性が低くなります。統率の取れておらず、ならず者が武器を所持している状態の方がずっと怖い。また人民解放軍が自衛隊や米軍と近い姿になるので、お互いを理解しやすくもなるでしょう。
<後略>


 習近平の法治は、政権がやりたいことを正当化する為の法治の他に、政敵を倒したあとに残った反対派が抱く懸念を払拭するための法治でもあるのですね。そして、軍を掌握しきれているとは言えない現状に、「法に従って軍を治める」とは、軍に習近平指導部の意に従え、ということだとも。

 記事で最も興味深いのは、「習近平と李克強の間に権力闘争はない」と言う説です。
 習近平指導部がとっている政策は、かつては小平が目指したもので、李克強首相が属す中国共産主義青年団と、習近平総書記を頂く太子党は、現在は同じ方向を目指しているからだと。
 政治家や高級官僚子弟という共通の利益集団の太子党が政策でまとまった集団だとは、遊爺は考えませんが、緩い枠組みでの習近平の支持集団ではあります。記事でも、方向は同じでも、どこまで進めるかについては相違がありますと指摘していますが、そこに積極的に小平の改革開放経済を推進するか、毛沢東時代への回帰を視野にいれるかの分岐点がひそんでいます。

 周永康・元共産党政治局常務委員への処分を見送り、粛清の嵐の幕引きを図ろうとしているのでしょうか。自由主義国家の我々から観ると、およそ現状とかけ離れた「法治」を唱える習近平。政権基盤の安定にエネルギーを費やしていますが、「法治」の看板で、自分の行っていることを正当化させようとしていますが、誰の眼にもまやかしにしか見えていないと考えますがいかがでしょう。

 為政者も従う憲法があり、三権分立が実現されてこその法治国家です。憲政を要求する人々を弾圧している政権のトップが「法治」を唱えるのは、古代の為政者の道具としての法治への回帰です。



 # 冒頭の画像は、10月23日に閉幕した、第18期中央委員会第四回全体会議(四中全会)




  この花の名前は、エンレイソウ


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