遊爺雑記帳

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3期目突入でいきなりつまずいた習近平政権の対米外交 騒ぎになって当然の気球をなぜあえて米国上空に飛ばしたのか

2023-02-10 01:33:55 | 米中新冷戦時代
 米国モンタナ州上空で確認された中国から飛来した気球。米国はこれを中国の「偵察気球」であると断定したうえで、戦闘機で撃墜し、その残骸を回収した。
 この気球は一体何だったのか。
 ワシントン・ポストは米官僚筋からの特ダネとして、中国解放軍の気球を使った大規模空中監視コントロール計画の一部であり、出発地点が海南省で、かつて五大陸上空に現れたこと、アジアにおいては日本、インド、ベトナム、台湾、フィリピンなど中国の戦略的利益が絡む地域に対する監視コントロールに利用されたことなどが判明していると報じていたと、福島さん。
 
気球のように制御不能?3期目突入でいきなりつまずいた習近平政権の対米外交 騒ぎになって当然の気球をなぜあえて米国上空に飛ばしたのか | JBpress (ジェイビープレス) 2023.2.9(木) 福島 香織:ジャーナリスト

 3年前、日本の仙台上空に現れた謎の気球と同じような気球が、2月初旬、米国モンタナ州上空で確認され、米国はこれを中国の「偵察気球」であると断定したうえで、戦闘機で撃墜し、その残骸を回収した。

 この気球は一体何だったのか。すでに一部残骸が回収された段階で、
ワシントン・ポストは米官僚筋からの特ダネとして、この気球が中国解放軍の気球を使った大規模空中監視コントロール計画の一部であり、出発地点が海南省で、かつて五大陸上空に現れたこと、アジアにおいては日本、インド、ベトナム、台湾、フィリピンなど中国の戦略的利益が絡む地域に対する監視コントロールに利用されたことなどが判明していると報じていた。

 
気球という「古臭い技術」ではあるが、そこに最先端の通信、監視用ハイテクが結合されており、戦略的ライバルの軍事情報収集偵察に使われていたという。

 匿名の官僚による話では、
ウェンディ・シャーマン国務副長官は2月6日、在米40の大使館150人に対し、中国の気球によるスパイ行為を説明。さらに日本などの同盟国の大使館に対しては詳細な情報を提供し危機感を共有したという。

 中国のこのスパイ気球計画がどれほどの規模であるかははっきりしていないが、
2018年以降、数十回におよぶ偵察飛行が行われたとしている。ワシントン・ポストによれば、先週アラスカから侵入してモンタナ上空などで確認されたこの気球以外にもこの数年内に4回類似の中国気球による領空侵犯があった。それぞれ、ハワイ、フロリダ、テキサス、グアム上空に現れた。さらに南米、太平洋諸島上空などにも出現している。CNNなどの報道では、トランプ政権時代、軍のリポートに、ハワイとフロリダ上空に中国の偵察気球が現れたとの記録が残っているという。

 
国防省報道官が2月7日に明らかにしたところでは、気球撃墜後、オースティン国防長官が魏鳳和国防相と電話連絡をとろうとしたが、中国側は電話を受けることを拒否したという。

態度が豹変して「逆ギレ」
 さてこの気球について、
当初2月3日の段階では、中国外交部側は「民間の気象観測用の気球が偏西風に乗って、予定された軌道から外れ、不可抗力で米領空内に迷い込んだもの」として「遺憾の意」を低姿勢で表明し、あくまでも米領空侵犯の意図はなかったのだ、と自分たちの「過ち」を認めていた。

 
だが、同じ日、王毅外相がブリンケン国務長と電話で話したとき、「中国としては、いかなるいわれのない憶測や煽動も受け付けない」と、米国からスパイ気球と断定されたことに「逆ギレ」して見せた。そして、その後、米国側が軍事行動によって気球を撃墜したことについて「国際慣例に反する、過剰反応だ、我々も更に一歩進めた対応をする権利を有する」と報復をほのめかせる外交部声明を発表し、国防部も強い抗議を示し、「同様の状況に対処する必要な手段を講じる権利を保留する」と述べた

 この
3日の外交部としての反応の神妙さと、同日夜の王毅の「逆ギレ」の温度差について、末端からトップまで見解をそろえるのが普通の外交部らしくない、という声も多かった。また、果たしてブリンケンの訪中を目前にしたこのタイミングで、米国が絶対不快に思い、米中交渉の障害にしかならないような気球事件を習近平は意図して引き起こしたのだろうか、という疑問も沸く。

 果たしてこの気球は、本当に気象観測用なのか、そして不可抗力で米領空に迷いこんだのか。それとも解放軍のスパイ気球なのか。もし、わざと米領空に侵入させたとしたら、なぜ今のタイミングで、こんな米国を怒らせるようなことをするのか。

人民解放軍が研究していた軍用気球の運用法
 
まずこの気球の本当の狙いについて考えてみよう。高さが約60メートル、機器部分が大型バス3台分の長さに相当というこの気球を製造したのがどこの企業かということについて、外国部はまだ答えていない。だが、中国でつこれほどの巨大観測気球を製造できる企業は2社しかない。そして気象探査気球の老舗といえば、中国化学株洲ゴム研究院設計院だろう。この研究院の関係者は今回の事件については箝口令を敷かれているので確認は取れない。株洲ゴム研究院は中国化工集団傘下の企業で、中国の月探査計画・嫦娥計画の嫦娥五号搭載の気球を含め、国防科学技術工業重大プロジェクトなどにも関わる「軍民融合概念」企業だ。

 ちなみに、精密衛星写真が可能な現代おいては気球による観測など大して意味がない、だから中国の言うとおりの気象観測だという識者もあるが、人民解放軍においては軍用気球の論文は山ほどあり、実際に実験の様子などが報じられている。特に昨年(2022年)話題になったのは敵艦船に対する電磁波攻撃で、気球によって敵艦隊の防空電子偵察システムを混乱させたり、防空システムや作戦反応能力を評価したりすることができるという論文だ。

 また昨年2月23日付の解放軍報では、軍用気球の運用に関して、軍用気球からミサイルを発射するアイデアについて言及しており、実際に実験も行われている。
解放軍報では、軍用気球運用の効果と可能性について次のように記されている

「軍用気球については
偵察、監視、通信、中継、運輸の方面でポテンシャルを発掘し続けているほか、軍用気球を用いたミサイル、ドローン群による投擲の研究が進んでいる」

「今日のように科学技術が進歩すれば、気球の運用にも新たな可能性の大門を開くことができる。
新素材と新技術の運用で成層圏まで到達できる気球は、対空武器の脅威を避けることができ、ナビゲートシステムやAIの応用によって、高度と方向を操り目的の空域に到達できる。気球を係留しておくことで1つの空域を長期的に守ることもでき、監視偵察任務を実行できる

「滞空時間は長く、性能はコストに対して高く、これぞ
低コスト戦略の特徴と要求に順応したものである」

「予警レーダー、光学赤外線設備、通信中継設備などを搭載し、
小型化と低エネルギー化を進めれば、気球はまさに発展の春を迎える。英国にはすでに合成繊維で作られた一種のスマート気球があり、これは敵戦闘機の攻撃目標を誤導ことができるという」

「軍用気球の開発は同時に、その反撃能力を持つ武器の開発も必要だ。専門家は、
軍用気球の最大の脅威はレーザー兵器だとしている」

知らなかったかもしれない習近平
 ただ、こうした研究を進めていることは当然米国も知っているわけで、米中関係が良好な時ならいざ知らず、
対立が先鋭化している今のタイミングに、のんびりと米領空を移動していたら米国が激怒するのは当然で、撃ち落とされるのも想定内のことだろう

 
習近平は昨年3期目の総書記になってから中国国内の厳しい経済問題の立て直しを迫られており、それにはまず米中関係のある程度の改善と安定が絶対必須の条件となる。そのために秦剛を駐米大使から外相に直接抜擢し、ブリンケン訪中をお膳立てしたのだ。その直前のタイミングで、お膳立てを台無しにするような気球事件を中国側は果たして意図して起こしたのか。コントロールできずに米領空にうっかり入ってしまったというなら、中国のハイテクレベルはこの程度であり、これも米国の半導体制裁がもたらした結果か、という話になるが、もしわざとであればどういうことなのか。

 
この点について、識者たちが様々な見立てをしているワシントン・ポストの外交コラムニスト、デビッド・イグナイシャスは3つの可能性にコラムで触れていた

 
1つは、経済問題、反体制運動(白紙運動)ゼロコロナの失敗など一連の内部問題に苦しむ習近平が、人民に実力をアピールして見せる狙いがあったのではないか、というもの。戦狼外交もそうだが、習近平は米国に強気な様子を見せると人民の支持を引き付けることができると考えている節がある。中国人民は米国を敵視し、習近平政権に向かうかもしれない不満の矛先をそらすことができるかもしれない。

 
2つ目は、中共軍部や党ハイレベル内部の対米強硬派がブリンケンの訪中を阻止しようと目論んで偵察気球を侵入させたというもの。

 
3つ目は単純に連絡ミス、右手のやっていることを左手が知らなかった、という可能性だ。

 
気になるのは、習近平自身が気球の領空侵犯を指示したのか、あるいは寝耳に水の事態だったのかフィナンシャル・タイムズには「習近平は知らなかったかもしれない」という米官僚のコメントが引用されている。

 習近平のような独裁者の下で働く官僚たちは極端な2種類の態度に分かれる。いわゆる躺平主義。習近平に命令されること以外は一切やらない。命令以外のことをして失脚させられることを恐れているのだ。もう1つの態度は風見鶏主義。習近平の考えを先取りし、習近平に気に入られようと競ってやっているうちに結果的にやりすぎてしまったりする。

 なので、習近平の知らないところで、米国を怒らせるようなアクションをとる軍や党中央ハイレベルがいたとして、それが必ずしもアンチ習近平とは限らない。習近平は本音では米国に妥協したくないはずだと考え、習近平を喜ばそうとして、米国を挑発してみせたのかもしれない。。

 どちらにしても、
3期目に入った習近平政権の対米外交は、気球のようにコントロール不能となって、しょっぱなから躓いてしまった

見習うべき米国の対応
 ところで
日本では、3年前仙台の上空で「謎の気球」が現れた時、SNS上やメディアの報道では大騒ぎになったが、当時の河野太郎防衛相はその正体については突き止めようともせず、「また日本に戻ってくる可能性は?」という質問には「気球に聞いてください」と他人事であった

 さすがに、中国外交部や国防部に全く問い合わせなかった、ということはないと思いたいが、中国がどのように答えようと、
公表して表沙汰の問題として中国とややこしい交渉はしなくない、というのが当時の政権の総意だったのだろう

 だから、
米国がはっきりと「中国のスパイ気球」と断定し、武力使用で安全に撃墜し、回収したことに感服した

 不測の事故が起きるリスクもあり、米中も一触即発の危機が高まる中で、
面倒ごとを回避せずに、主権や国防について明確な判断基準をもって毅然と判断を下し、なおかつその後の外交交渉で妥当なところに着地させることができるという大国の自信と実力の現れであろう。少なくとも、この気球事件をめぐる米中の政治パフォーマンス合戦としては、米国に軍配が上がったのではないだろうか。

 今後、もし日本が同じ状況に遭遇することがあれば、どうすべきであるかは、もう分かっただろう。


 気球という「古臭い技術」ではあるが、そこに最先端の通信、監視用ハイテクが結合されており、戦略的ライバルの軍事情報収集偵察に使われていたというと、福島さん。
 ウェンディ・シャーマン国務副長官は2月6日、在米40の大使館150人に対し、中国の気球によるスパイ行為を説明。さらに日本などの同盟国の大使館に対しては詳細な情報を提供し危機感を共有したのだそうです。
 
 この気球について、当初2月3日の段階では、中国外交部側は「民間の気象観測用の気球が偏西風に乗って、予定された軌道から外れ、不可抗力で米領空内に迷い込んだもの」として「遺憾の意」を低姿勢で表明し、あくまでも米領空侵犯の意図はなかったのだ、と自分たちの「過ち」を認めていた。
 しかし、同じ日、王毅外相がブリンケン国務長と電話で話したとき、「中国としては、いかなるいわれのない憶測や煽動も受け付けない」と、米国からスパイ気球と断定されたことに「逆ギレ」して見せたのだそうです。
 中国外交部と、そのトップの王毅外相とでは、逆の反応。

 素人の遊爺ですが、3期目の人事を、イエスマンで固めた習近平。独裁政治の弊害を懸念していますが、早くもその兆し?

 更に王毅外相は、米国側が軍事行動によって気球を撃墜したことについて「国際慣例に反する、過剰反応だ、我々も更に一歩進めた対応をする権利を有する」と報復をほのめかせる外交部声明を発表し、国防部も強い抗議を示し、「同様の状況に対処する必要な手段を講じる権利を保留する」と述べたのだそうです。

 この3日の外交部としての反応の神妙さと、同日夜の王毅の「逆ギレ」の温度差について、末端からトップまで見解をそろえるのが普通の外交部なのに、らしくないという声も多かったと、福島さん。

 まずこの気球の本当の狙いについて考えてみようと、福島さん。
 昨年2月23日付の解放軍報では、軍用気球の運用に関して、軍用気球からミサイルを発射するアイデアについて言及しており、実際に実験も行われている。
 軍用気球運用の効果と可能性についても書かれている。
 <詳細は上記本文参照ください。>
 
 こうした研究を進めていることは当然米国も知っているわけで、米中関係が良好な時ならいざ知らず、対立が先鋭化している今のタイミングに、のんびりと米領空を移動していたら米国が激怒するのは当然で、撃ち落とされるのも想定内のことだろうと福島さん。

 習近平は昨年3期目の総書記になってから中国国内の厳しい経済問題の立て直しを迫られており、それにはまず米中関係のある程度の改善と安定が絶対必須の条件となると。

 北戴河会議では、3期目続投について、低迷する経済の立て直しが条件づけられたと言われていますね。
 にもかかわらず、中国経済成長を支えた、鄧小平の流れを継ぐ共青団派を、3期目は一掃しました。大会会場で、報道陣が見る前で、胡錦涛を強制退場させたのは、その象徴場面でしたね。

 経済立て直しのために、米中関係のある程度の改善と安定が絶対必須の条件となる。そのために秦剛を駐米大使から外相に直接抜擢し、ブリンケン訪中をお膳立てした。
 その直前のタイミングで、お膳立てを台無しにするような気球事件を中国側は果たして意図して起こしたのか。
 もしわざとであればどういうことなのかと、福島さん。

 この点について、識者たちが様々な見立てをしている。ワシントン・ポストの外交コラムニスト、デビッド・イグナイシャスは3つの可能性にコラムで触れているたのだそうです。
 1つは、一連の内部問題に苦しむ習近平が、人民に実力をアピールして見せる狙いがあったのではないか、というもの。戦狼外交もそうだが、習近平は米国に強気な様子を見せると人民の支持を引き付けることができると考えている節がある。

 2つ目は、中共軍部や党ハイレベル内部の対米強硬派がブリンケンの訪中を阻止しようと目論んで偵察気球を侵入させたというもの。

 3つ目は、単純に連絡ミス、右手のやっていることを左手が知らなかった、という可能性。

 気になるのは、習近平自身が気球の領空侵犯を指示したのか、あるいは寝耳に水の事態だったのかと、福島さん。
 フィナンシャル・タイムズは「習近平は知らなかったかもしれない」という米官僚のコメントが引用されているのだそうです。

 3期目に入った習近平政権の対米外交は、気球のようにコントロール不能となって、しょっぱなから躓いてしまったと、福島さん。

 日本では、3年前仙台の上空で「謎の気球」が現れた時、SNS上やメディアの報道では大騒ぎになったが、当時の河野太郎防衛相はその正体については突き止めようともせず、「また日本に戻ってくる可能性は?」という質問には「気球に聞いてください」と他人事であったと、福島さん。
 
 遊爺は記憶がありませんが、河野氏らしくない反応と感じられます。
 韓国をホワイト国待遇から外した時、岸田氏は執拗に食い下がられ往生していましたが、河野氏に交代、キッパリけじめをつけたのでした。
 親中・二階氏が全盛のころ?投げやりな発言からは、どこかから圧力がかかったかのか?

 米国がはっきりと「中国のスパイ気球」と断定し、武力使用で安全に撃墜し、回収したことに感服したと、福島さん。
 この気球事件をめぐる米中の政治パフォーマンス合戦としては、米国に軍配が上がったのではないだろうかとも。



 # 冒頭の画像は、中国外交部



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