中東のデモが拡大する中、リビアや中国では政権が軍を動員するなどして抑えにかかっていますね。
それでも、リビアではデモが拡大しているようで、報道でのリビアからエジプトへ非難する人々へのインタビューでは、都市機能は麻痺し、広場には死体が放置されているなどの発言もあります。
前回も触れましたが、貧困の格差と独裁政治からの脱出を求めて始まったデモが政権を倒した後、それぞれの国はとこへ向かうのか、中東はもちろん、世界への影響は大きく、歴史の分岐点に立っていると考え注目しています。
そのなかで、「イスラムの民主化は、イスラム化になる」可能性が高いとの記事がありましたので、転載させていただき備忘禄とさせていただきます。
今回のエジプトのデモでは、エジプト軍の行動が特筆されます。市民には絶対に銃口を向けることはなく、最後にムバラク大統領に印籠を渡し、スレイマン副大統領に全権を軍最高評議会に無血移譲することを公表させました。
その後も素早く外交条約の現状維持と、選挙による民主政権の樹立を打ち出し、国内外での不安感の除去に成功しています。
デモの間の自国民を大切にする姿勢を貫いた軍は、これまでに見たことがないものでした。
記事によると、幹部は欧米に留学し近代教育を受けているとのことですが、それにしても一連の行動と統率力は、相当に優れたリーダーが居てのことと推察されます。リーダーがどのような人物なのか、後日の解説報道が待たれます。
エジプトが、イスラム原理主義の独裁国家になるのか、アルジェリアやトルコの様に、近代教育を受けた軍幹部により踏みとどまり、自由主義の国になるのか、注目ですね。
↓よろしかったら、お願いします。
それでも、リビアではデモが拡大しているようで、報道でのリビアからエジプトへ非難する人々へのインタビューでは、都市機能は麻痺し、広場には死体が放置されているなどの発言もあります。
前回も触れましたが、貧困の格差と独裁政治からの脱出を求めて始まったデモが政権を倒した後、それぞれの国はとこへ向かうのか、中東はもちろん、世界への影響は大きく、歴史の分岐点に立っていると考え注目しています。
そのなかで、「イスラムの民主化は、イスラム化になる」可能性が高いとの記事がありましたので、転載させていただき備忘禄とさせていただきます。
イスラム圏の「民主化」はむずかしい 松本 仁一 - 新聞案内人 :新s あらたにす(日経・朝日・読売)
ムバラク独裁が大衆行動で崩壊し、エジプトは民主化に向かって動きはじめた。しかしその「民主化」は「イスラム化」になってしまうのではないか。そんな懸念があちこちでささやかれている。
その懸念には、実は先例がある。1991年のアルジェリアだ。
○アルジェリア自由選挙の結果
フランスからの独立闘争をになったFLN(アルジェリア民族解放戦線)は一党独裁制を敷き、短期間で腐敗した。大衆の批判をかわせなくなり、91年12 月、初の複数政党制による総選挙が行われた。無制限の自由選挙だった。その結果、第1回投票でFLNは惨敗し、イスラム建国をとなえるFIS(イスラム救国戦線)が8割以上の議席を獲得してしまった。
政権の座を確実にしたFISは、イスラム主義のスローガンを次々に打ち出した。
「議会と憲法は停止する」「すべてはコーランにもとづいておこなわれる」
「女性はベールをかぶれ」「女性の参政権と教育は制限する」
「飲酒は禁止」……。
社会主義独裁を民主化したら、一気にイスラム独裁に振れてしまったのである。イラン型の宗教支配政治を恐れ、フランスなどに移住する市民も出始めた。
選挙結果にあわてた軍が、急きょ介入した。欧米で訓練を受けた軍幹部は近代合理主義的な考えを持っており、国の将来のためにはイスラム主義政権の成立を阻止しなければならないと考えたのだ。軍が臨時政権を立てて第2回選挙を打ち切ったため、宗教独裁政権の成立は避けることができた。しかしそのかわり、イスラム勢力と軍との武力対立が激化し、流血の衝突が延々と続くことになった。
<中略>
○自由選挙が行われれば
エジプトは現在、軍を中心とする暫定政府が憲法改正を検討中で、半年後に選挙を行って政権を民政に移管する方針という。知人のエジプト人ジャーナリストは「その選挙が無制限の自由選挙となったら、同胞団は確実に6割から7割の議席を獲得するだろう」と推測している。つまり、エジプトもアルジェリアと同じで、「民主化すれば宗教化」のおそれは十分にあるというのだ。
今回のムバラク打倒デモに参加した市民の多くは、宗教国家建設を目指したわけではなく、腐敗したムバラク独裁に怒りのエネルギーをぶつけただけだったといわれる。しかしエジプトにはいまのところ、事態収拾の受け皿がない。有力候補とされるエルバラダイ氏やムーサ氏は国外勤務が長く、政権をになうだけの国内の基盤がないのである。同胞団はなりをひそめ、じっと様子見を続けている。
アラブ諸国の独裁的な支配体制の下で抑圧されてきた人々は貧しい。経済の失敗で物価は高騰し、若者に職はなく、政治家や役人の腐敗は目にあまる。そうした貧困層の不満のエネルギーは「イスラム国家ができればすべて解決する」という単純で力強い主張に、いともかんたんに吸収されていく。そして体制の締め付けがゆるむと一気に噴き出すのだ。
「民主主義を否定する意見も包容するのが民主主義」とよくいわれる。しかしそれは、民主主義否定派が少数である場合のことだ。否定派が多数になった場合、民主主義はどう機能するのか。
「それも民主化の過程のひとつにすぎない。行き過ぎがあればやがて修正される。力で抑え込むのは間違いだ」という意見がある。しかしイスラム原理主義派は議会や憲法を否定するため、修正の機能は働かないだろう。イランでは1979年のイスラム建国いらい33年が過ぎたが、いまだに宗教独裁のあやまちを修正できていない。その間に多くの人が命を落とし、国を追われた。
○注目される軍の動向
今後のエジプト情勢で注目されるのは、軍の動向だ。
エジプト軍幹部の多くは欧米に留学している。近代教育を受けており、欧米の軍幹部との関係も深い。イスラム主義とは一線を画している。宗教化を阻止したアルジェリア軍、イスラム系政府をけん制して政治を安定させているトルコ軍と、エジプト軍も同じ性格を持っている。ムバラク氏に辞任を迫ったことで、国民の信頼も厚い。
その軍がこれから半年の間に、宗教勢力との間でどういう解決案を生みだすのか。それが「中東民主化」の今後を占うカギになるだろう。
ムバラク独裁が大衆行動で崩壊し、エジプトは民主化に向かって動きはじめた。しかしその「民主化」は「イスラム化」になってしまうのではないか。そんな懸念があちこちでささやかれている。
その懸念には、実は先例がある。1991年のアルジェリアだ。
○アルジェリア自由選挙の結果
フランスからの独立闘争をになったFLN(アルジェリア民族解放戦線)は一党独裁制を敷き、短期間で腐敗した。大衆の批判をかわせなくなり、91年12 月、初の複数政党制による総選挙が行われた。無制限の自由選挙だった。その結果、第1回投票でFLNは惨敗し、イスラム建国をとなえるFIS(イスラム救国戦線)が8割以上の議席を獲得してしまった。
政権の座を確実にしたFISは、イスラム主義のスローガンを次々に打ち出した。
「議会と憲法は停止する」「すべてはコーランにもとづいておこなわれる」
「女性はベールをかぶれ」「女性の参政権と教育は制限する」
「飲酒は禁止」……。
社会主義独裁を民主化したら、一気にイスラム独裁に振れてしまったのである。イラン型の宗教支配政治を恐れ、フランスなどに移住する市民も出始めた。
選挙結果にあわてた軍が、急きょ介入した。欧米で訓練を受けた軍幹部は近代合理主義的な考えを持っており、国の将来のためにはイスラム主義政権の成立を阻止しなければならないと考えたのだ。軍が臨時政権を立てて第2回選挙を打ち切ったため、宗教独裁政権の成立は避けることができた。しかしそのかわり、イスラム勢力と軍との武力対立が激化し、流血の衝突が延々と続くことになった。
<中略>
○自由選挙が行われれば
エジプトは現在、軍を中心とする暫定政府が憲法改正を検討中で、半年後に選挙を行って政権を民政に移管する方針という。知人のエジプト人ジャーナリストは「その選挙が無制限の自由選挙となったら、同胞団は確実に6割から7割の議席を獲得するだろう」と推測している。つまり、エジプトもアルジェリアと同じで、「民主化すれば宗教化」のおそれは十分にあるというのだ。
今回のムバラク打倒デモに参加した市民の多くは、宗教国家建設を目指したわけではなく、腐敗したムバラク独裁に怒りのエネルギーをぶつけただけだったといわれる。しかしエジプトにはいまのところ、事態収拾の受け皿がない。有力候補とされるエルバラダイ氏やムーサ氏は国外勤務が長く、政権をになうだけの国内の基盤がないのである。同胞団はなりをひそめ、じっと様子見を続けている。
アラブ諸国の独裁的な支配体制の下で抑圧されてきた人々は貧しい。経済の失敗で物価は高騰し、若者に職はなく、政治家や役人の腐敗は目にあまる。そうした貧困層の不満のエネルギーは「イスラム国家ができればすべて解決する」という単純で力強い主張に、いともかんたんに吸収されていく。そして体制の締め付けがゆるむと一気に噴き出すのだ。
「民主主義を否定する意見も包容するのが民主主義」とよくいわれる。しかしそれは、民主主義否定派が少数である場合のことだ。否定派が多数になった場合、民主主義はどう機能するのか。
「それも民主化の過程のひとつにすぎない。行き過ぎがあればやがて修正される。力で抑え込むのは間違いだ」という意見がある。しかしイスラム原理主義派は議会や憲法を否定するため、修正の機能は働かないだろう。イランでは1979年のイスラム建国いらい33年が過ぎたが、いまだに宗教独裁のあやまちを修正できていない。その間に多くの人が命を落とし、国を追われた。
○注目される軍の動向
今後のエジプト情勢で注目されるのは、軍の動向だ。
エジプト軍幹部の多くは欧米に留学している。近代教育を受けており、欧米の軍幹部との関係も深い。イスラム主義とは一線を画している。宗教化を阻止したアルジェリア軍、イスラム系政府をけん制して政治を安定させているトルコ軍と、エジプト軍も同じ性格を持っている。ムバラク氏に辞任を迫ったことで、国民の信頼も厚い。
その軍がこれから半年の間に、宗教勢力との間でどういう解決案を生みだすのか。それが「中東民主化」の今後を占うカギになるだろう。
今回のエジプトのデモでは、エジプト軍の行動が特筆されます。市民には絶対に銃口を向けることはなく、最後にムバラク大統領に印籠を渡し、スレイマン副大統領に全権を軍最高評議会に無血移譲することを公表させました。
その後も素早く外交条約の現状維持と、選挙による民主政権の樹立を打ち出し、国内外での不安感の除去に成功しています。
デモの間の自国民を大切にする姿勢を貫いた軍は、これまでに見たことがないものでした。
記事によると、幹部は欧米に留学し近代教育を受けているとのことですが、それにしても一連の行動と統率力は、相当に優れたリーダーが居てのことと推察されます。リーダーがどのような人物なのか、後日の解説報道が待たれます。
エジプトが、イスラム原理主義の独裁国家になるのか、アルジェリアやトルコの様に、近代教育を受けた軍幹部により踏みとどまり、自由主義の国になるのか、注目ですね。
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