遊爺雑記帳

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王岐山国家副主席の近況 中国、貿易戦争敗者にはならず

2018-08-02 23:58:58 | 中国 全般
 今年3月の全人代で、習近平は国家主席の任期制限を撤廃し、生涯その座に就くことに成功したことは、諸兄がご承知のとおりですが、同時に、王岐山を国家副主席に就かせ、同様に任期無制限とし、外交の最高責任者としていました。
 その後、王岐山の消息報道に接する機会は稀でしたが、WSJの Chun Han Wong 氏の記事では、王氏は米国に舞台裏でメッセージを伝達する役割を果たしているとのことです。

 1990年代半ばに大手国営金融機関のトップだった王氏は、米モルガン・スタンレーと交渉し、同国初の合弁投資銀行である中国国際金融(CICC)を創設した実績も有し、経済政策通の銀行家および政治家としての長いキャリアに定評があるのだそうで、米国の金融界や政界で一目置かれる存在で、一部の米当局者や企業経営者は中国当局者に対し、貿易摩擦解消のため王氏が訪米して交渉に当たるよう要請しているのだそうです。
 
米中貿易戦争、解決のキーマンは王副主席か - WSJ

 王氏は米国に舞台裏でメッセージを伝達する役割を果たしている By Chun Han Wong 2018年 8月 2日

 
貿易をめぐる米中の緊張が高まった今年5月、中国の王岐山国家副主席は米実業家らとの会談の場で、中国の産業政策に対する米国の批判に反論した。中国の歴史に関する米国の無知について詳しく説明したのだ。

 この会談の内容を知る関係者によれば、王氏は貧困から抜け出そうとする中国の苦闘を理解しない米国の姿勢をたしなめた。米国が中国の苦闘を理解すれば、中国共産党とその政策についても理解が進むだろうと話したという。
 王氏は、孫武の兵法書「孫子の兵法」の「敵を知り、己を知れ」の格言を引用し、自らのメッセージを強調した。
 習近平国家主席の腹心である王氏は短期間政界から退いた後、今年3月にそれまで儀礼的役割だった国家副主席の座に就いた。

舞台裏でメッセージ伝達
 王氏は副主席として、訪中する米国人らに舞台裏でメッセージを伝達する役割を果たしている。習主席の経済アドバイザーである劉鶴副首相が貿易紛争をめぐる米国との交渉を主導している一方、
王氏は、外圧に屈することなく自らの発展の道を進む中国の決意を伝えている
 王氏が政治の最前線に復帰したことは、過去半年間で習氏が中国の政治的序列をいかに変えたかを物語っている。この間に習氏は、自らを政策立案のトップに据え、周囲に同志や子飼いを配置してきた。
全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は今年3月、国家主席と副主席の任期制限を撤廃。習氏と王氏は、無期限に現職にとどまることができるようになった

 米国は7月6日、340億ドル(約3兆7800億円相当)の中国産品への追加関税を発動し、貿易戦争をエスカレートさせた。その数日後、王氏はシカゴ市のラーム・エマニュエル市長、 テスラ のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)と個別に会談した。
 エマニュエル氏との会談は王氏の要請によるもの。エマニュエル氏の報道官によれば、会談で王氏は、米中関係の現状は中国側が望んでいるものではないとしながらも、中国は自国経済を強化するという「ビジョンを思いとどまることはない」と述べた。
 上海に電気自動車(EV)工場を建設する計画を発表するため中国を訪れていたマスク氏はツイッターで、王氏と面会したことを明らかにし、「歴史や哲学に関する非常に興味深い話し合いをした」と書いた。

米国で一目置かれる存在
 
一部の米当局者や企業経営者は中国当局者に対し、貿易摩擦解消のため王氏が訪米して交渉に当たるよう要請している王氏は1990年代以降、銀行家や政府高官として多くの米側関係者と交流してきており、米国の金融界や政界で一目置かれる存在だ。

 ただ関係者によれば、
王氏は5月に北京の中南海で米経済界の首脳らと会談した際、自らが対米関係を統括することは否定。習氏が望むことならば何でもするのが国家副主席としての職務であると語った。
 
副主席としての王氏は、前任者をはるかに上回る名声と影響力を持って外交上の職責を果たしている。昨年10月に共産党政治局常務委員から退任したものの、今も重要会議には出席しており、党の外交政策を担う新設の中央外事工作委員会の事実上のトップに就任している

 習主席にとって、王氏を副主席として置く意味は、米国に対する洞察力を持つ貴重な人物を、実績あるトラブルシューターかつ忠実な部下として身近に置くことにある――。これが中国政治ウォッチャーたちの見方だ。また、潜在的ライバルとなり得る年下の幹部を、次の国家主席をうかがうポストに就かせるのを回避するのにも役立つ。現在70歳の王氏は習氏より5歳ほど年上で、後継者になるには高齢過ぎると考えられている。

 王氏は、経済政策通の銀行家および政治家としての長いキャリアに定評があるが、その後は汚職撲滅運動も指揮した。この反腐敗闘争により、習氏は就任1期目の5年間で政敵を追い払い、党員たちに忠誠を誓わせることが可能になった。王氏を知る人々は、正直者だという評判があって子供がいない同氏が、この職務にうってつけだったと述べる。

 1990年代半ばに大手国営金融機関のトップだった王氏は、米モルガン・スタンレーと交渉し、同国初の合弁投資銀行である中国国際金融(CICC)を創設した。
 1995年のCICC創設時、株主の1人が王氏に高価なゴルフクラブのセットを贈った。当時CICCのCEOを務めていたハリソン・ヤング氏によると、「倫理・優待規則によって受け入れも拒絶もできない贈答物に相当した」ため、「董事長だった王氏は、これ見よがしにゴルフクラブを自分のオフィスの目立つところに置き、我々はこれに触ってはいけないと職員に告げた」という。

文化大革命の頃から盟友
 習氏と王氏は、少なくとも1966年から76年の文化大革命の頃から互いを知る間柄だ。2002年に習氏にインタビューしたチャン・シーミン氏によると、このとき両氏は、毛沢東の命令の下、都会から農村地帯に下放した何百万人もの若者の一部だった。

 1980年代、習氏が地方の党トップだったとき、王氏は中央政府で農村政策を勉強していた。農村政策で王氏と緊密に協力していた経済学者の黄江南氏によると、王氏は北京で開催する討論会に参加するよう習氏ら地方行政官をしばしば招いていた。黄氏は1979年、党指導部に提出された経済政策論文を、王氏らと共同で執筆したこともある。
 同氏によると、若い頃に出会った習氏と王氏は「強い親近感を抱き、互いの考え方を理解し、同じような政治目標を共有していた」という。

 
外国の賓客との会談で王氏は中国について、世界における正当な場所を求める「善意のパワー」だと説明している。大学時代に歴史学を専攻した王氏は、フランスの思想家アレクシ・ド・トクヴィルの「アメリカの民主政治」から、ハーバード大の哲学者マイケル・サンデル氏の「これからの『正義』の話をしよう」に至るまで、数々の著作を渉猟してきた。中国史や世界史に言及することもしばしばだ。

 
王氏は今年5月、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで国家副主席として初めて公の演説を行い、「あらゆる国には独自の歴史と文化と同様に、独自の現実がある」と主張。あらゆる国は「自国に適した開発の道を追求すべきだ」と説いた。

 王氏は副主席として、訪中する米国人らに舞台裏でメッセージを伝達する役割を果たしていて、外圧に屈することなく自らの発展の道を進む中国の決意を伝えているのだそうです。
 シカゴ市のラーム・エマニュエル市長には、米中関係の現状は中国側が望んでいるものではないとしながらも、中国は自国経済を強化するという「ビジョンを思いとどまることはない」と述べ、テスラ のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、「歴史や哲学に関する非常に興味深い話し合いをした」とツイートしたのだうです。

 王氏は、自らが対米関係を統括することは否定しているのだそうですが、党の外交政策を担う新設の中央外事工作委員会の事実上のトップに就任し、今も重要会議には出席しているのだとも。
 習近平は、米国に対する洞察力を持つ貴重な人物の王氏を、実績あるトラブルシューターかつ忠実な部下として身近に置いているのだと。
 王氏はその任務を忠実に遂行し、外圧に対し、中国の意志を舞台裏で伝える役割を担っているのですね。
 
 その成果かどうかかは不明ですが、米中貿易戦争で中国不利の声が高まる中、WSJの社説は、「トランプ政権は、関税の重圧に北京が屈するだろうと想定すべきではない」と説いています。
 
【社説】中国、貿易戦争敗者にはならず - WSJ 2018 年 8月 1日

 中国では、悪い内容の経済統計発表が続いている。第2四半期の国内総生産(GDP)伸び率は6.7%に減速した。その一因は、固定資産投資の伸びが記録的低水準にとどまったことだ。7月31日に発表された重要統計の製造業PIM(購買担当者景況指数)は、5カ月ぶりの低水準となり、30日には人民元の対ドル相場が13カ月ぶりの安値を付けた。中国の株価は年初来20%下落し、2年ぶり安値付近にある。

 こうした
経済指標や株価の悪化を受け、一部の米政府当局者は、貿易戦争で中国政府が敗北しつつあると結論付けている。これらの厳しい統計を背景に中国の指導部が譲歩を示し、早急に通商合意をまとめざるを得なくなる、と米側は考えているのだ。

 
そう早急に事は進まない中国経済への最大の逆風は、金融システム安定化を目的とした政府の政策によるものだ。中国の政策担当者は先週、成長を加速させるため、こうした措置を緩和するとともに財政・金融両面の刺激策を活用する方針を示した。こうした対応は、長期的にはより多くの問題を引き起こすかもしれないが、中国政府は決して、米国の関税によって経済面での屈服を強いられることはない
<中略>

 中国の指導者たちは米国との貿易戦争を懸念しているが、パニックにはほとんど陥っていない。中国の最高意思決定機関である共産党政治局常務委員会は31日、一段の景気刺激を求める声明を発表した。しかし同時に、債務比率引き下げも続ける方針だと述べた。これは、2008年の世界的な経済危機後に政府が講じた超大型刺激策と対照的だ。当時打ち出した景気浮揚を目的とした財政・金融措置の規模はGDPの15%に相当した。

 
中国政府の公式の成長目標率は、依然健全といえる6.5%だ。これは同国が中所得国仲間入りの階段を駆け上がるなかで、潜在成長率と合致した目標伸び率だ。内需は経済のけん引役として、輸出よりももっと重要になりつつある。今回の貿易戦争をきっかけに政策立案者が、この内需中心型経済への移行を速める果敢な改革に取り組むようになる可能性もあるだろう。

 
トランプ政権は、関税の重圧に北京が屈するだろうと想定すべきではない。債務問題と成長鈍化にもかかわらず、中国指導部には経済拡大を継続するための選択肢が今なお多くある。賢明な米国の戦略は何かと言えば、中国と新たな貿易ルールで合意するため同盟諸国と協力することだろう。互いに破壊的な関税上乗せ合戦に没頭することではないのだ。

 中国経済への最大の逆風は、金融システム安定化を目的とした政府の政策によるもので、中国の政策担当者は先週、成長を加速させるため、こうした措置を緩和するとともに財政・金融両面の刺激策を活用する方針を示した。中国政府は決して、米国の関税によって経済面での屈服を強いられることはないと説くのですが。。

 中国が屈服するとの楽観論に警鐘を鳴らし、互いに破壊的な関税上乗せ合戦に没頭するのではなく、同盟諸国と協力し中国と新たな貿易ルールで合意することが賢明な戦略だと説いています。
 
 王岐山が裏交渉しながらも、「あらゆる国には独自の歴史と文化と同様に、独自の現実がある」と主張。あらゆる国は「自国に適した開発の道を追求すべきだ」と説いているように、習近平の「中華の夢」達成への方針は不変で、一時的な面従腹背はあっても新たな貿易ルールに沿うことの可能性は絶望的でしょう。WSJにしては珍しく、机上の綺麗ごとに聞こえます。
 オバマ前大統領が、話し合いで解決しようとして失敗した南シナ海の覇権争いの実績に懲りていないようです。
 王岐山が、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」の「孫子の兵法」を語ったといいますが、真の習近平の狙いを知れば、新たな貿易ルールで合意への道の険しさは解るはずです。

 対北朝鮮の核とミサイルの廃棄と同様、「一帯一路」の経済の名を冠した覇権拡大への、対抗策強化で、陰りの見え始めた「一帯一路」への同盟国と連携した包囲網構築・併呑が、有効な新たな貿易ルールだと考えますが、どうでしょう?



 # 冒頭の画像は、王岐山国家副主席




  ラシャカキグサ


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