Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

戦場のメリークリスマス

2008-12-03 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 1983年/イギリス・日本 監督/大島渚
「映画を包み込む音楽のすばらしさ」


何度も観ていますが久しぶりに再観賞。公開当時は、坂本龍一が好きというただそれだけの理由で映画館に行きました。何だかとっても感動して、2回映画館に足を運びましたが、当時16歳だった私がこの作品の何に感動したのか、あまりの月日の経過に思い出せません。よくよく考えれば、大島渚を好きになったきっかけも、この作品。改めて見て、作品と音楽の一体感のすばらしさに感動してしまいました。

本作で、映画音楽家としての礎を築いた坂本龍一。物語が始まってすぐに映し出される「Merry Christmas Mr.Lawrence」のタイトルにかぶさる、タララララン♪というあのあまりにも有名なテーマ曲。このたったワンフレーズ、たった数秒のメロディが、作品を一気に大島ワールドへと誘う。すばらしい「ツカミ」。全くこのメロディが放つ力が圧倒的です。坂本ファンの私は一時期このサントラを聴き過ぎて、ちょっと飽きたなんて思ってたんですが、改めて映画と共に聴くと違います。いい音楽は、サントラだけ聴いていても楽しいのですが、やはり映画音楽は映像ありきなんだ、ということをしみじみ痛感します。俳優としての出演を打診された坂本龍一は「音楽を担当させてくれるなら出演する」と大島監督に交渉したと言われており、その自信と覚悟が見事に結実したと言えるでしょう。

さて、映画について。ローレンスとハラ軍曹、セリアズとヨノイ大尉。主にこの二組の間で交わされる、東洋と西洋の価値観の違いから生ずる感情のすれ違い。それが、支配する者と支配される者という関係性の中でぶつかったり、同情したり、突き放したり、揺れに揺れる様が描かれていきます。しかし、最も漂うのは、極限状態における男たちの愛憎劇と言った趣。男だけで形成する特殊な閉じたコミュニティでは、支配することで得られる高揚感がやがてサディズム的なねじれた愛を生み出す。そんな、男社会に通底する秘密を暴露されたような気にさせられます。この辺の興味が次作の「御法度」つながっていたりするのかも知れません。

また原作者はイギリス人ということなんですが、日本軍兵士の目線で描くことで、いわゆる外国人に対する日本人のひけめ、劣等感のようなものがさらけ出されているのです。それもまた、ねじれた愛を生み出すスパイスなんですけれども。

大島監督と言うのは、エネルギッシュな生々しさが魅力の作品も多いのですが、こと「戦メリ」に関しては、とても情緒的で、かつスケール感を感じさせます。きっと、それは坂本龍一の音楽によるところが大きいんでしょう。