Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

運命じゃない人

2008-12-04 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2004年/日本 監督/内田けんじ
「種明かし」ではなく「余韻」を選択したのがイイ

「アフタースクール」を映画館で鑑賞し、その後DVDで本作を見ました。もっともっと時間軸が錯綜して、鑑賞者に挑戦的な作品かと思っていたのですが、意外とこじんまりとした作品。でも、このこじんまり感がいいのです。板谷由夏は別にして、比較的無名の俳優陣ですので、見る方は脚本に集中できます。

なるほど、そうか!と膝をならすような展開ではなく、一つ一つの出来事の裏と表を見せることで、くすくすと笑ってしまうポイントがちりばめられている。私のツボは、人気のない夜道で電話番号を聞いてガッツポーズをする宮田くんのそばをすり抜けていた白い車があゆみちゃんを乗せたヤクザの車だったこと。

人を笑わせるって、難しいと思うのです。俳優のキャラとか、セリフとか、直接的な方法もありますし、山下敦弘監督のようにオフビートなぬるい雰囲気が妙におかしいというのもあります。でも、本作の場合はそのどれにも当てはまらない。表のストーリーに必ず裏ストーリーがくっついていて、しかもそれが予想外の展開を与えていく。それがくすっとした笑いにつながる。とても高度なテクニックじゃないでしょうか。脚本を練る作業は大変だったろうと思います。「バンテージ・ポイント」みたいにいちいち巻き戻るとうっとおしいですけども、少しずつ重なり合う様が見ていてとてもスムーズです。この「見ていてスムーズ」ってのこそ、作り手の力量。

そして、エンディングがいいですね。見知らぬ人間たちの一夜の出会い。そこに、ひしめく人々のちょっとした思惑は、どう結末を迎えるのだろうか。時間軸にこだわり、見せ方に凝る。しかし、エンディングは「種明かしに納得して終わり」ではなく、「真紀ちゃんの出した結論は何だろう」と言う余韻の方を選択した。監督のこのチョイスは大正解だと思いました。