Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

幻影師アイゼンハイム

2008-12-26 | 外国映画(か行)
★★★★ 2006年/アメリカ・チェコ 監督/ニール・バーガー
「私には完璧ラブストーリー」


ミステリーとして見るか、ラブストーリーとして見るか、という感想が出ること自体、この作品の懐の深さなんでしょうね。見る人によっていろんな楽しみ方ができるということ。で、私にとっては完璧にラブストーリーでした。悲しいかなオチは読めてしまいました。故にラストのどんでん返しにおいては、「プレステージ」の方がびっくりだったかな。

でも、19世紀ウィーンを舞台にしたラブロマンスとしてとらえれば、アイゼンハイムの見せるイリュージョンもふたりの愛を彩る小道具のひとつ。こんなにロマンチックでミステリアスな小道具はありません。摩訶不思議なマジックで民衆の心を操るアイゼンハイム。皇帝の自己顕示欲も見抜いて、手玉に取るアイゼンハイム。そんな彼が一体どんな方法で愛しき人を手に入れるのか、最後までハラハラドキドキ。

身分違いの恋の上、恋のライバルが出現という極めてラブストーリー的な展開に深みを加えているのは、ポール・ジアマッティ演ずるウール警部の存在。アイゼンハイムに感じる親近感と傲慢な皇帝への嫌悪、そして警察人としての正義感。彼の中でうごめく様々な感情もまた、物語をミスリードする役割を担っているんですね。大変よくできたお話しです。そして、陽炎にゆらめくような映像がとても幻惑的。

愛する男と共に消えてしまう。非常に刹那的ではありますが、これもまた恋に溺れる女の究極の願望ではないでしょうか。全てを断ち切り、ふたりだけの世界へ。「私たちを消して」。ただひたすらに幼き頃のソフィーの願いを叶えるためにアイゼンハイムは幻影師として生き、その願いが叶うと同時に幻影師を捨てた。いやはや、胸がきゅぅんとなるエンディングでした。