Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

抱擁のかけら

2010-02-22 | 外国映画(は行)
★★★★ 2010年/スペイン 監督/ペドロ・アルモドバル
<梅田ピカデリーにて観賞>


映画への愛がたっぷり詰まったアルモドバルらしい作品だった。主演のペネロペはモンローやヘップバーンを思わせるファッションを次々と着こなしていて、本当に美しい。映画内映画での主演女優を始め、ペネロペは何通りもの役をこなしていて、まさに彼女のための映画と言っても過言ではないと思う。映画内映画であるコメディ「謎の鞄と女たち」では、アルモドバルの初期の作品で見かけた女優を見つけて少し嬉しくなった。


主人公の男と女は映画を通じて知り合い、映画を通じて嫉妬に苦しみ、映画を通じて人生を取り戻す。主人公を憎む男たちは、スクリーンで浮気場面をチェックしたり、ビデオカメラを回したり。とまあ、何もかもが映画、映画、映画。全てが「映画」というフィルターを通して描かれていて、アルモドバルの映画愛の大きさはわかるのだけれども、ストーリーとしてはもう少しひねりが欲しかったかなあ。サスペンス的展開に何かどんでん返しがあるのかと思ってしまったが、やや肩透かし。

ただ、非常に映像は美しくて、スクリーンで見ないとこの良さはわからなだろうなあ、と思う。


手前の赤い花、花柄のソファ、ターキッシュブルーの壁紙、そして壁に掛けられた色鮮やかな絵画。多色使いのくせに、憎らしいほど完璧なカラーバランス。このセンスは、さすが。スペイン人ならではと溜息が出ちゃう。

それに色遣いが鮮やかなだけではなく、カメラの動きがとても優雅。奇をてらった絵作りではないのにとても惹きつけられる。なんというか、余裕綽々と言うのかな。ほんの少し、じれったいカメラワークで、それがアルモドバルの貫禄を感じさせる1本だった。