Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

スイートリトルライズ

2011-02-09 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2010年/日本 監督/矢崎仁司

「ビョーキな夫婦の観察日誌」

この夫婦はかなりおかしい。病んでいると言ってもいい。一体、いつからおかしいのか。それを示さないことがこの映画のいいところである。どこでどう、ふたりはすれ違い始めたのか。そもそも、人格的に問題があるのか。何もわからないから、いろいろ想像できるのが面白い。だって結婚3年でこの枯れ具合は尋常じゃないもの。

退屈な女だ。家で人形を作り、手の込んだ料理をし、リビングで一緒に過ごすことを拒む夫に何の文句も言わない。こんな退屈な女がいるだろうか。しかし、彼女をこんな退屈な女にしてしまったのは男の責任でもある。呆けた表情でテディベアの目となる小さなボタンを刺す中谷美紀がコワイ。美人だけど抜け殻のようになった女を見事に演じていると思う。

そして見かけは至ってフツーのサラリーマンの南朋くん。最近なぜかビールのCMでも缶コーヒーのCMでもこのスタイルなのだが、悲しいことにあんまり魅力的じゃない。しかし、映画になると俄然違う。後輩に迫られて、三白眼の黒目のところが困ったように右往左往するのがカワイイ。とはいえ、この男のイタさも瑠璃子同様。好きな南朋くんじゃなければ、この男かなりキモいと言える。

さて、原作ではこの不倫は文字通りスイートな寄り道のように描かれているのだろうか。とても気になる。この作品を見て感じるのは、結局、壊す勇気のない、夫婦関係を維持させるための動機付けとして、別の人との恋があるだけ(だから、それはスイートでも何でもない)。夫婦関係を再構築するために、ちょっと別の人とセックスしてみましたってことなワケ。で、私はそれを真っ向否定はしない。そうしないと、互いを確認できない人も存在するからね。しかしそんな馬鹿馬鹿しい作業を経ないと、前に進めないこのふたりは大人になりきれない子どもだ。

瑠璃子は若い男に「愛してるわ」と言うが、これはもうぎょっとして仕方ないのである。それこそ、魂抜かれるようなセックスがあるわけでもなく、何が良くてこの男に惹かれたのか一切の描写はない。一事が万事、ふわふわとしていて、妻は潜在的な心中願望、夫はコミュニケーション不全。ラストは希望でも何でもないよね。一緒に歩くしか選択肢がない、つまり他の選択肢を取ることができない男と女。螺旋階段を登ると言うのは、突破口はどこにもなくて同じところをぐるぐる回るだけというこの夫婦のどうしようもなさを示しているように感じるのだけど。矢崎監督の視点は終始冷徹。だから、とても怖い作品だと思うよ、これ。

それにしても池脇千鶴ちゃん、どうしてそんなにまるまるしちゃったの!むくみまくり。「デブ」ってセリフがあるから、役作りなのかしら?だとしたら凄い。