★★★★☆ 2020年/日本 監督/内田英治
社会の泥沼で邂逅した美しい白鳥。神からの啓示を受けたような草彅剛の目がすばらしい。一生手に入るまいと諦めていた物が目の前に現れ、凪沙は前に進もうと決意した。凪沙の魂は少女に引き継がれたのだからこの物語は悲劇ではない。凪沙は成すべきことをして生ききったのだ。
天才芸術家が開眼するまでの物語としても堪能。人間の醜さや汚さにまみれたからこそ、対極にある美の頂点に立てる。その表現者としての凄みを映像として納得させるラストのバレエシーンが圧巻だ。山岸涼子の舞姫テレプシコーラを思い浮かべた人も多いのではないだろうか。