Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

あのこは貴族

2021-04-09 | 日本映画(あ行)
★★★★☆ 2021年/日本 監督/岨手由貴子

都合のいい恋人と都合のいい婚約者。ひと昔前ならこの2人は取っ組み合いの喧嘩をし罵りあいそれを我々も面白がって見ていた。なんてアタシ達はバカだったんだろう。誰かの期待に応える生き方にNOと言おう。日本映画がこれまで見せてきた女性像に静かに、しなやかに楔が打ち込まれた。

他を知る事で人は閉じ込められていた世界から出ることができる。タクシーと自転車。橋の向こうとこちら側。様々な対比を巧みに用いた演出が見事。モデルオーラを完全に消した水原希子はもちろんだが、身のこなし一つから世間を知らない無垢なお嬢様を表現しきった門脇麦がすばらしかった。

恋人の浮気相手ではなく1人の人間として華子は美紀と繋がれた。それが彼女の扉を開いた。小さな一歩を踏み出す作風は邦画の十八番。それが新たなシスターフッド物というのが実に2020年代的ではないか。また閉じた側も本作は断罪しない。決められた道を歩く幸一郎の諦念が染みる。彼には彼の孤独がある。