落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

今夜も星が 降るようだ

2007年04月26日 | movie
『星影のワルツ』

写真家・若木信吾氏が学生時代から祖父をモデルに撮りためた作品を集めた「Takuji」という写真集がある。
ぐりはこの本が好きで、写真展も観に行った。若木氏の作品というより、モデルの琢次さんが好きだった。琢次さんと若木氏の間の、親子とも兄弟とも友だちとも似ていて、そのどれでもない、あったかくてゆるやかな感情がそのままプリントされたような白黒の写真。
身内の年寄りと暮した経験がないぐりにとって、そういう親密さが単純に羨ましかった。

映画『星影のワルツ』は3年前に亡くなった琢次氏と若木氏とその家族、隣に住む幼馴染みとの関係をモチーフにした、半分フィクションで半分ノンフィクション、かつ一部ドキュメンタリーでしかも若木氏自身が監督・脚本・撮影をてがけるという、いってみれば私小説の映画版みたいな作品。
まあね、見た目はもうチョー素人の自主制作〜ってカンジよ。ゆるいよ。録音状態はひどいし、カメラワークもちょっとそれはっ・・・(滝汗)!なところも多々あるし。完成度としてはこんなん劇映画として一般の映画館で上映してもええんかい?なレベルよ。
でもちゃんとおもしろかったです。映画の魅力はテクニックや完成度では決まらないんだよね。要は何がいいたいかがしっかり伝わる、つくりての愛情に観客が共感できる、そこがいちばん大事なわけで。

祖父を演じた喜味こいしも素晴しかったけど、若木氏自身にあたる主人公役の山口信人もなかなかよかったです。このヒトはアレですね、最近の日本映画で活躍めざましい松山ケンイチとか二宮和也とか松田龍平とか加瀬亮とかと同じ系統ッスね。お内裏様系(と勝手に命名)。まぶたがぽてっとしてて、うりざね顔で、肌がつるっと白くて、ヘアメイクとか衣装とかでどーとでもなっちゃう顔だちで、演技も熱演とゆーより自然な、受け身な芝居が得意。本格的な映画出演はこれが初めてだそーですが、今後ちょっと注目です。

 別れることは つらいけど
 仕方がないんだ 君のため
 別れに星影の ワルツをうたおう
 冷たい心じゃ ないんだよ
 冷たい心じゃ ないんだよ
 今でも好きだ 死ぬ程に

  「星影のワルツ」より 作詩:白鳥園枝 作曲:遠藤実

最近身内を亡くしたばっかりで、観ててかなり複雑な気持ちにはなりました。
実は観ようかどうしようか迷ってたし。
観て良かったです。
ぐりも、いつか、心の整理がついたら、亡くなった人のことを何かの形にしたいと、改めて思いました。