落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

郵便ポストが赤いのも、電信柱が高いのも

2007年12月08日 | movie
『やわらかい手』

えー。
すっごい拍子抜け。
そう出来の悪い映画ではないんだけど。なんだろう。このバランスの悪さ。
てゆーかル・シネマで公開される映画ってぐり的にかなり「拍子抜け」率高いんだよね。ことごとく宣伝内容と作品の中身が一致してなくて、強引ってゆーより半ばウソ?詐欺?みたいな予告編ばっかでさ。一時期それでここでの公開作を避けてたことがあったんだけど、ぬかったわあ。

ヒロイン・マギー(マリアンヌ・フェイスフル)はロンドン郊外に住む平凡な専業主婦だが、小学生の孫(コーリー・バーク)の病気の治療に大金が必要になり、オックスフォードストリートの風俗店で働き始める。数年前に死んだ夫以外に男性経験もなく、何の取り柄もない世間知らずの未亡人だったマギーの「やわらかい手」は評判を呼び、やがて店いちばんの稼ぎ頭になっていく。
とかゆーとどーしても、ちょっとハートウォーミングなエロティックコメディだと思うじゃないですか。予告編も「女性の自立と自己発見の物語」みたいな感じだったけど、これが違うんだよ。ぜんぜん違う。そんな単純な話じゃない。観る人によっていろんな捉えかたのできる、もっと深い映画なんだよね。雰囲気もけっこう重いし。確かに笑えるところもいっぱいあるんだけど。
しかしそれにしてもなんでこの映画こんなに重げなんだろう?いいたいこと─女性差別、職業差別、福祉制度の不備、失業問題、子別れ、etc.─はじゅうぶん伝わってくるんだけど、なんでまたこんなみっしりへヴィーになっちゃったのかな?

大体売春ってそんなに悪いことなの?今どき?
そりゃ未成年が遊ぶ金目当てに軽い気持ちで援助交際とか風俗に手を出すのは危険だし、売春はそもそもハイリスクな仕事ではあると思う。けど職業に貴賤はないはずでしょ?売春が人類最古のサービス業であることに間違いはないし、地球上どこの都市にでも売春宿があって娼婦がいる現実をみれば、売色だって立派な職業であることは誰も否定できないはずだ。ヒロインの身内や身近な人が嫌悪感を持ったり失望したりする気持ちはわかるけど、この映画を観てると、作品そのものが一方的に「売春は悪だ」っていってるみたいにみえちゃうんだよね。
それに彼女の仕事はいわゆるただのhand job。オーナーのミキ(ミキ・マノイロヴィッチ)が“日本式”と呼ぶそのブースの壁には丸い穴が空いていて、客は隣の部屋からコインを入れて性器を出す仕組みで、顧客とふたりきりで密室に閉じこもってというような売春行為とはかなり趣きが異なる。マギーはテクニックと幻想を売っているだけだ。カラダを売ってるわけじゃない。それのどこがそんなにいけないのか。わからん。誰も深刻ぶる必要なんかないはずなのに。

マギーがやけに簡単に売れっ子になったり、ミキとマギーの関係の描写がべたべたし過ぎてたり、音楽が暗すぎたり、編集がブツ切りだったり、いろいろとツッコミどころも満載なんだけど、この映画どーも評判いいみたいなんだよね。
たぶんぐりのシュミにあわなかっただけなんでしょう。
ずびばぜん。