『セックス・トラフィック』
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000OZ2GMQ&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
ボスニアで治安維持活動に従事するカナダ人のカルム(ルーク・カービー)は、恋仲になった娼婦アーニャ(アレキサンドラ・ファソラ)を助けようとして解雇され帰国する。離ればなれになってもアーニャを諦められず、人身取引の現場を撮影した映像を証拠に勤務先の民間軍事企業カーンウェル社に交渉を求めるのだが、彼女は不幸な事故で亡くなった後だった。
2005年にイギリス・アカデミー賞TV部門で8部門を制覇した他、世界各国で数々の賞に輝いた話題のTV映画。
前編後編各90分の全180分。まあ長い。
でも長いだけのことはある。今現在、世界中で銃器密売に次ぐ規模にまで拡大した人身取引の複雑さをあますところなく、過不足なく、実にしっかりとまとめあげてある。これ1本を観れば誰にでも、この問題がいかに根深く、解決困難な要素をどれほど多く抱えているかがたちどころにわかる。
まず主人公のひとりエレナ(アナマリア・マリンカ)は妹ヴァラ(マリア・ポピスタス)がボーイフレンド・レキシー(アンドレ・プリシカル)に誘われてモルドバからロンドンへ出稼ぎに出るのが心配でついていき、まんまとセルビアに売りとばされてしまう。ハンサムな若者が結婚をエサに田舎の純朴な少女を騙して売るのは世界各地で行われているリクルートの常套手段のひとつである。今や現実の“人買い”は悪人の顔などしていない。爽やかな花婿候補だったり、隣人や友人や教師、僧侶など、およそそのような犯罪に関わりなどなさそうな人物がリクルーターとなって被害者を“供給”しているケースは多い。
また、作中に登場するカーンウェル社は各国政府からの依頼で治安維持活動を請負う企業だが、人身取引の加害者になるのは民間会社だけではない。ODAや国連関連団体、軍隊など公的な組織であっても、家族と離れ異国で活動する職員を抱えれば、それがすなわち売買春の温床となるリスクはどこにでもつきまとうといっても過言ではない。
運良く被害者を救済することができたとしても加害者を告発するのはなかなか難しい実情や、被害者が加害者側にまわってしまう人身取引産業のからくり、救済する側の人間も完全無欠ではないなどといった面もきっちりと描きこまれている。
物語はとにかく徹底してリアルで、フィクションの、しかも民放のTV映画でよくもここまでと感心してしまうくらい、まったくの妥協も手抜きもなく人身取引の現状をこれでもかと画面に突きつけ続ける。劇中のエピソードの多くは、製作過程での綿密なリサーチによって発覚した事実に基づいているという。
観ていてしんどくないといえば嘘になるが、ここまでやられるとむしろ天晴れとも思える。ほんとに凄いです。こんな番組ががっちりつくられてちゃんと放送されちゃうイギリスのTV界って奥が深いとゆーか、どんだけ度量が大きいの?とそちらに興味がわく。だってこんなの日本じゃ絶対に絶対に無理だと思うから。もしやったとしても、やれ発展途上国をバカにしてるとか、やれ海外で世のため人のために尽くそうとしている人々を誹謗するのかとか、そーゆークレームでボロカスにこきおろされるのがオチなんじゃないかねえ(現に去年もそーゆーことありましたね)。それくらい大胆です。
観る前はもっとマイナーな感じの作品を想像してたんだけど、実際にはばっちりとお金のかかった完成度の高い大作になってたのも驚き。出演者もなかなかメジャーどころが集まってます。エレナ役のアナマリア・マリンカは一昨年カンヌでパルムドールを穫った『4ヶ月、3週と2日』での主演が記憶に新しい。彼女を助けようとするジャーナリスト・ダニエル役のジョン・シムは『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』『ヒューマン・トラフィック』『ひかりのまち』にも出ている。カーンウェル社重役を演じたレン・キャリオーは『父親たちの星条旗』で観た顔だし、同じくカーンウェル社の経営者トム役のクリス・ポッターはドラマ『Queer as Folk』のシーズン1にレギュラー出演していたはず。人権活動家役のバーバラ・イヴ・ハリスも『プリズン・ブレイク』や『ER』『ザ・ホワイトハウス』シリーズなど日本でもお馴染みのTVドラマに数多く出演している。他にも見覚えのある俳優が何人も出ていた。
日本でも2年前にDVDが発売されて誰にでも観られるようになった作品だが、今月27日には都内で無料上映会も催されることになっている。少しでも関心をもった人、時間の都合があう人には是非とも参加をお勧めしたい。
詳細はこちらまで。
関連レビュー:
『ロルナの祈り』
『この自由な世界で』
『題名のない子守唄』
『イースタン・プロミス』
『13歳の夏に僕は生まれた』
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000OZ2GMQ&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
ボスニアで治安維持活動に従事するカナダ人のカルム(ルーク・カービー)は、恋仲になった娼婦アーニャ(アレキサンドラ・ファソラ)を助けようとして解雇され帰国する。離ればなれになってもアーニャを諦められず、人身取引の現場を撮影した映像を証拠に勤務先の民間軍事企業カーンウェル社に交渉を求めるのだが、彼女は不幸な事故で亡くなった後だった。
2005年にイギリス・アカデミー賞TV部門で8部門を制覇した他、世界各国で数々の賞に輝いた話題のTV映画。
前編後編各90分の全180分。まあ長い。
でも長いだけのことはある。今現在、世界中で銃器密売に次ぐ規模にまで拡大した人身取引の複雑さをあますところなく、過不足なく、実にしっかりとまとめあげてある。これ1本を観れば誰にでも、この問題がいかに根深く、解決困難な要素をどれほど多く抱えているかがたちどころにわかる。
まず主人公のひとりエレナ(アナマリア・マリンカ)は妹ヴァラ(マリア・ポピスタス)がボーイフレンド・レキシー(アンドレ・プリシカル)に誘われてモルドバからロンドンへ出稼ぎに出るのが心配でついていき、まんまとセルビアに売りとばされてしまう。ハンサムな若者が結婚をエサに田舎の純朴な少女を騙して売るのは世界各地で行われているリクルートの常套手段のひとつである。今や現実の“人買い”は悪人の顔などしていない。爽やかな花婿候補だったり、隣人や友人や教師、僧侶など、およそそのような犯罪に関わりなどなさそうな人物がリクルーターとなって被害者を“供給”しているケースは多い。
また、作中に登場するカーンウェル社は各国政府からの依頼で治安維持活動を請負う企業だが、人身取引の加害者になるのは民間会社だけではない。ODAや国連関連団体、軍隊など公的な組織であっても、家族と離れ異国で活動する職員を抱えれば、それがすなわち売買春の温床となるリスクはどこにでもつきまとうといっても過言ではない。
運良く被害者を救済することができたとしても加害者を告発するのはなかなか難しい実情や、被害者が加害者側にまわってしまう人身取引産業のからくり、救済する側の人間も完全無欠ではないなどといった面もきっちりと描きこまれている。
物語はとにかく徹底してリアルで、フィクションの、しかも民放のTV映画でよくもここまでと感心してしまうくらい、まったくの妥協も手抜きもなく人身取引の現状をこれでもかと画面に突きつけ続ける。劇中のエピソードの多くは、製作過程での綿密なリサーチによって発覚した事実に基づいているという。
観ていてしんどくないといえば嘘になるが、ここまでやられるとむしろ天晴れとも思える。ほんとに凄いです。こんな番組ががっちりつくられてちゃんと放送されちゃうイギリスのTV界って奥が深いとゆーか、どんだけ度量が大きいの?とそちらに興味がわく。だってこんなの日本じゃ絶対に絶対に無理だと思うから。もしやったとしても、やれ発展途上国をバカにしてるとか、やれ海外で世のため人のために尽くそうとしている人々を誹謗するのかとか、そーゆークレームでボロカスにこきおろされるのがオチなんじゃないかねえ(現に去年もそーゆーことありましたね)。それくらい大胆です。
観る前はもっとマイナーな感じの作品を想像してたんだけど、実際にはばっちりとお金のかかった完成度の高い大作になってたのも驚き。出演者もなかなかメジャーどころが集まってます。エレナ役のアナマリア・マリンカは一昨年カンヌでパルムドールを穫った『4ヶ月、3週と2日』での主演が記憶に新しい。彼女を助けようとするジャーナリスト・ダニエル役のジョン・シムは『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』『ヒューマン・トラフィック』『ひかりのまち』にも出ている。カーンウェル社重役を演じたレン・キャリオーは『父親たちの星条旗』で観た顔だし、同じくカーンウェル社の経営者トム役のクリス・ポッターはドラマ『Queer as Folk』のシーズン1にレギュラー出演していたはず。人権活動家役のバーバラ・イヴ・ハリスも『プリズン・ブレイク』や『ER』『ザ・ホワイトハウス』シリーズなど日本でもお馴染みのTVドラマに数多く出演している。他にも見覚えのある俳優が何人も出ていた。
日本でも2年前にDVDが発売されて誰にでも観られるようになった作品だが、今月27日には都内で無料上映会も催されることになっている。少しでも関心をもった人、時間の都合があう人には是非とも参加をお勧めしたい。
詳細はこちらまで。
関連レビュー:
『ロルナの祈り』
『この自由な世界で』
『題名のない子守唄』
『イースタン・プロミス』
『13歳の夏に僕は生まれた』