落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

桜の花の満開の下

2017年03月14日 | movie
『「知事抹殺」の真実』

2006年、収賄罪で辞任に追い込まれ、のちの裁判でも有罪判決を受けた佐藤栄佐久・元福島県知事。
1988年の初当選以来、県民の厚い支持を受け18年間も県政を率いてきたが、当初支持していた原発のトラブル隠し発覚後は反対の立場をとっていた。
中央政権に背いたばかりに、現実には存在しない罪に問われた政治家のドキュメンタリー。

仙台の映画館で観てまいりました。

いまから11年前、事件当時のことは正直あまりよく覚えていない。なにしろTVをいっさい観なくなっていたからだ。
それでも、同じ年に佐藤氏に続いて和歌山県知事の木村良樹氏と宮崎県知事の安藤忠恕氏が談合で逮捕起訴され、相次いで3人もの県知事が辞職に追い込まれた騒動のことは印象に残っている。
ちなみに現在の安倍首相が最初に自民党総裁に演出され首相となったのは、佐藤氏が逮捕される5日前。逮捕翌日に第一次安倍内閣が発足している。
そりゃ臭いますよね。めっちゃ臭うよ。いわゆる“人食いの村の入口の髑髏”みたいなことだよね。やっぱさ。

映画としての完成度はハッキリいってまあイマイチです。
客観的なドキュメンタリーなんて世の中には存在しないけど、建前としてドキュメンタリーは客観性=信憑性、主観的になればなるほどどんな素敵なお話も嘘くさくなってしまう。確かに佐藤氏はクリーンで地元では人気の方なんだろうけど、それをやたらめったらひけらかされても観客は「へーそうかいな」とひいてしまう。しかもその“佐藤さん素敵”パートが映画が始まってすぐです。さらにナレーションは佐藤さんご自身でございます。ビックリするよ。
あとね、けっこう複雑な題材なのに構成がザツ。原発に反対ならもうちょっと長期的な原発政策を具体的に描写していただかないと、ただ「トラブル隠しに疑問を感じた」「原発12基止めました」だけでくくられてもついていけない。逆に収賄やら裁判の部分はやたら細かい説明が多いのに、ファクターとファクターの関連性がざっくり抜け落ちてて全体がはっきり見えてこない。わかりにくい。観ててめっちゃストレスたまる。

自民政権はコワイですよ、いうこときかん知事はありもしない事件で闇から闇に葬られますよ、ヤバいですよ、でも佐藤さんは立派ですよ、すごいでしょ、というところをいいたいのはすごくわかるし、情熱もじゅうじゅう感じるけど、いかんせん映像作品としては三流かな。
題材がものすごくいいだけにとってももったいない。
冒頭に一社を除いてどこの局も映像を貸してくれなかったというテロップがあったけど、それはいいわけだと思う。
世にも美しい福島を舞台にドキュメンタリーをつくるんなら、もっといい作品にできたはずです。
富岡町の桜並木のシーンなんかよかったじゃないですか。元GEの名嘉幸照さんと涙をこらえながら語りあうシーン。事件後も信じて応援してくれた支持者への思いで感極まるシーンもぐっときました。
福島という豊かに自然溢れるあたたかな土地への愛に満ちたシークエンスが撮れたなら、そこを中心に据えて、もっとストレートな物語をくみたてることもできたと思う。
国の犯罪を暴くったって、ただただファクトとディテールばっかりじゃ映像は成り立たない。できることならつくりなおしてもらって、もっかい観たいよ(無理)。

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