『ディリー、砂漠に帰る』ワリス・ディリー著/武者圭子訳
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先日読んだ『砂漠の女ディリー』の続編。
自伝『砂漠の女~』の冒頭には下記のような註が書かれている。
「本書はワリス・ディリーの真実の物語であり、ここに書かれている出来事は、どれもワリス自身の記憶に基づく事実である」
わざわざそう断らなければにわかには信じがたいほどミラクルな過程を経て、遊牧民の家出少女からスーパーモデル、果ては国際的な女性運動活動家にまで転身したワリスだが、砂漠の自然児として育った彼女は現代的な都会の暮らしにはなかなか馴染めなかった。結婚にも失敗。生活に疲れた彼女は大好きなおかあさんに会うため、20年ぶりに祖国ソマリアへの帰郷を試みる。しかしソマリアは彼女が故郷を出た後の1991年に内戦状態に陥り(ソマリア内戦)、彼女は長い間家族の住まいや連絡先はおろか、生死さえ知ることのできない状況だった。
そんなまたぞろ「ミラクル」な里帰りの数日間を、幼い日々の思い出を織り交ぜて描いたのがエッセイ『ディリー、砂漠に帰る』だ。
ソマリアといえば世界でも最も貧しい国のひとつといわれ、国民の9割は内陸の乾燥地帯でラクダやヤギを飼って遊牧生活をしているが、ほぼ全土で水や食料はもちろん医療・教育施設も極端に不足し、長い内戦で首都モガディシュをはじめ国土の大半が荒廃しきっているというのが、日本も含めた外国の人間のソマリアに対するイメージではないだろうか。
だがこの本には、おどろくべきことにふつうのソマリア人たちは祖国やそこでの暮らしについてまったく逆の捉え方をしていることが書かれている。
数週間おきに引越しをする遊牧民には持って移動できる荷物は多くない。だからみんな服や家財道具は最小限しか持たないしそれで充分だと思っている。熱い国なので食べ物はその日食べられるぶんが手に入ればそれでよい。余計にあるものは近所の人にわける。食事時、いいことがあったとき(待ち人に会えたとき、雨が降ったとき、家畜の水場がみつけられたときetc.)はアッラーに感謝する。困ったこと、不運なこと、悲しいことがあったら「アッラーの思し召し」として諦める。学校がないので文字を読めない人が多く、だから新聞やTVやインターネットなどといったメディアがない。余暇には友だちや家族とお喋りしたり身近な道具を使ったカンタンなゲームをして楽しむ。
そんなソマリア人はみな、「必要なものはみんなここにある」という。強がりでも負け惜しみでもなんでもなくて、ごく当り前にそう思っている。
家族がいて、家畜がいて、毎年雨が降れば、それで幸せなのだ。電気やガスや水道がなくても、電話や郵便がなくても、平和に仲良く暮らせさえすれば、彼らは満たされている。
豊かさっていったいなんだろう。
だがソマリアも変わらなければならない時代になった。内戦だ。
同じ民族同士でありながら部族間で激しい権力闘争が行われ、町は破壊しつくされ、多くの犠牲者が出た。そして国家体制は完全に崩壊してしまった。この内戦に手を貸したのはまたもや西欧諸国だった。西欧諸国が援助と称して権力者に武器を提供しお金を貸した。そのお金でソマリア人は近隣諸国から麻薬を輸入した。そのようにして終わりのない殺し合いが延々と続くことになった。このあたりのいきさつは映画『ブラックホーク・ダウン』でも触れられている。
まずこの国を変えていくためには、部族間の差別や偏見をなくし、男女が平等な社会を建設することから始めなくてはならない。それがどれほど時間のかかる困難な道のりなのか想像もつかないけれど。
内戦はひと段落して去年暫定政府が本国に帰還することになった。でも長い内線の間に国内には国際テロ組織が入りこみ、近隣国との関係も悪化していて、まだまだ平和とはいえない状況が続いている。
ワリスはそんな祖国を心から愛し賞賛するが、変えなくてはならないところ、守るべきところをそれぞれに生き生きと率直に、ユーモアも交えながら描いている。
長い間引き離されていた家族との再会と和解の物語は感動的だ。だがその道程のなんと険しいことか。どんなに難しくても諦めず、常に前向きなワリス。彼女の強さとおおらかさは遊牧民である以前に、彼女自身がもって生まれた素質でもあるのだろう。
この本は内戦中の2002年に書かれているが、今ではもっとラクに帰省できるようになっているのだろうか。そうであってほしいと思う。
ワリス・ディリー財団
ソマリアの子どもの健康を守り、教育の機会を提供するために設立された非営利団体
ブラックホークダウン・アスキーアート ソマリアページ
ソマリア内戦と飢餓について画像つきでカンタンに紹介してます。ショッキングな画像が掲載されてます。要注意。
女性性器切除と捨て子の多い国 黒柳徹子のソマリア報告
ユニセフ親善大使・黒柳徹子氏の2002年の訪問記
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先日読んだ『砂漠の女ディリー』の続編。
自伝『砂漠の女~』の冒頭には下記のような註が書かれている。
「本書はワリス・ディリーの真実の物語であり、ここに書かれている出来事は、どれもワリス自身の記憶に基づく事実である」
わざわざそう断らなければにわかには信じがたいほどミラクルな過程を経て、遊牧民の家出少女からスーパーモデル、果ては国際的な女性運動活動家にまで転身したワリスだが、砂漠の自然児として育った彼女は現代的な都会の暮らしにはなかなか馴染めなかった。結婚にも失敗。生活に疲れた彼女は大好きなおかあさんに会うため、20年ぶりに祖国ソマリアへの帰郷を試みる。しかしソマリアは彼女が故郷を出た後の1991年に内戦状態に陥り(ソマリア内戦)、彼女は長い間家族の住まいや連絡先はおろか、生死さえ知ることのできない状況だった。
そんなまたぞろ「ミラクル」な里帰りの数日間を、幼い日々の思い出を織り交ぜて描いたのがエッセイ『ディリー、砂漠に帰る』だ。
ソマリアといえば世界でも最も貧しい国のひとつといわれ、国民の9割は内陸の乾燥地帯でラクダやヤギを飼って遊牧生活をしているが、ほぼ全土で水や食料はもちろん医療・教育施設も極端に不足し、長い内戦で首都モガディシュをはじめ国土の大半が荒廃しきっているというのが、日本も含めた外国の人間のソマリアに対するイメージではないだろうか。
だがこの本には、おどろくべきことにふつうのソマリア人たちは祖国やそこでの暮らしについてまったく逆の捉え方をしていることが書かれている。
数週間おきに引越しをする遊牧民には持って移動できる荷物は多くない。だからみんな服や家財道具は最小限しか持たないしそれで充分だと思っている。熱い国なので食べ物はその日食べられるぶんが手に入ればそれでよい。余計にあるものは近所の人にわける。食事時、いいことがあったとき(待ち人に会えたとき、雨が降ったとき、家畜の水場がみつけられたときetc.)はアッラーに感謝する。困ったこと、不運なこと、悲しいことがあったら「アッラーの思し召し」として諦める。学校がないので文字を読めない人が多く、だから新聞やTVやインターネットなどといったメディアがない。余暇には友だちや家族とお喋りしたり身近な道具を使ったカンタンなゲームをして楽しむ。
そんなソマリア人はみな、「必要なものはみんなここにある」という。強がりでも負け惜しみでもなんでもなくて、ごく当り前にそう思っている。
家族がいて、家畜がいて、毎年雨が降れば、それで幸せなのだ。電気やガスや水道がなくても、電話や郵便がなくても、平和に仲良く暮らせさえすれば、彼らは満たされている。
豊かさっていったいなんだろう。
だがソマリアも変わらなければならない時代になった。内戦だ。
同じ民族同士でありながら部族間で激しい権力闘争が行われ、町は破壊しつくされ、多くの犠牲者が出た。そして国家体制は完全に崩壊してしまった。この内戦に手を貸したのはまたもや西欧諸国だった。西欧諸国が援助と称して権力者に武器を提供しお金を貸した。そのお金でソマリア人は近隣諸国から麻薬を輸入した。そのようにして終わりのない殺し合いが延々と続くことになった。このあたりのいきさつは映画『ブラックホーク・ダウン』でも触れられている。
まずこの国を変えていくためには、部族間の差別や偏見をなくし、男女が平等な社会を建設することから始めなくてはならない。それがどれほど時間のかかる困難な道のりなのか想像もつかないけれど。
内戦はひと段落して去年暫定政府が本国に帰還することになった。でも長い内線の間に国内には国際テロ組織が入りこみ、近隣国との関係も悪化していて、まだまだ平和とはいえない状況が続いている。
ワリスはそんな祖国を心から愛し賞賛するが、変えなくてはならないところ、守るべきところをそれぞれに生き生きと率直に、ユーモアも交えながら描いている。
長い間引き離されていた家族との再会と和解の物語は感動的だ。だがその道程のなんと険しいことか。どんなに難しくても諦めず、常に前向きなワリス。彼女の強さとおおらかさは遊牧民である以前に、彼女自身がもって生まれた素質でもあるのだろう。
この本は内戦中の2002年に書かれているが、今ではもっとラクに帰省できるようになっているのだろうか。そうであってほしいと思う。
ワリス・ディリー財団
ソマリアの子どもの健康を守り、教育の機会を提供するために設立された非営利団体
ブラックホークダウン・アスキーアート ソマリアページ
ソマリア内戦と飢餓について画像つきでカンタンに紹介してます。ショッキングな画像が掲載されてます。要注意。
女性性器切除と捨て子の多い国 黒柳徹子のソマリア報告
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