『バルトの楽園』
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000H9HR82&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
「バルト」とはドイツ語でヒゲのこと。「楽園」は「がくえん」と読む。この映画の主人公・松江豊寿(松平健)が実際に見事なカイゼル髭の持ち主だったことからつけられたタイトルではあるが、映画ではさほど松江氏のヒロイズムや壮麗な交響楽を強調した内容にはなっていない。
実に美しい物語だ。
なるほどスクリーンよりもTV画面でお馴染みの出演者が大半だし、不自然で冗長な場面構成や緊張感のない編集、無駄なBGMの濫用、キャラクター描写の粗雑さなど、映画として気になる箇所は相当に多い。
だがそれはそれとして、ストーリーそのものはとにかく美しい。ロケ地であり現実に収容所があった板東の地の自然のなんと清々しいことか。周辺の素朴な風景の中でハイキングをしたり海水浴をしたり、あるいは労働に汗し、地元の日本人たちと交流する捕虜たちののびのびと自由な生活の情景は、とても戦時下とは思えないほど牧歌的でまるでお伽話のようだ。
“第九”全曲の日本初演奏がこの板東俘虜収容所でのコンサートだったことは有名な話だが、レビューを読むと知らなかった人が多いようで意外に思った。当時先進国だったドイツに学ぶため、板東以外の収容所でも捕虜からドイツの文化や技術を学ぶ交流は盛んに行われていたが、劇中にも登場する実在の人物カルル(オリバー・ブーツ)のエピソードが最もこの物語の主旨をよく表わしている。
中国・青島でパン職人をしていた彼は当初日本軍に対して反抗的で脱走を繰り返すのだが(このあたりの事情が説明不足なのが残念)、敗者であり異文化圏の民族であるという感覚的な齟齬をあえて追求せずただ単純に彼を信頼したいという松江の誠意と地元民との交流によって、やがて心を開き自分を取り戻し、ついに終戦後は帰国せずに日本に住むという究極の選択をする。その結果が今日まで続いているバウムクーヘンで有名な洋菓子メーカーの最大手ユーハイム社である。
待ち、信じ、許し、受け入れ、わかりあおうとすることは、人間の最も尊くあたたかな能力であるはずだ。それこそが人類平和の基礎にほかならない。この映画のいいところは、20世紀初頭の田舎の日本人にそうした豊かさと高潔さが当り前に備わっていたことを、特定の誰かの手柄としてではなく、名もなく台詞もないたくさんの登場人物たちや背景描写の繊細さで表現しようとしているところだと思う。その努力はちゃんと評価されていいのではないだろうか。
FLiXバルトの楽園特集に当時「ムスター・ラーゲル(理想の収容所)」とまで呼ばれた板東俘虜収容所のすてきなエピソードがいくつか紹介されてます。
しかしこのベートーヴェンの交響曲第9番という曲は改めて歌詞を読むとまさにこの物語に相応しい。当り前だけど、傑作です。
抱き合え、幾百万の人びとよ!
この接吻を全世界に!
兄弟よ!
星空の下に愛する父なる神が住んでいるに違いない(原詩:シラー「歓喜に寄せて」より)
実際に年末のコンサートには一度しか行ったことないけど、今年はひさびさに行って聴いてみたくなりましたです。
日本人よりドイツ人の出演者が多いんだけど、彼らの芝居がすごーくよかったです。あと東映作品だけにやっぱし福本清三氏がしっかり出てました(笑)。ワンシーンだけだけどねん。
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「バルト」とはドイツ語でヒゲのこと。「楽園」は「がくえん」と読む。この映画の主人公・松江豊寿(松平健)が実際に見事なカイゼル髭の持ち主だったことからつけられたタイトルではあるが、映画ではさほど松江氏のヒロイズムや壮麗な交響楽を強調した内容にはなっていない。
実に美しい物語だ。
なるほどスクリーンよりもTV画面でお馴染みの出演者が大半だし、不自然で冗長な場面構成や緊張感のない編集、無駄なBGMの濫用、キャラクター描写の粗雑さなど、映画として気になる箇所は相当に多い。
だがそれはそれとして、ストーリーそのものはとにかく美しい。ロケ地であり現実に収容所があった板東の地の自然のなんと清々しいことか。周辺の素朴な風景の中でハイキングをしたり海水浴をしたり、あるいは労働に汗し、地元の日本人たちと交流する捕虜たちののびのびと自由な生活の情景は、とても戦時下とは思えないほど牧歌的でまるでお伽話のようだ。
“第九”全曲の日本初演奏がこの板東俘虜収容所でのコンサートだったことは有名な話だが、レビューを読むと知らなかった人が多いようで意外に思った。当時先進国だったドイツに学ぶため、板東以外の収容所でも捕虜からドイツの文化や技術を学ぶ交流は盛んに行われていたが、劇中にも登場する実在の人物カルル(オリバー・ブーツ)のエピソードが最もこの物語の主旨をよく表わしている。
中国・青島でパン職人をしていた彼は当初日本軍に対して反抗的で脱走を繰り返すのだが(このあたりの事情が説明不足なのが残念)、敗者であり異文化圏の民族であるという感覚的な齟齬をあえて追求せずただ単純に彼を信頼したいという松江の誠意と地元民との交流によって、やがて心を開き自分を取り戻し、ついに終戦後は帰国せずに日本に住むという究極の選択をする。その結果が今日まで続いているバウムクーヘンで有名な洋菓子メーカーの最大手ユーハイム社である。
待ち、信じ、許し、受け入れ、わかりあおうとすることは、人間の最も尊くあたたかな能力であるはずだ。それこそが人類平和の基礎にほかならない。この映画のいいところは、20世紀初頭の田舎の日本人にそうした豊かさと高潔さが当り前に備わっていたことを、特定の誰かの手柄としてではなく、名もなく台詞もないたくさんの登場人物たちや背景描写の繊細さで表現しようとしているところだと思う。その努力はちゃんと評価されていいのではないだろうか。
FLiXバルトの楽園特集に当時「ムスター・ラーゲル(理想の収容所)」とまで呼ばれた板東俘虜収容所のすてきなエピソードがいくつか紹介されてます。
しかしこのベートーヴェンの交響曲第9番という曲は改めて歌詞を読むとまさにこの物語に相応しい。当り前だけど、傑作です。
抱き合え、幾百万の人びとよ!
この接吻を全世界に!
兄弟よ!
星空の下に愛する父なる神が住んでいるに違いない(原詩:シラー「歓喜に寄せて」より)
実際に年末のコンサートには一度しか行ったことないけど、今年はひさびさに行って聴いてみたくなりましたです。
日本人よりドイツ人の出演者が多いんだけど、彼らの芝居がすごーくよかったです。あと東映作品だけにやっぱし福本清三氏がしっかり出てました(笑)。ワンシーンだけだけどねん。