※この投稿は、別稿「ABCC(原爆傷害調査委員会。現放射線影響研究所)を設立した狙いは?」を先に目を通してからお読みください。
2021年1月22日、核兵器の開発、実験、保有、使用、威嚇、援助などを全面的に禁じる核兵器禁止条約が発効した。
被爆者たちは、歓迎するとともに、米国の「核の傘」の下に居続けようとする菅自公政権に対して加盟を迫るメッセージを発信した。原爆小頭症の被爆者家族たちでつくる「きのこ会」もその一つである。
「きのこ会」は「核兵器は単に『巨大な威力を持つ爆弾』ではありません。ひとの細胞を遺伝子レベルで傷つける人類史上類を見ない『悪魔の兵器』です。……知的障害のある小頭症被爆者たちは、自らの口で『核兵器の廃絶』とは言いません。しかし、その存在そのもので、核兵器の非人道性を訴えています」と訴えている。
原爆小頭症とは、爆心地近くで被爆した妊娠初期の母親の胎内で、原爆放射線を浴びた事により発症する原爆後障害の一つである。
1952年以降、ABCC(原爆傷害調査委員会)の医師は複数の小頭症患者に関する医学論文を米国内で発表した。しかし、患者や家族には放射線との因果関係や症例を知らせず隠蔽し続けた。また、日本政府は医療給付の対象としなかった。
しかし、1965年初め、中国放送記者の秋信利彦氏に、原爆小頭症患者の住所と氏名が書かれた一通の匿名ハガキが届いた事によって、その存在と問題が公になった。秋信氏はそのハガキを基に取材し、当時政府が援護対象とせず、偏見の目で見られていた小頭症患者とその家族の暮らしのルポルタージュを著したのである。また、彼の助言で患者と家族が「きのこ会」を結成したのである。それらの動きによって1967年、政府は小頭症患者6人を「近距離早期胎内被爆症候群」と認定したのである。厚生労働相によると、2020年3月末現在で政府が認定した原爆小頭症被爆者は全国で17人となっている。
(2021年1月26日投稿)